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INTERVIEW

「ワーケーション・二拠点生活」を実践! 新しいライフスタイルの可能性・向いている職業・苦労したこと。

(写真左、ライター:水田真綾)(写真右、二拠点生活を実践中:吉田有希

電車を降りて、茨城の土地に足を踏み入れた瞬間に溢れてくる開放的な気持ち。街の穏やかな雰囲気が、東京のスピードに必死に食らいつこうと緊張していた体をほぐしてくれました。私、ライターの水田は、月の1週間を茨城県稲敷市で生活している株式会社CRAZY吉田有希さんの取材レポートを書くべく、茨城の地に降り立ちました。

「地方で暮らしたいけど、今の仕事があるから無理かな」「興味はあっても何から始めたらいいかわからない……」

ワーケーションや二拠点生活(別名デュアルライフ)に対して、このように感じたことはないでしょうか。「ワーケーション」とは、ワークとバケーションを合わせた造語であり、リゾート地などの環境で仕事をすること。「二拠点生活」とは、地方と都会を行き来して、豊かな暮らしと利便性の2つを享受するライフスタイルのこと。今回は、二拠点生活を実践したからこそ見えたメリット・デメリットや、実践の仕方等について有希さんに話を聞きました。

 

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有希さんが宿泊しているお試し住居「haneyasume」(ハネヤスメ)。お庭にはウッドデッキが常設されており、寝転ぶと雲ひとつない青い空を見渡すことができる。心安らぐ空間だ。

都道府県の魅力ランキング「47位」の
茨城県へ行く理由

真綾:有希さんはどうして二拠点生活を始めたのですか?

有希:もともと二拠点や多拠点生活をしたいと思っていたところ、茨城県が始めたプロジェクトにCRAZYが参画することになったからです。茨城県は都道府県の魅力度ランキングで、5年連続ワーストの47位なんですよ。人の流れを新しくつくるため、茨城県が試験的に移住をサポートする取組みを始めたみたいです。ChatWork株式会社さんや株式会社レオパレス21さんも参画しているそうですよ。

真綾:そうだったんですね。有希さん自身は、この取り組みにどんな想いを持っていますか?

有希:地域にある何げない暮らしや文化を伝えていきたいという気持ちが強いですね。私は昨年結婚式を挙げたのですが、式の中で「おにぎりを握る」といった日常的なことを、まるで特別であるかのように行ったんです。地域では何げない日常の丁寧な暮らしが、私たち都会で暮らす人にとっては非日常で、とても愛おしいと感じました。そうした暮らしや文化を、おすそ分けのように伝えていきたいと思ったんですよね。

有希さんの結婚式のコンセプトは「一心」。丁寧に一心に想いを込める、大切な生き方が反映されている。当日の様子はこちら・動画はこちら

真綾:都庁職員だった前職の経験は、関係がありますか?

有希:街づくりは好きで、人が暮らしやすいように環境を整備したい気持ちは今も根底にありますね。学生の時に3.11の震災が起きて、土木学科の研究室に入ることに決めたんです。津波や高潮への恐怖と、それでも人々を救う何かを見つけたい興味関心から。都庁では防災やオリンピックの有明の土地などを設計して、整備していました。こう見えてダムや橋が好きなんですよ?

真綾:全然想像できないです(笑)。二拠点生活では、生産性は上がりましたか。

生産性だけじゃない、こんな影響も。

有希:世の中には二拠点生活は良くないという人もいますが、私の職業的にはとても良かったです。私は基本お客様との電話やメールのやりとりをしているので。東京のオフィスだと話しかけられることも多いけれど、ここでは人の干渉がなくプランニング通りに進みますし、静かな環境だからこそ集中できましたね。

新卒で入社した都庁では、変えられない現実に苦しんだという有希さん。安定した生活や家族との休日旅行のために働くのではなく、もっと大志を抱き素直に生きたいと思い、CRAZYヘの転職を決意したと教えてくれた。

自然の中にいると心が穏やかで幸せであれるから、自然体でお客様と接することもできました。アイデアも湧きやすいですね。朝は散歩しながら「この結婚式は、こうしたらもっと面白い」というインスピレーションが降ってくるんです。満員電車で通勤していたときは、ひたすらNewsPicksの記事を読み漁って終わりでしたが。

「暮らし」と「仕事」の境界線が曖昧であることが「生業」

真綾:イメージをする時間になるんですね。

有希:そう、とても創造的な時間を過ごせていると思います。それは、暮らしと仕事に境界線がないからだと思っていて。暗くなったらご飯作ろう! 食べ終わったら仕事の続きしよう! みたいな。昔の人たちが仕事を「生業」として表現していたのが、よく分かります。私はスイッチの切り替えってものすごくエネルギーを使うと思うんです。電化製品は電源を入れる瞬間に一番電圧がかかるのと同じで、人も暮らしと仕事の時間を分けようとすることで、都度エネルギーを消費してしまうと感じますね。私にとってはその境界線が曖昧であることが生産性向上の秘訣なのだと思いました。

また、会えないからこそ、会議の事前準備を徹底するようになりましたね。限られた時間の中で、電話や画面越しで意図がきちんと伝わるように、事前に渡せる情報は渡しておく。その結果会議の質は上がっていると感じます。

意外と難しい! 工夫が必要なケースも。

真綾:逆にデメリットを感じることはありましたか?

有希:毎朝メンバー同士と目と目を合わせて握手や対話ができないことは、寂しいと感じました。あとは、大人数の会議は向いていないですね。自分の集中力を保ち続けることが難しいんです。だからこそ、工夫が必要になりますね。相手には聞こえていないと分かっていながらも「なるほどね~!」「うんうん」と話に相槌を打ったり、一人で拍手をしたり。集中力を保つために、参加してる感覚を作り出さないといけないと感じました。

お話をお伺いしたリビングは、床暖房とストーブが完備されていた。だが、古民家特有の隙間風が入り込み、慣れるまでは凍えそうになる寒さ。防寒対策は必要そうだ。

真綾:参加してる感覚を、自分で感じられることが大切なんですね。私も昨日遠隔で大人数の会議をしましたが、画面越しなので、他人ごとになれちゃう感覚がありました。

有希:そう! 相手に見えてないと思うから、ぶっちゃけ話を聞いているフリをして携帯をいじるとか、実際は違うことをしていても全然分からない。また、会議の前に資料の共有がなかったことがあって。プレゼンが始まったけど「見れない…」ことも。事前に資料をもらう必要がある会議では、周囲の協力・配慮も大切ですね。

移動、宿泊、休日。
ワクワクする時間の過ごし方。

真綾:移動や宿泊はどのようにしていますか?

有希:車を使っています。家からはドアtoドアで1時間半ですし、車があればいろいろな場所に行けるので、おすすめですね。宿泊は自治体が用意している移住者向けのおためし住居に住んでいます。宿泊期間や費用は自治体ごとに異なります。1泊2000円のところもあるみたいですが、ここは無料なんです。食料や調味料は持ち込みだけど、ガス電気水道は全部使えます。

真綾:二拠点生活を試したい人にはすごく便利ですね。しかも、お洒落。ここはリノベーションされたのでしょうか?

おためし住居「haneyasume」に置いてあった冊子には、リノベーションのことが書かれていた。多くの人の想いと、汗を流した時間によってこの特別な場所は作られている。

有希:ちょうど1年前は、この家空き家だったんです。地域おこし協力隊の人たちが中心となって、200人以上の人を集めて全11回のワークショップでリノベ―ションしたんですよね。

(ちょうどイベント準備をされていた、地域おこし協力隊の高島聖也さんにもお話を伺いました)

高島:東日本大震災から空き家だったんですよ。キッチンの床は、水回りが腐っていたので全部はがしました。家財道具も捨てて、みんなで新しくウッドデッキやフェンスを作ったんです。

真綾:ずっと住みたいと思うほど素敵ですね……! 二拠点生活の他に「ワーケーション」というスタイルも話題になっていますが、有希さんはどんな休日を過ごしていますか。

有希:稲敷の街を探索する。ウッドデッキでヨガをする。バードウォッチングができる和田公園は眺めがいいので、ご飯を持って行って食べたり、カフェ ぼっくりに行って珈琲を飲んだりしています。高島さんとイベントの企画運営もしていますね。

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ワーケーションで、旅してるのに出勤扱い。企業勤めもノマド化の時代です。

二拠点生活が向かない仕事も。
働き方をデザインする必要性。

高島:そうなんです。今回のイベントは、稲敷での二拠点生活を体験した有希さんに感想を伝えてもらいたくて企画しました。リノベーションに関わった人や、自営業を営んでる地域の方からすると、稲敷ってどんなところか分からないんですよね。実際に来てくださった有希さんに、稲敷のことや、おためし住居「haneyasume」のお話をお聞きしたいと思っています。

真綾:休日に一緒に活動ができるのは楽しいですね。高島さん、ありがとうございます。最後に、有希さんはどのような仕事が二拠点生活に向いていると思いますか?

有希:私のように電話とパソコンを使う仕事はもちろんですが、新規事業立案や戦略や振り返りなど「考える仕事」が向いていると思います。反対に営業や大人数の会議、人事的な話をする仕事は向かないですね。つまり、全ての人が二拠点生活をするのが良いわけじゃない。職種・働き方でデザインする必要があるのだと思いました。

真綾:有希さん、今回はありがとうございました。

稲敷のおためし住居「haneyasume」(ハネヤスメ)には、玄関や土間キッチンの他に6畳以上の広さを持つ部屋が5つある。そのうち1つはこたつが常備されており、集中して仕事に打ち込むことができる空間だった。

広い庭ではバーベキューが可能とのこと。友人を連れてプチ移住旅行も良いかもしれない。

取材を終えて
帰り際に寄ったカフェでは、気さくな店主がお店の奥にあるカラオケ部屋へと案内してくれました。昭和歌謡曲を一緒に歌い、帰りは駅まで車で送ってくれたのも良い思い出。距離を感じさせない店主の笑顔と、ツッコミと、あたたかさ。生産性の文脈では語りつくせない、二拠点生活・ワーケーションの魅力を体感した取材レポートでした。

働き方や生き方において「こうでなければいけない」という前提は、時代とともに変化していくもの。また個人の理想や仕事内容によって、デザインしていく未来がもう近づいていることを感じました。

 

プロフィール
吉田有希(Yuki Yoshida)
新卒で東京都庁へ入庁。人からの評価や組織に合わせた人生ではなく、自分の意志で生きる人を増やしたいと思い、CRAZYへ転職。お客様に寄り添い、細かなやり取りを行うCRAZY WEDDINGのコーディネーターチームに在籍。2017年には自身の結婚式をCRAZY WEDDINGで挙げる。理想に妥協しないことや、関わる人を想いながら目の前の物事に心を尽くす生き方を大切にしている。

 


※CRAZYは一緒に働く仲間を求めています

Editor:水田 真綾(@maya_mip
Photo:鈴木 秀康(@maya_mip

水田 真綾(@maya_mip)
Maya Mizuta

CRAZY MAGAZINE編集長。立ち上げた後、執筆・編集共に行っている。学生時代から人の世界観を形作る「メンタルモデル」に興味を持ち、「学習する組織」や「U理論」を学んで団体を創設、イベントを多数開催。趣味は、星を見て風を感じて森でお散歩をすること。愛読書はエーリッヒ・フロムの「愛するということ」。

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