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順調にみえた日々に潜んだ「葛藤」。 『情熱大陸』出演後の無期限休業から復帰した、山川咲の今とは -SAKI LABレポート-

「悩むことなんて、ないんだろうな」そう思ってしまうほどに、笑顔がチャーミングな人でも、裏に隠された、シビアな姿や葛藤や苦しみはきっと存在する。人には必ず両面があるのだから。

SAKI LABとは山川咲の今を徹底解剖するラボラトリー。2016年は山川咲にとって人生が変わるほど大きな1年だった。創業期から夢みた情熱大陸への出演が叶った一方、自分が生み出したブランドCRAZY WEDDINGからの卒業を決断。そして、数ヶ月の休業期間。立ち止まった山川が、辿り着いた「今」とは。SAKI LABのレポートをお伝えする。

空間・隙間・間を提供する

「なぜ皆さんはお金をかけて、イベントに参加するのでしょうか。私は、きっと多くの人が、考えることも、悩んで落ち込むことすらもできないくらいに、忙しい中で生きているからだと思うんです。だから、何もない空間で、ぼーっと考えるような空間、隙間、間(ま)を私は提供できたらと思っています」。

山川のファシリテーションのもと、10代の若者から40代の経営者まで、年齢性別関係なく自分をさらけ出して、人生の棚卸しをするイベント。

「私ね、『笑顔が優しくて、ニコニコして、怒ることなんてなさそうだね 』って言われるんですけど、実はいつも怒号のように怒っています。この前、ムカつきすぎて後輩に平手打ちをしちゃったくらい(笑)。仕事に真剣なんですよね。こうしたい と思うと全力投球。今日も『え、そんなに言うの?』と思うかもしれないんですけど、それが私なので、ぜひ楽しんでいただければと思います」。

参加者に驚かれることのないよう、率直すぎる特徴をあらかじめ伝える山川。聞いていた社員は思わず微笑していた。山川の厳しく、男気ある一面を知っているからだ。

綺麗事じゃない。反骨心とクリティカルな視点を。

結婚式の現場では、山川から激しいインカム*がよく飛んでくると言う。「おい、走れ! 」という叫び声や「具体的に何分で終わるか早く言って! 」とキレ気味の声。強烈な呼びかけに周囲は圧倒されながらも、大急ぎで走り回る。お客様のために本気だからだと分かっているからだ。

CRAZY4周年パーティ「BEYOND」は日本橋にある廃墟のビル1棟を貸し切って開催した。利用事例のない廃墟ビルを会場に選んできた山川に、社内は騒然とした。しかし、「こんなところでは開催するはずがない」と思えてしまう場所だからこそ、むしろ盛り上がったという。


何がCRAZY WEDDINGをつくったのか。多くの人は、夢や向上心の大切さを説く。けれど、そんな綺麗事ではなかったと山川は否定した。

CRAZY WEDDINGをつくってきたものは、私の人生の葛藤であり、絶対に負けるかという反骨心なんです。別の言葉で言うと、クリティカルな視点、死んでも諦めないという執着。夢を叶えるってそういうことで、単純な話じゃないと思うんです。泥臭いことをたくさんして初めて、手に入ったものでした」

CRAZY WEDDINGを卒業する際に開催した『山川咲、最後の授業』というイベントでは、こんな言葉を残している。

“ 夢を持つということは、未来から見た途方もなく小さな自分を受け入れ、地道に努力をするという覚悟  ”

どこから見ても自分の道にキラキラとまっしぐらに走ってきた山川。2016年には情熱大陸にも出演し、夢を叶えて順調に進んでいるようだった。

でも実際は、違っていた。

気づけば、会社に出社できない状態に

情熱大陸放送後、新規事業にのめり込むもうまくいかない日々。有名になっていく自分の像と、実際の自分の乖離を感じ、募る焦り。ベッドの上で頭を抱え泣き続ける1日もあったという。

「ちやほやされる自分とは全然違う、イケてない状況をどうすることもできなくて、取り繕うような日々が続いていたんです。自分の意志で生きているという自負があった人生から、いつのまにか、すごい未来を作らなきゃ、すごい会社を作らなきゃと焦っていました」。

「もう少し私が頑張ったら、我慢をしたら、と無理を重ねて、自分ががらんどうになっていくようでした。そしてついに、今日外に出たら、会社に行ったら、自分を偽ったら、私はもう一生自分を取り戻せないんじゃないかと思う朝がきたんです」

無期限休業の真相を、言葉を選ぶようにゆっくり語っていく、復帰後3ヶ月の山川の姿がそこにはあった。

人生は失い続けるもの
でも何度も手繰り寄せるもの

「秋田の実家に帰ったり、海外を旅するなかで、もう一度自分と向き合う時間を取りました。そして大切なことに気づいたんです。

人生はこうやって何度も失い続けるものなんだ、そして何度も何度も何度も手繰り寄せるもんなんだと。失わずに温存できる人生なんてない。だから、それを恐れるのではなく、日々の中で失うこの人生に気づくたび、毎回立ち止まって考え直しながら、生きていこうと思うようになりました」。

兼ねてから一緒に働いている、CRAZY WEDDINGのプロデューサー・オア明奈は山川のことをこう語った。

「今日見て感じてもらっている通り、山川にはここぞというときに発揮するリーダーシップがあって、そこに惹かれているところもある。でも私が一緒に頑張りたいと思ったのは、失敗したりつまづいたりしても、絶対に自分の生き方を諦めないところなんです」。

夢を追い、キラキラしている一面ではない姿まで、率直に伝えられたSAKI LAB。会場では、涙を流す人も多くいた。「悩むことなんて、ないんだろうな」そう思ってしまうほどに、笑顔がチャーミングな人でも、裏に隠された、シビアな姿や葛藤や苦しみは存在する。

だからこそ人生は、深くて、面白くて、研究しがいがあるのだろう。次回のSAKILABでは、どんな彼女の「今」を聞けるのだろうか。非常に楽しみだ。

*1 インカム
スタッフへの一斉指令の際に使う構内電話。結婚式やイベント現場で毎回使用している。


 


※CRAZYは共に働く仲間を探しています

編集:高橋 陽子

水玉綾(@maya_mip)
Aya Mizutama

CRAZY MAGAZINE編集長。フリーランスのライター・編集者。働き方・組織論などのビジネスシーンから、個展やポエミーな文章まで幅広く担当。世の中が美しくなる編集を大切にしている。吉本ばななさんのTUGUMI、ミヒャエル・エンデさんのモモが好き。

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