2017.02.20

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未来の組織論 vol.4  会社での対人関係を諦めている人へ 前編

“ すべての悩みは「対人関係の悩み」である ”

これはアドラー心理学の教えを説いた書籍「嫌われる勇気」の一節にある言葉です。対人関係は、働く人々にとって避けては通れないものでしょう。

そうした仕事における対人関係より良くすることは、日々の悩みを軽減し、個人を幸せに導いてくれるかもしれません。でも、それだけではありません。

前回の記事:人間らしい働き方へ導く「感情のマネジメント」では、本音で話し合える対人関係を構築することが、仕事の生産性も上げるという仮説を説いてきました。そのために株式会社CRAZYでは毎朝シェアの時間*をとっていることを紹介させていただきました。

「個人の幸せ」そして「仕事の生産性」の両方をあげるために大切な「対人関係」。では、そんな対人関係を良くするにはどうしたら良いのでしょうか。 前編と後編に分けてこの命題の答えを探していきたいと思います。

対人関係の鍵となるもの

そもそも「対人関係が悪いのはなぜか」という原因を、私自身が同期と喧嘩したシーンを思い返して考えてみました。それは同期が請け負う仕事の一部を代わりにやってほしいという依頼から始まりました。「マストだから」とたたみ込むように早口でいう姿に、不快感を覚えた私。数日この状態が続き、なんだか気まづい関係性に。

こんな風に気まづくなった理由を考えてみると……

→コミュニケーションでつまづいたから

→最初は相手の真意がわからず不安になったから

→本質的にはいつもやつあたりされているように感じたから

→それは過去に相手の言動に傷ついた経験があるからかな

→私は兼ねてから勝手に相手を悪者だと判断しているんじゃないか

→だからこそ相手に愛情や感謝を日頃から伝えきれていなかったかも!!??etc…

こうして見えてきたのは、対人関係を悪くした発端は「コミュニケーション」であり、その根底にあるものは大げさに言うと「相手を敵だとみなしてしまうから」なのかも? ということでした。彼の仕事の仕方に不快感を抱いたのだ! と他責にしていた私がお恥ずかしい。

この話を友人にした時に、
NVCというコミュニケーションの方法を教えてもらいました。

みなさん、NVCをご存知でしょうか?

CRAZYの両国オフィス4階の奥に進むと、まるでドラゴンボールの精神と時の部屋を連想させるような「パタゴニアルーム」という和室がある。入ると同時に携帯やPCといった電子機器をタンスにしまうことがルール。CRAZYでは、対人関係における衝突があると、この部屋で膝を突きあわせて本音で対話をすることもしばしば。

コミュニケーションも、選択できる?

NVCとは、非暴力コミュニケーション(Non-violent Comunication)の略であり、別名「人を思いやるコミュニケーション」とも呼ばれています。これは、インド独立の父であるマハトマ・ガンジーの孫の、アルン・ガンジーさんが提唱しているコミュニケーションの方法。

相手に対する評価を交えずに行動を観察し、自分が抱いている感情と欲求を認知して、相手に要求を伝える形のコミュニケーションです。ちょっと難しいですね。どういうことなのか、私と同期との事例をもとに紐解いていきましょう。

「相手に対して悪者だ、やつあたりをしてきている!という評価を交えずに」、
「早口でしゃべりかけてくるという行動」だけがあることを認識。
そして早口で一方的にしゃべりかけられると
「私は悲しい気持ちになっている」ことを自覚します。

そしてその気持ちを抱いているのは、

「お互いを大事にする関係を築きたいと思っている」という欲求があるからだと理解するのです。

このように、
相手への評価ではなく、自分の感情と必要としていること・欲求に意識を向けることを選択すると、コミュニケーションが変わっていきます。

「やつあたりしないでよ!」と伝える代わりに「早口で話されると、お互いを大事にする関係を築きたいと思っているから、それが満たされなくて悲しい気持ちになるよ。もう少しゆっくり話してもらってもいい?」と建設的なコミュニケーションをとることができるのだとか!

私はこのNVCに出会ったとき、なんて素晴らしい方法なのだ!と目から鱗でした。その一方で、毎回そんな簡単に、自分の感情や必要としていることを認知しすることができるのだろうか、という疑問も。何か良いトレーニング方法があるならば知りたいところです。 後編では、対人関係をよくするためのこうした内省的知能を高めるにはどうしたらいいのか、紹介できたらと思います。

シェアの時間
CRAZYでは、今感じていることを共有する時間をシェアと呼んでいる。このシェアでは、“お休みの日に実家に帰って嬉しかった”という喜びの共有から、”彼氏と別れて悲しい”といったナイーブな話までざっくばらんに語られる。聞く側はそれを良い悪いと評価をするのではなく、全身で受け止める。このシェアをする文化こそが、CRAZYの人間関係を支えている。

参考文献

・岸見一郎 古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイアモンド社.
・マーシャル・B・ローゼンバーグ(2012)『NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法』日本経済新聞出版社.


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