2018.01.09

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【後編】創業間もないベンチャー社長にこそ、読んでほしい。新卒社員が即戦力になるまで。

新卒採用は教育コストがかかる。しかしCRAZYは、創業1年目で社員がたった16人のときから、8人もの新卒を採用。以降、毎年絶えず新卒を採用してきた。新卒であっても責任者の役割を任せるなど、チャンスは積極的に与え、ステップアップを皆が応援する。1期生として入社した彼らは、今や全社を引っ張る貴重な即戦力だ。彼らはどんなスタンスで仕事をし、葛藤を乗り越えたのか。新卒1期生へのインタビュー後編(前編はこちら)。記事の最終章では、新卒が即戦力になるまでの方法論をまとめてお送りする。

プロフィール
杉山泰彦(YASUHIKO SUGIYAMA)
WHERE 地域プロデューサー

慶應大学経済学部出身。小・中学生時代をアメリカ・シアトルで過ごす。大学時代は、数千人規模のイベント実行委員の部門責任者として、200人近い学生を束ねるイベント企画を担当。外資スポーツメーカーの学生アンバサダーも務め、1年で参加者を3倍に。新卒1期生としてCRAZYに入社後は、イベントの設計からWEBプロモーションやマーケティング戦略設計まで幅広く担当した。2017年2月より関連会社のWHEREに参画。人と地域をつなげるハブ役を担う。

小守由希子(YUKIKO KOMORI)
CRAZY Brand Presenter

立教大学観光学部出身。3代目豊島区ソメイヨシノ桜の観光大使。2013年逆求人コンテスト全国大会「採用したい女子」1位。CRAZY創業前にも関わらずインターンを直談判する情熱を買われ、創業時からインターンとして参画。「今年は新卒を取らない」という会社の意思決定を覆し、2013年新卒第1号として入社した。新卒採用責任者、ウェディングプロデューサーを経て、営業部門で最年少最多契約実績を更新。現在は、社長室カルチャーオフィサーとして、CRAZYの文化活性化に取り組んでいる。

ポジションを創出する働き方とはー

ー創業間もない会社だからこそ、大事にしてきたスタンスを教えてください。

杉山:ベンチャーと言えど、チャンスは取りに行かなければ与えられないと思っています。逆に言えば、一歩前に出さえすれば、どんどん与えられる。それがベンチャーの面白いところだと思います。僕は目立ちたがりなので「誰かができる仕事をなんで自分がやる必要があるの?」という想いが根本にあって。僕にしかできないと思えばすぐに飛びつき、やるからには僕だからこその成果を出すことを大切にしてきました。

小守:私は、与えられた場所で成果を出し切ってから、次のステージを自分で提案することが大事だと思っています。大企業には、「次はこれ」という決められたステップがあると思うんです。でもベンチャーにはありません。だからこそ、今いる場所で能力を証明し、ポジションを提案して生み出すことを大事にしてきました。今いる社長室でのカルチャーオフィサーの仕事もそうですね。トップ営業として走ってきたからこそのポジションなんです。

小守プロデュースのウェディングより。最高で42組のお客様を同時に担当していた小守。それでも常に、圧倒的な世界観を描き、お客様に尽くしきる姿勢は忘れなかった。
 

成長に貪欲だからこそ、不安になり、葛藤する。

ー入社4年目で活躍が目立つ二人ですが、常に順風満帆だった訳ではないと思います。どんな困難に直面し、どう乗り越えてきましたか?

杉山:常に不安と戦っています。井の中の蛙じゃないですけど、果たして自分はCRAZYの外でも価値を発揮できるほど成長しているのか、常に疑っているんです。それが顕著になったのは、3年目のとき。考え尽くして、辞める一歩手前でした。CRAZYの発展と自分の成長はイコールだと思いながらも、自分は本当に輝けているのか、会社に貢献できているのか、分からなかったんです。自分ではできると思っても、外で何もできなければ、ただの思い込みですから。

ーそこからどのような変化があったのですか?

杉山:辞めようかと考えてから約半年間は、森さん(株式会社CRAZY代表取締役社長・森山和彦)と一緒にさまざまな仕事をさせてもらいました。その中で、誰かが作ったものにアプローチするよりも、自分がゼロから作っていきたいと感じるようになったんです。今のポジションではそうした仕事はできないと思い、森さんにWHERE(※2018年7月よりCRAZYのグループ会社を卒業)で挑戦したい」と伝えました。

杉山がWHEREに異動して最初に担当したプロジェクトは、富士吉田市のエイプリルフール企画だった。「富士山を日本一から世界一へ増築プロジェクト」という、行政とは思えぬユニークな打ち出しで話題を呼んだ。

小守:自分の成長に対する葛藤は、私もありましたね……。1期生だったため、常に創業メンバーと比較していたんです。「咲さん(CRAZY WEDDING創設者・山川咲)にはできて、なんで私にはできないの!」と、年齢に7歳差があったとしても悔しくて。だからこそクオリティーの高い仕事をして追いつこうと、がむしゃらに取り組んでいました。

落ち込んでばかりの入社1年目のとき、「研修プログラムがあって成長ステップが見えやすい一般的な会社で学んできたほうがいいのかな」と考えたことがありました。そのことをある人に相談したときに言われた例え話が、すごく印象的で。

「なるほどね。お前はオリンピックに出たくてオリンピックチームに入った。なのに、『オリンピックの強化練習はキツくて他の選手についていけないから、自分のレベルに合うママさんバレーで鍛えて出直します』って言っているようなものだぞ。それでお前はオリンピック出れんの? オリンピック本当に出たいの?」と聞かれ、泣きながら「オリンピックに出たいです」と答えて、頑張る決意をしたんです。オリンピック選手のような人たちと本気の仕事をして、フィードバックされて、「くそー!」と思いながら食らいついていくことが、なりたい人になる、したい仕事をする最短距離だと、今は思います。

小守が行き詰まったときに、仲間から贈られたメッセージの数々。「何があっても支えるから」という言葉が並ぶ。

「創業ホリック」を越えて、芽生えた感謝と使命感。

ー今のCRAZYは、何もなかった創業期から、社員が増え、大きなオフィスを構え、託児をスタートさせるなど大きく変化しました。当時と何が大きく変わったと思いますか?

小守:創業ホリックを卒業できたことで、会社が良くなってきたと思いますね。私も他のメンバーも「創業期は良かったよね」と創業ホリックを感じる時期があったんです。けれど今は、「自分が体験した苦労を次の人が体験しないようにしたい」と、仕組みを整えるようになりました。例えば、昔は教育プログラムが全くありませんでした。先輩の横にいて、勝手に学ぶしかなかった。それでは学びきれない部分もあったので、教育プログラムを作り、成長ステップを見える化しました。とはいえ、今も創業期だと思います。まだまだ足りないものがたくさんあって、もっと高いところを目指していますから。

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杉山:僕は感謝と還元への想いが強くなりました。WHEREに来て、さらに「今が当たり前じゃない」と思うんです。創業メンバーが作ってきたものがあるから、今自分がここで働けているんだなと。本当に感謝ですし、だからこそ還元したい。

新規事業への異動を希望した理由の1つは、僕がWHEREで挑戦させてもらうことで、これからの新卒に「どんどんチャンスが与えられるんだ」という1つの事例になればという思いがあったからです。今はWHEREにいますけど、どこにいてもCRAZYの一員です。僕はどんなに忙しくても、全社企画は手放したくないですし、会社の文化を守ることは使命だと思っています。

杉山は入社以来、全社企画の運営責任者を数多く担当。写真はそのうちの1つ、CRAZY3周年パーティー『CRAZOO』。周年パーティーと言えばホテルでの堅苦しい挨拶から始まる……そんな常識を打ち破り、ラジオやライブアートなど参加型プログラムで構成。豊洲PITに1200人が集った。

本記事の前編はこちら


「裁量権が高い」ということを売りにするベンチャーは多いが、それだけでは全社の中心に立つほど新卒が活躍することは難しい。ここからは二人を通して見えてきたCRAZY流「新卒社員が即戦力になるまでに大切なこと」をお伝えしていく。

1.仲間として、尊重できるようにする仕組み
小守宛の応援メッセージ画像からも伝わるように、CRAZYはビジネスライクな関係を越えて仲間と深く関わり合う文化がある。それは、入社時に今の自分を作ってくれた経験や人生で大切にしたいことを全社員の前で話す「ライフプレゼンテーション」(詳細はこちら)などの仕組みを通して構築している。社会人として伝えられるキャリアがない新卒にとって、人柄や今後の可能性を伝えることで、共に働く仲間として尊重してもらうことが可能になるのだ。

2.大胆な機会の提供
杉山がCRAZYの周年パーティーで責任者を務めたように、全社員向けの企画や研修であっても、積極的に新卒に任せる。通常であれば研修を受ける側である彼らが作り手となり、経営側の視座を学ぶのだ。これまで入社2年目の新卒にプロジェクトマネージャーとしてCRAZY WEDDINGの業務改善を担当させたり(詳細はこちら)、入社1年目の新卒にCRAZY CAFE BLANKの経営を任せたりしたこともある。

3.安心をつくる、素直な感情を受け止める文化
CRAZYの朝礼には「シェア」という、仕事からプライベートまでざっくばらんに話す時間がある。ここでは不安、悲しみ、悔しさなどの弱音を素直に吐き出すことも自然とできる。こうした場があることで、大きな失敗をしても深く落ち込む前に立ち直ることや、安堵感を得て前向きな気持ちで仕事に打ち込むことができるのだ。社会人歴が浅くセルフコントロール力がまだ育っていない新卒にとって、素直な感情に寛容である文化は、安心して挑戦できる環境の土壌となっている。

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編集:水田 真綾


高橋 陽子YOKO TAKAHASHI

「OVER THE BORDERの新婦です」の一言で、CRAZYを取り巻く人に認知してもらえるありがたい人生を送る。GALLERY WEDDINGプロデューサーと、FEEL THE CRAZY編集者と、少しのフォトライター業と…。わらじを何足履けるか冒険しながら、大好きな愛媛暮らしを満喫中。


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