2024.05.01

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経営とクリエイティブの相互理解が進んだ先に、みえているものとは?

株式会社CRAZY(以下、CRAZY)は、「人々が愛し合うための機会と勇気を提供し、パートナーシップの分断を解消する」をパーパスに掲げ、婚礼事業を中心に事業を運営しています。

創業事業であるCRAZY WEDDINGは、オーダーメイドウェディングプロデュースから始まり、2024年には人生を祝う場所「IWAI OMOTESANDO」を開業してから5周年を迎えました。創業から一貫して人の想いを届け続ける歩みの隣には、いつもクリエイティブがありました。

なぜ、CRAZYは創業当時からクリエイティブを重視してきたのか。経営とクリエイティブは一体どんな距離感で運営してきたのか。

創業者であり代表取締役社長の森山和彦(以下、森山)と、執行役員 クリエイティブディレクターの林隆三(以下、林)に話を聞いていきます。

CRAZYには、創業時からクリエイティブがあった

―まずは、CRAZYにおけるクリエイティブの歴史を振り返っていきたいと思います。2012年に創業したCRAZYですが、最初のクリエイティブはなんだったのでしょうか。

森山:創業して1週間で作ったCRAZY WEDDINGのHPですね。その頃のCRAZYには、デザイナーはいませんでしたが、使うフォントや余白の取り方など、分からないなりにものすごくこだわったのを覚えています。

―なぜ、創業当時からクリエイティブを重視していたのでしょうか?

森山:クリエイティブに興味を持ったきっかけは、CRAZYの創業前まで遡ります。僕が新卒で入った会社で、デザイナーさんに「良い感じのかっこいいデザインにしてください」と依頼したんです。そしたらめちゃくちゃ怒られて。「クリエイティブは背景や想いがあってつくるものだろ」って教えてもらいました。

前職もCRAZYと同じくらい、世の中に伝えたいことがたくさんある会社でした。でも、2005年当時、上流からクリエイティブを考える事業会社は、かなり少なかった。だからこそ、僕が会社を立ち上げるなら、経営にクリエイティブを取り入れようと考えてましたね。もっと砕けて言うと、「頑張って売る」んじゃなくて、「興味を持って買ってもらえる」ような、クールな会社にしたかったんです。そのためには、自分たちの信念が多くの人に伝わるためのアウトプットが必要です。クリエイティブの力は当たり前に欠かせなかったんです。

―先ほど、「創業当時はデザイナーがいなかった」という話がありました。林さんがCRAZYに関わり始めたのはいつからなのでしょうか。

林:創業時から、外部アートディレクターとして関わっていたんです。当時僕が勤めていた制作会社に、CRAZYから「空間から全てオリジナルの結婚式をつくりたいから、クリエイティブの協力をしてほしい」と依頼が来ました。

当時CRAZYは創業したばかりで、サービスもまだ形になっていませんでした。でも、「表現したいもの」は明確にあったんですよ。そして、「絶対形にしてやる」という情熱もすごかった。

「ビジネスに本気な人たちが、強烈な熱量を注いでつくりあげるクリエイティブって、どんなものなのだろう」と、興味が湧きました。僕はずっとデザイン一筋でやってきたから、畑違いの人が道場破りに来るような怖さも感じつつ、強烈な興味を持ったんです。

当時の写真

―当時のCRAZYにはデザイナーが一人もいなかったにもかかわらず、クリエイティブの重要性を全員が理解していたのですね。

林:そうですね。一人ひとりメインの職務領域は持っているものの、会社全体を強烈に「自分ごと化」して見ていることもとても印象的でした。例えば、代表である森山はクリエイティブの細部にまでこだわりを持っているし、メンバーはコスト感や経営に与える影響にまで目を光らせながら、どうアウトプットするかを考えていた。

今も変わらないことですが、全員から「自分自身がブランドを確立させていくんだ」という強い意志を感じましたね。その姿には、クリエイターとしてだけではなく人間として突き動かされるものがありました。事実、その数ヶ月後に僕はCRAZYに入社していますから(笑)。

強い信念にこそ、クリエイティブが必要

―強烈につくりたいものがあるCRAZYにとって、クリエイティブの重要視はとても自然なことだったんですね。

森山:そうですね。あとは、「宗教っぽさ」を払拭したかったから、クリエイティブにこだわり続けたのもあります。

―宗教っぽさ?

森山:CRAZYは、“愛”や“人生”をテーマにしています。現代ではそういった分野を、主に「宗教」が扱ってきました。「愛」や「人とのつながり」で、人生はもっと豊かになるのは分かると思います。でも、それをストレートに表現しすぎると、いわゆる「宗教っぽさ」という言葉のように、分からないものへの怖さみたいな感覚が先行してしまう日本の文化的側面もあると思います。そうなると、いくら情熱を込めてアウトプットしても、手に取りづらいものとなってしまいます。

僕たちには、世の中に伝えたい確かな情熱があります。だからこそ、クリエイティブの力が必要でした。

CRAZYのブランドメッセージ

「愛は みえる。」というブランドメッセージも、クリエイティブの力があったから、ここまで思い切った表現ができたのだと思っています。

林:代表の森山が強い信念と哲学を持っているから、社員にもその想いが伝わる。社員が強い信念と哲学を持っているから、お客さまにもその想いが伝わる。さらに社会へ波及していく。その信念や哲学こそが、クリエイティビティ(熱量)だと思っています。僕自身も、CRAZYの熱量にはいつも圧倒されています。この熱量を世の中に届く形にしていくことに、とてもやりがいを感じますね。

―これまで、CRAZYではブランドメッセージの「愛は みえる。」のほかにも、たくさんのクリエイティブを生み出してきました。CRAZYらしい、クリエイティビティを表現した事例を教えてください。

森山:最近だと、IWAI OMOTESANDO5周年記念イベント「今日もふたりはスペシャル」やCRAZYの入社式「DAY1」などがわかりやすい例ですね。

IWAI OMOTESANDO5周年記念イベント「今日もふたりはスペシャル」
おふたりの結婚式という機会にご一緒した私たちだから知っているのは、「すべてのおふたりがスペシャルである」ということ。たしかに結婚式当日はすべてが素晴らしい、でも、この日だけが素晴らしいのではなく、これまでもこれからも変わらず、ずっと美しいということを、IWAIとの再会で感じていただければ…という想いで準備しました。「Special Vote」はすべてのスペシャルなおふたりの「自分たちらしさ」を投票で楽しんでいただこうと企画したコンテンツです。
CRAZYの入社式「DAY1」
新卒入社や中途入社、育休から復帰するメンバーを迎えいれるというエネルギーではなく、新しいCRAZY(自分たち)になるという希望と覚悟をテーマに。クリエイティブでは印刷の標準色である、シアン・マゼンダ・イエロー・ブラックを使用して、そのテーマを表現しました。色が重なって美しい絵になっていくように、みんなが重なって美しい未来の風景をつくり出していく。そんなエネルギーが組織を育んでいくと信じています。

社内イベントや採用イベントでもクリエイティブは欠かせません。まず、「こうしたい」という想いがあって、どうしたら成果に結びつけられるかを考える。その実現にクリエイティブの力は必須です。

林:社内からの日々の相談は、多岐に渡ります。でも、どんな場合でも「どういう意図で作りたいの?」「なんでこの形である必要があるの?」と聞くのは同じです。みんな想いをしっかり持っているから、きちんと打ち返してくる。もし方向性が違っても、根本の想いがあるから軌道修正もしやすいんです。CRAZYで10年以上働いていますが、「これが慣例だから」「普通はこうだから」といった理由でクリエイティブの依頼をしてくる人はほとんどいません。すべてに“想い”がついてきます。

森山:だから、難易度が高いことをやっていても、方向性がぶれにくい。結果、楽しみながら質の高いアウトプットができています。プロセスは大変かもしれないですが、情熱を土台に仕事ができるというのは幸せなことだと感じています。

経営とクリエイティブの関係性

―改めて、経営とクリエイティブが切っても切り離せないものだということが分かりました。

林:はい。またそれは、CRAZYだけではありません。どんな会社も、「より多くの人に手に取ってもらいたい」と思って商品やサービスを考えると思います。そのために必要なのが、クリエイティブの力です。だから、クリエイティブとサービスや事業って、そもそも切り離せるものじゃないんですよね。

ただ、ここまで話してきたような「経営におけるクリエイティブ理解」だけではなく「クリエイターの経営理解」も重要だと思っています。一般的には、より多くの人に届くような影響力がある商品やサービスを生みだすことが、クリエイターのモチベーションになる場合が多い。でも、もっと会社の内側にある「経営」に興味を持つことが、より質の高いクリエイティブを生み出すことに繋がるんです。

例えば、僕が一番クリエイティブで驚かせたいのは、CRAZYの社員。社員は、CRAZYの考えに共感してこの場にいるはず。その社員すら喜ばせられなかったら、世の中に興味を持ってもらうなんて無理だと思うんですよね。だから僕は、社内でしか展開しない資料や社内イベントにも本気で取り組んでいます。

コアバリューはビジュアライズして社内展開した

森山:「顧客理解」も大事だけど、「我々理解」も同じくらい大事ですよね。

―「顧客理解」は事業運営でよく聞きますが、「我々理解」とはなんでしょう?

森山:よりお客さまに喜んでもらえるサービスを提供するには「顧客理解」が欠かせないですよね。でも、それ以前に「我々理解」が必要だと思うんです。「顧客理解をして、サービスを提供しようとしている我々が一体何者なのか?」ということ。「我々理解」が、世の中で言うところの社風やカルチャーへとつながっていきます。「我々理解」を徹底して行っているから、僕たちはぶれにくい。それが、CRAZYの強みになっています。

ただ、この「我々理解」を突き詰めすぎると、プロダクトアウト的になってしまい、市場との需要にミスマッチが起きてしまいます。だからこそ、経営理解のあるクリエイターがつくりたい人間と社会との間に入ってくれるのが大事です。つくりたい気持ちが強い僕としては、クリエイティブを担ってくれているみんなに、とても感謝しています。

林:それが実現できているのは、そもそも森山がクリエイティブに対してフラットなスタンスを貫いてくれているのも、かなり大きいです。森山はクリエイティブの成果を、数字のみで見ないんです。もちろん、数字も大事な指標のひとつです。でもそれ以上に、CRAZYの行動指針である「本質的で、美しく、ユニークに」なクリエイティブであることを大事にしてくれる。だから、僕たちはより美しく、人にポジティブな驚きを与える表現をすることに注力できるんです。

生き様が愛される会社でありたい

―お話を伺っていると、経営だけでなくCRAZY全体が、クリエイティブとの結びつきが強いのだと感じました。

森山:はい。でも、社員ひとりひとりが最初からクリエイティブに理解があったわけではありません。もともとは、「社会に対する強い想いや願いはあるけど、それをどう扱って良いのか分からない」と困っていたメンバーがほとんどです。

林:だからこそ、社内外問わず「CRAZYに出会って自分らしく生きられるようになった」という声がたくさん出てくるのかもしれないですね。社員が、CRAZYという場所を通して、自分の情熱を活かして仕事をしたり、生活をしたりすることが「出来るようになった」経験をしているからこそ、社外にも提供できるものがあるのだと思います。

―所謂デザイナーやクリエイティブディレクターだけでなく、すべての人が自分の情熱(=クリエイティビティ)でクリエイティブをするという挑戦をしているんですね。そんなCRAZYがこれまでも、これからも、変わらず大切にしていきたいことはありますか。

森山:ずっと変わらず思っているのは、「CRAZYを、人々に夢や勇気を与える存在にしたい」ということです。

人が誰かの期待を背負うように、法人も期待を背負っています。そして、誰かの生き様が誰かに夢を与えるように、法人の生き様が人や社会に影響を与えることだってある。例えば、ナイキは、自社商品の紹介じゃなくて、ビジョンや生き様を載せた広告を出しているじゃないですか。そのビジョンや生き様に共感した人が製品を購入する。素晴らしい活動ですよね。CRAZYも、そういう「生き様が愛される会社」にしたいんです。そのためには、今後もクリエイティブの力が欠かせません。強烈なクリエイティビティとそれを形にする高いクリエイティブ力のある会社へさらに進化していきたいですね。

企画・編集:池田瑞姫
執筆:仲奈々
撮影(一部):kuppography
デザイン:林隆三


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