2018.07.10

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これからの時代のニュースタンダード。「この世界の歩き方」

CRAZYのトップと他業種のトップが人生観・組織哲学を語るTOP LIVE。第6回目のゲストは、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの島田由香氏だ。「日本を代表するCHRO(最高人事責任者)」としての活躍を裏付けるように、日本の人事部HRアワード2016 個人の部・最優秀賞受賞も手にしている。働き方改革真っ只の今だからこそ聞きたい、「未来の組織」の在り方とは。会場が深い共感に包まれた、幸福で濃密な90分の、後編。(前編はこちら

ビジョンとは、その会社の「熱量の総和」。

吉田勇佑(以下、吉田):組織づくりについて、島田さんからは「全方位的」森さんからは「旅路」という言葉が出ました。(前編記載:こちら)森さんはまさに今、どんな旅路の途中でしょうか。

吉田勇佑(Yusuke Yoshida) 株式会社CRAZY採用責任者 明治大学卒業後、ITベンチャー企業に入社。広告営業や新規事業、経営層育成プログラムに携わる。CRAZY WEDDINGで結婚式を挙げたことを機に、株式会社CRAZYへ初代人事として転職。3年半で65名を採用し、社員数は総勢90名へ。現在はCRAZYの教育制度・人事評価制度の設計のみならず、他企業向けの組織コンサルティングも手がけている。また学生団体SWITCHとNPO法人SETの創設者。

森山和彦(以下、森山):CRAZYは創業から6年目に入ったのですが、今全社員で新しいビジョンをつくっているところです。創業時は僕の強い想いを込めたビジョンを置いていました。でも、会社が大きくなってきたので、新しく全社員でつくろうと取り組んでいます。

どうやってつくっていこうかと考える中で、最初は「どんな会社にしたい?」とみんなに問いかけるワークショップをやりました。内容としては、非常に盛り上がりはするんです。でも、そこに本当の熱・本当の会話は薄いように感じました。

よく考えてみたら、自分の人生をかけて会社のビジョ

ンを語れる方が、珍しいですよね。創業者ならまだしも。そこで何をやったかというと、会社のビジョンをつくるために、「一人ひとりが個人のビジョンを本気で話し、全員が本気で聞く」ということでした。

写真右)森山和彦(Kazuhiko Moriyama)
株式会社CRAZY 代表取締役社長
中央大学卒業後、人材教育コンサルティングのベンチャー企業に入社。トップセールスを記録し、大手からベンチャーまで幅広い企業の経営コンサルタントとして活躍。1年間の起業準備期間(世界放浪期間)を経て、2012年7月に株式会社CRAZYを創業した。CRAZY WEDDINGという今までに無かったウェディングサービスで急成長。経営の第一優先を健康とし、毎日3食手作りの自然食を提供する他、全社員で世界一周旅行を行うなどユニークな経営をしている。


一人につき5分くらいで話をしてもらって、周囲からのフィードバックはもちろん、僕からも「想いを受け取ったよ」っていう話をする。みんなの想いが蓄積されていくと、ふとその場に、未来が立ち上ってくるんです。不思議なんですけど。

更に、その場を終えたときのメンバーとの会話で、金言がありました。僕が「CRAZYのメンバーはユニークで、素晴らしいね」って伝えたのですが、それに対して「森さん、本当にそうですか?」ってとあるメンバーが言ったんです。

「え?どう言うこと?」と聞いたら「一人ひとりのことをよく知っているから、ユニークだって思うんじゃないですか?」と。どういう意味かと言うと、CRAZYの人たちが特別でユニークなわけではなくて、世界中の人たち誰もが本当はユニークだということ。相手のことを知らないから、そのユニークさをただ認識できていないだけなんだと。

会社の掲げるビジョンも同じです。ビジョンは会社がつくるものだと思っていたり、そもそも自分のビジョンなんてないと思っていたりするひとが多い。でも本来ビジョンという想いは一人ひとりが持っているもので、それを表出する場があれば、勝手に立ち上がってくるはずなんです。

その、ぼわんと立ち上がってくるものに対して、誰かが名前をつけるだけ。それが、会社のビジョンと呼ばれるものになっているだけなんです。本来的には。

島田由香(Yuka Shimada)氏
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役人事総務本部長
慶應義塾大学総合政策学部(SFC)在学時に人や組織に興味を持って以来、一貫してHR領域でのキャリアを重ねている。パソナ、日本GEで人事を経験した後、2008年にユニリーバへ。複数部門のHRパートナーを経験した後、2013年に取締役人事部長就任。社内外に大きな影響力を持つ、日本を代表するCHROのひとり。

島田氏:誰かの想いというのは、聞いているとすごく嬉しくて楽しくて、熱くなるんですよね。笑顔と同じで、伝染もする。本気で夢を語る姿は美しいし、語れる場がたくさんあると良いですよね。

でも普段は、文句や愚痴・悪口で、時間やエネルギーが使われていることが多かったりして。それって、すごくもったいない。

森山:会社の掲げるビジョンって、その会社の熱量の総和ですね。

島田氏:あぁ、そうですね。それすごく良いですね!

森山:熱量の総和っていうのはつまり、一人ひとりのビジョンを束ねたものとも言えると思うんです。一人ひとりのビジョンのかたまりに名前をつけることが、つまり会社のビジョンになると言えばいいのかな。

島田氏:そう、そうですよ。これは今夜のキーワードですね。

森山:まず熱を引き出すこと。熱がない中でビジョニングしようとしても、意味がないんですよ。それっぽい言葉で、それっぽく納得するレベルにしかならない。別にポジティブなことばかりじゃなくても良い。心の底から出てくることに意味があるんです。ビジョンって感情のようなものだから。

島田氏:いやぁ、その通りですね。そして、それらを共有した人たちは仲間になるんですよね。

吉田:ありがとうございます。お話は全く尽きませんが、参加者のみなさんからもたくさん質問をいただいているので、お答えいただきたいと思います。

私たちはみんな、解釈の世界を生きている。

吉田:まずは、「やらされ感がある中で、どうやってやる気にさせるのか」。

島田氏:私は、これは結構簡単なことだと思います。キーワードは「現状を知る」です。自分に気づくことからスタートするんです。自分がやらされ感でやってるな、腹落ちしてないんだなと気づけたとしたら、それでほぼほぼ解決できたようなものだと思うんですね。自分の状態に気づかずにいる人たちが、すごく多いから。

自分の状態に気づくために必要なのは、「メタ認知」と言われるスキルです。第三者的に自分を見るんです。脳神経言語学では「私たちはプログラミングされた行動をする」と学ぶんですね。

生まれてこの方、私たちは本当にたくさんの経験をしてきていますが、それらは全てプログラミングされている。人間の法則は決まっていて、快を求めて不快を避けるんです。それを無意識にやるんです。

メタ認知というのは、別名で「デソシエーション」とも言いますが、反対に、自分が自分とつながって感情にどっぷり浸かることを「アソシエーション」と言います。

略して「アソとデソ」と呼ぶんですが、この両方の視点を自在に動かせる人がやっぱり、豊かな時間を過ごせるし、仕事においても成功していると思います。

森山:僕は「デソマニア」ですね。CRAZYでもデソについては、もう1,000回以上は話しているんじゃないかな。メタ認知することで本当に人と繋がれるんです。そもそも、人間はお互いが持っている脳内のイメージが違うという前提に立つこと。そうやって毎日デソって生きることが大事だと思います。

例えば「白い砂浜が広がる海があります」と僕が話すとします。でもこの話を100人が聞いていたら、イメージされる海は100通りあるはずなんです。ひとつとして同じじゃない。ちなみに今僕は、勝浦の海を想像しながら話したんですが、白浜を想像する人もいるし、ハワイだと思って聞いている人もいる。

島田氏:なるほど。今の話を聞いて、「私たちは解釈の世界を生きている」ということを知ることなんだなぁと思いました。同じものを見て同じ話を聞いていても、解釈は異なりますよね。

解釈は全員違うし、それぞれ解釈した上で反応するから、「言った・言わない」っていう話にもなる。「分離」というのも、実はここから起こると思うんです。

つまり、恐れですね。自分の思い込みが正しいと思ってしまうのは、相手の解釈している世界を知ろうとするのが怖かったりするんだろうなと思います。

怒りの感情こそが、自分への大切なメッセージ。

吉田:もうひとつ、質問を続けましょう。「島田さんは常々、幸せに生きるためには感情は解放した方が良いとお話しされていますが、ネガティブな感情を解放したら、どこに行くのか?行き先にパターンはありますか?」。

島田氏:そうですね、パターンはないと思います。幸せを感じられない人は実際に多いですが、その理由のひとつは、感情に鈍感になっているからなんです。学校でも会社でも、「怒るな」「泣くな」という指導を受けるじゃないですか。

そういう感情を見せることは、プロじゃないとか、戦略性が低いなんて言われ、事実やデータ・理論やフレームワークが重視されています。私も、それ自体は否定しません。大事だと思うから。

でもそれ以上に、もう、感情が大切な時代に入っているんです。経営者や人事がこの感覚を持っているのかどうかによって、確実にこの先の世界は変わると、まずお伝えしたいです。

それから、人間が人間である理由は感情があることだと思います。感情を大切にせずして、何のために生きているのか。「happy!」「楽しい!」「苦しいけど頑張ろう」の繰り返しなんです。

Emotionっていう言葉がありますが、EはエネルギーでMotionは動き。つまり、Emotion/感情というのは、自分のエネルギーの動きなんです。感情の種類はいろいろありますが、敢えて4つで整理すると喜怒哀楽ですよね。

この中でネガティブと言われるものが、怒と哀ですが、このふたつの感情を抑え込むようになると、喜と楽も表現できなくなってくるんです。だから、「Are you happy?」って聞かれても、「え?」となって答えられない。

感じたことをどう表出するのかは、大人として、TPOに応じてそれぞれが判断すればいい。でもそれ以前の、感じることが許されないと思い込んでしまっている人が、あまりに多いんです。私はとにかく、怒と哀もちゃんと感じて欲しいと思います。

しかも、怒りの感情はとても大事なメッセージを自分に届けてくれていることも、覚えていて欲しい。「本当はこれが欲しいんだ!」「実はこうしたいんだ!」という創造のエネルギーになるんです。

だから、自分が怒ってると気付いたときはまず「あぁ私は怒ってるなぁ」と、メタ認知(デソる)をしてください。その上で、「一体私は何が欲しかったんだろう?」と自分に問いかけてください。

怒りは6~9秒で無くなってしまうとも言われています。なので、メタ認知をして問いかけている間に、怒りの感情は下がっていくんです。感情が落ち着けば、「本当は優しい言葉をかけて欲しかったんだ」とか「ありがとうって言って欲しかったんだ」と分かる。

そうしたら、その「欲しかったこと」を相手にシェアするんです。怒った感情に任せて反応するのではなく、「本当はありがとうって言って欲しかったんだ」と伝える。とにかく、怒っているときこそ、自分に気づくチャンスだということを、胸に留めて欲しいなと思います。

吉田:ありがとうございます。今日は本当にもう、本質的で深い話が多かったですね。最後に森さんからメッセージがあれば。

森山:普段の生活の中でも自分を俯瞰して見る「メタ認知」や、解釈はそれぞれという「砂浜の話」を思い出して欲しいんです。心の中でひらめくことがあったなら、それを信じて、勇気を持って踏み出して欲しい。やっぱりメタ認知したとしても勇気を持って動かなければ現実は動かせないので。僕は、その挑戦を後押ししたいと思っています。

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編集:水田 真綾 写真:浦口 宏俊 

伊勢真穂MAHO ISE

リンクアンドモチベーションにおける約8年間の組織人事コンサルティング経験を経て、フリーランスとして活動中。組織変革の知識と現場経験を豊富に持つため、HR領域における取材依頼が多い。「Forbes JAPAN」や「HR2048」といったビジネス系メディアでの執筆を行う。


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