結婚は始まり「自分の国でも愛する人と結婚したい。」-クィア・アイ in Japan!出演Kanさんインタビューvol.2-

CRAZY WEDDINGでは、2019年よりセクシュアルマイノリティの方々に向けて、それぞれの人生に合わせたセレモニーをつくってきました。

今回は、当事者でもあり、その背景を持ちながら自分らしく生きるロールモデルでもあるKanさんへのインタビュー記事 後編をお届けします。

前回記事では、様々な逆境を越えて2021年9月同性パートナーと結婚をしたKanさんの価値観とそれをつくってきた半生をご紹介しました。

本記事では、イギリスで開催した結婚式前後のKanさんの気持ちの変化をお伝えしたいと思います。

「自由に、自分らしく」イギリスの古城で挙げた結婚式

結婚式についてはInstagramやツイッターでタイムリーに発信され、ふたりの姿には多くの祝福の声が集まりました。

イギリスという法的にも同性婚が認められる環境で、愛する人との結婚式を叶えたKanさん。しかし、その選択の裏には多くの葛藤と想いがあったと言います。Kanさんにその等身大な声を聞きました。


いよいよ、イギリスでの結婚式のお話をお伺いしたいと思うのですが、結婚式を開催するにあって、こだわったことは何でしたか?

一番大切していたのはパートナーと自分、大切なみんなが「自由に自分らしくいられる」ことにこだわりました。僕の衣装もレディースで、花柄のシャツ。自分とパートナーの服装が合うかより、自分がご機嫌に居られるものを選びました。

同時に、ゲストにもそうであってほしいと思っていました。

会場にはどんなこだわりがありましたか?

会場はスコットランドのお城を選んだんですが、ここはパートナーであるTomの思い出の場所なんです。子どもの頃、祖父母の家が近くにあって、よく家族で行っていたお城で。ルーツもある場所としてふたりで選びました。

結婚式当日最も心に残ったシーンは何でしたか?

みんなが本当にお祝いしてくれて、応援してくださって。

何よりもそれが幸せでした。

記憶に強く残っているのは、親友のスピーチです。

仲良くても普段なかなか褒めあったり感謝を伝えたりってしないですよね。そんな中、手紙で言葉にしてくれて。「Kanはここまでくるのに大変で長い旅路があったね。カナダで自分のセクシュアリティを受け入れ始めてからパートナーに出会うまでもきっと沢山の葛藤があったと思う。そんな中で愛する人と結婚する今日は本当に奇跡のような日だね。この場で、自分がスピーチできてとても嬉しい。」というような言葉をもらいました。

とても素敵ですね。結婚式を挙げたからこそ見られた景色だったのですね。

とても感動しましたし、心から結婚式をして良かったと思います。

ただ、実は僕はこのタイミングで結婚式をすることをためらってもいました。

結婚式をせざるを得ない理由もあったんです。

愛する人と生きていくために、結婚式は必要だった

それは、どういうことですか?

イギリスでは結婚の誓約と結婚式の開催がセットなんです。つまり、結婚式をしないと婚姻届が出せないってことなんですよね。

本当は、新型コロナウイルス感染症のことがあるので、結婚式自体は遅らせようと考えていました。日本にいる家族や友人も呼びたかった。でも、結婚をしなければビザを申請できず、イギリスで長期間住むことができなかったんです。その制限をクリアするために、9月に結婚式をするしかなかったんですよね。

日本とイギリスで結婚式の制度や役割がそこまで違うんですね。

そうなんです。

何も知らなかった僕は、パートナーのTomに「婚姻届を出してから、式をあげたい」と相談したら「え?君は2回結婚式したいの?」と言われてしまいました。笑

それでも結婚式をすると決意したのは、やっぱり新型コロナウイルス感染症が大きな理由でした。隔離期間も考えると、1か月会社を休まないと二人で会えない状況がいつまで続くか分からなかった。だから、結婚は「再会するための方法」だったとも言えますね。

なるほど。社会や制度といった様々な背景の中で「愛する人と一緒に生きる」ために結婚式を決断せざるを得なかった状況があったんですね・・・!

「おかしいな」強くなる違和感

結婚指輪を購入したあとのKanさんとTomさん

結婚指輪を購入したあとのKanさんとTomさん

結婚の準備を進める中で、Kanさんが心に残っている出来事は何ですか?

結婚式への準備を進めていく中で冷静にイギリスで結婚するという意思決定をした自分をみて、「どうして日本では法的に同性婚が認められないんだろう?」「やっぱりおかしいよ!」という気持ちが日に日に強くなっていったんですよね。SNSでの発信が止まりませんでした。

実は、結婚式前日も眠れなくて。「気づいたら僕イギリスに来てるし、明日結婚式って、なんでこうなってるんだろう!?こんなにも限られた選択肢の中で選ばなきゃいけないのはなぜだろう。」とぐるぐる考えていました。今もその気持ちは消えていません。

イギリスに移住しても、日本にいても、パートナーとの関係性は良い意味で全然変わっていない。ずっと温かくて、愛のある関係性なんです。

だけど、結婚してビザを得られたことで、大きく暮らしは変わりました。イギリスに長期間住むことができる、仕事ができる、保険料を払えば医療が無料で受けられる権利等法的な社会保証が得られたからこその違いが大きいと感じています。

それが今の日本では叶えられません。夫夫(ふうふ)として認められていないがゆえに、コロナ渦ではビザが降りずパートナーは数年以上、日本に入国もできていません。単に婚姻関係を結べないというだけでなく、リアルな生活に支障があるんです。

法律で認められる結婚を経て感じた、イギリスと日本の違い

イギリス到着直後の KanさんとTomさん

 

イギリスで結婚式を挙げて生活をする中で、日本との違いを感じるところはありますか?

半年弱暮らして感じているのは、イギリスは前提として「人は人」「自分は自分」という価値観が強いことですかね。

「同性パートナーだから」とカテゴライズされたと感じることは、日常生活でも結婚式の準備でもありませんでした。

例えば、結婚式のアンケートフォームも異性愛が前提でつくられていて「新郎新婦」の表記がされてるんです。ここまでは日本と大差ないですよね。けれど、それを自分で勝手に書き直して送っても、特別な反応は無いんです。当たり前のように進んでいく。

イギリスだって完璧ではありません。セクシュアリティに理解がある人もない人もいます。だけど、「人は人、自分は自分」という感覚が強いから、違う人が。いても「そういう人もいるよね」という感覚で自然に受け入れられていくことがありますそれが心地いいです。

そうやってイギリスで幸せに暮らしている今があるからこそ、故郷である日本ではなぜ結婚が認められないのか「おかしいな。」と思う気持ちは日に日に強くなっていきました。同時に、「自分ができることをしたい」という思いもさらに大きくなりました。。

「すべてを僕ひとりで、背負わなくていい」

式後、報道ステーションの密着取材が放映されましたね。大きな反響があったと思います。出演を決めたのはやはりその「何かできることをしたい」という思いからでしょうか。

はい。違和感の中で、「変えるためには、理解の輪を広げなきゃいけない。」と思っていました。全国放送なのでどんな反応があるか覚悟も必要でしたね。

そういう時Tomに相談すると、一瞬驚きつつも「お〜〜すごいね、いいよ。」と受け入れてくれるんです。 僕をよく理解してくれている彼がいなければ、今の僕はいないとつくづく思っています。

発信を続けられている中で、様々な声が集まってくると思います。どんな声が印象的でしたか?

インスタライブのように自分のフォロワーがいるプラットフォームだと、肯定的なメッセージが多いです。「おめでとう!」「感動した!」「日本も法律婚が認められてほしい!」といった声がほとんですね。

しかし、全国ネットでの放送へ寄せられる反応は、全く違うものでした。世界に向けて配信されたクィア・アイに対するリアクションとも全然違います。

やはり、厳しい声も多かったんですか?。

そうですね。

「日本で結婚したいというけれど、それはわがままではないか。」とか、「別に法律で認められなくても、一緒に暮らせれば良いのでは。」といった声もたくさんありました。

さらには、SNSのリプライやコメントで毎日のようにネガティブなメッセージが届きます。

そういう声とはどう向き合ったんですか?

辛くなりました。画面の中にある言葉だと理解しているつもりなのに、自分のリアルな生活が変わったかのように感じてしまうんです。ちょっとネットから距離をおこうと決めて、自分の心のバランスを取った時期もありました。

だけど今は、「全部を自分が背負う必要はない。」と思えています。これは僕だけでどうにかする問題じゃない。自分がどうにかしなきゃと思ったらつぶれちゃう。あまり真に受けると、自分の人生の価値がないような気持ちになってしまうこともあるかもしれません

これからの日本を思うからこそ、違和感を感じている人や「おかしい」と思っている人たちと一緒に、みんなで考えていきたい。そして僕も、引き続き、できることをできる範囲でしていきたいと思っています。シンプルにそれだけなんです。

「おかしいな」の輪が少しずつ広がっていけたらいい

学生時代スピーチをするKanさん

ここまでイギリスでの結婚式を中心に、Kanさんの決断や迷いなどリアルな声をお聞かせいただきました。
最後に、Kanさんが様々な逆境と相対する人生の中で、大切にされていることを教えてください!

常に大事にしていることは、「自分が直感的にワクワクするか」です。楽しさは常に原動力。

だから、「自分の好きなところリスト」は今も続けてて思いついたらすぐに書いてます。

「あ、今日の髪の毛のカールいいな」とか「今日の自分かわいいな」とか。笑

とにかく思いつくだけ書くと、とても前向きになれるのでおすすめです。

そうやって自分をご機嫌にするコントロールができてくると、自分が安定してきて、ネガティブなことの受け止め方も変わっていきます。

これからどのように世の中が変化していってほしいと思いますか?

違和感に感じるかどうかって人の環境や特性によりますよね。

「変わった方がいいよね!」と思う人もいれば、「変えたいなんて自分勝手じゃないか?」という人もいる。いろんな声がある中で、「おかしいな〜」と素直に思ってくれる人たちが少しずつ増えていったらいい。そうやって「おかしいな」と思う範囲が広がって、輪が広がることで、変化がうまれていってほしいと願っています。

「愛する人と自分の国でも生きたい」というシンプルな願いと、「自分らしく生きる努力」を重ねた人生

“ 日本でも、愛する人と法律の差なく、大切な家族の近くで暮らせる権利がほしい  ”

“ 人生はグラデーション。波があっていい。自分の人生に向き合い続けるその日々こそが人生 ”

Kanさんのインタビューに登場した、心に残る言葉たち。

インタビューを通してみえてきたのは、Kanさんの「愛する人と自分の国でも生きたい」と願うシンプルな願いと、ただ自分らしく生きることすら難しい社会の中で、自分なりの幸せを手放さず「勇気をもって選択し続けた意思」でした。

愛する人とイギリスでは家族になれるけれど、日本では家族にはなれない。法律で認められるか否かの違いや苦しみを、今もなおリアルに体感しているKanさん。

異性愛ではないセクシュアリティのために、自分を否定したこともあった過去を経て、自分らしく生きる歩みを進めています。

自分を見つめ続ける力が、「幸せ」に向かう勇気になる。その勇気が人の心を少しずつ動かしていく。それは私が、Kanさんと対話して受け取ることのできた温かな希望でした。


お知らせ:1/15 19:00-にCRAZY WEDDING主催のKanさんトークライブを開催します

インタビュー記事では伝えきれない本音や、質問にお答えするお時間もとらせていただきます。ぜひ、ご参加ください。

インタビュアー/執筆 CRAZY WEDDINGプロデューサー 渡部恵理
編集 池田瑞姫


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Kanさんプロフィール

大学在学中にカナダへ留学。大学卒業後はイギリスへ渡り、大学院でジェンダー・セクシュアリティについて学ぶ。帰国後は化粧品会社に入社し、マーケティング業務を担当。2019年にNetflixの番組『クィア・アイ in Japan!』エピソード2に主人公として出演。性的マイノリティ当事者として、自分らしさやセクシュアリティをテーマにSNSでの発信や企業・学校での講演を行う。2020年には「REING」のジェンダーニュートラルアンダーウエアのモデル、ジュエリーブランド「Hirotaka」のモデルに抜擢されるなど、多岐に活動中。2021年9月20日に同性パートナーのTomさんとイギリスにてご結婚、メディアなどでも積極的に発信し話題となった。ロンドンに在住。Kanさんのプロフィール

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