2017.11.30

Article

「職務経歴:専業主婦歴9年」。働くママの今の想い

「女性活躍」の言葉を最近よく聞く。子育てをしながら仕事でも活躍している素敵な女性はメディアでも、ずいぶん取り上げられるようになった。女性が活躍する、それ自体はすばらしいことだ。

しかし、「私はスーパー・ワーキングマザーにはなれない」「子供との時間をちゃんと確保したい」と専業主婦を選ぶ女性も多い。夫の転勤や子供の性格などの事情で働き続けられないことや、子育てをしながら働く環境が社会的に万全ではないという現状もある。

「女性活躍」の追い風の強さにあてられて、働いていないことを負い目のように感じる人もいるし、専業主婦だった人がいざ復職しようとすると、キャリアのブランクを不安に思うことも多いと聞く。

キャリアの中断なくバリバリ働くキャリアウーマンではなく、専業主婦を経験して復職したママの、本音を知りたい人が多いのではないか。そう考えて、現在CRAZYのウェディング事業部で正社員として働く津吉静香さんと、労務部でリベロ(アルバイトに似たCRAZY独自の仕組み)として働く山本奈緒子さんに話を聞いた。

津吉さんは専業主婦を9年経て復職しており、現在中学生の男の子、小学生の女の子を持つ。山本さんは専業主婦を6年経て復職した、小学生と幼稚園の3人の女の子をもつママだ。

ハイヒールの女性を見ると、社会から置いていかれる気がした専業主婦時代

−最初に、専業主婦になった経緯から教えてください。

津吉:結婚を機に夫の仕事の関係で、東北地方に引越しをしたんです。引越し先で職探しはしましたが、当時結婚したての若い女性が、知人もいない土地で再就職するのはとても難しくて。それに、子供が生まれてからは「子育てを私一人で自由にやりたい」と思ったので、夫に仕事をお任せし、私は子育てに専念することにしました。

山本:私は育休を経て復職するつもりだったんです。でも育休中に迷いが出てきました。勤務地と自宅が遠かったのもあって、保育園に子供を預けて働くのは大変だろうとわかってきたし、そこまでして働く意味があるだろうかと考えて……それで専業主婦になりました。

−専業主婦時代はどのように過ごしていたのですか?

津吉:一人目は男の子だったのですが、いろんなことを自分でやりたい子でした。だから、出かけるときにうっかり彼の意に沿わずに靴を私が履かせてしまうと、もう大変。「ああ、今日はもう出かけられないから買い物に行けないなあ。ご飯も食べられない」と思うことも。それから、親族や知り合いのいない土地で子育てをしていたので、何かあったときに相談できる人がいないのは大変でしたね。

山本:私は子育てのある一時期の記憶が全くないんです。寝付きの悪い赤ちゃんで、一晩に10回以上起きるから私も全く眠れず、上の子のイヤイヤ期が重なって、精神的に参っていたんだと思います。夫に聞くと「子供をかわいいと思っているようには見えなかった」と言っていましたね。

津吉:子育ての大変さって子供のタイプによってけっこう変わりますよね。「子育てなんて楽だった」と思う人がいても、それはラッキーだっただけなのかも。

山本:そうですね。私は「もう、寝てよぉ」と叫びながら、投げるように子供を寝かしつけていたんですって。一切覚えてないんだけどね。見かねた夫が習い事をするように勧めてくれました。自分の時間を作らなきゃいけないよって。

津吉:それはすてきだね。専業主婦って、なんだか休んだらいけないような空気があるもの。

山本:そうそう。専業主婦は24時間365日営業なのに、なぜか「専業主婦は楽だ」と思われがち。ちょっと休んだら、自分でもなんだか罪悪感を感じるし。

津吉:考えてみたら、主婦業って給料もボーナスもないし企業だったら超ブラックですよね。

山本:本当にそう。それから、専業主婦って見えている世界が狭くなるから、社会から置いていかれる感覚もあるよね。

津吉:街中でハイヒールで颯爽と歩く女性を見ると、自分の子育て中のカジュアルな服を顧みて、寂しい気持ちになったりもしたな。

ママが働き始めたら、家族が「チーム」になってきた

−そんな専業主婦時代を津吉さんは9年、山本さんは6年続けた後に、働き始めたと聞きましたが、今現在は、パートナーの方と家事分担をしていますか?

津吉:うちはもともと私一人で家事や育児を自由にやりたいと、夫と相談してから子供を産んだので、夫との家事分担はありません。けれど、夫ではなく子供たちが家事をかなりやってくれています。息子は週3日晩ご飯を作ってくれるんです。忙しくなるともっと作ってくれることもあるかな。

山本:うちは夫が3、4割くらい。子供はまだ小さいから晩ご飯は無理だけど、朝ご飯は作ってくれることもあります。

−お子さんがご飯を作ってくれるのはありがたいですね! お子さんたちは、それに対して、どういう気持ちなのでしょう。

山本:うちは娘3人なんですが、みんな台所に立つのは好きですね。台所に3人がぎゅうぎゅうと押し合いへし合いして手伝ってくれて(笑)。それからお手伝いをしたらシールを貼るシートを作って「シールが90枚たまったら外食しよう」と言っているので、3人が競い合ってお手伝いしてくれています。

津吉:息子は理科が好きなので、「鶏肉の殺菌に必要な温度とタンパク質が固まる温度の関係は……」という具合に理科の実験としてやってくれているようなところがあります。娘も私も息子が大好きだから、おいしいおいしいと感謝しながら食べていて、息子もまんざらでもなさそう。

息子って言ってみれば母親にとっては最愛の男性だから、何をしてくれても愛おしいんですよね。ときどき料理をしてくれる息子を見て、私の中で「好き」が止まらなくなり、ぎゅーっと抱きしめちゃって「もう、包丁持ってるときは危ないから!」って怒られたりします(笑)。

−お二人とも、お子さんが家事を手伝ってくれるように育てているのですね。

合わせてこちらもどうぞ:「社内総出子育て」は三方よし!?パパママ、社員、子供たちのメリットに迫る!

津吉:家事を手伝ってほしくてそう仕向けたわけではないんです。息子が将来どんな人と結婚するかわからないから、私は彼の可能性は広げておきたいと思っていて。

「家事はお母さん・妻がやるのが当たり前」という発想は、生まれながらに備わっているものではなくて社会が教えているものですよね。でもこれからの時代は認識も変わっていくだろうから、家事をやる必要が出てきたときに息子が何もできなかったらよくないと思ったんです。

だから「家事っていうのはできる人がやるものなんだよ」「『これをやって』と言われてやるのはお手伝い。やりたくないときでもやらなきゃいけないことが家事なんだよ」と言いながら育ててきたんです。仕事が忙しいとかなり子供達に頼ってしまうところがありますが、本当にありがたいなって感謝しています。

−ママが仕事を始めたことで、みんなで協力し助け合う家族になったのだろうなと感じました。

山本:そうですね。私は土日に出勤する日も多いのですが、そうすると夫が私にはできないような方法で子供達と遊んでいて。私が専業主婦だった頃の夫は、家事を私の指示を待ってやるようなところがありましたが、今は楽しみながらどんどんやってくれています。家族がチームとして機能している感じですね。

それに、意外と夫のビジネススキルが家庭の中でも使えるようですよ。たとえば娘が何か悪いことをしちゃったときに、私ならギャーギャー叱っちゃうけれど、夫は娘を別室に連れていって落ち着いて話を聞いてやったり。うまいなあ、と感心することがよくあります。

−ママが専業主婦だと、パパはママに頼ってしまいがちだけれど、本当は子育てが上手なパパも多いのかもしれませんね。

「職務経歴書に『第一子出産』と書きました」

−今は家族も協力的で順調に働いているように見えるお二人ですが、専業主婦から復職するときに、キャリアのブランクが気になる人も多いようです。お二人は悩みませんでしたか。

山本:私、職務経歴書に「○年、第一子出産」等と書きましたよ。子育てって、立派なキャリアだと思うんですよね。

津吉:たしかに、子育てで身についたビジネススキルは多いかも。時間管理力、危機対応力、チームビルディング力。特に、周囲のモチベーションを高める方法。子供って、叱るだけではダメだし、褒めたり、目標を設定したり、いろんな方法で育てていきますよね。それって仕事にも使えると思います。

山本:周りの社員も子供だったんだなあと思うと、親心を感じて親身に対応できるということもありますしね。

−確かにそうですね。どんなクライアントや上司だって、赤ちゃんほど要求や指示が難しいことはないですもんね。ママ業は職務経歴書に書ける、立派な職歴だなと感じました。

(END)

「女性活躍」が叫ばれる時代だからといって、今ママとして子育てを頑張っている女性が、働いていないことを引け目に感じる必要はない。世間から置いていかれるなんてこともない。ママ業は大変な仕事。もし復職を希望する時が来たら、専業主婦だった方は経験を棚卸しして、キャリアとして臆せずアピールできるのではないか。お二人の専業主婦経験者の話は、そんな実感を持たせてくれた。

合わせてこちらもどうぞ:
専業ママだってワンオペ育児は辛すぎる。悩みながらも「オフィスで子育て」を選んだパパママ社員の想いとは?

Editor:水玉綾(@maya_mip
Photo:小野瑞希

FELIX 清香SAYAKA

greenz.jp、Pouch、「ソトコト」等のWEBマガジン、雑誌での執筆や書籍構成、オウンドメディアの立ち上げ等を行なっている。国際交流やエシカル、児童文学、体感型アートに興味あり。プライベートでは、Give & Takeではなく、Give & Giveで経済が回るかどうかをさまざまな取り組みで実験する「ギフト経済ラボ」のメンバーとして、カルマキッチンというカフェイベント等の運営に参加している。


CRAZY CRAZY WEDDING IWAI OMOTESANDO BENE