株式会社CRAZY(以下、CRAZY)では、「人々が愛し合うための機会と勇気を提供し、パートナーシップの分断を解消する」をパーパスに掲げ、運営しています。
今回スポットを当てるのは、経営企画室でチーフマーケターを務める池田瑞姫さんです。
wellnessを専攻し、大学院まで進学した後、新卒で就職したのは主力事業が婚礼のCRAZYでした。しかし、池田さんいわく、社会で実現したいことの軸は、学生時代から変わっていないのだそう。
なぜ池田さんはCRAZYへの入社を決意したのでしょうか。入社までの経緯や、入社後の変化を伺いました。
「人間らしく生きる」を追求したい
―まずは、CRAZYでの仕事内容を教えてください。
池田:経営企画室でチーフマーケターとして、マーケティング戦略やブランド戦略の策定から具体戦術までを担っています。各事業からコーポレート、採用と領域もわりと広めですね。
―池田さんは、新卒でCRAZYに入社したと聞きました。
池田:はい。大学時代、ふと疑問を持ったんです。先に就職していった先輩たちがどんどん目の輝きを失って、金曜日を待って、休日遊んで、また嫌々月曜日に仕事に行く姿を見て、そうはなりたくないと。あんなに大学時代輝いていた人たちが、社会に出た途端に人生楽しくなさそうになっていくのはなんでだろうって。
その疑問に対するヒントが得られそうだと思い取り組んでいた、wellnessやwell-beingの研究活動の中で、生き生きと過ごすには「よりよく生きる」ということが重要だと考えたんです。当たり前に聞こえるんですけど、それが案外難しいとも気づきました。そして、それをCRAZYなら実現できると思ったんです。
―「よりよく生きる」をどうしてCRAZYで実現できると思ったんですか?
池田:学びを深めた先に見えてきたのは、よりよく生きるためには「人間らしく生きること」が欠かせないという仮説でした。これが、現在も変わらず自分の人生の大きなテーマになっています。
博士課程に進学して研究というフィールドでそのテーマにアプローチするか、社会人として事業や組織といったフィールドでアプローチするか。ふたつの選択肢を検討していた時に出会ったのが、「人間らしく生きる」を追求しているCRAZYでした。
―CRAZYのどんなところが、「人間らしく生きる」を追求していると思ったんですか?
池田:事業運営や組織運営といったビジネスの前提に、「私たちは一人の人間としてどう生きるのか?」という個々人への問いがあるんです。
その問いに向き合いながらビジネスに取り組むからこそ、海外での一人旅を推奨する「GREAT JOURNEY」や入社時に全社員の前で自分のことを語る「ライフプレゼンテーション」、全社員で食事を囲む「CRAZYのお昼ごはん」など独自の社内制度が生まれたり、社外から「カルチャーが強い」と言われるような文化が育まれたりしているのだと思います。
例えば、野営キャンプを数泊行う「CRAZY CULTURE CAMP」という全社員合宿があります。いつもとは大きく異なる不自由な環境で、社会人としての自分や誰かのパートナーとしての自分、母としての自分、子としての自分などさまざまな鎧を脱いで、等身大の自分で仲間と対話を重ねる。そこで、弱さも強さも包含した、人間らしい自分に気づいたり、人間らしい仲間の姿を目にしたりするんです。ここには、仕事での役割や社会での肩書など“何か”の枠組みにおける自分・他者ではなく、人間として丸裸で全人格の自分・他者と出会っていく体験があります。
様々な角度から「人間らしく生きる」体験を重ねることで、人々はよりよく生きられる。その土壌が、CRAZYにはあると考えたんです。
よりよく生きることを追求しながら、ビジネスも追求できると証明したい
―そうやって社員のみなさんが人間らしく生きることと、ビジネスには何か繋がりがあるのでしょうか?
池田:もちろんあります。お客さまからの反響や口コミには、サービスやプロダクトそのものに対するものだけでなく、そこに介在している人、つまりはCRAZYのメンバーに対して反応をいただくことがとても多いんです。
これは社員が人間らしく生きているからだと思っています。人間らしく生きるって、良いことばっかりじゃない。悲しさや寂しさ、辛さ、悔しさなんかも全身で味わっていくことになります。強さだけではなくって、そういう弱さも受けとめていくからこそ、お客さまの声に本当の意味で共感して寄り添うことができる。“仕事として”ではなく、“人間として”お客さまとお話をするんです。お客さまはそこに他社との違いを感じてくださっている。CRAZYの圧倒的な競合優位性のひとつだと考えています。
―組織においても事業においてもそれを実現しているからこそ、CRAZYという選択だったんですね。
池田:はい。人間らしく生きる人を増やすためには、ビジネスを取り巻く構造を変える必要があると思ったんです。
学生時代から、“働く”に多くの時間を使う人生において、働く時間をビジネス人格で生きることにはかなりの不自然さがあると感じていました。現代において、会社や社会に最適化させたビジネス人格は「評価のされやすい人格」でもある。そういう生き方が悪いわけではないと思っています。だけど、そうじゃない生き方ももっと選択しやすい社会だといいな、と。
企業は、人々が人間らしく生きることを追求しながら、ビジネスも追求して成功させることができる。人間らしく生きることは、決して資本主義社会における弱者ではない。それを、CRAZYを通じて証明したいんです。
CRAZYの根幹にある「私たちは一人の人間としてどう生きるのか?」という問いを手放すことなく、事業成長に向き合い続けたいです。
“普通であること”に依存していた
―そんな池田さん自身はCRAZYに入社してからどんな変化があったんですか?
池田:一番は、見た目ですね(笑)。髪型からメイクや服装、アクセサリーまで身につけているものや持ち物が変わりました。昔から私を知っている人たちはびっくりしてます(笑)。
―見た目!?それはどういう変化なんですか?
池田:今振り返ってみると、好みが変わったとかではなく好きなものを好きだと表現できるようになったという感覚なんです。
前までは、「かわいい!」と思っても、多くの人に受け入れられなさそうだったり“普通”ではなさそうだったりすると、それを選択しなかった。もっと言うと、「受け入れられなさそう」「“普通”ではなさそう」が先行して、かわいいと思っていることにも気づいていなかったのだと思います。“正しさ”や“普通であること”に依存していたんですよね。
―“正しさ”や“普通であること”に依存?
池田:CRAZYでは、入社前にも1年半ほどインターンをしていました。その時に結婚式を一緒につくるCASTメンバーとのキックオフイベントプロジェクトを、オーナーとして任せてもらったんです。目的や目標の与件設定から、コンセプトやディレクションを企画、コンテンツや空間など具体的な設計までを一貫して行いました。
今思えば「そんな楽しそうな仕事、情熱込めてつくっていくだけじゃん!」って感じなのですけど(笑)、当時は雲を掴むような感覚で…。イベント前日に、かなり追い込まれた状況での決断を迫られる場面があり、不安で先輩に相談したんです。そしたら「あなたが決めるんだよ。人に委ねないで」と言われて。
一瞬突き放されたように感じて心細くなりました。けど同時に、「私は正解を探していたんだ」とハッとしました。“正しく”“普通に”やってだめなら、それは“正しさ”“普通に”が悪かったことになるから。結局他責だったんです。
何よりも大切なのは、メンバーにとって最高のキックオフイベントにすること。正しいとか正しくないとか、普通とか普通じゃないではなく、最高のキックオフのために必要な判断をすべきで。それに気づいてからは、雲を掴むような感覚だった決断が確かな感覚に変わっていったことを今でも覚えています。結果、当日目の当たりにした、多くのメンバーが大粒の涙を流しながら理想に向かって決意を固める姿が今でも忘れられません。
CRAZYでは、レベルを変えながらこの壁に何度もチャレンジしてきました。
自分らしく生きている人ほど、いい仕事をしてる
―なるほど…仕事に取り組む過程で変化していったんですね。
池田:先輩たちの背中が本当に大きかったです。インターン時代も「あなたが決めるんだよ。人に委ねないで」とまっすぐ伝えてくれる先輩がいて。入社してからも、同じように本質的なフィードバックをくれる先輩に育ててもらってきたなと。
CRAZYって、動物園みたいな場所なんですよ。それぞれが良く言えば自分らしく、悪く言えばわがままに生きている(笑)。眠くなったらその辺で寝るし、仕事の合間で美容室に行ったり、ジムに行ったり、人に会ったり。でも、会社の制度上どれも問題ないですし、きちんと仕事に向き合っていればそれを咎める人はいません。
そうやって生きている人ほど、仕事にもお客さまにも全人格で向き合って、良いものをつくるんです。そんな先輩たちの姿を見て、私も「よりよく生きる人を増やしたいなら、まず自分が人間らしく生きてなきゃ。“普通であること”に依存している場合ではない」と思えるようになりました。
そうやって試行錯誤しているうちに、自然と見た目も変わっていったんです。自分が解放されていく感じですね。
―変化に対する周囲の反応は?
池田:昔からの友人にも、最近出会った人にも「どうしてそんなに楽しそうに、情熱を持って仕事ができるの?」「そんなに熱意を持って日々過ごせるのはなぜ?」と聞かれることがとても多くなりました。
それは、“正しさ”や“普通”ではなく、自分自身を信じられるようになったから。
たとえば、自社会場のIWAI OMOTESANDO(以下、IWAI)で、季節のパフェを楽しめる「パーラーイワイ」を約1年半前から不定期開催しています。ありがたいことに予約は毎回すぐに満席で。このイベントをきっかけに、CRAZYを知ってくださった方や初めてIWAIに訪れてくださった方もいらっしゃるんです。
「パーラーイワイ」は私が企画したイベントなのですが、企画当初は「なんでIWAIでパフェ?」「CRAZYとパフェがどうつながるの?」と、異色の内容に対して社内からは“はてな”だらけの反応が返ってきて…。それでも、「絶対に良いものが届けられる」という確信があったので、自信を持って提案することができました。最初は不思議がっていた社内のメンバーも、私の熱意を見て「やってみよう」と言ってくれて。
以前の私であればきっと“普通”ではないその提案を、自信を持ってやり切ることができなかったと思います。そうやって仕事をしている私を見て、周囲の人たちは「情熱がある」と言ってくれてるんだろうなと思います。
―大きな変化ですね…!
池田:これは間違いなく、人間らしく等身大の自分で生きることが、仕事の成果にも社会の変化にもつながると、これまでの経験で分かったからですね。
あとは、セオリーに囚われるのではなく、人間の「情熱」にかけてくれる環境がCRAZYにあることも大きいです。旗を立てている人の情熱をとても大切にします。逆に、どれだけ理論上の勝ち筋が見えていることでも、プロジェクトを主導する人たちの情熱が重ねづらいものであれば見送ることもあります。
そのくらい、人間の力を信じている人たちが、CRAZYには集まっているんです。
自分を愛することから、人間らしく生きることははじまる
―自身の変化を経て、人間らしく生きるためには何が必要だと思いますか?
池田:まず、自分で自分を愛すること、自分を信じること、ですかね。
今は、周りと違っても「好きなものは好き」「やりたいことはやりたい」と認められるようになりました。たとえば、周りの目を気にして諦めていたような髪色にしたり、服を着たり(笑)。自分を解放することに抵抗がなくなりました。
今の私なら、見た目も行動も自分で決められます。それは、私が私を受容できるようになったから。もし誰かに「変わっている」「普通じゃない」と言われても、自分が自分を信じてあげられるようになったからです。
自分を解放できる人が増えれば、私たちはもっと「人間らしく」生きることができるはず。その積み重ねが、よりよく生きる人を増やすことに繋がっていくと信じています。
―ありがとうございます。では最後に、これからチャレンジしたいことはありますか?
池田:初心から大きなテーマは変わらず、あらゆる手段で人間らしく生きられる人を増やしていきたいですね。
直線的には、事業拡大を着実に実現していきたいです。「私たちは一人の人間としてどう生きるのか?」という問いからは決してブレずに。その両輪を叶えるブランディングとマーケティングの実現に、力を尽くしたいと思います。
個人的には、関わる人の等身大の願いを引き出せる自分でありたいと思っています。一緒に仕事をする人には、絶対に“作業”をしてほしくないと思っていて。全員が、歯車ではなく人間らしく、全人格で事に向かっているチームでありたい。そうやって人間らしく仕事をする人たちの情熱を乗せたサービスやプロジェクトが、たくさんの人にエネルギーを届けてくれるはず。
その積み重ねで社会に「人間らしく生きる」という選択肢を増やしていきたいです。
執筆:仲奈々
企画・編集:池田瑞姫
撮影(一部):kuppography
デザイン:岩田優里