2017.06.15

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感情的な男、力持ちな女。あなたの組織に必要なのは男性性? それとも女性性?

「草食男子」という言葉が新語・流行語大賞のトップテンを獲得したのは2009年のこと。航空業界や保育業界では、呼称をそれぞれ「スチュワーデス」から「客室乗務員」へ、「保母」から「保育士」へと男女で統一した。背景に、女性イメージの強い職業で働く男性の増加がある。

アベノミクスは「女性活躍推進」を目玉とし、女性役員比率を2012年の1.4%から3.4%と2倍以上に引き上げた。経済でも政治でも、それまで男社会だった場面に女性の進出が目立つようになり、2016年に誕生した初の女性都知事・小池百合子氏の活躍は言うまでもない。

男は力持ちで、女性は感情的な訳ではないことは、周知の事実だろう。「男なら」「女なら」という言葉は、もはや死語のようにさえ思う。それくらい、「男性」「女性」という固定観念は、メルトしてきているのかもしれない。

男性だから「男性性」女性だから「女性性」は今、時代錯誤

「男は」「女は」という場面を、タイムスリップして考えてみる。

かつては、「男は狩猟」「女は家を守る」時代だった。男たちは地図も標識もないのに狩りに出て、道に迷わず帰ってきた。「その先にある梅の木と松の木がどんな位置関係にあり、向こうから見ればどう見えるのか」というような観測を、あらゆる空間で行うことができたからだ。これは、男性の持つある種の行動特性や思考特性「男性性」が生かされていたと言えよう。

「男性性」「女性性」とは、肉体的な性別とは別に、心理的・精神的な部分における「男性らしさ」「女性らしさ」を指す。一般的に男性性に分類されるのは、論理性、リーダーシップ、攻撃性、積極性、決断力、空間把握力や俯瞰力など。女性性とされるのは、感情、直観力、優しさ、包容力、柔軟性、共感性や臨機応変力などである。

時代が進み、地図や標識ができ、山や荒野に行かずとも食料を得られるあらゆる「仕事」が生まれてもなお、「男は仕事」「女は家庭」のスタイルが根強く続いていたのには、理由がある。それは、未来を予測し、成果に向かって戦略的に活動するこれまでのビジネスの仕方が、論理性、リーダーシップや決断力などといった「男性性」を主流としていたからだ。

現代では、働く女性が増え、男性も家事や育児を手伝うようになった。男女関係なく仕事も家事もする時代だ。もはや男性だから「男性性」を、女性だから「女性性」を発揮する時代ではないのだ。

ビジネスにおいて「女性性」が持たらす効果とは?

そうなると、「ビジネスに女性性は必要ないのか?」という疑問が浮かぶが、論理性、リーダーシップや判断力が評価されがちな仕事において、「女性性」はどのように発揮されるのであろうか。「女性性」が持たらす効果が認められた調査結果があるので紹介したい。

女性役員の比率を増やす方法として、一定比率を義務づける「クオータ制」。ノルウェーでは女性比率40%を義務づけているが、その「クオータ制」導入前と導入後に役員に就任した23名の男女について、インタビューに基づく定性調査*1が実施された。

インタビューによれば、女性役員は男性よりも議題を質問によって深く掘り下げる傾向があり、それによってチーム内の議論の密度が濃くなったという。ほとんどの女性は、十分に理解できていないことについて意思決定を嫌がる傾向が見られ、メンバー間での関わり方も男性とは異なった。他の人々の意見を求め、会議室にいる全員に議論に参加するよう促す場合が多かったというのだ。

これらに作用しているのは、意見の尊重や慎重な意思決定。「男性性」の評価の下では隠れていた、包容力や共感性など「女性性」に代表される特性の発揮によって、コミュニケーションの活性化や意思決定の質の向上などの効果が見られたというのだ。

これからの時代は「男性性」と「女性性」のバランスが肝心

男性がより多くの「男性性」を持ち、女性がより多くの「女性性」を持っているとされているが、私たち人間は誰でも、性別問わず「男性性」「女性性」の両方を持ち合わせている。だからこそ、仕事においても家庭においても、「男性性」と「女性性」の受け持ちが逆転することもある。

例えば、受験生を持つ両親は往々にして、母親が教育ママとなって子どもを叱咤し、父親がとりなすということが少なくない。母親が「男性性」を発揮し、父親が「女性性」を発揮する状態である。両親がともに「男性性」を発揮したら子どもは潰れるし、逆に両親ともが「女性性」を発揮したらどうなるか…。

重要なのは、バランスなのだ。

また、「21世紀は感性の時代」(桑子敏雄著「感性の哲学」2001年4月、日本放送出版協会より)と言われるように、世の中は「女性性」を必要としている。未来が不確定な世の中で、先が読めない時代と言われる今問われているのは、 分からない中で、どのように動くかということ。市場と向き合って、直感を働かせながら、柔軟に対応していくためには、より女性的な資質が求められると言えるだろう。

だからといって、今の時代に、「男性性」が不要ということはもちろんない。重要なことは、状況や時代に合わせて、「男性性」「女性性」どちらをより発揮するかということ。

今のビジネスで言うならば、未来が不確定な世の中で感情を表現し交換し合い、アンバランスを解消すべく、「女性性」をより重視していくべきなのかもしれない。

「男性性」と「女性性」は、どちらも性別に関係なく存在する。

組織の未来。それは、男性・女性という役割にとらわれず、「男性性」「女性性」を育んでいく組織づくりにかかっているだろう。あなたの組織に必要なのは、さて、どちら?

(参考資料)

*1定例調査
ヨーク大学オズグッドホール・ロースクールのエアロン・A・ディア準教授が2015年出版のChallenging Boardroom Homogeneity: Corporate Law, Governance and Diversity執筆の過程で行った調査

『女性役員は取締役会をどう変えるのか』
DIAMOND Harvard Business Review
http://www.dhbr.net/articles/-/3386?page=2

『多重な役割従事に関する研究 一役割従事タイプ、達成感と男性性、女性性の効果一』
土肥伊都子 (関西学院大学)・広沢俊宗 (関西女学院短期大学)・田中國夫 (関西学院大学)

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高橋 陽子YOKO TAKAHASHI

「OVER THE BORDERの新婦です」の一言で、CRAZYを取り巻く人に認知してもらえるありがたい人生を送る。GALLERY WEDDINGプロデューサーと、FEEL THE CRAZY編集者と、少しのフォトライター業と…。わらじを何足履けるか冒険しながら、大好きな愛媛暮らしを満喫中。


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