2022.03.25

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「愛の表現は色々でいい」男性ふたりが結婚式で伝えたかったこと

2022年の1月28日、男性カップルの健太さんとビンチェさんが、結婚式を叶えました。

誓いの言葉として手紙に綴った
「愛に条件はいらない。」「愛の表現はいろいろで、いい。」
その言葉は多くの人の心を動かしました。

なぜ、ふたりは結婚式を決意したのか?
式後、どんな変化があったのか?

おふたりの本音を聞きました。

「やるつもりがなかった」結婚式

式を決意したきっかけは、CRAZY WEDDINGとゲイ向けのコミュニケーションアプリ「Blued Japan」とのコラボ企画に出会ったことでした。

当時、いつかは結婚式をしたいという気持ちはあれど「日本で式はするつもりはなかった」というおふたり。

この企画を知って背中を押された健太さんが独断で申し込んだそうです。

健太さん:
元々、海外にいつか移住をして、法律で認められる式をしようと思っていました。日本で形式的な結婚式をやる意味が自分たちにあると思えていなかったんです。

ただ、Blued JapanとCRAZY WEDDINGの企画を見た時、日本にいる直接感謝を伝えたい家族の存在が浮かびました。とりわけ、「育ての親でもある90歳を超えたおばあちゃんには、結婚をした姿を見せたい」と思ったんです。さらに「法律で認められない結婚式であっても、それを社会に発信することで誰かの背中を押せるのでは」と思い立ち、ビンチェには相談もせずに応募しちゃいました。笑

ビンチェさん:
以前から、結婚についてはよくお互いの意見を理解していたので、断る理由はありませんでした。いつか結婚式をしたいと思っていたし、健太の家族にも感謝を伝えられるのはとても嬉しいことだと思ったんです。

「社会における同性婚の難しさ」を、自分の口で伝えたかった。

お互いの意見を確認しながら進めた準備期間。「若い世代が少しでも生きやすくなる力になりたい」という想いで、メディアも入れて、社会へのメッセージも意識して準備を進めていきました。

その中で、ふたりが式で大切にしていた考えをお伺いしました。

健太さん:
ゲストの中には、初めて同性カップルの式に参加する人もいました。「皆どう感じるだろう。」「そもそも、ちゃんと来てくれるのか。」と不安な気持ちもありました。

ただ、「来てくれる皆には今の自分たちの状態をちゃんと伝えなきゃいけない」と思っていたんです。

単に「幸せそうでよかった」だけではなく、同性同士だからという理由で生きづらいことや課題が沢山あるということを、好きな人たちには知ってもらいたかったんです。

例えば、今も、法律上家族にはなれないから、住みたい家に住めなかったり、家族ではないからと緊急時に側にいられない事もある。LGBTQカップルがあたりまえにできることが限られている事実があるんですよね。

ビンチェさん:
健太と、これからの未来の子どもたちにどんな社会を残していくべきかという話をよくするんです。

僕たちがどんな未来を届けられるだろうかということを考えるんですよね

健太さん:
ロールモデルってとっても大事だと思うんです。

社会で受け入れられていない僕たちみたいなLGBTQの人たちは、自己否定をしてしまうことが多い。

その分、身近にロールモデルがいることやちゃんと理解して愛情を注いでくれる大人がいることが特に重要なんです。

だからこそ、この結婚式や僕らが、同じことに悩む若い世代や当事者のみんなの背中を、少しでも押せたら良いなと思っていました。

反対されていた父からの「おめでとう」、家族と一緒に溢れた涙

いよいよ迎えた結婚式当日。

最も記憶に残っている景色と忘れられないシーンを、お伺いしました。

健太さん:
本番で一番最初に感動したのは、挙式会場に入った瞬間でした。大好きな皆の顔を見て「ああ、来てくれたんだ・・・・・・」って、一気に安心しました。

人前で感情を出しているところを見たことがないお姉ちゃんが、あんなに泣いていることに驚きましたね。本心で話してくれたスピーチでは色々なことを思い出してしまいました。

ビンチェさん:
普段健太もお姉さんも感情をあまり外に見せないんです。そのふたりが感情をオープンにしている姿が印象的でした。
あんな健太は見たことがなかったです。

あの式で、健太がこれまで解放できなかった感情や、閉じ込めていた本当の自分の心の一部が、自由になったのだと感じました。全部溢れてましたね。

私は、イタリアにいる父からもらったまさかのサプライズメッセージに感動しました。

実は父は、私がゲイであることを受け入れてくれていなかったんです。
でも、当日流れたサプライズメッセージの中には「おめでとう」の言葉がありました。

こんなに嬉しいことはありません。
私たち家族の関係が、変わりました。

結婚式は、「大切な人たちにちゃんと、感謝と愛情を伝える」機会

健太さん:
結婚式を終えてみて、今でも「結婚式をしない」という選択をする理由もよく分かるんです。でも、家族、友人、大切な人たちが同じ空間にいて、一人ひとりに感謝を伝えられる。愛を伝えられる。幸せのエネルギーがあんなに集まる機会は、人生で結婚式以上にないなと結婚式を経た今、思うんですよね。

ビンチェさん:
大切な人たちと一堂に会して一緒に感動する、あの共通体験が大事なんだと思いました。

感動を同じ空間でシェアすると、友達や家族と愛し愛され合う関係がもっと強くつながります。それは、ふたりからはじまって、家族のつながりが広がり続けていく感覚。

それは、人生を生きていく上で大きな価値になると思います。

結婚式を考えている皆さんへ今、伝えたいこと

健太さん:
「自分の幸せは、自分で決められるよ」と言いたいです。結婚式をするもしないも選択できると知ってほしい。結婚式には価値があると思う。法律で認められていない、だからこそ、やったほうがいいと僕は思う。

ビンチェさん:
私たちはロールモデルをつくりたかった。目立つのは得意じゃないし、完璧なカップルでもない。だけど誰かが勇気を持って新しい大地に踏み出さなければならないと思うんです。

子供たちにどんな未来を残すのか、考え続けなくちゃいけない。

多くのLGBTQカップルが式をして幸せになることで、よりよい未来に繋げていけたら嬉しいです。

未来へつながる、結婚式

ふたりが結婚式で叶えたかったことは、「大好きな人たちに感謝を直接伝えること」と「次の世代が生きやすくなる未来へのメッセージを届けること」でした。

それはふたりにとっても大きな力になり、さらに若いLGBTQ+の皆さんがが「自分らしく生きる」未来へ繋がっていくものでした。

ビンチェさんが語ってくれた誓いの言葉は、

私を含め、多くの人の心に誰かを愛する勇気を与えると思います。

「愛は、条件を知らない。愛の表現は、色々でいい。」

IWAI OMOTESANDOで式を挙げた健太さん、ビンチェさんの当日の様子を映した映像です。

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対面やお電話でのウェディング相談会も実施しておりますので、以下よりお問い合わせください。

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執筆:渡部恵理
編集:池田瑞姫
バナー画像:東和香


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