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キングダムに学ぶ「時代を作る究極のリーダーシップ」【 TOP LIVE 】

実写映画化が決定し、さらに注目を浴びている青年漫画『キングダム』*1。各登場人物からさまざまなリーダー論を学べるため、ビジネスパーソンの間で特に人気が高い。あらゆる業界のトップを迎えて語り尽くす「TOP LIVE」第4回の登壇者は、株式会社リンクアンドモチベーション取締役の麻野耕司氏。キングダムをチームの課題図書にするほどの愛好家だ。同じく愛好家のCRAZY代表・森山和彦と交わされた「時代を作る究極のリーダシップ」をお届けする。
※一部ネタバレの内容となっておりますのでご了承ください。

イベント実施日 2018年3月28日(水)

人を惹きつけてやまない「政のビジョン」。

麻野耕司(以下、麻野)氏:こんばんは、リンクアンドモチベーションで、組織人事コンサルタントをしている麻野です。専門は成長企業の組織人事で、企業規模の拡大をサポートしています。現在は特に、モチベーションクラウドという、組織状態のデータを用いてPDCAサイクルを回すクラウドサービスの開発・展開に力を入れています。

スタートアップの経営を武将にみたてると、私の仕事は参謀のようなものですね。百人将、千人将とだんだん成長していく組織の、課題を解決するんです。モチベーションクラウドは参謀として戦略を立てる上での「地図」に近い位置付けです。「地図」がなければ、自分たちの状況が分からず、戦略がきちんと立てられません。

これまで、フリマアプリのメルカリや、印刷ECのラクスルの組織戦略立案や運用を、サポートしてきました。現在モチベーションクラウドは、成長企業のみならず、大手企業や中小企業への導入も進めています。

森山和彦(以下、森山):こんばんは、CRAZY代表の森山です。子連れ出社の仕組みや、毎日手作りの自然食を提供するなど、組織運営に力を入れています。最近では2018年「働きやすい会社」ランキングの7位に選んでいただきました。キングダムは1巻からずっと読んでいて、リーダーシップや組織論を学べるので大好きです(笑)。

吉田勇佑(以下、吉田):モデレーターの吉田です。CRAZYの人事責任者をしています。皆さんご存知だとは思いますが、キングダムは、中国春秋戦国時代*2を舞台に、後に秦の始皇帝となる「政(セイ)」と、秦の若者「信(シン)」たちの中国統一を描いた物語です。ではまず、お二人の好きなシーンからお伺いしましょうか。

麻野氏:僕は45巻の「政と斉王の対話*3」ですね。政は「中華統一によって、法治国家を築く」と言って、斉と同盟を結ぶんですよね。もし仮に斉と戦ったら、数万人の死者がでたのを、数分間のコミュニケーションで阻止するってすごくないですか? こんな言葉があります。

“ 力のある奴は金のある奴に使われる、金のある奴は知恵のある奴に使われる。知恵のある奴は夢のある奴に使われる ”

大事なのはビジョンなんですよ。みんなを引き付けてやまない夢を持った人材が、ことを成す時代だと思うんです。昔は違いましたよね。まず事業計画書があって、銀行から融資をもらい、事業を構築したら人が集まって、組織ができ、それを束ねるために最後にビジョンをくっつける会社が多かった。

21世紀は、経済の主流が製造業からサービス業に変わり、人が作るビジネスが多くなったので、最初に人を束ねるビジョンが大切なんです。そこに優秀な人が集まって、商品をつくっていく流れですよね。

麻野耕司氏 株式会社リンクアンドモチベーション 取締役
慶應義塾大学法学部卒業後、株式会社リンクアンドモチベーション入社。2010年、中小ベンチャー企業向け組織人事コンサルティング部門の執行役員に当時最年少で着任。同社最大の事業へと成長させる。2013年、成長ベンチャー企業向け投資事業を立ち上げ、新しいスタイルのベンチャー投資として注目を集める。2016年には組織改善クラウド 「モチベーションクラウド」を立ち上げた。国内HR Techの牽引役として注目を集めている。2018年3月に株式会社リンクアンドモチベーション取締役就任。著書:「すべての組織は変えられる〜好調な企業はなぜ『ヒト』に投資するのか〜」(PHPビジネス新書)。

森山:高度経済成長期は、国の成長そのものがビジョンだったので、会社にビジョンがなくても成長に疑いがなかったんですよね。今は将来に不安がある時代だからこそ、会社にも個人にも必要だと思いますね。

この時代の秦は殺し合いが続いていて。政は、法のもとに平等の国家を作って、中華統一すると言い放ったんですよね。王族貴族も百姓も関係ないと。しびれましたね! 僕は34巻の「羌瘣(キョウカイ)の復讐*4」も好きです(笑)。

闇を抱え、光をみた「羌瘣の復讐」。

吉田:羌瘣が、象姉(ショウネエ)*5を殺した幽連(ユウレン)*6に敵討ちをするシーンですよね。

森山和彦(Kazuhiko Moriyama)株式会社CRAZY 代表取締役社長
中央大学卒業後、人材教育コンサルティングのベンチャー企業に入社。トップセールスを記録し、大手からベンチャーまで幅広い企業の経営コンサルタントとして活躍。6年半勤めたコンサルティング会社を退職後、1年間の起業準備期間(世界放浪期間)を経て、2012年7月に株式会社CRAZYを創業。CRAZY WEDDINGという今までに無かったウェディングサービスを発表し急成長。経営の第一優先を健康とし、毎日3食手作りの自然食を提供する他、全社員で世界一周旅行を行うなどユニークな経営をしている。

森山:人の力の出し方は2つあって。1つは「誰かのために」という愛や貢献、光の精神ですね。もう1つは「このやろう、殺してやる! 」という闇の精神です。光の方が美しく聞こえるのですが、実は闇のほうが先に強い力が出るんですよ。今の世の中もそうで、本当に苦しい経験をした人のほうが力が出るんです。

羌瘣は復讐という闇のパワーで強く戦いつづけ、それでも幽連に勝てず、深い意識に飲まれそうになって初めて、光に気づくんですよ。飛信隊*7の仲間がいたと。闇を抱えてもなお光をみるんです。リーダーの役割ってそうですよね。世の中の残酷さや苦しみなどの闇と向きあい、それでも光を信じる姿がみんなの心を打つんですよ。

どちらかではなくて、僕は闇も光も両方をいかすことが大事だと思いますね。自分の中に光と闇を抱えているのが人間の本質ですし、闇の精神を否定することはできません。闇を知ると共感できる範囲が広がるから、マネージできる人の種類も増えますしね。

当日話題となった6つのシーン。

「秦の子らよ」。本気が連鎖した奇跡。

麻野氏:あとは「蕞(サイ)の奇跡」*8ですね。簡単に説明すると、中華には7ヶ国あるんですけど、秦以外の6ヶ国が連合して、攻めてくるんですよ。最後の要となる函谷関(国門)を突破され、蕞という城壁に囲まれた町で、秦は何とか踏みとどまろうとするんです。

でもそこには一般市民しかいない。子どもからおじいちゃんまでが剣をとって戦わなきゃいけないんですよ。「そんなの無理だ」とみんな心が折れかける危機的状況に、僕の大好きな秦王の政が現れるんですよね(笑)。

普通に考えたら王が首都を動くことはないじゃないですか。殺されたら終わりなので。でも政は市民全員の前でスピーチをするんです。「秦の子らよ」と。

ビジョンにはいくつかパターンがあるんですけど、そのときに政が用いたのは、過去・現在・未来とストーリーを語ることで、今に意味を持たせるやり方でした。「これまで、たくさんの先人たちが血を流して秦を守ってきた。いま最大の国難に見舞われている。この国が存続するかどうかは、今ここにかかっているんだ!」と。

過去・現在・未来と語る中で感情移入させ、最後に「この状況を変えられるのは、そなた達だ」と、ForYouのメッセージを渡したんです。民衆は「うおおおお!」と歓喜に燃え、とんでもないモチベーションが溢れ出して、合従軍を跳ね返していく。僕はこのシーンが大好きです(笑)。

写真左)モデレーター 吉田勇佑(Yusuke Yoshida)株式会社CRAZY 人事責任者
明治大学卒業後、ITベンチャー企業に入社。広告営業や新規事業、経営層育成プログラムに携わる。CRAZY WEDDINGで結婚式を挙げたことを機に、株式会社CRAZYへ初代人事として転職。3年半で65名を採用し、社員数は総勢90名へ。現在はCRAZYの教育制度・人事評価制度の設計のみならず、他企業向けの組織コンサルティングも手がけている。また学生団体SWITCHとNPO法人SETの創設者。

吉田:森山さんからみた「蕞の奇跡」はどうですか。

森山:僕は一人ひとりの本気や覚悟の連鎖が奇跡だと思いましたね。人のつながりの中で物語があるじゃないですか。介億(カイオク)*9が援軍を連れてきたり、民兵が命をかけて戦うことを決めたり、楊端和(ヨウタンワ)*10率いる山の民が来てくれたり。普通は戦わない人たちまで結集させた、人の想いの連鎖が奇跡ですよね。

視界を変える人が物事を変えられる。「王騎の最後」。

麻野氏:もしどれか1つでも起こっていなかったら、きっと秦は滅んでいましたよ。あと、ベタですが王騎*11の最後もやばいですよね。「これが将軍の見る景色です」って。あの若さと立場で、信が将軍の景色を見られたことに価値があると思いました。

ビジネスリーダーの成功には、視界が大事なんですよ。視界は時間と空間の2つの要素で構成されていて。経営者のみている時間は1年後、3年後、5年後など長期なんです。マネージャーが見てる時間は中期ですよね。メンバーは短期で「今週の仕事が終わるか」を考えています。これが視界の1つ、時間です。

もう1つは空間ですね。経営者は会社や業界、社会全体のことを考えます。マネージャーは自分の部署のことを、メンバーは自分のことを。オーナー経営者のそばで仕事をすると成長できると言われるのは、ビジネスリーダーに必要な視界を学べるからなんですよ。

森山:視界によって捉え方が変わりますよね。たとえば「会社が決めた目標」と言うメンバーは、やらされていると捉えていて。目標の背景、利益率の上げ方や、お客様に喜んでもらう方法を考えながら自分事化していないと、結構辛いと思います。究極自分に力があるかないかではなく、視界を変える人が物事を変えられるんですよね。

廉頗、楊端和、信、万極。それぞれの影響力の出し方。

吉田:真のリーダーに共通するものはなんだと思いますか。

森山:風を起こせる人だと思いますね。風って変化のことです。変化の起こし方は、本能型や戦略型などいろいろありますが、どれもみんなをその気にさせ、動かしていきます。真のリーダーはどんな局面でも現実を変えますよね。

自分なりの風の起こし方を知っていることが大切です。ロジックで語る人もいるし、情熱で伝える人もいる。廉頗(レンパ)が一人ひとりを抱きしめる*12シーンもそうです。「いつものをやる、こっちへ参れ」と。彼の中にある熱が伝わって、高揚感が湧き出てくるじゃないですか。これは彼なりのやり方なんですよね。

麻野氏:キングダムは何千人何万人と兵がいたとしても、武将が撃たれたら弱くなっちゃうじゃないですか。風が消える、つまり影響力を失うからですね。リンクアンドモチベーションでは、モチベーション状態の定量化・可視化に取り組んでいますが、なかでもリーダーの影響力は従業員のモチベーションに大きく関わるんですよ。

そうしたリーダーの及ぼす影響力は、研究で5つに分類されています。1つ目は「専門性」。たとえば汗明(カンメイ)*13のような圧倒的武力のことです。2つ目は楊端和を素敵と感じるような「魅了性」。3つ目は、ありがたいから恩返しをしたくなる蒙驁(モウゴウ)*14のような「返報性」。4つ目は信のようにぶれない「一貫性」。そして、万極(マンゴク)*15を怖がるような「厳格性」です。それぞれパーソナリティにあった影響力の出し方がありますね。

吉田:ありがとうございます。それでは、会場から質問をもらっていきましょう。

参加者質問:リーダーシップに失敗したときは、どう捉え、改善していきますか。

麻野氏:失敗したときの対処の仕方が大きな差を生むんですよね。負け戦をいかせない人は、環境や周囲のせいにする。いかせる人は自分の責任にする。負け戦は、最高の成長機会だと僕は思っています。

イケてる武将は負けたときに、王の指示が悪かったとは言わないですよね。李牧をみてくださいよ。皆さんの上司がどんなにひどかったとしても、李牧の上司(悼襄王*16)よりはひどくないすよ。敵に攻められてるときに、お風呂に入っているんですから(笑)。

お風呂出ろやって思いますけど、王がこれだから秦に勝てないとか言いますか? 絶対に言わないですよね。自分ができることだけに集中しているので。

吉田:最後にお二人から一言いただけますか。

麻野:皆さんの事前コメント見る限り、キングダムマニアばかりで、やばいところに来たと思ったんですけど(笑)、とても楽しく話せました。キングダム読み返したいと思います!

森山:読み方が変わると時間投資効率が変わるので、キャラクターを自分に当てはめて読むのをオススメします。楽しいだけじゃなくて、経営に取り入れられるほどの学びになります(笑)。今日は本当にあ
りがとうございました!


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*1 青年漫画『キングダム』:既刊累計2200万部突破、第17回手塚治虫文化省漫画大賞受賞した、古代中華戦国大河ロマン青年漫画。時は紀元前、春秋戦国時代*2。いまだ一度も統一されたことのない中国大陸は500年もの動乱期が続いていた。戦国七雄の一つ「秦国」の身寄りのない少年・信と漂は、今は奴隷のような身だけれど、いつか武功をあげて天下一の将軍になることを夢見て修行に励む。そんな二人が偶然、秦国の大臣に出会ったことから物語は始まる。

*2 中国春秋戦国時代(しゅんじゅうせんごくじだい):中国史において、紀元前770年に周が都を洛邑へ移してから、紀元前221年に秦が中国を統一するまでの時代。

*3 政と斉王の対話:斉王の王建(オウケン)が、政(セイ)に「中華統一」についてを問うシーン。政は、中華統一によって、法のもとに平和と平等を手にする「法治国家」を築くと言い放った。王建は政に全中華の舵取りをまかせると決め、実質的な降伏宣言をし、秦は戦わずして、六国制覇のうちの1国を成しとげた。

*4 羌瘣(キョウカイ)の復讐:羌瘣とは、伝説の暗殺集団、蚩尤族(しゆうぞく)の一人。蚩尤族は、殺し合いの儀式「祭(サイ)」で、 最も強い「蚩尤(シユウ)」という族を輩出している。羌瘣は、慕っていた義理の姉・象姉(ショウネエ)を、祭で失った。幽連(ユウレン)が集団攻撃を仕掛けたからである。羌瘣は仇を討つべく幽連と戦い、生死をさまよう中で一筋の光となった「飛信隊」の姿を思い出し、最後の力を振り絞って幽連を打ち殺した。

*5 象姉(ショウネエ):伝説の暗殺集団、蚩尤族(しゆうぞく)の一人。 名は羌象(キョウショウ)。羌瘣の姉のような存在。祭の前日に羌瘣を眠らせ、幽連(ユウレン)が仕掛けた集団攻撃で命を落とした。

*6 幽連(ユウレン):幽族(ユウゾク)の 連。祭(サイ)で蚩尤族の羌象(通称象姉)を理不尽に殺し、蚩尤(シユウ)の座につく。その後の祭では実の妹を殺してまで蚩尤(シユウ)の座を守り、怒りや苦しみなど現世のしがらみを感じないことを強さにしていたが、光に気づいた羌瘣に討たれ命を落とす。

*7 飛信隊:主人公信が隊長を務める部隊。

*8 蕞(サイ)の奇跡:中華の合従軍が攻めてきた際に、秦の最終防衛地「蕞」にて、秦王・政が、民を戦士化し国を守ったシーンのこと。

*9介億:秦の軍総司令・昌平君の側近。蕞の奇跡では、敵の攻撃をみて援軍の量を調整し、蕞の転覆を防いだとされる。

*10楊端和:圧倒的な武力をもつ山の民を率いる女王。

*11 王騎:秦国・六大将軍。他国から「怪鳥」として畏れられる存在。

*12 廉頗が一人ひとりを抱きしめる:それぞれが配置につく前に、廉頗から抱擁を受け、力がみなぎるシーン。

*13 汗明(カンメイ):武力の強さで有名な楚の大将軍。

*14 蒙驁(モウゴウ):巨体で白髭の秦の将軍。

*15 万極(マンゴク):趙国の将軍

*16悼襄王:趙王。立場上は李牧の上司にあたる。46巻503話にて、李牧から「秦が攻めてくる」と伝達を受けるも、お風呂に入ったまま動じないマイペースな人柄が伺える。


 

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編集:高橋 陽子 写真:鈴木 秀康

水田 真綾(@maya_mip)
Maya Mizuta

CRAZY MAGAZINE編集長。立ち上げた後、執筆・編集共に行っている。学生時代から人の世界観を形作る「メンタルモデル」に興味を持ち、「学習する組織」や「U理論」を学んで団体を創設、イベントを多数開催。趣味は、星を見て風を感じて森でお散歩をすること。愛読書はエーリッヒ・フロムの「愛するということ」。

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