2019年にCRAZY WEDDINGが運営するIWAI OMOTESANDOで結婚式を挙げたおふたりが、先日ご両親のバウリニューアル(ふうふが結婚生活の途中で再び愛を誓ってお互いの気持ちを伝え合うセレモニー)を開催しました。
なぜ、ご両親にバウリニューアルをプレゼントしようと思ったのか?ご家族にとって、今回のバウリニューアルはどのようなものになったのか。バウリニューアルを企画したおふたりと当日を振り返りながら、「伝える機会をつくること」について迫りました。
言葉にしなくても伝わるふたりだからこそ、言葉で伝え合う機会をプレゼントしたかった
-今回おふたりは、新郎さまのご両親へ「バウリニューアル」をプレゼントされました。日本ではまだ馴染みのないイベントだと思いますが、知ったきっかけを教えていただけますか?
ゆかさん:バウリニューアルのことはSNSで偶然知りました。ふうふが結婚生活の途中で再び愛を誓うセレモニーがあると知って、素敵だなと思っていたんです。当時は「いつか自分たちふうふもできたらいいな」と思っていろいろ見ていました。
-そんな中で、ご両親のバウリニューアルをやろうと思った理由を教えてください。
ゆかさん:夫の両親はすごく仲が良くて、特にお父さんがお母さんのことをとても大切にしているのが態度でわかるんですよ。例えば旅行に行くときは、とにかくお母さんが楽しめるようにお父さんが綿密に計画を立てたり。お母さんも「お父さんは私のことが大好きだから」とよく言っていて、本当に微笑ましいんです。
ひろともさん:結婚生活が長くなっても、両親はずっと恋愛をしている感じなんですよね。ふたりの関係は子どもの僕たちから見ても素敵だなと思いますし、自分たちもこんなふうふでいたいなと思うロールモデルにもなっています。
ゆかさん:こんなに仲のいいふたりだからこそ、ぜひバウリニューアルをしてほしいと思い、私たちからふたりに提案しました。
-なぜ、仲の良いふたりだからこそバウリニューアルをしてほしい、と思ったのでしょうか。
ゆかさん:言葉にしなくても伝わるくらいお互いを大事に思っているふたりですが、その気持ちを言葉にしてお互いに伝える機会はそんなに多くないなと思ったんです。だからこそ、その機会をつくることに意味があるんじゃないかな、と思いました。
ひろともさん:両親のようにいつまでも仲の良いふうふでいたいと思ってる僕たちは、子どもが生まれてからもふたりで出かける時間を積極的につくって、お互いへの想いを伝える機会を大切にしています。そんな僕たちだから、仲の良い両親が想いを伝え合う機会をつくりたいと思ったのかもしれません。
ゆかさん:自分たちの結婚式を振り返ると、結婚式はふうふのお互いへの想いが最高潮になる瞬間のようにも感じます。ふたりのスタートで、一番気持ちが盛り上がるというか。でも、実際には結婚生活が長くなっていくと、子どもが生まれたり、ふたりの時間も減っていったり、だんだんお互いへの気持ちを確認する機会も少なくなっていくと思うんですよね。それもあって、私たちは数ヶ月に1度ふたりで出かける時間をつくるようにしていて。その時間があるから「この人のことが好きだな」と相手への想いを再確認できています。
バウリニューアルもその延長線上にあるイメージで、両親にもそういう機会をプレゼントできたらなと思いました。誰の目から見ても想い合ってるふたりだからこそ、お互いに伝えきれてない想いを伝え合う機会をつくることに意味があると思って。想いを伝えるというのはきっかけがないと意外とできなかったりするから、想いがあるふたりにこそ機会が必要なんじゃないかな、と。
ひろともさん:あとは、母が以前から「赤いドレスを着てみたい」「子どもたちも孫もみんな集まって家族の記念写真を撮りたい」と言っていて、いつか叶えてあげたいと思っていたんですよね。両親の結婚祝いに何かしたいなと考えていたとき、妻からバウリニューアルの話を聞いて。この機会に母の夢も叶えられるんじゃないか、と思いました。
-なるほど。実際、バウリニューアルを提案したときのご両親の反応はいかがでしたか?
ゆかさん:お母さんは「ドレスを着てみんなで写真を撮れるなら」、お父さんは「お母さんがやりたいなら」と言っていました。
ひろともさん:まずふたりとも、「バウリニューアル」と言われてもピンと来ていなかったですね。よくわからないけど「子どもたちがこんなに勧めてくれるなら」という感じでスタートしました。
両親の世代的にも、ちょっと刺さりにくいものだったのかなと思います。うちの母は「かわいいドレスを着てみんなに見せたい」という思いがあるタイプでしたが、そんな母でも迷う気持ちがあったようなので。人から強く勧められるきっかけがないと、自分たちで「やってみよう」とはなりにくいかもしれません。
ゆかさん:確かに、自分たちで企画してやるというのはかなりハードルが高いと思います。結婚式のように一般的でもないし、気恥ずかしさもありますよね。誰かに背中を推してもらうきっかけが必要だろうなと思います。今回私たちも結構強く勧めてしまったのですが、今となっては両親を説得してよかったなと思います。
言葉や感情などソフト面こそが本質であり、大事にしたいこと
-バウリニューアルをIWAI OMOTESANDOで挙げることとなった経緯を教えてください。
ゆかさん:私たちは、2019年にIWAI OMOTESANDOで結婚式を挙げているんです。他にもいくつか見学したのですが、「そもそも、なんで結婚式を挙げたいのか?」「結婚式を経て、どうなりたいのか」という本質にアプローチしてくれたのがこの場所でした。ここで結婚式を挙げたら、きっとものすごく意義のある時間が過ごせると思って決めたんです。実際、自分たちの結婚式もすごくいいものになって。
そんな自分たちの結婚式の経験があったので、バウリニューアルもCRAZY WEDDINGに相談することにしました。
ひろともさん:僕はもともと、結婚式は「両親やゲストに感謝する場」だと考えていました。だから、両親への手紙を新婦だけが読むとか、ゲストと距離があるとか、結婚式の“当たり前”に違和感を持っていたんです。新郎も両親に手紙を書くし、ふたりもゲストと同じテーブルに座るというIWAI OMOTESANDOのスタイルを聞いて、ここなら自然な形で感謝の気持ちが伝えられそうだな、と思って。結果的に、ここで結婚式を挙げて本当によかったと思えるものになりました。
そんな結婚式をつくるCRAZY WEDDINGなら、両親がお互いの気持ちを伝えあえる場を、自然な形でつくれるんじゃないか、という期待もありました。
-そうだったのですね。バウリニューアルはまだ、CRAZY WEDDINGでも事例が多くないですが、どのように内容を決めていったのでしょうか。
ゆかさん:まず、私たちの結婚式を担当してくださったプロデューサーの渡部さんに「両親のバウリニューアルをしたい」と相談しました。
ドレスを着たいとか、家族写真を撮りたいとか、なんとなくやりたいことはあるものの、私たちも両親も具体的なイメージがまだなくて。
そんな状況でも、プロデューサーの渡部さんは「一緒に考えながら良い式をつくりましょう!」と言ってくれて、とても心強かったです。「どうしたら両親がお互いに気持ちを伝えられるか」「みんなに参加してよかったと思ってもらえるか」を一緒に考え、両親がお互いに想いを伝えられる式になるよう導いてもらいました。
ひろともさん:結婚式とかセレモニーって、ハードの面を重視されがちだと思うんです。きれいなドレスを着て、景色の良い場所で式を挙げて。実際、ハードがしっかりしていれば良い式になるんだろうな、と思います。
でも僕は、言葉とか感情といったソフトの面こそが本質であり、大事にしたいと思っていて。結婚式の準備で「どういう人生でしたか?」「これからどんな人生にしたいですか?」と本質を問われるのは、CRAZY WEDDINGくらいじゃないかと思っています。僕たちの結婚式でそれを実感していたから、安心してお願いできました。
「あなたのことが大切です」と伝え合う場所をプレゼントできた
-では、バウリニューアル当日についても教えてください。どのようなことをしたのでしょうか。
ゆかさん:結婚式と同じように、挙式とパーティーを行いました。挙式では、お母さんに夢だった赤いドレスを着てもらって。子どもや孫たち全員が並ぶセレブレーションホールで、お母さんからお父さんに手紙を読んだり、お父さんからお母さんに感謝の言葉とともにブーケを渡したり、家族が集まって写真撮影もしました。
パーティーでは、みんなで食事を囲みながらふたりの思い出を綴った動画を見たり、子どもたちから歌のプレゼントをしたり。終盤ではお父さんからお母さんへ手紙のサプライズもありました。
-特に印象に残っているエピソードを教えてください。
ゆかさん:お母さんからお父さんに向けた手紙ですかね。
ふたりが結婚式を挙げたときの話があって、お父さんからゲストに向けての挨拶で「幸せだったと言える人生をふたりで送りたい」と話していたそうで、その言葉を40年経った今でも鮮明に覚えていると。
これまでも分かっていたつもりでしたが、本当にこのふたりは、お互いを大事に思い続けてきたんだなと実感して、感動して泣けちゃいましたね。
ひろともさん:父と母がお互いについて話しているのを聞く機会って、子どもの僕たちもなかったですからね。ふたりがずっと仲が良いのは知っていたけど、実際にどう思っているのか、どうしてそんなに信頼し合っているのかは聞いたことがなかったから。
ゆかさん:お父さんにもお母さんへの手紙を書いてもらったのですが、「今更恥ずかしい」とはじめの頃は乗り気じゃなかったんです。私たちから何度お願いしても、OKしてくれなくて。でも、当日はちゃんと書いてきてくれていたんですよ。
手紙を書くために結婚生活を振り返っているうちに「自分にとってずっと大事な人だ」と再認識できたと言っていて。それが本当に嬉しかったです。
いくら仲が良くても、恥ずかしかったり忙しかったりして、お互いに伝えられてないことってあると思うんです。ふたりが結婚してから40年という節目に「あなたのことが大切です」と伝え合う場所をプレゼントできたんじゃないかと思っています。
ふたり(両親)の人生だけでなく、家族の人生にも必要な時間だった
-ご両親のバウリニューアルを振り返ってみていかがですか?
ゆかさん:本当にやってよかったなとあらためて感じています。最初はそこまで乗り気ではなかった両親も、終わったあとは「最高の時間だった」と言ってくれていました。
口下手で恥ずかしがり屋なお父さんは、当日の写真を見返したりしていると「恥ずかしいからやめてくれー」と言っていますが(笑)。母に手紙を書いたり想いを伝えたり、こういう機会がなければなかなかできなかったんじゃないかなと思います。私たちからお願いして書いてもらった手紙ですが、「こういう機会をもらえて感謝している」と言ってくれていて。やっぱりこの機会をつくれて本当によかったなと思いました。
お母さんは、夫がプレゼントしたバウリニューアル当日の様子をまとめた動画を毎日見て泣いてるようで。「いつか老人ホームに入っても毎日見返すんだろうな」なんて言っていて(笑)。両親の反応を見ていても、本当にいい機会だったんだなと思います。
ひろともさん:僕も「やってよかった」という感想に尽きますね。とにかく最高の時間でした。特に、両親がお互いにどう思っているかを知れたのがよかったです。
子どもである僕でも「ふたりはお互いのどんなところが好きなの」と聞く機会はないし、そもそも恥ずかしくて聞けません。でも、自分の両親がどう出会って、どんなところに惹かれて一緒になって、ふたりでどんな人生を歩んできたか、37年生きてきて初めて知って。バウリニューアルをやっていなければ知ることができなかったと思うと、僕たち子どもにとっても人生においてとても大切な機会だったと思います。
最初は両親のために何かしたいという気持ちで企画しましたが、両親の想いを知ることが家族にとってもこんなに意味のあるものだとは思いませんでした。
–ありがとうございます!最後に「ご両親のバウリニューアル」という一大プロジェクトを経た今の気持ちを、お聞かせいただけますか?
ひろともさん:そもそも、なんでバウリニューアルというものをやりたいのか。バウリニューアルで何を実現したいのか。そんな本質的な問いかけを常にしてくれたから、両親にとっても、僕たちにとっても意味のある時間をつくることができたんじゃないかな、と思っています。
両親に何かモノや旅行をプレゼントすることも素敵だと思いますが、こうして想いを伝え合う場をつくることもすごく価値があるなと思いました。この場がなければ伝えられなかったこと、一生知らないままだったかもしれないことが本当にたくさんあって。家族にとっても一生の思い出になっています。まだまだメジャーなセレモニーではないですが、少しでも多くの家族がこの場を体験できるようになるといいなと思います。
ゆかさん:SNSを見ていても、日本国内でバウリニューアルをやっている人ってほとんど見たことがないんです。そんななんだかよく分からないものを「一緒につくりましょう!」と前向きに受け止め、チャレンジしてもらえて、結果的にとても素敵なセレモニーを両親にプレゼントできました。
私たちふうふも、大々的にではなくても、想いを伝える機会はつくっていきたいなと思うきっかけにもなりました。結婚生活が長くなっていくと、伝えることが恥ずかしくなってくるだろうから。形に残して伝える機会を大事にできる家族でありたいです。
企画・編集:池田瑞姫、夜久早紀
執筆:仲奈々
撮影(一部):kuppography
デザイン:岩田優里