2017.10.20

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【前編】「デザイナー×会社員」「会社員×アーティスト」垣根を超えた、新しい時代のクリエイターの在り方。

株式会社CRAZYから、「変革に寄与する」をキーワードに法人向けのクリエイティブサービスを提供する「CCA(クレイジークリエイティブエージェンシー)」のローンチが発表された。CCAよりクリエイティブディレクターの林が、『新しい時代の「ものづくり」を考える。』をテーマに、クロストークを展開。登壇者は、林自身が尊敬してやまないという同世代のトップクリエイター4名。前編は、プライベートでも親交のある間柄だからこそ自由に語られた、「クリエイティブへの思い」をレポート。

イベント実施日
2017年9月25日(月)

登壇者
モデレーター
藤田 卓也氏(Takuya Fujita)コピーライター/株式会社電通
後藤 映則氏(Akinori Goto)アーティスト、デザイナー
山本 侑樹氏(Yuuki Yamamoto)プロダクトデザイナー/株式会社博報堂・YOY
横関 亮太氏(Ryota Yokozeki)プロダクトデザイナー/Ryota Yokozeki Studio
林 隆三(Ryuzo Hayashi)クリエイティブディレクター/株式会社CRAZY

アーティスト・デザイナー・会社員・・・複数の顔を合わせ持つ。

林隆三(以下、林):今日は、僕が普段から親しくさせてもらっている友人に集まってもらったので、リラックスムードの中、どんな話が飛び出すのか楽しみです。自己紹介からスタートしたいと思いますが、ここからの進行はふじたく(藤田卓也氏)にパスします。

藤田卓也氏(以下、藤田氏):それでは、僕から自己紹介していきますね。僕は電通でコピーライターという仕事をしているんですが、僕が立ち上げたサービスで、皆さんにもイメージしてもらいやすいものをご紹介します。

「FISHERMAN CALL」という、漁師がモーニングコールをしてくれるサービスです。地方PRというのは2極化していて。1つは動画を使って、現地を訪ねられない人たちにも広く地域の魅力を知ってもらおうとするもの。もう1つは、響く対象層は狭いかもしれないけど、ユニークなイベントで面白い体験を提供しようとするもの。だからこそ、「広く届けられる面白い体験」という、これまでにはない道を探して企画を立てました。

後藤映則氏(以下、後藤氏):僕は、デザイナーをしながら個人では、メディアアーティストとしても活動しています。会社の仕事だけだと、やりたいことが中々出来ないので、個人の活動では、自分が面白いと思えるものだけを作っています。作品を言葉で説明するのは難しいのですが・・・この「時間の彫刻」というものは、2次元の時間軸を3次元に立ち上げてみました。時間って目に見えないものですが、視覚化して具体化してみたんです。

横関亮太氏(以下、横関氏):僕は、ソニークリエイティブセンターというデザインチームを退職して、独立したばかりです。個人作品で代表的なものは、藍染めでつくった家具でしょうか。藍染めという昔ながらの日本の手法と、現代的な造形を組み合わせて、新しいものをつくろうとトライしました。これは、ヴィトラ・デザイン・ミュージアムに所蔵されることになりました。会社員として携わった仕事でご紹介したいのは、ソニーでの最後の仕事となった「肩のせスピーカー(ウェアラブルネックスピーカーのSRS-WS1)」。ホームシアターが機能しづらい日本であっても、一人ひとりが好きな音量で、エンタテインメントを楽しめるというものです。

山本侑樹氏(以下、山本氏):僕は、博報堂でのプロダクトデザインと、YOYというデザインユニットでのインテリアデザインのふたつの活動をしています。YOYの作品で皆さんによく知ってもらっている代表作は、座れる絵ですかね。椅子の絵が、本当に座れる椅子になるというもので、2次元と3次元の感覚が歪むような不思議な「Camvas」という作品です。会社員としての活動は、博報堂の前に所属していたパナソニックでの「イット」という、充電式のコードレスクリーナーが代表的な仕事です。2016年のグッドデザイン「ベスト100」にも選ばれました。

:改めて、ものすごいメンバーが来てくれたな(笑)と思いつつ、僕の話をします。直近の作品でいくと、NEWoMan1周年記念のプロモーションです。この仕事はいわゆる空間広告で、NEWoMan1周年イベントが始まりますよと知らせるものです。 ショーウィンドウの中にディスプレイをひとつ設計して、窓面には、たくさんの手紙が入った封筒を貼り付けました。手紙には、イベント詳細の事務的な告知文が書かれているだけなんですが、道行く人に持って帰ってもらう仕掛けを考えたんです。

封筒の宛名は1,000通りくらいあるんですよ。例えば、「片思い中の君へ」とか、「仕事で疲れているあなたへ」とか。個別性のある宛名にすることで、自分らしいものを自由に選んでもらう。どんどん手紙がもらわれていけば、ディスプレイの全体像が見えてくるという塩梅です。ディスプレイは、この手紙を書いている人の部屋をスタイリングしています。

ここで表現したかったのは、ショーウィンドウと手紙を取る人との距離感。NEWoManは新宿駅にあるので、毎日何万人という人が行き交います。その人たちに対してどんなアプローチができるかなと考えたところ、キーワードは自由性・個別性・主体性だと思ったんですね。「自由さがあり、自分だけに向けられている感覚がして、自分でアクションする」という体感型広告ですね。

改めて思うことは、「体感する」ということが僕のものづくりの軸。見て感じるとか、読んで感じるということはもちろんあるけど、体感が一番伝わりやすいなと思っていて。だから表現方法として、空間デザインを選んでいます。CCAは、プロジェクトとしては去年くらいから先行して走っていたんですが、今日改めて事業化しまして。面白いものを社会に提供していけたらと思っていますので、引き続き応援してもらえたらと思います。

「本当に自分がやりたいこと」だから、何があっても続けられる。

藤田氏:山本さんからは「誰も見たことのない表現」、林さんからは「体感」などのキーワードが出ました。言うことは簡単だけど、やるのは本当に難しいこと。どう体現してるのか。そのあたり、山本さんどうでしょうか。

山本氏: 良い方法なんてものはなくて、ひたすらやるだけなんですけど(笑)。例えば、一年後に発表の場があって、そこに3作品出せるとしたら、最初の段階では1,000案くらい出します。自分が考えたものを紙に書いて相方に送り、相手の反応を見る。そういうことを10か月くらいずっとやるんです。その中で面白そうなアイデアが出てきたら、ウェブで調べて似たものがないかを探る。似たものがあればボツにする。

そうやってフィルターをかけていくと、残るアイデアは10案くらいで。その10案を実際に試作すると、ちょっと違うなというものも出てくるので、最終的に3案くらいになるイメージですね。僕も相方も普段は会社員として働いているので、平日の夜や休みの日にずっとやっています。ともかく、アイデアが出る時間をつくるしかないですね。

藤田氏:二足のわらじを履いていると、時間をどう捻出するかは常につきまといますね。自分の作品をつくる時間をどう確保するのかという点でいくと、後藤さんなんかはどうなんですか。

後藤氏:そうですね、そもそも会社の仕事以外の活動を始めた理由は、純粋に自分のやりたいことができないことに、気づいたからなんですね。仕事の中で自分がやりたいことができるように頑張るというのもありだと思うんですが、僕の場合は、外で勝手にやろうと。外で評価されて、その評価を会社に逆輸入しようと考えてやってきましたね。

藤田氏:戦略としては相当格好いいですし面白いですが、これまたなかなかできることじゃないですよねぇ。

(END)

企業に所属するデザイナーとして生きるのか、もしくは自分の表現したいものを追求するアーティストとして生きるのか。私は、デザイナーとアーティストというふたつの生き方は、一人の人間の中で両立させることは難しいと思ってきました。ですが、新しい時代を生きる5名のクリエイターのみなさんのお話をおうかがいして、それは私の固定概念だと気づかされました。
責任と強い意思が求められはするけれど、肩書きは自分で決めればいい。新しい時代は、思いがある人たちにとっては、より自由な時代なのかもしれません。

後半につづく:こちら 

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