2017.11.19

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あの時と同じ景色を見たら、今の自分は何を思うのだろう

昔歩いた通学路、引っ越す前の街の空気。苦々しい感情や、甘酸っぱい記憶が蘇ってくる…。懐かしい光景を目にした時、思わず目頭が熱くなったり、思い出がフラッシュバックした経験がある人は、いるでしょう。今回は「会社に籍を置きながら長期休暇を取得できるGreat Journey制度」を使い、自分の原点である懐かしい場所にもう一度足を運んだ、私の旅の話をしたいと思います。

改めて、自己紹介をします。株式会社CRAZYの増田陽子です。入社してから約3年半が経ちました。インターン期間も入れるとちょうど丸4年。現在は社長室チームに所属し、様々なプロジェクトに関わりながら、CRAZYの仲間が、健康に、人間らしく、喜怒哀楽溢れる日々を過ごせるような環境作りに奔走中です。

大切な人を大切にして生きるとは、ただただ夢中にがんばることだった

「3年間は走りきる」そう決めて、私は新卒1期生として入社をしました。「大切なものを大切にして生きる」という生き方をしたいと思っていた私は、家族にもらった、自分の大事な命を輝かせるために、入社後は目の前の仕事をひたすらに「一生懸命がんばること」をしてきました。

1年目はCRAZY WEDDINGで行われる全ての結婚式に関する会場・クリエイターの皆様との連絡窓口や、コンテンツに関わる発注関係をまとめるバックオフィスをたった一人で担ってきました。数百のメールやタスクと共に、朝から深夜まで仕事のことしか考えていなかった日々。

その他、まるでミュージカルのように全社員が動物に変身をした創業3周年イベント「CRAZOO」や、光と闇をテーマに廃墟ビル1棟を貸し切って2日間で2000人以上を動員した4周年イベント「BEYOND」、そしてBtoBイベントプロデュースのプロジェクトマネージャーとして、CRAZYの歴史に残る数々の大プロジェクトに携わらせてもらいました。

成功するイメージが沸かずに、直前に違う企画に変えたほうがいいのではという話も出たCRAZOO。これまでに使用したことがないほど広い会場とステージに、山川(CRAZY WEDDING創業者)と杉山(同期/現株式会社WHERE )と震え上がり、寝ずに準備を進めた日々。
廃墟ビル1棟を貸し切って、荷物を全部出し、リノベーションをするところから始まった4周年イベント「BEYOND」。
新宿にある複合施設NEWoMan様の、1周年アニバーサリー企画。「NO NAME JACK」というコンセプトのもと、名前に縛られない、あたらしいを発見する祭展を開催。

「無我夢中」という言葉がぴったりだった3年間の日々は、たくさんの人の支えに感謝をしながら、自分でも、よくがんばった、と心から思える時間でした。

そして、3年間のゴールが近づいてきました。新たな自分の生き方を定める時間を取りたいと思い、2017年5月に、Great Journey制度を取得することに決めたのです。

あの時と同じ景色を見たら、今の自分は何を思うのだろう

私の原点の1つは、大学4年生の時に休学して大冒険に出かけた、世界一周旅行の記憶。あの時と同じ景色を見たら、今の自分は何を思うのだろう。新卒で入社をしてから一生懸命働いてきた時間の中で、私は成長したのか、していないのか。何が変わって、何が変わっていないのか。この問いに対する答えを確かめたくなった私は、大学時にいった世界一周の旅と同じルートをたどって旅をすることを決めました。

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最初の目的地であるシアトルは、まだ見ぬ世界にこわくて泣きながら、初めて一人で降り立った街でした。あの時と同じホステルに泊まり、あの時と同じ道を歩き、あの時と同じカフェでコーヒーを頼む。まず味わったのは、あの時と同じ恐怖やドキドキではなく、懐かしさと変化でした。街をみる観点が少し変わった自分と、周りの目をちょこっとだけ気にするようになった自分。そして変わりゆく街並みと、変わらない人々の陽気さ。

思い出したのは「旅は、いいな」という感覚。街から街へ移動をし、暮らす日々の中で、目に入るものを見せたい、食べさせたい、そう思う人がいるということを認識できるんです。このコーヒーは彼に飲ませてあげたいとか、ふらりと立ち寄ったリサイクルショップで見つけた洗面器が素敵で先輩に送りたいと思ったとか、同期のあの子はここにきたらきっと迷子になっちゃうんだろうなとか。

大切な人の顔がたくさん浮かび、「大事にしたい」と願う本心に気づいた、思いがけない時間でした。

大事なことは、なにひとつ変わっていなかった

シアトルから南下を続け、Portland、Touldate、Eugeneへ向かうバスの中。羊はふさふさで、綺麗な草をむしゃむしゃと食べていて。そんな景色が続く何もない光景に、豊かさと懐かしさを感じたのです。よく考えると、大好きな実家近くの景色にそっくりでした。

「なんだ、ちゃんと知っていたじゃないか。自分の好きなもの。心が喜ぶこと。」

大事にしたいことがわーっと湧き出てきました。

毎日気持ちのいい朝を迎えられること。景色に目を細めて、美しいと思えること。食卓を共に囲む人がいること。個人として自立していること。よいと思うものにお金を払えていること。おいしいビールを一緒に飲める仲間がいること。目を見て、自分の感覚をまっすぐに伝えられること。自分の人生に手をかけられていること。広がりゆく緑豊かな光景を守りたいと願い続けること。

私の28年間という人生の中で、大事なことは何一つ変わっていなかったと気づき、ふと安心感を感じたのです。同時に、夢中で走った3年間を心底認められた気がしました。

そして、湧き上がった感情は新しい土地を見てみたいという思いでした。

そうだ、アラスカにいこう

これまで見た景色を辿ることに十分満足した私は、いつか行ってみたいと思い続けた「アラスカ」に降り立つ決意をしました。憧れの写真家星野道夫さんが、命絶えるまで写真に残し続けた土地です。

出会った人に「道はどこですか? 」と問うと、返ってきたのは「この山全てさ」という答え。目の前に広がるのは壮大な大地で、道という道がなく、熊出没の警告を知らせる看板をはじめ、野生動物のムースやシープが群れをなして通り去っていきました。

憧れの土地を踏みしめている感動とともに、久々に湧き出てくる震えるほどの「恐怖」。それでも見たいという気持ちを抱えながら、ひとりで一歩ずつ歩いて行きました。恐怖が限界に到達した時、「一人でなければもっと先まで見れたのに」と、仲間の顔が浮かんだのです。彼らがいれば、恐怖も感じず、勇敢に、もっと先まで目指せたのだろうと。誰かと共に生きる意味を教えられたかのような時間でした。

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その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくこと

これまで、私はたくさんの美しい景色に出会ってきました。ここまで素晴らしいものを目にして、誰にどう伝え、どう還元したらいいのだろうとひたすら考えていました。そんな時、アラスカを縦断する電車の中で開いた星野道夫さんの『旅をする木』の中に一つの答えを見つけました。

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抜粋・・・
「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。たとえば、こんな星空や泣けてくるような夕陽を一人でみていたとするだろ。もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるかって?」

「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって・・・その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」

星野道夫『旅をする木』
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この言葉に出会った時に、決めました。私は、次の変化を選ぼう、と。
なぜならこの心が震えるほどの美しい景色を目にできたのだから。

人は忘れる生き物で、自分が決意したことも、日々の中でいつのまにか忘れてしまいます。それでも、何度も何度も大切にしたいことを思い出し、模索していくことが、私にとっての「いい人生」なのだと思いました。

通常、会社に籍を置きながら長期休暇を取得して旅に出ることは、簡単なことではありません。ですが、旅には自分の生き方を見つめ直し、人生に豊かさを感じる何かが潜んでいます。

働き方改革が叫ばれるこの社会で、自分の原点に帰りたいとき、自分を更新したいとき、何かを見失いそうになったとき、やりきったとき、旅に出るという選択肢を取れる人が増えたらいいなと、思います。

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