2018.12.08

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「組織カルチャー」は” 文脈 ”から。強制感・やらされ感を抱かせないCRAZY流の組織のつくりかた

「どうしたらもっと強い組織になるだろうか」。熱量や施策の意味がうまく伝わらないことに、頭を悩ます経営者や人事担当者は多い。このような状況を打破するには、小手先の施策ではなく「組織カルチャーをつくる」ことが重要だ。

しかし、100名の壁、200名の壁を乗り越えようとする急成長ベンチャーも、停滞感を払拭して新たなチャレンジをしたい大手企業も、多くの企業がぶつかるのがこの「組織カルチャーづくり」。

そんな中、イベントや独自の制度を通して、組織カルチャーを自社で探求し、他社の組織支援までしているのがCRAZYだ。今回は、CRAZYの組織コンサルティングを行う事業「CRAZY Celebration Agency(CCA)」のイベントで、代表・森山が語った、カルチャーを大切にした組織づくりについてお伝えする。

組織カルチャー=文脈が浸透していること

森山和彦(Kazuhiko Moriyama)株式会社CRAZY 代表取締役社長  前職の人材コンサルティング会社では、法人向けコンサルティング部門の事業責任者として、中小企業から大企業までの組織改革コンサルタントとしてトップセールスを記録する。6年半の勤務を経て2012年7月に株式会社CRAZYを創業。独自の経営哲学から組織運営のシステムを確立している。

大学卒業後、人材教育コンサルティングに携わってきた森山は、「カルチャー」とは、「当たり前の空気感のこと」だと語る。たとえば、店や電車のホームなど、混雑している場で列をつくって並ぶことは、日本のひとつのカルチャーだ。イベントに参加したら、席に座って聞くのもそう。それに反発する人が少ないのは、当たり前の空気感、つまりカルチャーになっているからだという。

似たものとして「ルール」があるが、人は「ルール」と聞くと、強制感を感じ嫌悪感が生まれることも少なくはない。カルチャーが浸透していないとルールだと受け止め、反発心を抱いてしまうのだ。では、なにをもって「カルチャー」といえるのだろうか。

森山は、「文脈(施策の背景、意味や意図)がしっかりあること」だという。社員は、文脈のある施策には強制力ではなく会社の存在意義を感じる。その施策が始まった背景・文脈がつながっているからこそ、受け入れられるのだ。

逆に文脈が薄いと反発が強いという側面もある。「なぜ従わねばならないのか」と感じるものがルールであり、カルチャーは「なぜ」が場に浸透したうえで存在しているものだといえる。

CRAZYのランチ風景。

「『毎日一緒にランチを食べよう、睡眠報酬制度を導入しよう』とCRAZYの施策だけを単純に取り入れるだけでは、社員は反発してしまうかもしれません。大切なのは、『文脈をどうデザインしていくか』なのです」

文脈がなければ、優れた施策も上からの指示であり、ルールのひとつに過ぎなくなる。内容によっては、パワハラと捉えられる可能性も生まれてしまう。

WHOの健康定義に沿ったCRAZYの経営

CRAZYでは、「人間のしあわせ=ウィルビーイング」そのものが存在意義のひとつだ。その前提を踏まえ、経営の優先順位のひとつめは「健康を第一に考える」こと。ふたつめは「人間関係を大切にする」こと。そのうえで「世界を変えるビジネスをする」「誠実な経済活動をする」という順番にしている。

はじめに「ウィルビーイング」がきて、あとからビジネスがくるのが特徴だろう。ビジネスやお金儲けのためではなく、人々がしあわせになるために会社があるという価値観こそがCRAZYの文脈だ。

「睡眠報酬制度」「自然食ランチの提供」などさまざまな社内制度があるが、どれもこの文脈がベースにあり、WHOの健康定義である身体・精神・社会の健康に当てはめるとわかりやすい。

身体的健康として「自然食ランチ」、身体的健康として「託児制度」、社会的健康として入社前に自分の人生についてプレゼンテーションする「LIFE PRESENTATION」がある。

また、託児制度はもとからあったものではなく、働きたいと希望するママ社員が中心となって整えたものだ。やってみたいという社員の声に応え、会社として優先的な予算の確保を行なった。

託児所が整備されたことで、CRAZYでは子どもが歩いている風景は当たり前になった。今ではある種子どもの泣き声をBGMに会議が行われている。こうした状況に反発意見が生まれないのも、託児制度がCRAZYの文脈につながっているからだ。なお、託児所がある階は定められているため、子どもの声が苦手な人はその階に近づかなければいい。

子どもと一緒に出社する社員。

「睡眠報酬制度」も文脈から生まれた

こうした「健康第一」の文脈から生まれた施策のひとつが、今注目を集めている「睡眠報酬制度」だ。昨今、社会で騒がれている健康経営のためでもなく、ビジネスのために作られた制度でもない。他の制度と同じく、あくまでも存在意義に沿う手段のひとつとして生まれている。

睡眠報酬制度は、森山が友人と交わした会話が発想の起点になった。友人の会社は、社員の労働時間規制を強めていた。それに対し「働きたい人の権利が守られていない」という友人の言葉に、森山は衝撃を受けた。社員の健康を守るための労働管理は必要だ。しかし、管理しすぎると「働きたい自由」を阻害している可能性が生まれるのではないか。

労働管理が始まってから100年以上経ち、現代は組織のありかた・働きかたの形が大きく変わっている。そのひとつとして、森山は携帯・スマートフォンを挙げる。

「今は携帯でも仕事をします。夜のセミナーやイベントで気になる会社と出会ったら、それが終業後であったとしても、その後自宅で携帯を見ながら調べたりすることはありませんか? 仕事とプライベートとの垣根の判断が難しくなっているのが現状です。

だから、プライベートの中に仕事が入っている前提で、社員の健康や生活を守るためにどうすべきかを考えなければいけません。そこで始めたのが、『睡眠報酬制度』なのです」

働く時間ではなく、睡眠時間を管理するという、世の中の流れとは逆転の発想だ。

「今は1週間の中で、6時間以上の睡眠を5日間確保した社員に報酬を渡すインセンティブ制度を設けていますが、効果によっては都度やり方を変えていくかもしれません。睡眠報酬制度は社会実験のひとつなので」

日本初の「睡眠報酬制度」は、国内外から問い合わせが多く寄せられた。

成果が上がらないと判断したときには取りやめ、新たな施策があれば取り入れる。こうした新陳代謝を行うことも、カルチャーにとって重要だ。

「マンネリはカルチャーにとって強敵です。新しいものを取り入れる精神が衰退しているということですから。カルチャーが強みになっている会社は、常に新たな文脈が生まれ、つなげ続けられているんです。マンネリ化は物事からおもしろみを奪ってしまう。僕自身も気をつけなければいけない点だと思っています」

文脈のある「組織カルチャー」をつくるには

組織カルチャーをつくるうえで重要になるのが、社内イベントという生の体験だ。実際に、CRAZYでもイベントがないと文脈の共有ができないと森山はいう。

「文脈を全体で共有する機会がないと、ただ情報として頭に認識されるだけなんです。それでは心は動かない。心が動く体験をしないと、文脈として定着しづらいのです。文脈の強化につなげるイベントでは、ライヴ感が大切です」

全社員で行った研修のとある様子。天井の提灯には社員全員の名前が書かれている。

心を動かすには、右脳を刺激すること。ただし、その場限りの感動に収まっては意味がない。そこで、左脳に働きかける論理性と、右脳で心を揺さぶる感動を融合させたイベントを企画するのだという。(CRAZYのプロデュースしたイベントはこちら

社内イベントに加えて、森山は日頃からメンバー同士のコミュニケーションを大切にしている。「なぜ、それをやるのか」の理解を深めることで、メンバー同士で文脈や感情を交換し合っている。

「無言でいられる、くだらない話ができるほどの関係性は、一朝一夕では築けません。職場環境で心理的に安心感を抱いてもらうために、全社員と週1回握手をしています。関係性が損なわれていると、握手はできなくなりますから。

ただ、イベントは組織カルチャーの醸成に向けて、社員の意志や想いを”沸騰”させる機会にすぎません。だから、イベントで文脈を浸透させ、それと合わせて施策や制度を打つんです」

新たな施策や制度も、すべてが文脈につながっている。文脈が浸透しているからこそ、社内ルールとしてやらされ感を感じるのではなく、スムーズに浸透し、実行され、組織カルチャーの醸成につながるのだろう。そして、その組織カルチャーが事業の成長に向けたエンジンとなり、事業の競争優位性が生まれるのだ。

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(編集:水玉綾  写真:小澤 彩聖、谷口千博)

Writer:卯岡若菜

「仕事・家族・どこにも属さない自分」の3つの自分の共存を目指すフリーライター。息子ふたりの母親でもある。生き方や働き方への興味関心が強く、人の想いに触れるのが好き。趣味は映画鑑賞、音楽鑑賞、児童文学執筆、弾丸旅行、読書。本や漫画はキノコのように増えるものだと思っている。


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