Crazy Magazine

INTERVIEW

「やっぱり、人生は素晴らしい」あたらしい山川咲、はじまる。

「0になろう 私から作ったものをはきだして またスタートラインに立とう」。

ウエディング業界の革命児と呼ばれる山川咲は、自身が設立したCRAZY WEDDINGが支持されると同時に、時代の寵児になった。そして、「楽な人生を生きたくはない」と悩みもがく姿すらも、多くの人の憧れとなっている。

ドキュメンタリー番組「情熱大陸」のエンディングで見せた、新しいスタートラインに立つという決意は記憶に新しいが、表立った活動の発表もなく一年以上が過ぎた2017年秋。突然、自身初となる個展「うまれる。」を開催するという報せが飛び込んできた。

山川咲は、情熱大陸以後の空白の期間、一体何を考えていたのか。今再び表現しようとしていることは何か。飾らない言葉で率直に語られた、独占インタビュー。

プロフィール
山川咲(Saki Yamakawa)
株式会社CRAZY CRAZY WEDDING 創設者。
大学卒業後、ベンチャーのコンサルティング会社へ入社。5年間の社会人生活にピリオドを打ち、退職後、単身オーストラリアへ。帰国後、「意志をもって生きる人を増やしたい」との想いを実現すべく、業界で不可能と言われ続けたオリジナルウェディングのブランド「CRAZY WEDDING」 を立ち上げ、たった一年で人気ブランドに成長させる。2016年に事業を退き、現在に至る。毎日放送「情熱大陸」に出演。著書に『幸せをつくるシゴト』(講談社)がある。

「情熱大陸」後に訪れた、絶望と希望。

-「情熱大陸」の放送以降、山川さんの新しい活動を心待ちにしていた人も多い中、実に一年近く、‘沈黙’とも受け取れる期間がありました。率直に、どうされていたのですか?

うーん、苦しい一年でしたね。情熱大陸であれだけ大々的に、「山川咲、次のステージへ」と見送ってもらった華やかな印象の影で、もがいた一年でもありました。起業からずっと更新されてきた‘昨年よりもはるかに素晴らしい一年’というものを、初めて更新できなかったような気がします。結果、子供を産んで人生でいちばんの一年にもなったんですけどね(笑)。

情熱大陸という、起業した時のてっぺんの夢を叶えた私に投げかけられたのは、「次は何を仕掛けるの?」というたくさんの期待の声でした。でも、私は次のステージを結局見つけることができなかった。次にやる事業はこうでなくちゃ、すごいことをしなくちゃと頭で考えすぎて、そのプレッシャーから自分で物事を決められず、周囲に「どうしたらいいか」を問うような日々。世間の期待とうまくいっていない自分の現在とのバランスが取れなくて、心身ともに疲弊してしまったのです。

こちらも合わせてどうぞ:
順調にみえた日々に潜んだ「葛藤」。 『情熱大陸』出演後の無期限休業から復帰した、山川咲の今とは -SAKI LABレポート-

昨年の秋にはついに会社に行けなくなり、もう本気で社会復帰できないかもしれないという所までいき、元気な友人たちのFacebookを見るのも辛かった時期がありました。悩む余地もなく、仕事や何もかもから離れて、無期限でお休みをすることを決めました。実家に帰り、旅に出て、療養をし、少し元気を取り戻した頃、ちょうど妊娠が発覚しました。

今思えば、妊娠をしたことで、それでも頑張らなくちゃという気持ちがふっと消えて、潔く体を優先することができた、つまり妊娠が私を守ってくれたというか、休ませてくれたというか…そんな状況でしたね。そして、ちょうど2ヶ月前の2017年7月に、第一子となる娘(英/はな)が産まれてきてくれて、母になりました。

こんなにも人生を奪われ、こんなにも生きる意味を与えてくれる存在。

-子どもが産まれて、変化したことはありますか?

とんちみたいですけど、知らなかったことがこんなにあるのだということを知りました。結婚式をつくっていたときに私を支えていた強い確信は、「人一人の人生は泣けるほど素晴らしい」ということでした。どんな人にも、泣けるほどのドラマがあって、いくら本人が否定したとしても、つまらない人生なんて存在しないということです。だから、私たちは結婚式を通して、その素晴らしい人生を表現してきました。

でも、子どもを産んで、誤解を恐れずに言えば、私が言ってきた「素晴らしい人生」とは、知ったかぶりだったのではないかと思ったのです。つまりそれだけ、もっと大きな「人生の素晴らしさ」を痛感したのです。

子どもを産むこと・育てることが、こんなにも人生を奪われ、こんなにも生きる意味を与えてくれるものだと私は知らなかった。一人では完璧に何もできない無防備な命が、手放しで私の所に来てくれて。今までの全てを変えてでも、懸命にそれを守ろうとする自分がいて…それは、想像を絶する苦労と感動がありました。娘が産まれてきてくれた瞬間のこと、そこに生まれた愛おしいという概念を変える気持ちは忘れられません。あー、思い出すだけで泣いちゃう(笑)。

新しい命は希望のかたまりだなと思って。私の記憶には残っていないけれど、私にも娘と同じように赤ちゃんの時代があって、こんな風に親を喜ばせてたのかなと思うんです。そうしたら、何かをしないと認めてもらえないとか愛してもらえないなんてことはなくて、そのままで十分なんだと思えるようになりました。「次に何を仕掛けるのか?」っていうプレッシャーという名の期待は、誰よりも私が私にかけていたのかもしれないなぁと。今はようやく笑って話せます(笑)。

こちらも合わせてどうぞ:
70名のベンチャー企業が育児しながら働ける環境を持つ、たった1つの大きな理由

GALLERY WEDDINGと出会って、再び心が動き出した。

-そんな大変な育児の最中、なぜ今個展をされるのでしょう?

休業中に妊娠したので、最初はそのままみんなに会うことも、外に出ることもどこか億劫になっている自分がいました。そんな中でも、CRAZYに触れたいという思いはあって。そのとき、CRAZYが新しく始めた事業である、GALLERY WEDDINGの個展の開催があったので、こっそりと見に行ったんです。誰にも会わない時間を狙って。それに、すごく感動したんです。

そこに本人たちはいないんですが、おふたりがどんな人で、どんな決断でともに歩むことを決めて、そしてどんな未来を描いているのか。空間だけなのに、確かにそこにふたりの人生があるように感じられて、涙が溢れました。

CRAZY WEDDINGがやっているのは、ただ素敵な結婚式をプロデュースするのではなく、おふたりの人生を編集して表現することだと思っています。その最小限のエッセンスがGALLERY WEDDINGには詰まっていたのです。紙と空間だけで、ここまで人を動かすことに驚きました。そのときの感覚が忘れられなくて。個展は、結婚式に限らず、人生を表現する形式として面白いと思って、出産前から計画していたのが今回の個展でした。

GALLERY WEDDING立ち上げの背景はこちら:
女性のキャリア特集〜「結婚」のタイミングで「新規事業」をおこす決意と働き方〜

-「表現したい」という欲求が出てきたということでしょうか?

そうなんです。久しぶりに自分から溢れ出す感覚です。親になったからでしょうか。時間的には余裕は0ですが、心には余裕が生まれました。だから前よりも、やりたいことをやるべきことに変えずに、やりたいままにしておける感覚があるのです。頼る所は頼って、自分の欲求や情熱を純粋なままにしておけるような。

ぶっちゃけ、さすがに育児が忙しすぎてやめようかと思ったのですが、プロデューサーのえみちゃんが励ましてくれて、具体的にサポートしてくれたので、本当にギリギリで実現しました(笑)。

私も、自分ひとりではつくることはできないと思っていて、改めて「第三者が切り取る自分の人生」ということがとても大事なのだと痛感しました。5年前に立ち上げた事業の新しい可能性を、お客様として体感しているような不思議な気持ちです。

より人間らしく生きるためのクリエイティブを、求め続ける。

-これからのことを、聞かせてください。

まだわかりません。一年前は、わからないままでいることが不安だったから、「こうします」と先走ってもがいていたのですが、今は漠然としている状態をそのまま楽しんでいます。育休中ですし(笑)。
でも大きなところでいうと、私はやっぱりCRAZY WEDDINGを立ち上げた根幹をずっと追求するのだと思う。それが、人生の本質を抽出し、編集し、表現すること。それによって、人生を確かにすること。人生の素晴らしさを感じること。

今の時代、みんな自分の人生を探している。人生を確かなものにしたいと思っている。だからこそ私はテクノロジーではなく、こうやって生の感性で、人間に生きるパワーを与えるヒューマニティビジネスの真骨頂を目指したいですね。人間がより人間らしく生きるためのクリエイティブを創造し続けたいです。

出産はもちろん、教育やお葬式など自分の人生を表現する場を増やしたいと思っている私にとって、今回のライフギャラリーを通して自分自身の人生を表現することは、とても前向きで楽しみな挑戦なんです。母、頑張ります(笑)。

-最後に、このギャラリーの見所を教えてください。

今回は「読む個展」というインスピレーションでこの個展をつくってきました。
子どもと接する時間は、親や周囲が私にしてくれたことを想像する時間でもあります。どれだけ無数の時間をかけて、私は今ここにいるのか、記憶にもないそれらを想像するだけで、世界が・人生が違って見えるのです。そして、それは結婚式で新郎新婦の家族のドラマを通して、ゲストも親への感謝がこみ上げたりするように、親になった当人にしか見えないものではないと思っています。私の人生で起きた妊娠・出産を追体験することで、来てくれた人が自分の人生を・ルーツを想像する機会になったならば、とても幸せなことです。

これまでの私を知ってくれている人も、はじめましての人も。新しい山川咲が、「うまれる。」で一体何を表現するのか。私の新しい世界に、直接触れて欲しいなと願っています。

(END)

伊勢真穂
Maho Ise

リンクアンドモチベーションにおける約8年間の組織人事コンサルティング経験を経て、フリーランスとして活動中。組織変革の知識と現場経験を豊富に持つため、HR領域における取材依頼が多い。「Forbes JAPAN」や「HR2048」といったビジネス系メディアでの執筆を行う。

Writer's Articles