2017.08.19

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【後編】30歳からの組織論〜「志を持つ強い組織」を成立させるロジックとは? 〜

経営者、自分のチームをもつリーダー、新しい時代を切り開く一手を探すすべての人たちへ。CRAZYのトップが、あらゆる業界のトップを迎えて語り尽くす「TOP LIVE」。第2回の登壇者は、認定NPO法人Teach For Japan 創設者である松田悠介氏。

先日、株式会社CRAZYへの参画を表明しました(こちら)。組織を率いてきたリーダー同士が、真正面から語り合う、未来の組織論、後編。

前編はこちら【後編】30歳からの組織論〜「志を持つ強い組織」を成立させるロジックとは? 〜

イベント実施日2017年7月3日(月)

みんな理想を探している。
でも、理想はどこにも存在しない。

吉田勇佑(以下、吉田):改めてお二人の思う理想の組織、リーダー像、はありますか。

森山和彦(以下、森山):僕は人間ってついつい正解を探す生き物だと思うんです。自分が成長するためにはコーチをつけましょう、とか360度評価をもらいましょうとか。でもそういうことじゃない。理想の正解なんて僕はないと思っています。

組織でいうと、働き方を自由にしようとして「在宅勤務をOK」にするには、それが効果的に働くような業界構造、社内規定やカルチャーなど全部のシステムを考える必要があります。ですが多くの場合、その複雑系は見ないで単体だけ見るんです。うちも在宅勤務やれたらいいのにって。

森山和彦(Kazuhiko Moriyama) 株式会社CRAZY 代表取締役社長 中央大学卒業後、人材教育コンサルティングのベンチャー企業に入社。経営コンサルタントとしてトップセールスを記録し、大手からベンチャーまで幅広い企業の経営コンサルタントとして活躍。6年半勤めたコンサルティング会社を退職後、1年間の起業準備期間(世界放浪時期間)を経て、2012年7月に株式会社CRAZYを創業。CRAZY WEDDINGという今までに無かったウェディングサービスを発表し急成長。経営の第一優先を健康とし、毎日3食手作りの自然食が出たり、全社員で世界一周旅行を行うなどユニークな経営をしている。創業5年で4事業を展開し、同社を社員74名にまで成長させている。

IBMやYahoo!は在宅禁止をしていますけど、他の制度でもっと社員が効果的に働けるようにしている可能性もあるじゃないですか。ですがその一面を知らないと「在宅禁止は良くない」と批判が生まれる。

つまるところ、みんなどこの会社のどの手法が理想なんだろう? と探しているけど、あるわけないんです。複雑なんですから。それを前提にして、ある程度の枠組みを設計し、自由度ややりがいを自分たちで掴めるように柔軟性を持たせることが、組織において大事なことだと思います。

吉田:松田さんはどう思いますか?

松田悠介(以下、松田):会社の掲げているオーガニゼーションビジョンと、個人のパーソナルビジョンが100%一致しているときが理想だと思います。

人生が1度であるとするなら、生きているうちに自分の理想の世界観を実現したいじゃないですか。それは個人では難しいですが、同じような世界観を抱いている人と一緒なら実現可能性が上がる。そのためにはまず、個人が自分のビジョンを持っていることが大切です。だから教育が重要だと思っています。次に、それをちゃんと発信すること。発信をしながら周囲とすり合わせをし、集合体として力を合わせて課題解決をしていくんです。

松田悠介(Yusuke Matsuda) 認定NPO法人Teach For Japan 創設者 / 京都大学特任准教授 日本大学を卒業後、体育教師として中学校に勤務。体育を英語で教える Sports English のカリキュラムを立案。その後、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院(教育リーダーシップ専攻)へ進学し、修士号を取得。卒業後、PwC Japan にて人材戦略に従事し、2010年7月に退職。Teach For Japan の創設者として現在に至る。日経ビジネス「今年の主役100人」(2014年)に選出。世界経済会議(ダボス会議) Global Shapers Community 選出。WaterDragon 財団 日本代表。経済産業省「キャリア教育の内容の充実と普及に関する調査委員会」委員。奈良県奈良市「奈良市総合計画審議会」委員、「奈良市教育振興戦略会議」委員。共愛学園前橋国際大学「グローバル人材育成推進事業」外部評価委員。京都大学特任准教。著書に「グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」(ダイヤモンド社)」

私自身、すごい大きなビジョンを描いています。生まれた環境によって子どもの人生が左右されない社会を作るということ。

地球資源が無限にあれば、自分が100兆円くらいお金を持っていれば、 サービスは提供し続けられるかもしれない。でも現実は違う。資源は枯渇していて資本も厳しい状況の中でサービスを提供していかないといけない。そうすると、理想の働き方や給料などいろいろな価値観をすべて満たしながらは難しい。何かしらの犠牲、もしくはプライオリティを下げてコミットしないといけない。

それでもなお、そこで働き続ける理由はなにかというと「ここにいれば自分の人生で成し遂げたいことや作りたい世界観を実現できるから」ということだと思うんです。これから社会課題はもっと複雑化し、資源は枯渇していくからこそ、オーガニゼーションビジョンとパーソナルビジョンはとても重要だと思います。それが実際にできている組織は、自分の中の理想の組織です。

無形資産への投資。健康・人間関係を仕組みで。

森山:CRAZYは僕の描いているビジョンと、メンバーのビジョンは方向性は似ていても同じではないんです。

ではどうやったらみんなが一致団結するかというと、僕は「楽しさを創造すること」だと思っていて。計画書やそこに至る道のりを作ることは誰でも出来るんです。でも楽しさを作ることは非常に難しいんですよ。

大手企業を豪華客船と例えると、10万人の人を世界中に連れて行くのは、ソーシャルインパクトがあって羨ましいと思うかもしれない。でもそれは一人一人が10万人を連れて行ってるんだというビジョナブルな共感度がないと、ただベッドメイキングをする作業だけで退屈になってしまう。一方、ベンチャー企業はいかだで例えると、壊れるかもしれないし、日焼けもすごいするんですよ。でも、自ら漕ぐ力がつくし、島にたどり着いたら大きな達成感があります。それにいかだから漁船に乗れるまでに成長したらすごく嬉しいです。

何かっていうと、いかだからのサクセスストーリーが冒険みたいで楽しいんですよ。CRAZYは、一緒にこの冒険してみませんか?って言ってメンバーを集めてここまできました。

吉田:松田さんはCRAZYに参画していますが、実際どうですか?

松田:他の会社にはない施策が多くあり面白いですね。社員同士の人間関係も非常に深いです。毎日オーガニックの健康的なランチが提供されていて、部署関係なく一緒に食事をして、信頼関係を築くんです。毎週の全社会議は握手から始まり、みんなでビジョンを語ります。また、仕事のみならずプライベートでも抱えていることを共有する「シェア」という時間もあり、傾聴力の高い人が多いので、しっかり話すことで自己理解が深まっていく時間になります。

多様な価値観や影響力をもった人と働くことや、組織内で起きたコンフリクトを乗り越えるには、信頼関係がないと出来ないですし、 ビジョンを達成する上でも健康は大事なので、これを仕組みとして設計しているのは他にはない施策ですね。普通であればそこまで社内投資をしないと思うんですけど、森山さんはなんでこのような施策を始めたんですか。

CRAZYの新しい施策が生まれる裏側

森山:まずは自分たちがここから理想の世界を始めようと思ったんです。世界には、深刻すぎて鬱になりそうなほど様々な社会課題があって。でも自分たちから、誰も見たこともない新しい世界を始めたとして、それが100万人まで広がれば、日本の人口の1パーセントだから、世界を変えるというか、世界になれるんじゃないかと思って。

そう考えた時に価値観は多様にあれど、みんなが大事にしているのはやっぱり精神と肉体的な健康なんですよ。じゃあそもそも、この2つを守れるものを作ろうと思ったんですよね。

松田:それは大事ですね。私は昨年、1日4時間くらいしか寝ないでハードに働く日々が続き、マネジメントの課題による精神的な負担もかかり、自律神経失調症にかかってしまったんです。食欲がなくなり、一分一秒でも無駄にしちゃいけないからと食事はコンビニや牛丼で済ませるようになって。

健康と人間関係に投資するというのは、みんなに長い期間活き活きと働いてもらう環境の骨幹なのかもしれないですね。

一番右)モデレーター 吉田勇佑(Yusuke Yoshida) 株式会社CRAZY HR Team Leader 参考記事「『家族のように共に生きる』のが、究極の新人研修」はこちら

森山:僕はCRAZYは医療費無料にしたいと思っていて。健康に投資をしているので、そもそも医療費は最小限で済む。平均寿命が100年になると言われれているご時世、みんなが心身ともに健康で100年ライフを生きれるようにしたいじゃないですか。

健康を実現することは国にとっても素晴らしいので、推進されていくと思うんですよ。そうした大きな概念で動いている力を持った人たちともレイヤーを合わせて、リーダーシップを取ることはすごく大事だと思っています。

松田:1つのサンプルを世の中に提示すると、みんなが真似をして進んでいくんですよね。googleがマインドフルネス経営と言い始めた瞬間に広まったように。マインドフルネスって賛否両論あるけど、Googleのような社会的インパクトが大きい会社が取り入れたからこそ、日本でもこれだけ多くの人たちが意識している。そういう存在になりたいですね。

森山:あと今一番やりたいのは睡眠報酬なんです。必要睡眠時間は人によって違うんですけど、6時間以上寝るとお金がもらえるようにしたい。

お金の意味合い・インセンティブをどこに使うかが重要だと思うんですよ。「退勤時間早くしましょう」と伝えるだけだと、みんな仕事が好きだから帰らないんですけど「寝たら健康になるので報酬あげるね」だと、健康が大事にされていると感じられるしみんなやるんですよ。

松田:睡眠6時間以下だとパフォーマンスが低下すると言われていますし、みんなちゃんと寝るようになって生産性と売上が上がるなら投資しがいはありますよね。

森山:あと今年は会社を休んで旅行に言ってほしいと薦めていて。彼(吉田)はインドに10日間行ったんですけど、めちゃくちゃスッキリして帰ってきたんですよ。会社で働いていると「これが大変だ、疲れた、難しい……」って目の前のことに集中するがあまり視野が狭まるじゃないですか。それが旅行に行くだけで解消しちゃうんですよね。

吉田:実際に森山さんが年に2回、3週間くらい海外に行っちゃうんです。経営者不在っていう笑。でもこういう会社にしたいと思った時に、真っ先にその最前線に立つ度量を感じますね。

森山:どんなリーダーでも同じで、自分がそれやれなかったら誰もできないでしょうって。言ってやらないなら、言わないほうがいいです。誰も信じれないチームになっちゃうから。

松田:私が良いなと思ったのは、事業ではなく、個人の学びのタイミングで旅行にいけることですね。繁忙期の時とか気を使うじゃないですか、勇気を持って伝えても「空気読めよ」「お前いなくなったらどうすんだよ」と言われてしまったり。でもCRAZYは、チームみんなが応援をする愛情というかコミットメントがあって。

森山:帰ってくるっていうのが分かるんですよ。だからもっと行ってきていいよ、もちろん成果も担保しようねって。

ただ僕たちは今10億規模なので、スケールでいうと村社会で、どんなにすごいことをしていても独特なんです。100億規模にいけば町で、パブリックな会社になるんですが。

僕たちがここから急成長していくことはそんな簡単じゃないので、新しく入る外部人材が重要で。早くパブリックな経営をしていきたいので、そのあたりは冷静に見ています。僕らを上げてくれる新しい人と一緒に働きたいと思っていますね。

(END)

CRAZY WEDDINGといえば、創業者の山川咲(こちら)を思い浮かべる人が多いでしょう。ですが、それだけではありません。この事業の背景には、21世紀の新しい組織に関心を持ち、実践を重ねて積み重ねてきた森山の組織論がありました。

また、今後のCRAZYは、Teach For Japan 創設者である松田悠介氏を迎え、内部のインフラ制度を再整備し、さらに理想の組織運営を追求していきます。いかだから、漁船、豪華客船へと変遷を遂げるストーリーを一緒に楽しみたい人、ぜひご連絡を頂ければと思います。

30歳からの組織論(完)

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水玉綾(@maya_mip)AYA MIZUTAMA

CRAZY MAGAZINE編集長。フリーの編集者・ライター。HR領域の取材記事を中心に、媒体は「未来を変えるプロジェクト」「新R25」「PR Table Community」「BizHint」「FastGrow」等。三度の飯より愛犬が好きWRITER’S ARTICLES


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