2018.01.06

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【前編】創業間もないベンチャー社長にこそ、読んでほしい。新卒社員が即戦力になるまで。

創業6年目のCRAZY。認定NPO法人Teach For Japan 創設者である松田悠介、大手外資企業のGUCCIから熊谷幹樹が経営ボードに参画するなど、会社として大きな変革期を迎えている。こうした変革期の課題の1つに、組織カルチャーの継続がある。そこで欠かせないのが、ベンチャースピリットやカルチャーを体現し、継承していく新卒の存在だ。

創業間もない中で、新卒を採用するには教育負担が大きい。しかしCRAZYは創業1年目から絶えず新卒を採用してきた。1期生として入社した彼らは、今や全社を引っ張る貴重な即戦力。彼らはどんな学生時代を過ごし、なぜ創業間もないベンチャー企業へ入社したのか。

前編はインタビュー中心、後編はCRAZY独自の方法論も紹介していく。

プロフィール
杉山泰彦(YASUHIKO SUGIYAMA)
WHERE 地域プロデューサー

慶應大学経済学部出身。小・中学生時代をアメリカ・シアトルで過ごす。大学時代は、数千人規模のイベント実行委員の部門責任者として、200人近い学生を束ねるイベント企画を担当。外資スポーツメーカーの学生アンバサダーも務め、1年で参加者を3倍に。新卒1期生としてCRAZYに入社後は、イベントの設計からWEBプロモーションやマーケティング戦略設計まで幅広く担当した。2017年2月より関連会社のWHEREに参画。人と地域をつなげるハブ役を担う。

小守由希子(YUKIKO KOMORI)
CRAZY Brand Presenter
立教大学観光学部出身。3代目豊島区ソメイヨシノ桜の観光大使。2013年逆求人コンテスト全国大会「採用したい女子」1位。CRAZY創業前にも関わらずインターンを直談判する情熱を買われ、創業時からインターンとして参画。「今年は新卒を取らない」という会社の意思決定を覆し、2013年新卒第1号として入社した。新卒採用責任者、ウェディングプロデューサーを経て、営業部門で最年少最多契約実績を更新。現在は、社長室カルチャーオフィサーとして、CRAZYの文化活性化に取り組んでいる。

謝罪の一筆!? 駆け抜けた学生時代。

ー学生時代はどんなことをしていましたか?

小守:2年間豊島区の観光大使を務めました。観光学部で受ける授業では知ることができない、リアルな現場を見たいと思ったんです。観光大使としてイベントに出席してみると、集まるのは高齢者ばかり。もっと若い人が集まる街にしなければ今後の発展がない、私が観光大使になった以上はできることを全部したいと思い、イベントを企画しました。

参加者は、就活前の学生です。多くの学生は、就活が始まると真っ黒のスーツを着て、黒髪にし、個性を押し殺していくじゃないですか。そうなる前に「自分の個性を爆発させよう」と呼び掛けて、男女各50人を集めたんです(笑)。男性はカラーコーディネーターにネクタイを選んでもらい、マナー講座を受講。女性はCanCamやAKB48のヘアメイクを担当するプロの手にかかり、ドレスアップ。男女ともに自分をグレードアップさせた状態で出会う、合コン要素を含んだ就活イベントでした。結果的には、自分たちが想像する以上に人が集まってしまって……。「もう2度と豊島区の観光大使という名前を使ってイベントをしないでください」と、一筆書かされました(笑)。

3代目豊島区ソメイヨシノ桜の観光大使を務めた小守。2年間の任期中、区内外の行事に数多く参加し、豊島区の観光とソメイヨシノをPR。自らも若者向けのイベントを企画するなど積極的に活動した。

ーその爆発的なエネルギーはどこから来ていたのでしょう?

小守:自分が今どれくらいできるのかを試したいという、好奇心からですね。当時、すでにUNITED STYLE(CRAZYの旧社名。以下、CRAZYで統一)でインターンを始めていたので、結婚式の現場経験から企画ノウハウがたまっていたんです。実際にやってみると大変なことばかりでした。私がワンマンすぎてチームが空中分解したり、予約していた会場が使えなくなったり。壮絶な観光大使の経験をさせていただきましたね。

ー杉山さんは学生時代に何をしていましたか?

杉山:僕は、AGESTOCKという団体でイベントを作っていました。「学生の熱意は限りない可能性を持つことを証明する」というビジョンと、代表の熱さに惹かれて、説明会に5回行ったんですよ(笑)。「お前また来たのかよ」と言われながら所属しました。やるからには中途半端にしたくなくて、リーダーのポジションがあれば常に取りに行っていましたね。

最上級生の時には、イベント局250人のリーダーを務め、早稲田祭でAKBやきゃりーぱみゅぱみゅを呼んでライブをしたり、ソニーミュージックと連携して学生バンドNO.1を決めるイベントをしたり。最後は、1日3000人を集めるイベントを、東京ドームシティーホールを貸し切って2日連続で開催しました。僕は、パフォーマーとして踊るより、構成や演出を考えることが好きだったので、台本を書いたり照明案を出したりしていましたね。どうすればパフォーマーの人たちが輝くかにフォーカスすることに、喜びを感じていたんです。

杉山は日本で1番大きいと言われる学生団体・AGESTOCK出身。“学生の熱を最も体現する複合型イベント”をコンセプトに開催した「AGESTOCK2012」では、イベント局のリーダーを務め、東京ドームシティーホールに2日間で6000人を動員した。

「14卒でしたが、15卒とウソを書いて参加しました」

ーCRAZYとの出会いを教えてください。

小守:私は、比較的早めに就職活動をしていて、30人の社会人に「私は何が向いていると思いますか?」と聞きに行っていました。そのとき「この人に会ったらいいんじゃない?」と紹介を受けたのが咲さん(CRAZY WEDDING創設者・山川咲)で。講演会に参加してみると、話す姿がかっこよく、気づけばその場で「インターンさせてください」と伝えていました(笑)。咲さんからビジネスを学びたいというよりも、やりたいことにまっすぐ生きられる理由を解明したかったんです。座学ではダメだ、同じ時間を濃密に過ごすことでしか学べないだろうと思い、インターンを直談判しました。

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ーインターンをする中で、どういう瞬間に入社を決めたのですか。

小守:創業期はみんなで、毎日のように会社の理想や未来を想像していたんです。「社員数が100人になったら、ここにいるみんな役員だね」とか「毎日みんなで自然食ランチを食べたい」とか「利益のためじゃなくて、地球に良い循環を生み出すために働きたい」と。当時、会社は狭いマンションの一室で、本当に何もなかったのですが、熱量が強すぎたからこの人たちは絶対にその理想を叶えるだろうと確信したんです。「ここで描く未来を、私もつくりたい。この未来に私がいないことが許せない」と思ったのが、入社を決めたきっかけですね。

ビジネス的にも将来性を感じていました。個別化やその人らしさに注目が集まり始めていたので、オリジナルウェディングのニーズは今後上がっていくんじゃないかと。事業チャンスのない、ただ夢を語る仲良し会社であれば入社を決めていないですね。

小守はメンバーがたった5人のときから、インターン生としてCRAZYの立ち上げ全てを見てきた。写真は創業期の1コマ。当時は社長もインターンも関係なく、全員総出で結婚式準備に取り組んだ。

ー杉山さんがCRAZYに入りたいと思ったきっかけは?

杉山:実はこゆっきー(小守の愛称)のプレゼンを見たからなんです(笑)。「こんな同世代がいるんだ。悔しい」と思ったことを覚えています。

小守:ラフォーレ原宿最上階のイベントスペースで開催した、15卒向けの採用イベントですね。タイトルは「Extreme~就活をぶっ壊せ~」(笑)。

杉山:当時僕は大学4年でした。同世代は就活を終え、僕自身も別のベンチャーに内定をもらい、1つ下の代が就活時期に入ったころです。就活を通じて、周りの人たちが借りてきた言葉を話す場面が増えたことに違和感を覚えたんです。これを変えるにはどうしたらいいんだろうと考えていました。そもそも就活自体が大きな課題なのかもしれないと感じ、「就活を変える取り組みがしたい」と考えた矢先に出会ったのが、このイベントでした。イベントの対象は15卒。僕は14卒でしたが、企画の作り方を学ぶために、15卒とウソを書いて参加しました。

杉山がCRAZYに入社するきっかけとなった、CRAZY主催の就活イベント「Extreme~就活をぶっ壊せ~」。就活版TEDやルール創造グループワークが行われ、大勢の参加者にとって、今までとは違う、革新的な就職活動の1歩を踏み出す時間となった。

イベントでは、社員が自分の言葉で、会社のことを活き活きと語っていたんです。僕は人が活き活きと生きる世界をつくりたいと思っていて、すでにそれを目指している会社があったのだと、衝撃を受けた瞬間でした。またその日は全社員が世界1周に出発する前日だったみたいで。「僕たち、明日から世界1周に行くんです」と話していて、「やばいな、この人たち! 」と思いました(笑)。

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リスクヘッジとしての就職活動。

ーCRAZYは当時、創業間もないベンチャーでしたよね。大手でキャリアを積んでから、ベンチャーに転職しようと考える人も多いと思うのですが。

杉山:その考えは全くありませんでしたね。むしろリスクヘッジだと思っていて。僕は経済学部だったので、経済モデルや働き方について卒論を書く中で「大企業であっても潰れる可能性がある」と分かっていました。企業の中で安泰と呼ばれている人も、10年後はどうなっているか分からない。リンクアンドモチベーションのセミナーで、麻野耕司さんが「20代はポータブルスキルを身に着けろ。専門的なスキルじゃなくて、主体的にやり切るスタンスを伸ばせ」と言っていて、僕もまずは個人の力を身に着けたほうが、絶対に安泰だと思ったんですよね。

小守:とても共感しますね。

杉山:また伸びる会社が大きくなってから入るのは、もったいないとも思いました。ワンピースでいうウソップぐらいから入ったほうが絶対にいいなと(笑)。船に乗るのはいつでもできるとしても、このタイミングで乗れるのは今しかない。「この船、今乗らないとマズイ」という緊張感がありました。

入社後の仕事は、山川咲の右腕。

ー二人はインターンを含め、どのようなキャリアを歩んでいますか。

小守:私がインターンを始めたのは、創業1カ月前からです。最初は「登記前で会社がないからインターンできないよ」と断られたのですが「大丈夫です。そこから作りましょう」と提案しました(笑)。新卒採用も「今年は採らないよ」と言われていて。だからこそ「新卒めっちゃ使える」という認識を持ってもらえるように、かゆいところに手が届く人材になろうと決めていましたね。与えられる仕事がなくても「これやっておきます」「これやったほうが良いと思うのでやっていいですか」と提案しながら、自分の仕事を少しずつ増やしていきました。入社後初の仕事は、新卒採用の責任者で、その後CRAZY WEDDINGのプロデュ―サーになり、営業部の立ち上げを経て、今は社長室でカルチャーオフィサーをしています。

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私たちの強みは企業カルチャーだと思っているんです。ルールがあるから人がまとまるのではなく、意識せずとも大切にする「共通認識」があるから、ブレず、まとまりやすい。私たちはそれをカルチャーだと定義しています。カルチャーを育むことで、生産性、働き甲斐や所属意識が変わってくるんです。

カルチャーオフィサーの仕事内容は、全社総会や研修の実施と人事制度の整備です。今どんな共通認識をリマインドすることがみんなのモチベーションを引き上げ、経営課題を解決することに繋がるのか考えて取り組んでいます。

社外秘初公開のオフィスツアーを開催した小守。カルチャーオフィサーとして、創業時からCRAZYが大切にし続けている自然食のランチ、朝礼で行うシェアや握手の文化などを伝えた。

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杉山:僕もインターンから入ったのですが、面接時に「長期的にやりたいことは働き方を変えることです」と伝えたら、インターンなのに新卒採用チームに入れられました(笑)。「お前は採用するかわからないけど、採用してこい」というミッションをもらって(笑)。

入社後は、1カ月で13カ所、1000人を動員する「山川咲出版記念講演会」を開催しました。咲さんから「講演会やりたい! 東京大阪福岡よろしく!」という呼び掛けがあり、「誰がやる?」「はい。やります」と言ったのが講演会の2週間前で(笑)。以後、最初の1年半は講演会に限らず咲さんの右腕的な仕事を担当していましたね。

メインの仕事はマーケティングでした。CRAZY WEDDINGの集客面でWEB解析を行ったり、SNS投稿、イベント開催、キャンペーン実施をしたり。マーケティングというポジションは、客観的にCRAZYやCRAZY WEDDINGを見ながら次の一手を考えることが大切です。新卒だった僕が「こういう顧客に来てもらうためには、こんな見せ方をしましょう」と提案できたことは、大きな経験でしたね。マーケティングの他には、全社の周年パーティーなどの運営責任者を、数多く担当させていただきました。

ー新卒が全社ごとの責任を持つとは驚きです。

杉山:とにかく手を挙げてきましたから。「誰がやる?」と言われたら、できるできないじゃなく、とりあえず手を挙げました。それらを経て、今はWHERE(2018年7月よりCRAZYのグループ会社を卒業)地域プロデューサーをしています。

WHEREは、認知拡大から定住施策まで一貫した地域プロデュースサービスを提供。文脈のある出会いを通じて、地域と人のつながりにイノベーションを生み出す。写真は、奈良の郷土料理「めはりずし」との出会いを組み込んだツアーのときのもの。

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学んで、任されて、スターターになって確実にステップアップを重ねてきた二人。行動力と前向きな人柄を感じられるインタビューでした。

CRAZYは、創業1年目で社員がたった16人のときから、その半数にあたる8人もの新卒1期生を採用しています。彼らが会社の成長とカルチャーの継続に大きく貢献して、今があるのです。後編では、彼らがどんなスタンスで仕事をし、葛藤を乗り越えたのか。「新卒が即戦力になるまでの方法論」をお伝えします。

編集:水田 真綾


高橋 陽子YOKO TAKAHASHI

「OVER THE BORDERの新婦です」の一言で、CRAZYを取り巻く人に認知してもらえるありがたい人生を送る。GALLERY WEDDINGプロデューサーと、FEEL THE CRAZY編集者と、少しのフォトライター業と…。わらじを何足履けるか冒険しながら、大好きな愛媛暮らしを満喫中。


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