2024.06.27

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コミュニティ運営は合理的? ー私たちがCRAZY PEEPSを続ける理由ー

CRAZYには、公式コミュニティ「CRAZY PEEPS」があります。CRAZYの考え方に共感し、近しい価値観を持つ仲間と繋がりたいという願いを持った方が集うコミュニティです。

2021年に発足してから、半期ごとにメンバーを募集しているCRAZY PEEPS。これまではCRAZYの社員がコミュニティマネージャーを務めていましたが、2024年4月からはコミュニティメンバーが運営の主軸を担う、新体制のCRAZY PEEPSが発足しました。

CRAZYが、なぜコミュニティを立ち上げたのか。コミュニティにはどんな人たちが集まって、どんな活動をしているのか。また、今回新体制で再始動した背景とは?

CRAZY PEEPSのコミュニティマネージャーを務める工藤と、チーフマーケターとして全体設計に関わる池田に話を聞きました。

肩書や役割をすべて外して、本音で語り合えるコミュニティ

―まず、CRAZY PEEPSとは、どんなコミュニティなのか教えてください。

池田:一言で言うと、CRAZYの考え方に共感してくださる方々が集まるコミュニティです。CRAZYの根幹にあるのは、「人々が愛し合うための機会と勇気を提供し、パートナーシップの分断を解消する」というパーパスです。その考え方に共感してくださる「人生について語り合いたい」「自分の人生に向き合いたい」という方が集まっています。

現在のメンバーは、120名ほど。そのうち約3割は、CRAZYで結婚式を挙げてくださったお客さまです。そのほかは、CRAZYを利用したことはないけれど、価値観に共感してくださっている方、過去にイベントへ参加してCRAZYに興味を持ってくれた方、社員のパートナー、今後CRAZYで働くことを考えている方まで幅広い属性の方々がいらっしゃいます。

PEEPSメンバー集合写真

―どんな活動をしているのですか。

工藤:メンバーは月に1度、CRAZYが運営する会場に集まって、人生について語り合います。コミュニティ期間中は、この「ライフセッション」を5回、過去にはその集大成として、1泊2日のキャンプ合宿を行った期もありました。

ライフセッションは、「学んで、考えて、シェアする」がワンセットになっています。例えば、最初に「人間のものの見方の傾向」を学んで、自分が普段どのように意思決定をしているのかを振り返る。すると、普段いかに肩書きや役割、常識の中に自分を置いて生きているかが見えてきます。その上で「肩書や役割をとっぱらって、自由に選択できるとしたらどんな人生を生きたいか?」を仲間とシェアする。この“シェア”を通して、他の人の価値観や考えを聞くことで自分が何かに囚われていることに気づけたり、自分の本音を再認識したりできるんですよ。

ライフセッションの様子

―ライフセッションの際、大切にしている考え方はありますか?

工藤:「一人の人間として、豊かに生きる」を前提に考えることが大切だと思っています。人それぞれ、豊かさや幸せの定義は違いますよね。では、自分にとっての豊かさや幸せとはどんな状態なのか。それを実現するためには、何が必要なのか。そのヒントを探るために、角度を変えながらものの見方や考え方のインプットとアウトプットを繰り返していきます。

CRAZY PEEPSが発足してから、約3年が経過しました。CRAZYのフェーズや社会の変化にあわせてマイナーチェンジは行っていますが、「人生や価値観について考え共有できる場をつくりたい」という軸になる考えは変わっていません。

本来の自分を取り戻したら、人は自然と変化していく

―ライフセッションでは、自分の人生についての理想や価値観を共有し合うのですよね。その過程で、どんな変化が起こるのでしょうか。

池田:変化が起こるというよりも、「本来の自分に戻る」という方が近いのかもしれません。

―本来の自分に戻る?

工藤:はい。メンバーの一人に、CRAZYの考えに共感してコミュニティに参加してくれていた大学生がいました。彼女はコミュニティに参加した当初、「私は一人のほうが好き」と言っていて。でもセッションを重ねていくうちに、「他人から評価されるのが怖い」「本音で話して嫌われるのが怖い」、「だから、一人のほうが楽」と思い込んでいることに、少しずつ気づいていって。最後の合宿では、「私、本当は一人は嫌だったんだ」と泣いていました。

PEEPS合宿

これって、「変わった」というよりも、「本来の自分の願いに気づいた」状態だと思うんです。彼女のように、人はもともと持っている願いや価値観があります。でもそれを、何らかの事情で抑え込んで、気づかないふりをしている人が多い。CRAZY PEEPSでは、セッションを通じてそんな本来の自分を思い出すきっかけを届けています。

池田:先ほど紹介した彼女は、コミュニティに参加した当初は常に顔がこわばっていました。でも、本来の自分に気づき始めてからは、少しずつ笑顔が増えるようになって。合宿を終えてからは、まるで別人のように柔らかい表情をするようになっていましたね。

「一人が好き」と言っていた彼女は、「人との繋がりの大切さを広めたい」と言って、今年の4月にCRAZYに新卒で入社したんですよ。

―本来の自分を取り戻せたことで、前を向けるようになったのですね。

工藤:CRAZY PEEPSは、よく「変わりたい」「成長したい」と思っている意識の高い人ばかりのコミュニティなんじゃないかと言われるのですが、それはちょっと違うなと思っています。「より良くなりたい」という気持ちを持っていることは間違いないのですが、「背伸びをして成長する」というよりは、この場を、「安心して自分のままでいられる場所」だと思っている人がほとんどです。

コミュニティメンバーはみんなCRAZYのパーパスに共感してくれているから、“何者でもない一人の人間として”、自分のことを話したい、相手の話を聞きたいという方ばかり。だから、普段求められる役割や肩書だと話せないことも、コミュニティの中だと安心して話せるんです。本音を話していくことで本来の自分を思い出し、自然と自分が本当に望む生き方に向き合うことができるのだと思います。

PEEPSメンバーでピクニック

池田:大人になると、「仕事」や「家族」の話はしても、「自分の人生」について熱く語り合うことって少なくなるじゃないですか。思い切って打ち明けても、「急にどうしたの」「熱いね(笑)」と冷やかされて、話すことを諦めてしまった経験がある人もいるかもしれません。

CRAZY PEEPSには、「人生について考えたい」「人生について語れる仲間が欲しい」と思っているメンバーが集まっています。自分の人生について真剣に考え、本音を熱く語っても、ジャッジされることはありません。自分に向き合うことに集中し、本来の自分に立ち返ることができる場所です。

そして、自分の人生と真剣に向き合ったとき、これまで抑え込んでいた自分が出てくる。本来の自分を解放したときのエネルギーは強烈で、自分自身は何も変わっていないのに、変化をもたらしてしまうんです。

それは、私たちが提供しているサービスでも同じです。例えば結婚式だと、どんな価値観を大切にしているから、おふたりが出会ったのか。肩書を抜きに人生の節目を見守っていてほしいのは、誰なのか。式が終わったあと、どんな自分になっていたいのか。本気で人生と向き合うことを大切にしているから、式の準備を通して少しずつ「本来の自分の願い」に気づいていく。その結果、結婚式後にキャリアチェンジやライフチェンジに至ったお客さまたちがとても多いんですよ。

工藤:私たちは、結婚式をはじめとしたサービスでも、コミュニティでも、どんな形でもCRAZYに関わってくださったからには、幸せな人生であれるよう応援していきたいと思っています。そして、幸せな人は、その幸せを人に伝播させていくエネルギーを持っています。実際にコミュニティ参加後、周囲から「良いことあった?」「楽しそうだね」と言われることが増えた、というメンバーがものすごく多いんですよ。

この積み重ねは、個人に留まらず、社会も幸せになるきっかけになるはず。それが、このコミュニティの存在意義だと思っています。

資本主義社会としては、合理的でない取り組み。でも…

―上記の例以外でも、CRAZY PEEPSを通じて自分を取り戻したり、変化したりした人がたくさんいると聞きました。

工藤:そうなんです。CRAZY PEEPSは、1期間あたり約100人前後の方にご参加いただいています。中には繰り返し入会いただく方もいて、ありがたいことにこれまで200人以上の人にご参加いただきました。しかもそのうちの7〜8割は、ほぼ毎月セッションに参加してくれていて。かなり高いアクティブ率を維持していると思います。

でも実は、数ヶ月前までコミュニティを継続するかどうか悩んでいて……。

―順調に盛り上がっていたのに、どうして?

池田:未来のことを考えたときに、コミュニティの持続可能性について疑問を持ったんです。

CRAZY PEEPSは、「ファンの方々とCRAZYらしい場を共有する」ことを目的として立ち上げたコミュニティです。サービス提供以外の手段でも、CRAZYの価値観や理想に共感してくださる方々と一緒に社会に幸せを伝播させていきたい。その目的に立ち返ると、コミュニティに入りたい!と思ってくれる方々を幅広く受け入れられることが理想です。

一方で、半年に1回の新規募集では、想像以上の応募をいただくという状況が続いていて。とてもありがたいことなのですが、「私たちがこの場所で大切にしたいことを貫きながら、規模を拡大していけるのか?」という問いに直面しました。

コミュニティの存在意義を考えると、応募してくださった方は全員受け入れたい。100名以上のコミュニティにしていきたい。でも、そんな大規模なコミュニティを、これまでと変わらないクオリティで運営ができるリソースが私たちにはない、というのが正直な状況でした。それならば、コミュニティではなく、別の形でCRAZYらしい場を提供できる方法を探した方が、合理的なのではないか…と考えるに至っていました。

―なるほど…。CRAZY PEEPSは、無料のコミュニティなんですよね。リソースの問題ならば、無料コミュニティではなく有料コミュニティにする形は考えなかったんですか?

工藤:私たちにとってCRAZY PEEPSのメンバーは、「お客さん」というよりも「親戚」に近い関係性です。困ったことがあれば助けたいし、幸せを分かち合いたい。実際、CRAZYが社外向けのイベントをするときに、CRAZY PEEPSのメンバーがお手伝いをしてくれることもすごく多くて。そんなカルチャーが自然と醸成されてきた、自由な主体性が特徴のコミュニティなんです。

池田:何よりも、私たちとコミュニティメンバーの関係を「提供者と受益者」にはしたくないと考えています。

PEEPSメンバーとCRAZY社員(初期の事務局)

―順調に盛り上がっていたのに、どうして?

当たり前ですが、その人の人生はその人のものです。お金を払ったからといって誰かがどうこうしてくれるわけではなく、自分の意志と行動で前進するしかありません。「人生」にど真ん中で触れるコミュニティだからこそ、主体者と参加者という構造にするべきでないと考えてきました。なんらかの利害関係ではなく、純粋な人間と人間として向き合いたいと思っているし、だからこそCRAZY PEEPSに所属してくださるみなさまと一緒につくれるものがあると考えています。

だけど、そのスタンスを貫いて拡大運営し続けるのは難しい。このままでは限界が来てしまう。だとすれば、理想を手放すのではなく、別の形を模索してコミュニティ自体は一度畳むべきだと思ったんです。

―なるほど。けれど、現在もCRAZY PEEPSは継続していますよね。

工藤:はい。私と池田で、CRAZY PEEPSをどうするか、何度も話し合いをしました。その度に、「畳んだほうがいい」という結論に至ってしまう。でも、「畳まなくていい理由」を必死に探しているんです。頭では分かっていても、心が追いつかない。

現状を整理し、いくつかのパターンを検討した上で代表の森山に相談しました。そのときにもらった“ある言葉”で、継続を決意したんです。

私たち、CRAZY PEEPSに支えられている

―“ある言葉”とは、なんだったのでしょう。

池田:「僕たちはみんな(CRAZY PEEPS)に、とても支えられているね」って。その一言に「そうだった。継続すべきだ」と思いました。

森山に相談して見解を伝えたときも、始めは「確かに、合理的に考えるなら畳むという決断だよね」と言われて。代表も「畳むべき」と思っているなら、もう結論は出ているなと思いました。でも、その時に森山が「なぜ僕たちは、こんなにも(畳むことに)躊躇があるのだろう?」と問いを立ててくれて。話していった先で「私たちは、CRAZY PEEPSのみんなに、とても支えられている」という答えに辿り着いたんです。

―どんなことを支えてもらっているのでしょうか。

池田:会社は、「ヒト・モノ・カネ」と言われるようにいろんなリソースで成り立っていますよね。必要不可欠なものです。その中でもCRAZYは、特に「人」と「カルチャー」を強みとしている会社です。そして、この2つを支えてくれているのが、まさにCRAZY PEEPSという存在なんです。

CRAZYは「愛」や「人生」という目にみえづらいものを扱っています。それを多くの人にみせたいと思っている。でもそれはみえづらいものだから、社員自身も不安になる瞬間があるんです。「この目にみえないものを、多くの人と共有できるのだろうか」「私たちの信じているもの、ちゃんと伝わるかな」って。

CRAZY全社会の様子

そんな不安を吹き飛ばしてくれるのがCRAZY PEEPSのみんななんです。CRAZYの描く理想を「めっちゃいいよね!」と言ってくれる人たちがいる。心から信じてくれる人がいる。全力で応援してくれる人がいる。そういう支えがあるから、私たちは自分たちの理想を信じて追いかけることができている。本当にありがたいことです。

―合理性よりも、想いを重視したから、CRAZY PEEPSを継続したということでしょうか?

池田:いえ、「私たちにとっては、CRAZY PEEPSを継続することが本質的には合理的だ」と気づいたんです。

現代では、資本主義的に合理的であることが正しいと判断されやすい。私と工藤もそれに囚われてしまって「合理的には畳むべきだ、でも畳みたくない……」とモヤモヤしていました。

でも、CRAZYは理想を追い求める集団です。資本主義的な合理を目指しますが、それと同時に自分たちの信念に対する合理も目指します。CRAZY PEEPSという存在は、信念に対する強い合理であり、つまりそれは中長期的に資本主義的な合理にもつながるものなのだと考えています。

CRAZYにとってCRAZY PEEPSの存在は、とても合理的で、この存在抜きに未来を描くことはできないくらい大切なものになっていたんです。

目にみえないものに、確かな輪郭を与えてくれる場所

―価値を再定義して、CRAZY PEEPSは再出発したのですね。これまでのCRAZY PEEPSと変わった点があれば教えてください。

工藤:CRAZY PEEPSは、私たちにとって心の支えであり、横並びの仲間です。そして、私たちもみんなの支えになれると嬉しい。それならば、支え合う存在は多ければ多いほどいいですよね。なので、今期からはこれまで数期に渡ってCRAZY PEEPSに参加してくれたメンバーから3人の運営メンバーを募り、より多くの方を受け入れられるように体制を構築しました。

運営メンバーのみんなと工藤

これまでは、私が直接届けられる人数しか受け入れられませんでした。でも、届けられる人を増やすことで、CRAZY PEEPSは次のフェーズにいけます。

池田:体制が変わったことで、運用方法が変わる可能性はあります。でも、人生やパートナーシップ、家族、友達、そして社会について「こうだったらいいよね」と語り合って、それぞれの理想を追求し、応援しあえる場であることは変わりません。

工藤:CRAZY PEEPSは、そのための場所ですからね。理想と現実の間で、自分がどこに向かうべきか分からなくなるときは誰にでもあると思います。それでも、理想に向かって進んでいきたい。同じように理想と向き合う人たちで、もっと人生を謳歌したい。CRAZYもCRAZY PEEPSも、そんな場所であり続けたいと思っています。

企画・編集:池田瑞姫
執筆:仲奈々
撮影(一部):kuppography
デザイン:林隆三


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