2020年12月22日に開催した、パートナーとより良い関係性を築くためのきっかけや、アイディアを届けるイベントGOOD PARTNER CONFERENCE。3つのセッションを用意して、様々な角度からパートナーシップについて語り合いました。本記事はそのSession 1 の内容をお届けするものです。なるべくイベントでの温度感を感じていただくため、実際の会話をほとんどそのままの形で載せています。文量が多くなっておりますが、年末年始の時間を使ってゆっくりお読みいただければと思います。
Session 1 はこちらから
Session 2 はこちらから
–Session3 (21:00-22:00)
テーマ:個人×パートナー×組織 三方良しな生き方って?
登壇者:
MASHING UP編集長 遠藤 祐子様
株式会社Looper 、株式会社タレンティオ 代表取締役 佐野一機様
株式会社CRAZY 代表取締役社長 森山和彦
株式会社CRAZY 執行役員/IWAI事業責任者 吉田勇佑
吉田勇佑(以下、吉田):第3のセッションでは【個人×パートナー×組織 三方良しな生き方って?】というテーマでお話ししていきます。
ここまでのセッションでは3組6名のごふうふに参加いただき、3ふうふの本音トークという形でそれぞれの家族、パートナーシップのあり方を学んでみたり、パートナーとの理想の時間の作り方などを話してきた中での最後のセッションとなります。
僕自身も元々人事経験があったり、今新しく子供が生まれて家族が増えたタイミングでもあるので、是非ともこの時間で学んでいければと思っています。では、最初にそれぞれ簡単に自己紹介をお願いします。
遠藤 祐子(以下、遠藤)氏:オンラインメディアの会社におります。遠藤 祐子と申します。mediagene(メディアジーン)というオンラインメディアを複数運営する企業で編集部門の執行役、部門長をしています。編集者って随分個性的でへんてこりんで、よく動物園だなんて言われたりするんですけど(笑)、そんな組織を束ねております。
新卒や中途でも、編集者で採用される方には必ずお目にかかりますし、クリエイティブなチームをどうリードしていくか、という点でも私にとって組織論はとても重要なテーマです。加えて、私自身は編集部の部門長を努めながら、MASHING UP(マッシングアップ)という、ダイバーシティを推進したり、ソーシャルグッド、社会的な課題についてディスカッションするようなイベントを開いたり、マッシングアップのメディアも編集長として運営しています。
吉田:非常に楽しみな自己紹介をいただきました。組織も「動物園」と気になるキーワードが出てきましたね。では続いて佐野さんお願いします。
佐野一機(以下、佐野)氏:Looper(ルーパー)という会社と、株式会社タレンティオという会社をやっていますが、両方とも人事領域のソフトウェアを作っている会社です。お客様は経営層や人事の方が多いです。人と企業の関係性って、ここ数年で大きく変わってきているんですが、経営戦略にとっても人材戦略の重要性がどんどん上がってきています。
そういった社会背景の中で、企業がどうやって人材戦略をやっていくのか、どんなソフトウェアが必要なのか、という領域で普段は仕事をしているので、「パートナーシップ=協力関係」を企業と人が今後どうやって築いていくのか、が関心領域にあります。皆さんのお話も聞きながら、視聴者のみなさまにとっても少しでもヒントになるお話ができればと思っています。よろしくお願いします。
吉田:佐野さんはいろんな会社の経営歴があったり、家入さんと創業してたりとか…。
佐野氏:家入さんとはキメラという会社を一緒にやらせてもらいました。今年、家入さんと対談した記事をForbesで出したんですが、それもまさに「人と企業の関係性とは?」というテーマで話してましたね。
吉田:最後に森山さんお願いします。
森山和彦(以下、森山):改めまして、株式会社CRAZY代表の森山と申します。僕は元々出自が人材コンサルティングだったのもあって、組織というものは関心のど真ん中です。CRAZYは結婚式を提供しているので、ふうふ、パートナーシップというものに深く触れています。僕たちの事業は「結婚式をする」ということではなく、二人の「パートナーシップを深めていく」ことで、僕たちの結婚式を通して人生が変わっていくような、温度感のあるサービスをしています。
組織、ふうふ、パートナーシップが関心のど真ん中にある中で、CRAZYが企業として社員と、あるいはお客様とどのようなパートナーシップを組むかというのは、このコロナ禍を経てまた関心の一つになっており、CRAZYという名前の通り、「非常識」と言われるくらいの、新しい何かを世の中に提案できればと思っています。なので組織論は大好物です。
佐野氏:社名からは想像つかないですね(笑)
森山:一方で、愛について語ってるような会社でもありますしね。前2つのセッションではファシリテーターだったので、今回はスピーカーとして、一緒に深めていければいいなと思っています。よろしくお願いします。
吉田:皆さんそれぞれ、経営していたりメディアを運営する立ち位置であり、いろんな社会の情報にも触れながらご自身の会社や組織、メンバーとの例えば家族関係に向き合う機会があったりすると思います。私自身も改めてこのテーマは、最近子供が生まれて3人家族になったので、その中でどうパートナーと向き合いながら組織の未来にも貢献し、家族のことも大事にしていけるのか、視聴者を代表して参加させていただいています。
社会や個人同士の繋がりを、「想像」し「尊重」することがポイント
吉田:最初に今回のセッションのタイトルでもある、【個人×パートナー×組織 三方良しな生き方って?】に対して、それぞれどのような感想、観点お持ちでしょうか?
佐野氏:議論の呼び水ということで考えてみたんですが、企業とプライベートのパートナーというものは似ているなと思うんですよね。パートナーシップは相手があって成り立つものなので、企業側が何を求めているのか、パートナーは何が心地よいのかということなしに、自分だけが心地いいことだけ考えると関係性は破綻していきますよね。まずは、何が心地良くて、何が強みで、何が提供・貢献できるのかと、自分を知ることは大事だと思います。ただ、それだけで終わってしまい、相手を知るということを怠ると関係性は築きにくくなるのだと思います。
採用活動も結婚と変わらないなと思っていまして。先程ご紹介した記事で家入さんとも話していますが、「いい会社」というのが個人的にはしっくり来ないんですよ。「いい会社」というのはなくて、合う会社と合わない会社なんだと思うんです。例えばCRAZYの社風が、任せてもらえるとか放任主義だったとして、それが吉田さんにとってはめちゃくちゃ「いい会社」でも、それは「合ってる」だけなんですよ。例えば僕は指示をきっちりと与えてもらって成果を出すのが得意な人間だと仮定したら、CRAZYのような会社はちょっと嫌だと思っちゃうんですね。
つまり企業も人も、自分が何が得意で発揮ができて、どう関係性を築いていけそうかが大事。動物園の園長をされている遠藤先生はいかがですか?(笑)
遠藤氏:非常に賛同します。私も企業と自分という関係と、パートナーと自分という関係がよく似ているなと思っています。「尊重」と「想像力」が人間のマインドセットとして必要で、それを実現させる企業の「仕組み」が大事だと思っています。過去にパートナーのフォトグラファーの方とすごくいい関係を持っている、素敵なイラストレーターの人に取材したことがあるんですが。なんで、そんなに素敵な関係なんですかって聞いたら、お互いに尊重しているからかなって。そこから「尊重」がパートナーシップにおけるキーワードになったんです。
一方で組織はそうやって尊重させてあげる/尊重するような仕組みを持つことだったり、企業としてのゴールを大きく示してあげて、個人の強みや興味とマッチングさせていくことが大事だなと思ってます。これからはミッションドリブンというか、企業のイシューをはっきり出していくことが必要になる気がしています。
吉田:佐野さんの「相手ありき」という言葉、今の「尊重」というワードにも繋がりますが、森さんどうでしょうか?
森山:そうですね。想像力を働かせて、相手が何を求めているのかもそうだけど、企業と個人という「対の関係」だけじゃなくて、想像力って社会の動きも知ることだと思うんですよ。社会がどう動いているから、知らない中で企業がきっとこう判断しているかもしれない、奥さんがこう思っているかもしれない、という、社会との結びつき。
開かれた社会の中で、相手がいろんな影響を受けているんだと考えることが「想像」であり、その上で積極的にコミュニケーションをすり合わせるのが、「尊重」だと思うんです。相手に慮るのではなくてアグレッシブに知っていくことだと思います。社会の流れが早い中で、硬直化した個人や会社って、凝り固まって流れが遅いんですよ。社会との連携、繋がりをどう社員や経営者が想像できるかが、今とても大事な考えだと思うんです。
女性の自立も含め、多様性を包有する社会がづくりが急速に求められている
吉田:いろんな観点から学びの素材があるのですが、最後の森さんからのポイントをお二人にも聞いてみたいです。会社もパートナーシップも変わらない、という前提の一方で、社会の状況はここ数年、コロナ禍の影響も合って変わってきていますよね。三方良しな関係性を考える上で、世の中や社会の変化、企業に求められる変化について聞いてみたいのですが、どうでしょうか?
遠藤氏:私たちマッシングアップではインクルーシブな社会、包摂する(包み込むこと)社会を目指しています。LGBTQとか、障がい者の雇用問題とか、外国人とか、いろんなダイバーシティの課題がある中で、日本の場合は、ほとんどが女性の問題がメインのイシューとして取り上げられています。ちなみに、2020年までに指導的な立場の女性を30%にという目標があったのですが、ダメだったのでガッカリしているのが今年でした。
グローバルな基準で見ると、OECD加盟国の中では最下位争いなんです。経済先進国の中で、日本の女性登用の割合は、いつも韓国と日本が最下位近くにいるそうです。それで最近では女性をボードメンバーに入れなくてはとか、社外取締役に著名な女性の方が兼任されたりと、強引な動きがあったり、イベントの登壇者の何パーセントを女性にといった、あまり本質的ではない流れもあるんですが、もう待ったなしの状況です。
というのも、りそなの投資部門の方にもイベントで登壇いただいたんですが、海外だと女性の割合が低かったりダイバーシティのないボードメンバーの企業には投資しないという流れがはっきりとあったり、日本でもその流れが来ていて、ダイバーシティのない企業には投資サポートしないとか、ゴールドマンサックスは多様性のない企業にはIPOを扱わないことを決めて、ヨーロッパとアメリカでは実施されているそうです。少子化も進んでいるこの社会の中で、女性が自立できたり三方良しな環境を整えることが、結果みんなハッピーになるんじゃないかなと私は思っています。
森山:ありがとうございます。今の話からインスピレーションを受けて、当たり前のようで盲点なことがあって。日本がなぜこうやって最下位争いをしてしまうかというと、地理的な要因が大きいと思うんです。アメリカやヨーロッパって地続きだからいろんな移民が入ってきていろんな考え方をしていて、ダイバーシティって喫緊の、目の前の課題なんですよね。人種の違いもすごくあるので話し合うことが当然で、隣の国で話されたことが自分の国では分からないとか、すぐ起こるじゃないですか。
日本はそういうことがあまりない。それを「外圧」と呼ぶんですが、ヨーロッパでは国民そのものがそうなので、外圧は悪いことではないんです。今の世の中の、ソーシャル大事だよね、ダイバーシティ大事だよねていう外圧はあれど、それは最終的に日本に入ってくるもの、グローバルの流れでもあるので、それをいち早く進めていくことが大事だなって思います。
多くの人が、アメリカを倣って….とか、日本はどうしていつもそうなのとか言ったりするけど、日本がダメなわけではなくて、外圧をうまく使っていくこと、逆に外圧が今までなかった分、独自性や神秘性みたいなものも包含できるのが日本のいいところなので、その両軸をうまく使っていくことが重要ですよね。包摂的な社会って大事だけど、包摂しようとすると排他性も出てきますね、逆説的に。
遠藤氏:排他性を高めると(つまり、同質な人たちを多く集めると)、スピードは速いんですよ。戦後の製造業を中心に経済成長を急速に進めていた時は、それがきっと一番成長が早かったんです。男性が中心にガンガン働くというのが。でも今もうゼロ成長の時代なので、日本企業は違う生き残り方をしなきゃいけないと思うんですけど、佐野さんどうですか?
多様性の議論に「得をしているか?」という観点を
佐野氏:遠藤さんが仰ることも一理あるし、地理的要因もあるとは思います。ただ、「得をしているか/していないか」というのも大事になります。
富を生んでいた時代の日本全体の戦略は「いいものを安く早く作る」ことで成長していました。いいものを安く早く作る、ということは、同質性とすごく相性がいい。以前、僕も製造業の経営をやっていましたが、やっぱり経験曲線が効きやすいんですよね。熟練工の方が作った方が早いし質もいいので、長く働いてくれるのはいいこと。終身雇用は限界と言われていますが、経験曲線が効きやすい市場では、終身雇用のパートナーシップが今でも有効だと思います。
では、なぜ我々が今変わらなければいけないかというと、テクノロジーが発達して既存の市場がどんどんディスラプト(変革)していくからなんです。
イノベーションがどんどん起こって、ベンチャー企業や新興企業が市場をひっくり返している。それによって日本企業がどれだけ苦しめられているかを考えると、いいものを安く、ではもうダメなんですね。車産業も今そうなりつつありますね、EVとか。いろいろな変化の中で、既存の市場が全く違うものにされてしまうと、いくら作っても売れなくなり、経済基盤がもろくなってしまう。そういう危機です。安くていいものを同質性の組織能力で作ってきたところから、多様性の中で様々なアイデアを組み合わせて、新しいものを生み出そうとする方へ、世界全体が移行している時期なのかなと思います。
個人も会社も、お互いのスタンスを明確にするところから関係性ははじまる
吉田:ゼロ成長という単語も出ましたが、日本企業の経済成長のあり方特に60年・70年代から大きく変わってきている中で、社員とどう向き合っていくか。今までは同質性の中で一緒に作ればよかったところから、もっと多様な声を取り入れていく流れの中で、女性にとってはより良いキャリアが積めるというメリットがあると思うんですが、女性の特性や良さと会社がどういうパートナーシップで向き合っていくと良いか、遠藤さんの観点での知見はありますか?
遠藤氏:「性」ってグラデーションなので難しいんですが、例えば一般的にフィジカルが女性の方を、女性のマジョリティーとして考えると「出産」というイベントの問題がありますよね。やはりここで「尊重と想像力と企業の仕組み」が大事になるし、言い換えると個人のマインドセットと、社会構造や仕組みの対だと思います。
私は7年前にこの会社に来たんですが、管理職というか編集長というタイトルで子供がいるのが私だけだったんです。このmediageneいう会社に来たとき、例えば営業の人とする会議は19時台とか当然のように夜にスケジュールされていたんです。入ったばっかりだし、責任もある役割なので、そこで夫に相談したんです。この曜日はお迎えしてほしいとか、残業させてほしいと。そしたら夫が、「交代するのはかまわないけど、本質的な解決にならないから、それは会社に言わなきゃダメだよ」って言ったんです。「子供がいて、こういう働き方ですと言っているのに、夜中に会議を入れることはおかしいし、そんな会社は辞めた方がいい」と言ってくれました。確かにそうだなと思って早速言いました。
その頃は、めっちゃ空気読んでない感じになっちゃったんですけど、私の上司は受け入れてくれたんです。営業の人たちも16時くらいに会議を変えてくれたりして。私の気持ち的にも、申し訳ないという気持ちから、子供がいてもやれるし、会社に言わなきゃいけない、と仕組みとマインドが変わった瞬間だったんです。
吉田:7年前から三方良しを実践されてたんですね!社会と向き合っている遠藤さんだからこそ、お話も刺さるものがありました。CRAZYは女性社員が多いですが、森(森山)さんどうでした?今のエピソードは。
森山:最高ですね。うちは創業メンバーに遠藤という女性メンバーがいるのですが。彼女が最初に子供が生まれたんです。僕は当時まだ子供がいなかったから想像力を働かせて相談を受けていました。その中で気付いたのですが、子育てをしている間は「仕事」をしていないというのは本質的じゃないんじゃないかと思っていました。遠藤が子供をオフィスに連れてくるようになって、最初は赤ちゃんの声が雑音に聞こえたりするんだけど、そのうち、みんなの癒しになったりするのってクリエイティブだと思うんです。そうやって企業はは柔軟にやっていくのも大事だなと思いながら、全部をやれるわけではないので、具体的な制度も決めないといけないですね。
吉田:子供1人を育てるのって、今僕が背負っているミッションよりも2000倍くらい大変ですよね。遠藤さんは旦那さんと向き合ったからこそ生まれたパートナーシップ、仕事の変化がありましたが、佐野さんはいろんな企業と向き合う中で、このような変化を実体験で感じたことや面白い事例なんかはありますか?
佐野氏:大事なのは自社のスタンスをはっきりさせることですね。例えば、僕は自分の会社のメンバーのこと、家族だとかエモいこと言ったりできないのですね。自然とそう言える方はいいのですが、ぼくは思っていないのでどうしても不自然になってしまう。あらためて自分にとって一緒に働く方々との関係性を考えると、ビジネスパートナーという言葉がしっくり来ました。なので、ビジネスパートナー、つまりお互いのビジネスの成功のために、心配事があれば相談してもらいたいし協力したい、仕事に集中できる環境を提供したいと思ってます。キャリアの相談にも乗りたいから転職相談を受けたり人に引き合わせたりもします。
そのような観点で見たら、自分たちの会社はどういうスタンスでメンバーをどう思っているのか分かっていないと関係性の作りようがないので、まずはそこをはっきりさせていくことが大事だと思います。
篠田さんと出口さんの対談記事が出ているのでみなさんあとで読んでみてください。「多様性」という単語一つとっても、何を自社として「多様」と捉えているのか?ビジネスの世界なので、儲からないと持続性もない。どうビジネスにもつなげるのか?まで議論を尽くすことが大事です。本気でイノベーションを起こす多様性とままごとの多様性は何が違うんでしょう。それも含めて自社のスタンスをきちんと決めることが必要なんです。
大切なものは誰しもあるが、対話もなしに追求しすぎると分断が深まる可能性がある。
佐野氏:僕、ぜひ森山さんに一つ聞きたいことがあるんです。CRAZY WEDDINGにおいて「パートナー」はすごく大事なキーワードですよね。自分たちの商品・サービスでの関わり方と、自社の従業員との関わり方は、ある程度同一ですか?それともそこは分けてらっしゃいますか?
森山:同一性はあると思っています。我々はパーパスに愛やパートナーシップを掲げているので、興味がある人、パートナーシップをよくしたい人が集まっています。その手法はマーケティングとかテクノロジーとかいろいろありますが、中心概念に同質性というか、分かり合ったり尊重しあう会話が、お客様との間だけでなく社内でも当たり前に行われています。事業やサービスでの感動創造のために、それを大事にしている社員たちがいて、そのための仕組みがある、ということは経営者としてももちろん常に考えています。
じゃあエモいことばかりやっているのか?と勘違いされがちなんですけど、それだけじゃなくて、包摂するスタンスを持っている、ということも大事にしています。
佐野氏:インクルージョンも大事だなと思っています。
今がこれまでと何が大きく違うのかというと、対話の時間をもっと増やさないといけないですね。長期雇用だと、会社の命令が強い。会社が生活を保証するという交換条件があったので。会社の命令に従うことにメリットがあったり、onoffを切り替えることに、合わせることに意味があった。それが終身の関係性じゃなくなってきた中で、個人と企業が対等になってきたんです。
対等な中で共同作業をしていく上では「相手が何を求めているのかを聞く」ということが大事になるので、対話をうまく仕組み化していく。その手法の一つに1on1があったりします。友人関係・恋人関係でもそういった対話があると有意義ですよね。
吉田:対話というのは、CRAZY WEDDINGのプロセスの中でもすごく大事にしています。僕は、実はCRAZY WEDDINGで結婚式を挙げてCRAZYに入社しているんですが、私自身は教育に興味があって、新卒で大手の教育事業会社にいくかを迷った末に、IT企業に入り、いろいろあってCRAZYに入社しています。結婚式を通して人間としての教育や、向き合いみたいなCRAZYのスタンスを感じて入社をしたので、佐野さんが仰っていた、企業のゴールやスタンスが繋がっている、というのがまさに体感しています。
佐野氏:やっぱり対話がないと、分断が深まるしかないんです。大事にしたいものって誰でもあると思うんですが、それをストイックに突き詰めて思考停止しても、必ずしも幸せにならないこともあるんです。
遠藤氏:特にメディアの仕事をしていると、世の中の常識もどんどん移り変わるので、スタッフへの指示も、昨日と今日で違ってごめん!、みたいなことがいっぱいあって。そういうことを読者と対話しながら進めていると、温かい言葉をいただいたり、ヒリヒリする意見をいただいたりもする。でも、そのチューニングをすること、クリエイティブとも、日々のその変化をすり合わせないといけない。
以前までのような、編集長の一声で何万部、という世界ではないので細かなコミュニケーションが必要だし、若いスタッフがどういう気持ちでいるのか、直接対話をしないと分からない。昔は寝ないで働かないのが当たり前だったけど、それを常識と思わずに、「今」のこの人は何考えているんだろう、というのを話さないと、私の考えるゴールと、彼女たちのやりたいことを繋げられないんですよね。
対話と想像力です。マッシングアップだと、目の見えない方や、耳の聞こえない方や、外国人の方などと話すことがあるんですが、なんて自分の想像力が足りなかったんだろう、と想うことがあります。この間、乙武(乙武洋匡)さんと仕事をご一緒したんですが、身体的な特徴とかって本質的には関係ないんですが、どれだけ色々なことを想像しながら、感じながら、コミュニケーションをとるか、というのは非常に大事なことだなって感じました。
これから多様性の時代で企業が新しいビジネスの種を見つけていくとか、Neo(新しい)生産性を生み出していくために、原点となるのは人と人との関わりなのかなと思いました。
分断が加速しないような仕組みとは
森山:対話をしていかないと分断が深まっていく、というのは認識の問題だと思うんです。対話を通して認識をすり合わせるじゃないです。対話がなくなると、認識が違ってくるので、正義の話になってきますよね。対話と認識の重要性がある一方で、個人のマインドセットと仕組みという観点では、どのような仕組みがあれば、分断が行われないのかは経営者として気になっています。どんな仕組みがあれば認識をすり合わせられるのか?最小限の労力で最大の効果を生み出すアイディアはどんなものがあると思いますか?
佐野氏:オンラインになっていくと、非言語コミュニケーションが取りにくいので、文書化などを通じて解釈に差が出ないようにしていくのが必要になってくると思います。あとは仕事をしながら文脈を意識してフィードバックしていくのが効果的だと思っています。
会議中の無駄話とかがなくなっていくので、フィードバックの中で、「こないだ話した戦略の中でこれがマッチしている、解釈が間違っている気がする」みたいなラーニング(学び)を仕事をしながら促進させていくのもいいなと思います。
遠藤氏:ドキュメント化は取り組んでいます。メディアの仕事は楽しそうに見えるけれど、ディズニーランドで遊ぶのか、それとも働くのか、くらい違うんです(笑)。誰がこの仕事に入ってきても、分かるように文章化しようと言っています。
もう一つは、コミュニケーションのゴール設計をちゃんとすること。1on1のテーマは何でもいい。ディスカッションやブレストはこの目的のため。これは振り返るための会議、とか。一つの会議であれこれやるよりも、ゴールを絞って会議の目的を整理しようというのは意図しています。
逆に編集部ではアイディアを出し合うとか雰囲気を共有するのが大事なので、あえて雑談をしてみる時間をとることもあります。雑談のやつ、ゴールをはっきりさせるやつ、個人と向き合うやつ、とゴールを設定しています。
森山:コロナ禍になって遠隔も増える中で、コミュニケーション一つ一つの意味合いや重要さが変わってきましたよね。今までニュアンスで通じていたものが通じなくなって、共通認識を持つことが必要になってきた。HOWもそうだけど、仕組みを成立させることが重要なんだなと思いました。
吉田:リアルコミュニケーションが多い会社だったので、遠隔が増えてからの難しさはかなり感じていたんですが、お二人から具体的な話もたくさん聞けましたし、かなり熱い議論が出ていましたね。このまま続けたいところですが、そろそろ時間が迫ってきました…。
「言葉にできない繋がりを交換するだけでもいい場にできる、幸せになれる」
吉田:今回3回目となるこのカンファレンスは、1回目はリアルの場で開催し、参加者の皆さんの反応や感想を見ながらファシリテーションしていました。次に繋がるセレンディピティをどう作るかは、今後改善していけそうですね。
登壇者のみなさん、今日の感想を一言ずつ教えてください。
遠藤氏:学びが多かったですし、祝福感というかセレブレートしている会なんだなと伝わってきました。偉そうな話もしましたが、私も手探りで、失敗ばっかり、挫折してうまくいっていないことの方が多いんです。でもうまくいっていない状態も認めながら、次を考えるというのが大事だなと、登壇してみて改めて思いました。失敗している方の自分も知ってくれてて、うまくいってる方をみてくれる組織とかパートナーだったりとかがいいなって思います。
佐野氏:僕はマジョリティーではないので、生きづらさを感じることはたまにありますが、周りに生かされてきたなという実感があります。ちょっと違うなと思う人でも、対話の姿勢を崩してしまったら自分をこれまで生かしてくれた周りを否定してしまうようになります。それでも許せないことがあると眉間にシワがよるんですが、それは対話を拒否している証拠なので、そんな自分と日々戦っています。
森山:今日はメンバーと雑談してたんですけど、じんわり幸せだなって思いました。今日は三方良しとか社会の変容とかの難しい話もしましたが、最後は、言葉にできない繋がりみたいなものを交換するだけでもいい場にできる、幸せになれるなというのを感じました。今日のセッションも遠隔でこんなに楽しいのは、仕組みの部分もあるんですが、一人一人の意識で変えていけることも結構あるなと思いました。今日は、本当にありがとうございました。
(後記)
Session 3 はいかがでしたでしょうか。前回、前々回とふうふ関係をメインにしたテーマで話を進めてきましたが、今回はその先のチャレンジとして、働いている会社や社会との関係性についてまで踏み込み議論しました。範囲の広いテーマだったこともあり、議論がまとまらないかもしれないと懸念がありましたが、全体の軸としては、分断を解消する「尊重と想像力」を持つための「個人のマインドと会社/社会の仕組み」という議論に収束しました。登壇してくださった佐野さん、遠藤さんの豊富な経験値と、広い知見によって、咀嚼しがいのある骨太なセッションになりました。会話の中で出てくる、対談記事のリンクなども参考にしていただきながら、自分なりに楽しんでいただけていましたら嬉しいです。ここまで、お読みいただき、ありがとうございました。
セッション終了後は5分ほど自由に会話を楽しまれています。アフタートークを覗きみしたい方は、ぜひアーカイブ動画でお楽しみください。
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