2019.05.16

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【前編】「感情とビジネスの両立」を考える。心を殺して仕事をするのではなく、感情をシェアして成果をあげるには(CRAZY・アカツキ)

これまでビジネスの現場では、利益をあげるために効率化や合理性が重要視されてきました。その一方で、欲求や弱さも含めて常に揺れ動く「人間の感情」も、経営資源として注目を浴びつつあります。

働く一人ひとりの感情や心を大切にしながら、ビジネス成長を遂げていくには、何が必要なのでしょうか。この2つの要素の両立を目指す、株式会社CRAZYと株式会社アカツキが共同企画して始めたのが、感情×ビジネス(経営)をテーマにした「Emotion Business Summit」です。

第1回目は、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの取締役人事総務本部長・島田由香氏をファシリテーターに迎えて開催。CRAZYからは新事業CRAZY CELEBRATION AGENCY(通称:CCA)のエグゼクティブプロデューサー・オア明奈が、アカツキからはPRG(人事・広報部)の小能拓己氏が、熱く語り合いました。前編は、感情とビジネスの両立のためにCRAZY・アカツキそれぞれが取り組んでいること、安心できる場に必要なものとはーー。

「寝ずにがんばる」ではなく「しっかり眠れるようにがんばろう」

島田由香(以下、島田)氏:今回はEmotion Business Summitの第1回目です。テーマは「感情とビジネスは両立するのか」ですが、まずそもそも、なぜこのイベントをCRAZYとアカツキで行うことになったのでしょうか。

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役人事総務本部長 島田 由香 氏 慶応義塾大学卒業後、株式会社パソナを経て、2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院卒業。組織心理学修士号取得。その後、日本GE(ゼネラル・エレクトリック)にて人事マネジャーを経験し、現職。R&D、マーケティング、営業部門のHRビジネスパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターを経て現在に至る。米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLPトレーナー。日本の人事部HRアワード2016 個人の部・最優秀賞受賞。

オア明奈(以下、オア):実はCRAZYとアカツキは、お互いの朝会やミーティングに参加する“ 交換留学”のようなことを定期開催しているんです。その中で、両社には感情を大切にする共通点があることが分かってきました。

CRAZYとアカツキの2社だけではなく、他の企業の方々とも、この“ 感情とビジネス  ”についてディスカッションできたら面白いんじゃないかと思い、イベントを企画しました。

島田氏:これからこのイベント、どう呼びましょうか。「エモサミ」?

オア:エモサミいいですね。広がりそうです。

島田氏:では、エモサミの第1回目ということで。まずは両社の自己紹介をお願いします。

株式会社 CRAZYの新事業CRAZY CELEBRATION AGENCY エグゼクティブプロデューサー オア明奈 新卒から7年間、経営コンサルタントとしてフランチャイズビジネスの業績改善、新規事業の立ち上げに従事。2015年1月より(株)CRAZYに参画。CRAZY WEDDINGのプロデューサーとして3年で約100組のオーダーメイドウェディングをプロデュース。現在は組織の変革に寄与するCRAZY CELEBRATION AGENCYにて組織コンサル、イベントプロデュースを担当。

オア:株式会社CRAZYは、2012年にウェディング事業で創業しています。ビジョンは「世界で最も“個人”と“法人”の人生を祝う企業」。個人を祝う事業は、オーダーメイドウエディング「CRAZY WEDDING」とカスタムメイド型ウエディング「IWAI」の2種類ですね。

法人を祝う事業は、コンサルティング事業「CRAZY CELEBRATION AGENCY」で、私はこちらに属しています。時折、押しつけがましいものになってしまいがちな社内イベントを、唯一無二のユニークで美しいものにプロデュースするサービスです。

実はCRAZY自体、ウェルビーイング(well-being)*1をとても大切にしていて、経営の優先順位においても、「個人の健康」が1番で、2番目が「人間関係」なんです。つまり、ビジネスよりも個人のウェルビーイングをベースに考えるんです。順番が逆というか。まだトライアンドエラーを繰り返しながら制度設計を行っていますが、個人の幸せと企業の生産性をうまく両立できたらと思っています。

島田氏:CRAZYさんといえば、「睡眠報酬制度」が注目されましたね。導入後いかがでしたか。

睡眠報酬制度:1週間のうち、6時間以上の睡眠を5日以上とったら報酬がもらえる制度。詳細記事はこちら:日本初!「睡眠報酬制度」を導入。6時間眠るとお金がもらえるってホント?ー 健康経営特集 ー

オア:7割の社員が今も主体的に取り組んでいます。1週間のうち、6時間以上の睡眠を5日以上とったらポイントがもらえるのですが、貯まったポイントは社内の食事や1階にあるカフェで使えるんですよ。社員の睡眠時間平均は20分伸びました。

島田氏:本当は寝ていないのに「寝ている」と嘘をつく社員はいないんですか。

オア:今のところはいないですね。睡眠報酬制度を共同開発しているエアウィーヴ社の睡眠時間計測アプリ「airweave sleep analysis」で計測・管理をしているので、嘘をついてもバレちゃうんですよ。ちなみに、毎月1番よく眠った人を表彰しているんですが、先月表彰されたのは社長の森山でしたね(笑)。

役員が率先してやらないとこういうのって難しいじゃないですか。あと、たくさん寝ると社内で褒められるんですよ(笑)。“ 寝ずにがんばる ”ではなく“ しっかり眠れるようにがんばろうね ”っていうカルチャー。それが個人的にもいいなと思っています。

社員に実施したアンケートでは、睡眠報酬制度導入後は「寝ていなくて仕事に集中できないことがありますか」という回答結果が改善されましたね。

島田氏:私は全て「生産性」で見てしまう感じは好きではないので、個人の体感でアンケートを取るのが良いですね。では、次はアカツキの紹介をお願いします。

「力愛不二」。自立した個人の成長と、つながり合うことで生まれる幸せを

株式会社アカツキ RPG(RelationshipRroduceGuild:人事広報部)小能 拓己 氏
神戸大学国際文化学部卒。2009年大手マーケティング・リサーチ会社に新卒として入社後、2014年株式会社アカツキに入社。マーケティング・新卒採用担当を経て、2017年よりHEARTFUL領域のリーダーを担う。偉大な幸せ企業としてアカツキが成長していくべく、法人格”アカツキらしさ”に着目して各種企業文化推進活動を行う。

小能拓己(以下、小能)氏:アカツキは2010年に創業した会社です。東証一部上場していますが、社員数10人規模の頃から「関わる人の幸せと、長期的な事業成長を同時に実現する幸せ企業を目指す」と、今も変わらず言っています。

2018年7月にはビジョンを「A Heart Driven World. -ハートドリブンな世界へ-」に変更しました。アカツキは、一人ひとりがワクワクする活動をすることで、世界はよりよく動くものだと考えているんです。

もしも幸せが物質的なもの由来でしかないのであれば、幸せの総量は世界の物質量が上限になってしまう。でも、そうじゃないですよね。本当に幸せな時って、自分の外側にある何かや誰かじゃなく、内側にある“ 心が感じる価値 ”と繋がっているとき。

あと、ミッションは「Make The World Colorful. -世界をカラフルに輝かせよう-」なんです。アカツキはエンターテインメントを事業の軸にしているので、楽しい、悲しいっていう心を揺さぶり、豊かにするものを届けたい。心の変化が生き方をも変えることってありますよね。そうなると、世界がカラフルになるんじゃないかなと。

具体的な事業としては、5年ほどモバイルゲームを主軸にしていましたが、アウトドアレジャー予約サイト、エンタメビル「アソビル」のプロデュース、日本の映画コンテンツをハリウッド配給する事業など、あらゆるエンターテインメントを扱っています。

島田氏:紹介ありがとうございます。今回のテーマ「感情とビジネスとの両立」に関しては、社内でもよく話されているのでしょうか。

小能氏:そうですね。少林寺の世界で「力愛不二」という言葉があるんですが、愛のない力はただの暴力ですし、理想がいくら素晴らしくても届ける力がないと机上の空論で終わってしまう。だからこそ、両立が必要だと普段から話しています。

お客様に楽しんでもらい事業を成長させる一方で、仕事に携わる人の幸せも実現させたいんですよ。つまらなさそうに仕事をして、休日だけを楽しむって、人生もったいないじゃないですか。自立した個人が成長し、つながり合うことで幸せが生み出される、相互依存型のチームを作りたいと思っています。

島田氏:確かに2社には近しい思想があると感じますね。

オア:社内で使う言葉や意味合いも似ているんですよ。

感情を出し合える環境は、一朝一夕では作れない

オア:例えばCRAZYでは、ディスカッションとは別で、感情を共有する「シェア」という言葉があるんです。ここでは、今感じていることや、考えていることを話します。

小能氏:アカツキではそれを「分かち合い」と呼んでいるんです(笑)。クオリティが高いことや、ディスカッションをするのではなく、純粋に心の中に感じていることを10分間くらい話す時間なんですよね。

島田氏:安心できる場を作るために、感情を出し合う時間は大切だと思います。でも、実際はそうできていない企業の方が圧倒的に多いんですよ。2社はなぜ実現できているんでしょうか。創業者の思想も関係してそうです。

小能氏:そうですね。代表の塩田は、特に上場してからの2年間は、このことにより一層向き合い続けていたように思います。上場するときも「時には短期の数字を追わず、長期的視野で考えます」と宣言をしていましたが、やっぱり1年ほど経つうちに、目の前の数字へのプレッシャーが強く出てきたこともあって。だからこそ、改めて自分たちは本来どうありたいのかを日々考えていて。今は以前に増して、本質的なことへのメッセージが増えたように思いますね。

オア:CRAZYも最初から今の状態だったわけではないですね。1番辛かったのは、社員数が増えて、会社らしくなってきたとき。要は、お互いに思っていることを真っ直ぐ伝えにくい空気が流れ始めていたんです。

実は4年前には、代表の森山が全社員の雇用を見直した時期もありました。全員と面談をして、結果CRAZYを退職した人も。本当に一緒に働きたい人だけ残ったんです。そうした中で、自分たちの生活や仕事のあり方を何度も考え直してきているので、今があるのかな、と思います。

後編へと続きます:こちら

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(編集:水玉綾  写真:小澤 彩聖

参考

*1 ウェルビーイング(well-being):身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念。

卯岡若菜

「仕事・家族・どこにも属さない自分」の3つの自分の共存を目指すフリーライター。息子ふたりの母親でもある。生き方や働き方への興味関心が強く、人の想いに触れるのが好き。趣味は映画鑑賞、音楽鑑賞、児童文学執筆、弾丸旅行、読書。本や漫画はキノコのように増えるものだと思っている。


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