2020.12.25

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CRAZYのコーポレートサイト開発の裏側を公開。両社のディレクターが語る、プロジェクトの鍵は「受発注の関係を超えて、チームになること」

急速なオンライン化が広がる昨今。ウェブサイトの制作に力を入れる企業は増えつつあります。そのような中で、2020年9月にリニューアルしたCRAZYのコーポレートサイトはブランドリニューアルに合わせて、「愛」を表現すること、そして、バラバラに存在していた事業部サイトを一つに統合して回遊性を高めることを目的に制作されました。納期が短い中で、この難易度の高い与件をクリアできた背景には、2人のキーマンがいました。CRAZYのクリエイティブディレクター(以下CD)、林隆三と、SONICJAM Inc.のウェブディレクター(以下WD)の堀田裕 氏です。

堀田氏によれば、事業会社側にCDがいることで、ブランドの理解が促進されてプロジェクトがスムーズに進むにもかかわらず、まだ世の中に、この体制がある企業は多くないということです。

今回はお二人に話を聞きながら、コーポレートサイトに込められた意図と、2人のディレクターがどのように連携してサイト完成にまで至ったのかを紐解いていきたいと思います。

(聞き手:佐藤)


SONICJAM ディレクター
堀田 裕

クラブハウスのPAを経てSONICJAMに入社。大手コンビニチェーンのストラテジックマーケティングを経験した後、デジタル広告やインタラクティブコンテンツの企画・制作を行う。

2016年に福岡へ移住。趣味はキャンプとサウナ。将来の夢はカラオケスナックの経営。

クリエイティブディレクターとウェブディレクター

佐藤:

まずは、堀田さんの自己紹介をお願いします。

 

堀田氏:

はい。SONICJAMはデジタルコンテンツ全般を扱っている会社です。私自身は、ウェブディレクター(以下、WD)として企業の広告案件、制作・運用、イベント会場でのインタラクティブ広告なども手掛けています。また、最近多いのは、クライアントと一緒に、ブランディングの上流まで一緒に話していくような機会も多くなってきました。

 

佐藤:

今回のCRAZY案件はまさにブランディングの案件ということですね。

 

堀田氏:

いや….。実は、CRAZYさんは今までにない特殊なパターンでしたね。

 

林:

え!ちょっと、わがままを言いすぎましたか?笑

 

堀田氏:

いえいえ、結構ポジティブな意味ですよ。(笑)

後でも話そうと思いますが、企業側に林さんのようなクリエイティブディレクター(以下CD)が立って、サイト制作を牽引する企業はあまりありません。最近、「一社に1人、CDを」というような考え方が広まってきましたが、まだまだといった現状ですね。

そんな中で、CRAZYさんには、クリエイティブ室(CDが在籍するチーム)がいてくれたので、共有される情報の粒度が細かくてすごく助かりました。

 

林:

よかったです(笑)

 

堀田氏:

ですから、今回の開発はCRAZYとSONICJAM、つまりCDとWDの役割分担が明確にできていましたね。会社の指針をどうやってビジュアルにし、言語化するかというのはCDが、それをもらってウェブに落とし込む提案をするのが、僕らWDの役割です。世界観として優先させたい部分と、サイト自体のみやすさや回遊のしやすさ、運用面でのコスト、プロジェクトの予算や納期など、全体の優先順位を付けながら開発を進められたことがよかったなと思います。

2ヶ月間にわたる「愛」に関する議論。

佐藤:

ありがとうございます!今回のCRAZY側のオーダーには「愛」という言葉が多く出てきたと思いますが、最初に聞いた時はどんな印象でしたか?

 

堀田氏:

正直、全然わからなかったです(笑)

ウェブに落とし込むために「愛」を定義しようとして、なんども質問していたのを覚えています。

 

佐藤:

そうですよね(笑)社内でも落とし込みには時間がかかりましたから。

 

堀田氏;

ただ、提唱している新しいパーパスの「パートナーシップの分断を解消する」という言葉を説明してもらう中で、少しずつわかってきたことがあります。「愛」は人と人とが関わるところに生まれるもので、その関わりが、分断されないようにしようというのが、パーパスの意味だと腹落ちした時、愛を一生懸命定義するのは、ちょっと違うな、と気づいたんです。愛を定義するのではなく、それが生み出されるパートナーシップを表現することが大事なんだと思いました。

 

林:

実は、2ヶ月間も、こういった哲学の整理に時間を使いました。僕らとしても、自分たちがやりたいことを、最初から言語化できていたわけではなく、手探り状態だったので、堀田さんやSONICJAMのみなさんがくれた質問や素直な意見のおかげで深まっていった感じです。

 

佐藤:

2ヶ月も…!

 

堀田氏:

もちろん全体の納期を仕切っている中でしたが、やはり要件定義には時間をしっかり取りたいという方針があるので、僕らとしては、いつも通りというか、ちゃんとやり切りたいという気持ちでした。そうした方が、結果的にスムーズに進むし、何よりいいものが出来上がるからです。

週に一度の定例MTGでは、目指しているものをデザインに落とし込んで提案し、それをみてもらいながら、またCRAZYさんが哲学を深めていくという進め方をしていました。

パーパスを表現する、
オープニング、グランドメニュー、白いロゴ

佐藤:

SONICJAMさんの方針としても、そこを大事にされているんですね。では、実際の機能にはどのように落とし込まれていったのでしょうか。

 

林:

一番長く話したのは、オープニング(サイトを開いた瞬間のアニメーション)の光の粒子だったと思います。これは、一つ一つの事業や人が集まって、CRAZY全体をつくりあげるということを表現すると共に、個性を持った“わたし”が集まって、分断のない”わたしたち”になることを表しています。

堀田氏:

この粒子の動きに関してはかなり話し合いました。

形もそうですし、動き方も。実装に時間がかかるところだったので、ある程度完成してから、何度かみてもらったり修正をしました。

 

林:

静止した平面上でのイメージはあったのですが、これがウェブ上でどう動くかという映像化は想像できなくて、その立体感や奥行きみたいなところまで、どう指示出したらいいかわからなかったですね。何度壁打ちしても、うまく行かなくて、「あれっ、なんで光の粒なんだっけ?」と迷走した瞬間もありました。

 

佐藤:

何がきっかけで見通しがたったんですか?

 

堀田氏:

実際のオープニングのデモ映像ができた時に、なんとなく、「時間が短いパターンでもいいのでは」と考えて提案しました。そうしたら、「もっと時間短くしても良いかも。なんとなく近づいている感じがする」と建設的な意見が飛び出てきて、少しずつ少しずつ前に進んでいる感覚が出始めました。

 

林:

ラフの段階では4コマ漫画のように見せてもらってたんですが、初めて動いた時のタイミングとかを含めた印象をみて、1ユーザーとしてみたときの感覚がわかったんです。感じて欲しかったものはこれで間違っていない、と安心できました。

 

堀田氏:

他の事業部サイトに飛ぶ際に、一度光が流れるモーションがあるのですが、これは新しいサイトにきたことが直感的にわかるように意図されています。

 

佐藤:

ディズニーランドで、エリアが変わる時にBGMが変化するのと似てますね。

 

堀田氏:

それ、いい表現ですね(笑)

 

佐藤:

ありがとうございます(笑)

その他のポイントはいかがでしょうか?

 

堀田氏:

やはりKEYとなるのは、回転式のグローバルメニューです。各サイトを統合して回遊性をあげる、というお題に対しては、このUIを開発したことで見通しがたちました。

林:

グランドメニューの丸いアイコンは、今回のサイト作成をきっかけに、新しく作ったデザインです。このように、サイトを制作していく過程で、クリエイティブのレギュレーションを整えていった部分もあります。

 

佐藤:

サイトというアウトプットを作ることによって、細かな論点が見えてきたんですね。

 

林:

そうです。実は、ずっと黒色を用いていたCRAZYのロゴを白色に変えたのも、そんな議論の中からでした。

 

堀田氏:

裏話的に言うと、白ロゴの表現は、実はすごく大変なんです。(笑)

サイトが全体的に薄めの背景色だったので、そのままだと白が目立たなくて。そこで、有機的なグラデーションを使いつつも、ロゴの背景には必ず濃い色がくるように調整したり、同じく白文字で書かれているフッダー(最下部)は、青い配色がくるようにしました。わざとらしくなく、白ロゴを目立たせることができているかなと思っています。

 

林:

プロセスの中で、できた新たなレギュレーションに、軸を通していくのもCDの役割だったと思います。デザインとして白文字の方がいいと思っていた中で、今回の「愛」というテーマを考えると、今までのように黒文字で強く主張するものではなく、日常の背景に溶け込みながら、確実に存在しているものとしてCRAZYを表現するのが適切なのでは、と確信しました。

受発注の関係を超えて、チームになる

佐藤:

こういう裏話を知った上でサイトをみてみると、また面白い発見があるかもしれないですね。

お話を伺うに、今回は難しい開発だったと思いますが、納期通りにリリースできたのは、何がポイントだったと思いますか?

 

林:

大前提にある、両社間の人間関係がポイントだったと思います。

僕らは、これまでも多くのパートナーと一緒にサービスや、クリエイティブを作ってきましたが、自己表現をするために、他社と組むのはあまりしてきていません。なぜなら、内製で作っていくのが最も表現できる、という価値観があったからです。

ですから、パートナー選びはかなり慎重に行いました。

 

佐藤:

何が決め手となったのですか?

 

林:

ブランドパートナーの阿座上の紹介ということもありましたが、最初の顔合わせで、代表の村田さん(村田健:SONICJAM 代表取締役)だけではなく、全メンバーが参加してくださった時間が最終的な決め手となったのかもしれません。なぜなら、参加メンバー全員から、受発注の関係を超えてチームとして一緒に作っていくというスタンスを感じ、まさにそれが今回のプロジェクトで求めていたことだったからです。関係性をテーマにしたサイトだからこそ、一緒に作る人との関係性が何より大事だと考えていました。

 

堀田氏:

確かに、今回のプロジェクトは、クリエイティブの方向性やディレクションが「今決まったな!」と感じることが何度かありました。僕らが提示した案によって、CRAZYさんのブランドの見せ方が多少変わったり、次の週には、より深まったフィードバックがきたりと、スケジュール的にはヒヤヒヤしながらも関係性としては面白く取り組めました。

前の話に戻ってしまいますが、このような密なコミュニケーションを時間内にしきれたのも、クリエイティブディレクターが立っていることが大きかったと感じます。連携が非常にスムーズだったので、今後も、そういうお仕事ができるといいなと思いました。

 

佐藤:

両社の関係性という下地があってこそ出来たサイトだったんですね。現在は、さらにコンテンツを充実させたり、新サービスのページを増やしたりと、まだまだやることはたくさんありそうですね。

 

林:

そうですね!これからもSONICJAMさんと協力しながら、様々なコンテンツを充実させていきたいと思います。見てくれた方が、パートナーとの関係性をより良くするための、勇気と機会を受け取れるようなサイトに育てていきたいと思いますので、注目してもらえたら嬉しいです。

 

CRAZYのリニューアルしたHPはこちら
https://www.crazy.co.jp/


執筆&編集:佐藤史紹


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