最近、誰かに「手紙」を書いたことはありますか? LINEやメッセンジャーなどのオンラインサービスで、いつでも手軽に連絡できるからこそ、わざわざ直筆で手紙を贈るシーンは減りつつあります。
しかし、だからこそ「あえて直筆の手紙を贈るべきだ」と語るのは、早起きコミュニティ『朝渋』の代表であり、株式会社モーニングラボの取締役の井上皓史さんです。手紙を贈ることは、“内省する特別な機会になる”と言うのです。
特別な人との記念日や会社の節目に、手紙を贈ってきた井上さんに、手紙の価値について語ってもらいました。
相手を考えることで、実は「自分を知る」
僕は、2年前から妻と付き合いはじめ、昨年婚約し、今年の夏に結婚式をあげました。告白とプロポーズの時には、ふたりで築きたい未来の話を手紙に書いて渡しました。友達にこれを伝えると「いまどきラブレターなんて古風だね」と言われることもあります(笑)。
ですが、自分と相手の関係を大事に思うなら、手紙を書くことは僕にとって大切にしたい習慣のひとつなんです。パートナーだけでなく、仕事仲間、家族、友人に対しても。僕は、創業6年目の若い会社で取締役をしていますが、会社の節目では必ずメンバー同士手紙を贈りあっています。
手紙は、“温もりがあって気持ちが伝わりやすい”と言われますよね。ですが、手紙の素晴らしさはそこだけではありません。書くプロセスや行為自体に、価値があると思うんです。
今はインターネットやSNSを通じて、働き方や生き方について様々な情報が届いています。だからこそ自分の軸を持たないと、すぐ他人に流されてしまう。内省の価値が相対的に上がっているんです。手紙は相手のことを考えながら、自分についても深く考える自己分析にもなります。相手のどこに惹かれたのか。どんな時間を一緒に過ごしたいのか。自分の気持ちを掘り下げないと言葉は出てきませんから。
しかも、最後はその結果を、相手に発表するわけです。ひとりで内省する時と比べて、恥ずかしいし、覚悟が要りますよ(笑)。でも、想いを伝えたい相手がいるから、真剣な気持ちで自己分析に取り組める。相手との関係のためにと思ってはじめた行為が、自分を理解することに繋がる。そんな機会が、人生で増えたら素晴らしいですよね。
気持ちを原点に戻す“コンパス”のような存在
また、手紙に書かれた気持ちを後から見返せることも大きな価値だと僕の妻は言います。
関係を大切にしたいと思っても、目の前のやるべきことに追われていると、お互いの気持ちが見えなくなることがあるんです。職場でも同様で、「何のために仕事をしているのか」「どういう未来を作りたいのか」といった、根っこにある想いを話す機会が少ないと、タスクにばかり会話が集中してしまう。
そんな時は「初心忘れるべからず」じゃないですけど、お互いが書いた手紙を一緒に読み返す時間を定期的に持つと良いんですよ。気恥ずかしいかもしれませんが、それぞれの根っこについて確かめ合う機会になるんです。
それに、自分が書いた手紙を読み返してみると、当時の気持ちが蘇るんですよ。付き合うことや結婚を決めたときの覚悟を思い出して、心が温め直されるというか、過去の自分が今の自分を鼓舞してくれる。手紙は、気持ちを原点に戻すコンパスのような存在でもあるんですよね。
過去・現在・未来が繋がることの効果
僕ら夫婦は、今年の夏に結婚式をあげたのですが、式へ参加してくれる一人ひとりへ手紙を贈りました。相手と自分の“これまで”を振り返りながら、どんな関係を築いていきたいかを書き綴っています。
これは僕らが結婚式をあげた「IWAI」のウェディング・プロデューサーの森さんから発案いただいたのですが、正直とても大変でした(笑)。学生時代の恩師や友達など、 久しぶりに会う相手に何を伝えるべきかと頭を抱えました。
ですが、ひとり一人と過ごした時間を振り返っていくと、「この人たちのおかげで今の自分があるんだ」と感謝の気持ちが湧きいてきました。
手紙を通じて、過去・現在・未来が一つの道に繋がっていくような感覚でしたよ。過去に誇りが持てるというか、胸を張って今の人生を歩んでいいんだと、素直に思えるようになりました。同時に、今の自分が忙しすぎて、過去の自分を支えてくれた人たちを少し蔑ろにしていたと反省もしましたね。
手紙で想いを伝えられたことで、相手との関係も変わったように思います。以前は、たわいもない近況報告で終わっていた会話が、深い部分で語り合えるように。
日常から離れて自分と向き合ったほうがいい
手紙を書く際に大切にしてほしいことがあります。それは、ポジティブな気持ちになれる環境で書くことです。
自分の思考や感情は環境に左右されるじゃないですか。リラックスができて、気持ちのいい場所は、窮屈で圧迫感のある場所よりも、前向きなアイデアや発言がでてきやすいものです。
僕は、緑が多く、日差しが心地いい場所で手紙を書くようにしています。ポジティブな気持ちで想いを馳せると、お互いの良いところに目が向きやすくなるんですよ。
だから、会社でメンバー同士手紙を書く時は、なるべくオフィス内では書かないほうがいいと思います(笑)。いつもの環境から少し離れて、あたらしい気持ちになれる場所で、手紙を書いてみてください。もちろん、スマホの電源はオフで。
また、手紙を渡す時も同様です。日常のドタバタしている自分たちからは離れられる場所で、渡したほうがいいと思います。僕が妻に手紙を渡す際は、プロポーズをした海が見えるカフェとか、自分たちのこれまでに想いを馳せやすい場所で渡すようにしています。
加えて、気持ちが優しくなれる音楽をBGMとして流せるとベストですね(笑)。音楽があると、恥ずかしいと感じることも言葉にしやすくなりますから。
さあ、感謝を伝えてみよう
手紙について語りましたが、手紙を書くことは楽ではありませんよね。僕も毎回、書く内容に頭を悩ませますし、時間もかかります。やっぱり難しいんです。心の声に耳を傾けて、目に見えない感情を言語化するのは、すごくカロリーを使いますから。そして、渡す時は、いつも恥ずかしい。想いを打ち明けるのは、相当な勇気が必要です。
まずは、自分の人生を振り返って、感謝を伝えたい人を、ひとりずつ手帳に書き出してみると良いかもしれません。そして、何でもない時に手紙を渡すのはハードルが高いので、何かしらの機会に渡すといいでしょうね。友人であれば誕生日、恋人であれば記念日、夫婦であればもうすぐ訪れる「11月22日のいい夫婦の日」とか。
気恥ずかしいかもしれませんが、大切にしたい人や仲間に、是非手紙を書いてみてくださいね。それだけで、自分の人生が輝いてみえると思います。
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Writer:井手桂司 IDE KEISHI
1984年熊本生まれ。「ブランドエディター」という肩書きで、企業の持っている物語を多くの人の心に届けるお手伝いをさせていただいています。現在は、IKEUCHI ORGANIC、Oisix ra daichi、コルクなどの企業メディアを支援。趣味は、銭湯・サウナ。