大人の遊び場として開発された新複合施設「THE PLAYHOUSE」とは? - BLBG、CRAZYの両社代表による“くわだて”

2019年2月、CRAZYは初の自社ブランド会場「IWAI OMOTESANDO」をオープンしました。それから1年半が経過したこのタイミングで、「VULCANIZE London(ヴァルカナイズ・ロンドン)」を運営する英国ブランド専門商社、BLBG(ブリティッシュ・ラグジュアリーブランド・グループ)株式会社と共同開発で新会場を設立します。

場所は、美術館やギャラリーが立ち並ぶ文化的な土地、南青山の骨董通り。
館名はTHE PLAYHOUSE

この記事では、新店舗開発へのリスクが伴うと思われがちな経済の状況下で、その決断に至った背景と展望を両社の代表に伺いました。インタビューの中で、今回の取り組みは“くわだて”と表現したくなるほど、遊び心と好奇心に満ちたものだと感じています。

新店舗に関する話のみならず、この時期に新しい挑戦を始めようとしている企業の皆様にとっても、刺激となるような、両社代表のエネルギッシュな雰囲気を感じてもらえたらと思います。

田窪寿保氏(左)
ヴァージン・アトランティック航空日本支社を経て、1999年グローブ・トロッター ジャパン株式会社代表取締役に就任。2004年英国グローブ・トロッター社取締役副社長として英国に赴任 (ジャパン社社長兼任)。2006年帰国後、英国ブランドの専門商社、BLBG(ブリティッシュ・ラグジュアリーブランド・グループ)株式会社代表取締役となり、2009年にブランドビジネスとして日本初の業態となる、ブランド・アーケードショップ「ヴァルカナイズ・ロンドン」を、東京・南青山の骨董通りにオープン。現在では、東京・銀座と愛知・名古屋にも展開。“良いものを一生使い続けることが本当のラグジュアリ―”という英国の伝統的な価値観を提案している。映画「007」のファンであり、著書に『ジェームズ・ボンド 仕事の流儀』『ジェームズ・ボンド「本物の男」25の金言』(いずれも講談社)がある。

森山和彦氏(右)
大学卒業後、人材コンサルティング会社に6年半在籍。2012年7月に株式会社CRAZYを創業。完全オーダーメイドのウェディングプロデュース事業「CRAZY WEDDING」を運営し、「情熱大陸」をはじめ数多くのメディアに取り上げられる。2019年2月には初の自社ブランド施設「IWAI OMOTESANDO」をオープン。2020年4月にはオンライン結婚式サービスの提供を開始するなど、結婚式に新たな選択肢をつくり続けている。経営の第一優先を健康とし、創業から毎日手作りの自然食を提供する他、全社員で世界一周旅行などユニークなカルチャーを有する。日本初の睡眠報酬制度の発案・導入では、世界各国のメディアから、その独自の経営手法が注目を浴びる。

- 2社で共同開発をすることになったきっかけを教えてください。

田窪さん:

初めて、CRAZYさんを知ったのが、某シャンパンブランドのプレス向けパーティーでIWAI OMOTESANDOに訪れた時でした。僕は、自分の家ですら構想5年、作るのに5年をかけるくらい、建築に対してこだわりがあるタイプなのですが、会場に入った瞬間に、その作り込まれた空間をみて鳥肌がたったんです。深い哲学が隅々まで散りばめられているし、それでいて遊びもあって「ここはなんの会場だろう!?」と。

後から結婚式をやっている会社と知ったのですが、社名に「CRAZY」と使っているセンスにも驚かされました。日本人は普通選ばないですからね。

さらにそこで、担当の近藤さん(近藤 泰弘:店舗開発を手掛けたアートディレクター)に話を聞いて、彼自身の魅力や、考え方に大いに共感し、こんな若くて優秀な社員を束ねている代表はすごい人なんだろうなと興味を持ちました。

森山さん:
そう言っていただけて嬉しいですね。

CRAZYでは、ちょうどその頃、新しい式場になる物件を探していたのですが、田窪さんと話した近藤から、骨董通りにあるBLBGさんのビルを紹介されて見にいったんですね。最初は金額的に難しいだろうなと思っていたのですが、田窪さんとお話した時に、とにかくワクワクして…。お互いの遊び心を原動力にして、何かできたら面白いと思って検討しはじめたんです。先輩企業だからこそ、予算的なこととかは、頼らせてもらえるんじゃないか、という下心もありましたね。(笑)

田窪さん:
森山さんは、こういうところが上手いんですよね。(笑)

改めて、森山さんの話を聞いて、CRAZYが持っている「ヒューマンセントリック(人間が主体)」の考え方にすごく魅力を感じまして…。これまで、我々は、「ブランドセントリック」な考え方のもと、ブランドとしての佇まいや商品のクオリティーに注力をしていたのですが、働くメンバーを楽しませることや、お客様の購買体験を楽しいものにしていくということを、よく考えていらっしゃるのが、印象的でした。お互いの強みを生かしたら、新しい何かが生まれるんじゃないかとワクワクしたんです。

世の中の情勢的には、なかなかリスクのある決断だと思うのですが、決め手となったのはなんだったんでしょうか?

田窪さん:
本音を素直に話せば、VULCANIZE Londonというブランドが、創業当初の熱量が失われていっている気がしていたんです。閉塞感があるといいますか。商品のラインナップも同じようなものになってきたし、一生懸命働いてくれているスタッフも、少しずつ慣れみたいなものが生じて、エネルギッシュに楽しんでいる雰囲気ではなくなっているように感じたんです。

森山さん:
きっと、どんな企業にもあることですよね。経営を最適化していくことによって、生産性を高めていくのが定石ですが、その中で、どんどん「情熱」みたいなものは失われていく。

田窪さん:
本当にそうですね。僕らも最適化の罠に嵌っていたのかもしれないです。例えば、高い基準のサービスを届けようと思って、スタッフの接客を数値化しているのですが、「接客ポイントを、後0.5点あげるにはどうしたらいい?」みたいなコミュニケーションをとるよりも、本当は「いま、幸せに働いている?」って問いかける方が楽しいし、本質的じゃないですか。

そういうことを忘れてしまっていたなと。どうにかして、この現状を打破したいと思ってた時に、森山さんと出会ったんです。

森山さん:
CRAZYとしても、パーパスを新設しようと動いていた(新設したパーパスに関してはこちら)最中であり、新しい挑戦をしたいと思っていました。ただ、新型コロナウィルスの影響もあって、自社だけでやるのは難しいかもしれないという中で、BLBGさんと出会うことができたのは、絶好のタイミングだったと思います。

さらにいえば、CRAZYはまだ、奇抜な結婚式だけを扱っているイメージで見られることも多いのですが、骨董通りのエレガンスな建物でも式を挙げられるということも、ブランドの進む方向性にとってはプラスに働くと思いました。

CRAZYからは「情熱」を、BLBGさんからは「安心や実績」を、お互いのフェーズに合わせて交換しあうことができるいいコラボレーションだと思っています。

- 館名の「THE PLAYHOUSE」には、どんな意味が込められているのですか?

森山さん:
一言で言えば「大人の遊び場」です。

さっきの話にも繋がると思うんですけど、「大人」になると、徐々に情熱は失われてしまうんですよね。それはきっと、経験したことあることが増えて、こうしたら上手くいく、とか、こうすべき、みたいなものを学ぶからだと思います。それ自体は悪くないけれど、その枠組みから離れた挑戦ができて、人生の中に、未知の楽しみを増やしていける場所も必要だろうと思って、そういう名前を付けました。

田窪さん:
僕も、この場所は大人にとっての、“サードプレイス”になり得るんじゃないかと思っています。家でもなく、仕事場でもなく、溜まり場や集まれる場所。お客様同士もそうですし、お客様とBLBGや、CRAZYさんが緩く集まって遊べる場所というのは面白そうですよね。

今までは、ブランドのクオリティーを上げるために、例えば制服を決めたり、挨拶のルールを作ったりしていたんだけど、それはある意味で、その人らしさを発揮することとは逆のことだったのかもしれません。だからこそ「THE PLAYHOUSE」では、働くメンバーから、その人らしさを解放することをやっていきたいです。

森山さん:
お客様にとって、ここは遊具が置いてある公園みたいなものです。遊具を使ってどう遊ぶかは自由なんです。そこには、自分自身が遊んでいるスタッフたちがいて、その楽しみを共有していく。「ここではこう遊んでください」ではなく、「私たちはこうやって遊ぶけど、一緒にどんな遊びができそう?」と巻き込んでいける場所にしたいですね。

具体的に各フロアではどんなことができるのでしょうか?

森山さん:
フロアの割り振りとしては、1F,2FはBLBGさんが運営するVULCANIZE Londonのブランドフロア、そして3Fはウェディングもできるイベントスペースとなります。(イベントスペースに関しての記事は後日リリースします)

ただ、普通に同居しているだけでは面白くないので、お互いの文化が混じり合うような設計をつくりたいと思っています。例えば、1F・2Fのブランドエリアでは、結婚式サービスのもつ、接客の楽しさや喜び、笑顔みたいなものを積極的に取り込んでいき、3Fのイベントスペースには、ブランドのセンスや誠実さ、クオリティーの高さなどを反映させていく。

そうやって、「サービス」のCRAZYと「プロダクト(ブランド)」のBLBGさんが融合することで、建物全体がこれまでにない体験価値を提供できる場所になることを目指しています。

田窪さん:
実際に、館のスタッフ全員で共通の研修をしたり、“同じ釜の飯を食べる”体験を通して、世界観の浸透や連携の強化を図っていくことも考えていますね(笑)

そもそも、“Vulcanize”という言葉は「ぴったりくっつける」という意味もあるんです。私たちは共同で一つの館を運営するので、お互いの文化をくっつけながら南青山に新しいランドマークを生み出していきたいです。

お互いに期待しあっていることはありますか?

田窪さん:
情熱の継続性ですかね。もちろん、僕も頑張りますが、やはり人の感情を専門に取り扱っているCRAZYさんに、モチベーションを保ち続ける仕組みについて教えて欲しいなと思っています。

森山さん:
そのキーポイントはいくつかあると思います。

まずは、パーパス(=共通目的)の伝道師ですね。両社の垣根を超えて、パーパスを伝播させていく存在。「THE PLAYHOUSE」の意味や目的をしっかりと作り込んで、共有した上で、それを信じて実行していく人たちが大事になると思います。

そして、組織的にいえば、「入れ替わり」も大事な要素だと思います。若い価値観や情熱を持っている人とのコラボレーションしていくことで、組織に情熱を入れていく。人が流動することによって起きる、様々な不破やゆらぎも、熱量を生み出すには大切なことなんです。

そういう意味で、実は田窪さんに期待していることがあるのですが、言ってもいいですか…?(笑)

田窪さん:
はい、なんでしょう?(笑)

森山さん:
この「THE PLAYHOUSE」に、いろいろなブランドを持ってきていただいて、普通に考えたらやらないだろうということや、タブーにも挑戦するような、コラボレーションを実現しませんか?

田窪さん:
いいですね!やりましょう!(笑)
僕の過去の歴史は、そういうもので成り立っていますからね。

ヴァージン・アトランティック航空に新卒入社して、リチャード・ブランソン(同グループ会長)の鞄持ちをしていたときには、彼の、だれも思いつかないような、“クレイジー”だけど人を魅了するアイディアを目の前でみてきました。

その経験を経て立ち上げた、GLOBE-TROTTERでも、HERMESやGUCCIなどの名だたるブランドとの取り組みのほかにも、「イギリス空軍の戦闘機に乗りたいな」と思ってロイヤルエアフォース(英国王立空軍)とコラボレーションしたこともあります。(笑)

こういうのは、好きだからできるんですよ。ビジネスベースだとやれないかもしれないけど、話してて盛り上がったから、なにかやってみようという感じでしたね。

森山さん:
僕も戦闘機乗りたいです(笑)

でも、本当にそういう「やりたい」とか「好き」という熱量が大事なんですよね。イギリスの未発掘な新しいブランドと、王道のブランドとかもミックスしていく場所になると面白そうですね。

田窪さん:
まるで中野ブロードウェイやヴィレッジヴァンガードみたいに、混沌としているけれど、そこに行けば偶発的に何かが起きるという期待感がある、エネルギーの高いところにしたいですね。

現段階では、想像したくてもできないほど、様々なことが起きる複合施設になりそうですね(笑)それでは、最後に意気込みも含めて、展望を教えてください。

田窪さん:
僕は「Beyond Expectation」という言葉をいつも大事にしてるんです。人の期待を圧倒的に超えて、驚かそうという意味です。

今回の出会いがなければ、きっと交わることがなかった2社が、これから世の中にどんな一石を投じていけるのかが、本当に楽しみです。何よりも、長い間ブランドをやってきた僕自身が、受けてみたいと思えるサービスを生み出していこうと思っているので、期待してもらえたらと思います。

森山さん:
今の時代、明確な購買欲求があるならば、ECサイトで買えばいいですよね。だから、わざわざ店舗にくるお客様が求めているのは、想定外の出会いなのだと思います。ふらっと行ってみたら、なぜかスタッフの情熱的な話を聞く機会があって、興味なかったものまでも買いたくなってしまう。そんな体験から、サービスやものを買うような流れがつくれると面白いかと思います。

田窪さん:
VULCANIZE Londonのお客様にも、新しい出会いや体験を届けていきたいですね。

森山さん:
IWAI OMOTESANDOを出した時は、「会場を持つことにしたんだ」とすごく驚かれたのですが、多分今回はさらに驚いてもらえると思います。なぜなら、横展開して作ったわけではなくて、まったく新しい挑戦だからです。

この会場で行うウェディング自体は、値段感も抑えていけるように開発していますし、ウェディングだけではないパーパスに沿ったいろいろなことで、CRAZYが貢献させてもらえる幅が広がったと捉えていただければと思います。

田窪さん:
表参道の、ど真ん中にランドマークを作るワケですよ。こんな場所で、こんな規模で、好き勝手やらしてもらう機会はなかなかないですよ。一棟まるまる、プロデュースできるなんて。

森山さん:
CRAZYのアイディアや情熱と、BLBGさんの細部へのこだわりや佇まいが融合していく中で、命が吹き込まれた会場にしてみせます。どなたでも来館できるので、ぜひ遊びにきてください。


編集後期
インタビューの中で、最も印象的だったことは、お二人が昔からの友人のように、自然体で楽しそうな姿で話されていることでした。純粋に遊び心を共有しあう中で、利害を超えた関係性ができていることを感じて、つい心が踊ってしまいました。「THE PLAYHOUSE」は間違いなく、両者の関係性だからこそ、実現している部分があると思います。現在はまだ工事中で立ち入ることはできませんが、内装ができてきたタイミングで、中身をご紹介できればと思いますので、今後のリリースも楽しみにしていてください。

執筆&編集:佐藤史紹

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