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親との葛藤、拡大期における失敗。世界を変えるための覚悟とは。【 TOP LIVE 】

CRAZYのトップと他業種のトップが人生観・経営哲学を語るTOP LIVE。第5回目は、ChatWork株式会社 CEOの山本敏行氏(2018年5月以降は前CEO)をゲストに迎え、「突破力」について語り合った。これまでにないサービスを世の中に生み出しているふたりの、「親との葛藤」「拡大期における失敗」そして「世界を変えるための覚悟」とは。

父親を超えて、自らの道を進む。

吉田勇佑(以下、吉田):本日は、業界の固定概念をぶち破る「突破力2.0」をテーマに進めていきます。まずはじめに、突破力1.0時代ということで、創業時の成功・失敗を含む、突破体験を聞かせてください。

山本敏行(以下、山本)氏:私は在学中に起業していたので、父親に「卒業後も自分で事業をやっていきたい」と相談したんですよね。即答で「あかん」と言われました。ネットバブルが崩壊した直後でもあり、「インターネットみたいなもんは時代のシワじゃ」と言い放たれたことは今でもよく覚えています。父親は、音楽スタジオの経営者で、頑固者の大阪人です。

「家業に入れ」の一点張りでどうしても認めてもらえず、一日の半分は父親の会社で働き、もう半分は自分の仕事をする毎日が始まりました。小学生の頃の話ですが、父親が帰ってくる玄関の鍵の音が聞こえる瞬間、ビクッと起きてしまうくらい、父親のことが怖かったんです。

山本敏行(Toshiyuki Yamamoto)氏:ChatWork株式会社 CEO
中央大学在学中に、ChatWorkの前身となるEC studioを起業。ビジネス上でのコンタクトはメール以外考えられなかった時代から、ビジネスチャットの普及に力を尽くしてきた。働き方を改革し、日本をはじめ世界中に「Make Happiness」を届けることが経営理念。現在は、神戸市郊外の谷上を拠点に、町づくりから日本を変えるプロジェクトにも挑戦している。

それは働いてからも変わらず、飲まず食わずの状態で説教されることも珍しくありませんでした。でもどうしても、ITの世界で生きたい気持ちは消えなかったので、家業はつかずに自分の仕事一本でやっていきたいと伝えると決めました。

話をする直前まで鼻血が出てくるような状態で、プレッシャーは相当なものでしたね。実際、私の言葉を聞いた父親は「山本家の長男として先祖を裏切る決断だという剣幕でした。しかし「大阪市内から出ないし東京にもいかない、隣の事務所でやります」と伝えたからか、案外すんなり受け入れられたんです。

当時はきっと「会社の隣でやるならええか」ということはもちろん「どうせ失敗するやろう」と思って許してくれたんだと思います。

森山和彦(以下、森山):親を乗り越える体験って、すごく難しいですよね。結婚でも就職でも、賛成してくれる親もいれば、反対する親もいる。しかも、山本さんの場合は強烈な反対ですから、大きな突破体験ですね。

創業4年目で、組織は一度死んだ。

吉田:成長・拡張期においてはどのような突破体験がありますか。

森山和彦(Kazuhiko Moriyama)株式会社CRAZY 代表取締役社長
中央大学卒業後、人材教育コンサルティングのベンチャー企業に入社。トップセールスを記録し、大手からベンチャーまで幅広い企業の経営コンサルタントとして活躍。1年間の起業準備期間(世界放浪期間)を経て、2012年7月に株式会社CRAZYを創業した。CRAZY WEDDINGという今までに無かったウェディングサービスで急成長。経営の第一優先を健康とし、毎日3食手作りの自然食を提供する他、全社員で世界一周旅行を行うなどユニークな経営をしている。

森山:今だから話せるエピソードですが、創業4年目に大きな事件が起こったんです。結婚式は皆さんもお分かりの様に、人生にとって最も大きなライフイベントの一つです。そんなたった一度の大事な機会で、あってはならない失敗をしてしまいました。サービス体制も改善が必要でしたが、根本的な原因は、この会社に流れているお客様に対する思いの欠如でした。

お客様には謝罪と共に、できる限りの事をさせていただき、社員にも謝罪をしました。「もっとお客様を大切にする会社にしよう」そう伝えてサービスを根本から見直すことになったのです。

実は、CRAZY WEDDING創設者の山川咲が情熱大陸で取り上げられたのがその翌月でした。反響から数百組ものお問い合わせをいただいたのですが、お客様へ自信を持って提供できるサービスになるまで、営業をストップするという決断をしました。結果として2ヶ月の営業ストップ並びに体制づくり期間を設けたことで、決算は大赤字に。

さらに、営業を止めるだけではなく、「全社員解散」も掲げたんです。意識を根本的に変える必要があったので、本当に残りたい人だけ残って欲しいと一人ひとりと話をしたんですよね。もし全員いなくなったとしても、私が一人でもお客様に対応しようと腹をくくっていました。実際に創業から一緒に作ってきた人も含めて、7人の社員が辞めることになりました。

どこの企業にも、拡大期の失敗はあると思います。CRAZYの場合は、社員の成長が追いついていない中で事業を任せ、サービスが劣化し、お客様を悲しませるに至ってしまった。任せ方に問題があったんです。経営者である私の責任でした。

山本氏:ものすごい決断ですよね。その後変化した手応えはありましたか。

森山:サービスの見直しだけではなく、部署も職種も見直して、すべてゼロから作り直したので。サービスとして一皮むけた感覚がありましたね。


写真左)モデレーター 吉田勇佑(Yusuke Yoshida)株式会社CRAZY 人事責任者
明治大学卒業後、ITベンチャー企業に入社。広告営業や新規事業、経営層育成プログラムに携わる。CRAZY WEDDINGで結婚式を挙げたことを機に、株式会社CRAZYへ初代人事として転職。3年半で65名を採用し、社員数は総勢90名へ。現在はCRAZYの教育制度・人事評価制度の設計のみならず、他企業向けの組織コンサルティングも手がけている。また学生団体SWITCHとNPO法人SETの創設者。

諦めの悪さが、常識を覆す事業をつくる。

吉田:実は、会場の皆さんから事前に質問項目をもらっているので、それぞれお答えいただけたらと思います。まずは山本さんから「常識を覆す事業のつくり方」について聞かせてください。

山本氏:信じて疑わない。自分を信じきることです。2011年にチャットワークをリリースしたとき、ビジネス上でチャットを使うなんて誰も想像できなかったと思います。チャットという言葉すら、馴染みがない時代ですよ。

周囲からは「やめておけ」と何度も言われて。でも「わからないのは当たり前。10年先のことをやっているんだ」と思い、ただひたすらにやり続けてきました。今でこそ、「仕事でLINEを使っているイメージでしょ?」と言われるようになりましたが、当時は誰も想像しにくいサービスだったんですよ。

◆チャットワークさんの記事はこちら

一番重要なのは、諦めないこと。諦めの悪さです。例え目の前に大きな岩があっても、正面突破できなければ、下から潜ってみればいい。それがダメなら空からいけないかと考えてみる。

岩の向こうの自分の目指しているものがあると信じて疑わなければ、どんなルートでも行ってやるぞと思えるじゃないですか。日本人はシリコンバレーで勝てないと言われることも、それは正面突破だからかもしれない。他のやり方なら勝てるかもしれません。

今僕はシリコンバレーから日本に戻ってきたので、周囲からは、シリコンバレーを諦めたように見えているかもしれません。でも実際は益々やる気がみなぎっているんですよ。日本でやるべきことを成した上で、再び出て行くぞと思っています。そうしたら、「あのとき諦めてなかったんですね」って周りは思うでしょう。これは快感ですよね(笑)。

森山:わかります。私も、創業期に一番エネルギーになったのは、腹が立った経験です(笑)。「無理だよ」「できないよ」と言われるほど、今理解されなくても、絶対にすごい未来をつくってやるぞと思いますよね。

コミットメントは、頭ではなく臓器で。

吉田:では森山さんからは「固定概念の打ち破り方」をお願いします。

森山:最近世の中全般に感じることですが、正解を探したり、なんとなく良いといわれるものを選んで説明しがちな流れがあると思います。株主や社員、お客様を考えてのことかもしれません。

CRAZYはお金もサービスも安定していない創業時から、毎日社員に自然食ランチを提供しています。コストを考えることは経営的にもちろん大事なのですが、まずコミットメントありきなんです。「できたらいいな」じゃないんです。「やるんだ」と腹の底から決めること。腹の底から決めないと非常識はつくれません。

私が尊敬している、すごい会議の大橋禅太郎さんから聞いたアドバイスの中で最近大事にしていることがあります。

「コミットメントは、臓器でするもんだ」

響きますよね。頭で考えている内は、全然成し遂げられないんです。頭で描けて説明すること以上に、臓器レベルで決めなければ、固定概念なんて打ち破れるわけがありません。現実は想定通りにいかないことも多いですからね。

世の中は固定概念だらけで、破ったと思ったら、また新たな固定概念が出て来ます。自分たちが描く理想にコミットメントして行動し続ける覚悟があるかどうか。そして山本さんがおっしゃったように、諦めないでひたすら続けていくこと。そんな「突破力」を持ったリーダーがたくさんいる会社は強いし、CRAZYもそういう会社でありたいと思っています。


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※CRAZYは一緒に働く仲間を探しています

編集:水田 真綾 写真:小澤 彩聖

伊勢真穂
Maho Ise

リンクアンドモチベーションにおける約8年間の組織人事コンサルティング経験を経て、フリーランスとして活動中。組織変革の知識と現場経験を豊富に持つため、HR領域における取材依頼が多い。「Forbes JAPAN」や「HR2048」といったビジネス系メディアでの執筆を行う。

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