INTERVIEW

キングダムに学ぶ「愛や幸せや勇気を語る組織カルチャー」【TOP LIVE】

CRAZYのトップと他業種のトップが組織哲学を語るTOP LIVE。シリーズ第7回は、「キングダム*1に学ぶ経営論〜時代を作る究極のリーダシップとは〜」と題し、株式会社アカツキ代表取締役CEOの塩田元規氏を迎えて開催した。弱冠34歳で東証一部上場を果たした若き経営者は、キングダムをどのような観点で読んでいるのかー。キングダムを愛好する二人の経営者が語った、人の本質に向き合う組織カルチャーとは。
※一部ネタバレの内容となっておりますのでご了承ください。(イベント実施日2018年6月21日)

人間観が現れた、天下を語った夜。

吉田勇佑(以下、吉田):本日モデレーターを務めます、CRAZYの人事責任者の吉田です。なぜこのイベントを開催するかというと、一番はキングダムが好きだからです(笑)。「キングダム文脈で組織論を学んだら面白いんじゃないか」と思い、企画しました。では早速ですが、お二人の好きなシーンを聞いていきましょうか。

塩田元規氏(Genki Siota) 株式会社アカツキ 代表取締役CEO 1983年 島根県出雲市生まれ。 横浜国立大学電子情報工学科を経て、一橋大学大学院MBAコース卒業。 株式会社ディー・エヌ・エー新卒入社、アフィリエイト営業マネージャー、 広告事業本部ディレクターを経て、退職後に、アカツキを創業。2017年9月に、創業からわずか7年・弱冠34歳で東証一部上場を果たす。

塩田元規(以下、塩田)氏:僕は、政(セイ)*2と呂不韋(リョフイ)*3が天下について話るシーンが好きですね。政は「武力で中華を統一する」と話すんです。でも呂不韋は「それでは戦争はなくならない」と言う。それは呂不韋は人間とはそういうものだと捉えているからなんですよ。でも政は「人の本質は光だ」と言って信じることをやめない。

政も武力を使うから、結局やっていることはえぐいかもしれません。でも呂不韋とは「人間の捉え方」が違うんです。経営者やリーダーも、何をやるか、どうやるか以上に、人を何として見ているかという「人間観」が一番大事だと思うんですよね。

また、政が呂不韋の発言にちょっと押されている描写も好きです。やっぱり自分の信念を伝える時って、恐れがあると思うんですよね。僕は恐れの先に見えている光が正しい気がしていて。恐れに気づいて、それでも信じる光を伝えている姿が好きですね。

森山和彦(以下、森山)いいですね。政の顔の周辺が歪んで、呂不韋が目に手を当てるシーンは分かりますか? これまで紫夏(シカ)*4や王騎(オウキ)*5など大勢の人の想いを背負って歩んできたからこそ、政には加護があって時空を超えているんでんです。呂不韋はそれを見て、「大きゅうなられましたな」と言うんです。作者の意図を地味に感じて面白いなと思いました。

全員:(笑)。

吉田:やばいですね、僕は5回読んでいますけどそんな読み方はしていなかったです。顔の周辺が歪んでいたら原さん*6が書き間違えたのかと思ってしまいますよ(笑)。

組織運営に肝心なのは、飯がうまいこと。

森山:僕は残忍極まりない桓騎軍(カンキグン)*7那貴(ナキ)*8が、友情と情熱に溢れた 飛信隊(ヒシンタイ)*9に移籍したいと話すシーンが好きですね。桓騎は那貴に「理由だけ教えろ」と言うんです。すると「飛信隊(あっち)で食う飯って、うまいンすよね」と言うじゃないですか。

これはすごいことだ! と思ったんです。人間の欲求は、食欲・睡眠欲・性欲の3つがあって、桓騎軍は人を動かす上で、性欲を利用しているんですよね。でも飛信隊は食欲を利用し、なおかつ共有しているんですよ。僕は組織運営をするには、食事が大切だと思っています。なぜなら睡眠欲と性欲は、多くの人と共有できないから。

塩田氏:誰と食ベるか、どこで食べるかによって食事の美味しさは変わりますもんね。何をインセンティブにしてドライブしているかという話だと思います。尾平(ビヘイ)*10が宝石を盗んだシーンがあるじゃないですか。あれもすごく人間らしいですよね。

やっぱり人は目に見える欲求でドライブされることが多いんですよ。一方の飛信隊は、宝石は得られないけど、仲間といることで心の欲求が満たされるんですよね。

森山:分かります! お互いに人としての「信頼」が育まれているから、精神的なものが満たされるんですよね。 

森山和彦(Kazuhiko Moriyama) 株式会社CRAZY 代表取締役社長 中央大学卒業後、人材教育コンサルティングのベンチャー企業に入社。トップセールスを記録し、大手からベンチャーまで幅広い企業の経営コンサルタントとして活躍。6年半勤めたコンサルティング会社を退職後、1年間の起業準備期間(世界放浪期間)を経て、2012年7月に株式会社CRAZYを創業。CRAZY WEDDINGという今までに無かったウェディングサービスを発表し急成長。経営の第一優先を健康とし、毎日3食手作りの自然食を提供する他、全社員で世界一周旅行を行うなどユニークな経営をしている。

王よりも上に「法」を。

吉田:他に好きなシーンはありますか。

塩田氏:45巻で政が斉王から「国をどう治めるつもりだ?」と問われるじゃないですか。*11 政は法で治めると言うんですよね。王よりも法を上に置くんです。これは大事だなと思いました。

経営もそうですけど、強いリーダーシップを持つ人がいると、その人が正しいという判断に陥りやすいんです。結果リーダーに忖度したり依存したりする。思考停止し始めるんです。ですが法や哲学をリーダーの上に置くと、自分たちはどう生きるか、どう仕事をするのか一人一人が考え始めて、依存しなくなるんです。

人間ってそもそも依存したいんですよ。宗教や神様に、助けを請いたい。僕は人間にとっての幸福は大きく2つだと思っています。自分らしくワクワク輝くことと、それを独りじゃなくてつながりの中でやること。つまり個別化と共存性です。

森山:皆さん漫画の中では「法治国家を築く」という政の言葉に驚いたと思うんです。ですが今は日本もアメリカも法治国家なんですよ。だからこそ僕は、法律が時代に合わせてどう変われるのかに注目してほしいと思うんです。

政治家を志している人は、法律を変えたいと思い毎日法案を考えているわけです。でも国の法律を変えるには、いろいろな手間があり時間がかかるじゃないですか。ただ会社であれば会社の中にある種の法律を作りやすいんですよ。

僕は会社の制度で使うお金は税金だと思っています。お客様からいただいたお金をどう社員のために再分配していくか。会社を1つの国と見立てて経営していくと、人間の本当の幸せとは何かを考えざるをえないんですよ。経済のためだけでなく、健康や家族関係までも考える経営が、すごく大事だというところに行き着くんです。

写真左)吉田勇佑(Yusuke Yoshida)株式会社CRAZY人事責任者 明治大学卒業後、ITベンチャー企業に入社。広告営業や新規事業、経営層育成プログラムに携わる。CRAZY WEDDINGで結婚式を挙げたことを機に、株式会社CRAZYへ初代人事として転職。3年半で65名を採用し、社員数は総勢90名へ。現在はCRAZYの教育制度・人事評価制度の設計のみならず、他企業向けの組織コンサルティングも手がけている。また学生団体SWITCHとNPO法人SETの創設者。

愛や幸せを語ることは、昔は胡散臭かった。

塩田氏:共感しますね。経営者がぶつかる壁って、ゴールや損得を超えたところにあると思うんです。つまり何を正義とするか、善悪の判断なんですよ。例えばAIや自動運転が進んだ時に、前からトラックが来て左右どちらかに移動しないといけないシーンがあるとします。

右にはおじいさん、左には子どもがいるんです。どっちを犠牲にしますか? という話は、合理性ではなく善悪の話なんですよね。経営者は何を正義とするのか、考え続けることが仕事だと思っています。

森山:例えば、ランダムに決めるのはありかもしれませんね。くじみたいに確率論で、誰も決めていない状況にするんです。人を殺すことすら戦争時は良いとされてしまいますし。善悪ってつけられないものなんです。

その前提に立った時に、どんな国の法案も、会社の制度も、基本は善悪では語ってはいけないと思います。ただ「私たちは人としてどう考えるのか」という事を共有し合うことが大切です。そうすると本質的な方向へ向かっていくのではないでしょうか。

塩田氏:善悪はパキっと分けられないし、価値観は時代によって変わるんですよね。どうせ変わっていくなら、僕は人間が本質的に幸せに生きる方に向かいたい。ちょっと前まで、こういう話って、胡散臭かったじゃないですか。人の幸せとか愛とかって、頭おかしい、宗教っぽいと捉えられていた。でもだんだんと共感をもらえるようになっていますよね。

時代をつくるのは、木<森。

塩田氏:最近考えているのは「会社は必要か」という問いです。答えはないでしょうが、僕は昔のような会社ならいらないと思っています。ただ、プラットフォームになるような「場」は必要だと思うんです。それらをどの粒度で束ねるかが重要ですよね。

森山:分かります。私は互いに高め合うライバル同士が時代を作っていると思うんですよ。ちょっと前の時代だと、ITバブルを象徴した六本木ヒルズ族とかあったじゃないですか。時価総額を争っていた時代ですよね。

会社でも仲間たちがどうライバル関係であるかは大事です。自分が信(シン)*12だとしたら、蒙恬(モウテン)*13や王賁(オウホウ)*14のように同年代で生き生きと働いている人がいるのかどうか。

社内では、タイプが違う仲間が揃っていることも重要ですね。信念が強くて情熱的な信と、ちょっと人間性は心配ですけど槍が鋭い王賁みたいな(笑)。1つの漫画にも会社の中にも、違うタイプがいるからこそ、共感してくれる人の数が増えるんです。

塩田氏:バラエティに富んだコミュニティが大切ですよね。僕は木は1本だけで突き抜けることはないと思っています。周りに高い木があるから、コミュニティ全体で高め合っていくから、伸びていくんですよね。

今こうして僕が起業しているのは、起業を当たり前に感じるコミュニティの中にいたから。日本で戦っている起業家は、日本という森の中で戦っているんですよね。それを海外に変えたら全然変わりますし、自分がどのコミュニティにいるかによって、木の伸び方は変わります。

死ぬときは、愛のために。

吉田:続いては、「最期」のシーンについて聞きたいと思います。話したい「最期」のシーンはありますか。

森山:政の弟、成蟜(セイキョウ)*15の最期にしようかな。成蟜は兄の政を敵対視していて、周りの家来と画策して王宮を乗っ取ろうとしたじゃないですか。*16 それくらい卑怯者だった弟が、妻である瑠衣(ルイ)*17を救うために重傷を負い、死んだんです。愛のために死んだんですよ

自分はどんな最期を過ごしたいか、やっぱり考えちゃいますよね。私は大切な人たちが周りにいる光景以外に、必要なものはないと思いますね。だから創業した時からずっと仲間たちに「変化してくれ、成長してくれ」と言ってきました。

会社の成長とともに、求められるスキルも変わっていくので。これからも多くの人が入社をしてきますが、僕の最期、会社を卒業するときは、共に成長してくれた大切な仲間たちと笑い合いたいと思っています。

ちなみに僕は、社会人になりたての頃は人の気持ちが分からなかったんです。泣いている人を見ると「気持ち悪い」と思うくらいで(笑)。例えばテレビで「おかげさまです。感謝しています」と伝えている人がいるじゃないですか。「言わされてるな」と思っていたんですよ(笑)。そういう経験がなかったからです。

でも仕事でいろいろな経験をさせてもらった結果、コップに愛情が溢れるかのごとく初めて分かったんです。周りの人がいかに自分を支えてくれていたか。その瞬間に、人間として出る量ではない涙が出ましたね。僕が間違っていた、これまで何をしていたんだって。

塩田氏:分かります。なんなら僕は昨日3時間くらい号泣していますから(笑)。僕もメンバーにたくさん気づかせてもらったんです。僕は多分森さんよりは人の心が分かる方だと思うんですけど(笑)。経営をスタートさせてすぐ、生きるか死ぬかの戦争にいた時に、ダークサイドに落ちた時期があったんです。

でもメンバーが一言「奥さんと喧嘩したけど、アカツキに来たら元気になれたんだよね」と言ってくれて。ブアーって涙が出たんです。「走って来たことに意味があったんだ」と思えたんですよ。たまんないですよ。最近はもう週1で泣いています(笑)。

全員:(笑)。

吉田:最後に、お二人から皆さんに伝えたいことはありますか。

森山:やっぱり思うのは、イベントに参加するといろいろなことを学ぶけど、最後に勇気を持って一歩踏み出せるかどうかが大切ということです。世の中には情報がめちゃくちゃあるじゃないですか。でも勇気は情報からはなかなかもらえないんですよ。僕はキングダムにいつも勇気をもらっていますけど(笑)。自分が信じる道、仲間が信じる道を、勇気を持って歩んでもらえたらと思います。ご来場本当にありがとうございました!

塩田氏:人間は体験したことしか分からないと思うんです。今日この場が良いと感じたら、それを組織に持っていくのもシンプルな行動だと思います。あと人生は全部プロセスなので、良いことも悪いことも楽しんで取り組んでほしいです。笑顔で聞いていただきありがとうございました!

 

キングダムシリーズはこちら:

100人が熱狂! 漫画『キングダム』の名シーンから読み解くリーダーシップ〜Yahoo!アカデミア学長✖︎CRAZY社長

キングダムに学ぶ「時代を作る究極のリーダーシップ」

 


 

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編集:高橋陽子 写真:浦口 宏俊

注:

*1 青年漫画『キングダム』:既刊累計2200万部突破、第17回手塚治虫文化省漫画大賞受賞した、古代中華戦国大河ロマン青年漫画。作者は原泰久氏。時は紀元前、春秋戦国時代*2。いまだ一度も統一されたことのない中国大陸は500年もの動乱期が続いていた。戦国七雄の一つ「秦国」の身寄りのない少年・信と漂は、今は奴隷のような身だけれど、いつか武功をあげて天下一の将軍になることを夢見て修行に励む。そんな二人が偶然、秦国の大臣に出会ったことから物語は始まる。

*2 政:主人公の1人、嬴政(エイセイ)のこと。国の第31代目の王。秦という大国王家に生まれたものの、幼少期は過酷な人質生活を送っていた。信と共に中華統一を目指している。

*3 呂不韋(リョフイ):秦の政治家。若い頃から、金儲けが上手く商才に長けた男であり、絶大な権勢をふるっていた。

*4 紫夏(シカ)趙国の闇商人の紫家の頭目を務める女性。戦争孤児だったが、餓死寸前のところを拾われ、育てられた。 この体験への恩返しという意識から、自分と似た境遇の政を秦国に帰還させる仕事を受け、その道中に趙兵による襲撃で命を落とした。

*5 王騎(オウキ):秦国・六大将軍。他国から「怪鳥」として畏れられる存在。

*6 原さん:青年漫画『キングダム』の作者。

*7 桓騎軍(カンキグン):野盗で構成されていて、略奪・虐殺も厭わず戦う部隊。隊長である桓騎のカリスマ性でまとまっている組織。

*8 那貴(ナキ):桓騎(かんき)の軍団の千人将

*9 飛信隊(ヒシンタイ):主人公信が隊長を務める部隊。

*10 尾平(ビヘイ):飛信隊のメンバー。同郷の仲間である信と初戦から共にする。

*11 政と斉王の対話:斉王の王建(オウケン)が、政(セイ)に「中華統一」についてを問うシーン。政は、中華統一によって、法のもとに平和と平等を手にする「法治国家」を築くと言い放った。王建は政に全中華の舵取りをまかせると決め、実質的な降伏宣言をし、秦は戦わずして、六国制覇のうちの1国を成しとげた。

*12 信(シン):主人公の1人。飛信隊の隊長。もともとは貧しい村の戦災孤児であり、下僕の身分ながらに「天下の大将軍」を夢見ていた。とある事件をきっかけに秦国の第31代目の王である政と共に、中華統一を目指すようになる。

*13 蒙恬(モウテン):主人公信と同年代の武官。楽華隊という隊を率いる。

*14 王賁(オウホウ):主人公信と同年代の武官。玉鳳隊という、完全武装の騎馬隊で構成された隊を率いる。主人公信と同じく”天下の大将軍”を志しており、出世のライバルとして信と張り合っている。

*15 成蟜(セイキョウ):政の異母弟。

*16 成蟜は兄の政を敵対視していて、周りの家来と画策してもども王宮を乗っ取ろうとしたじゃないですか。:成蟜のクーデター。キングダム最初の大きな戦い。

*17 瑠衣(ルイ):成蟜の妻(第一夫人)で、秦国の公女。

 

 

水玉綾(@maya_mip)
Aya Mizutama

CRAZY MAGAZINE編集長。フリーランスのライター・編集者。働き方・組織論などのビジネスシーンから、個展やポエミーな文章まで幅広く担当。世の中が美しくなる編集を大切にしている。吉本ばななさんのTUGUMI、ミヒャエル・エンデさんのモモが好き。

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