INTERVIEW

「誰かを“祝う”とは自分を知ること」——内省が苦手なら、大切な人に思いを馳せればいい

個の時代と呼ばれ、自分の軸を大切にした働き方が推奨される一方、「やりたいこと」に確証が持てず、悩みや焦りを感じる人も多いのではないでしょうか。

CRAZY代表の森山和彦さんは「ひとりで自分の内面に向き合うこと自体が、とても難しい。“自分がどうありたいか”を知るには伴走者が必要です。一見関係ないように思える、大切な誰かを祝う習慣がそれを手助けしてくれるんですよ」と言います。

「お祝い」というと、誕生日や祝勝会など自分以外の誰かを祝福するもの。なぜ祝う行為が内省や自己分析に繋がるのでしょうか。自分に自信を持つための「お祝い」の本質を、森山さんに伺いました。

ひとりで解決できるほど、人は完璧ではない

森山和彦:株式会社CRAZY 代表取締役社長
人材コンサルティング会社での6年半の勤務を経て、2012年7月に株式会社CRAZYを創業。同社をビジネスグロースさせながら、全社員で1ヶ月休んで世界一周など、独自の組織運営を実践。2018年および2019年に「働きがいのある会社」を受賞するなど、ユニークな経営手法が注目される。

いろんな本で「内省や自己分析が大事」と書かれていますが、ひとりでそれを継続するのは難しくはないですか? 私が思うに内省を続けるコツは、他人とのコミュニケーションをどう設計するか。他人との関わり合いのなかで、自分がどうありたいかが見えてくると思っています。

例えば、アメリカではカウンセリングが浸透していて、カウンセラーと対話するなかで自分を見つめ直す人が大勢います。ひとりで自分のことを解決しようと思っている人のほうが稀なんです。そんなに人間は完璧じゃないですから。

でも日本では、カウンセリングが普及しているとは言いがたい。たとえ内省を習慣化していたとしても、謙遜を美徳とする文化もあるため、自分を承認できずマイナスに考えが流れてしまう人も多いんです。

特に、内省は「正しいやり方をしないと逆効果がある」と、『insight』(ターシャ・ユーリック著・英治出版)という書籍に書いてあります。これは一読の価値がありますよ。例えば、「なぜ」の質問ばかりしてしまうと自分を追い詰めてしまうんです。

自分を適切に自己認識するためにも、カウンセラーやメンターを持つ習慣が日本にも広がってほしいですね。自分を受け止めてくれる人がただただ必要なんです。ですが、すぐに相性の良い人と出会えるとも限らない。そこで、私がお薦めしたいのが、「大切な誰かを祝う習慣」なんです

余裕がなくて、祝う習慣が減り続ける時代

そもそも「祝う」とは、日常とは異なる特別な瞬間を“あえて作りだす”文化的営みです。誕生日や結婚式を祝う義務はないわけです。人間以外の動物は生まれた日を祝わないですしね。それをハレの日として祝うのは、特別な瞬間を作り出したい欲求が人間に備わっているからだと思います。

ただ、最近は「お祝い」が少なくなっているように感じます。毎日に余裕がなさすぎて、特別な瞬間を作る気持ちが薄まってきている。でも、祝う瞬間をつくることでしか、見えないものって確実にあるんですよ。

例えば、収穫祭は、村のみんなが無事に暮らしていることや、食べ物があることに感謝をする儀式です。普段の暮らしのなかで、元気でいられることや、収穫できることに感謝する気持ちなんて滅多に生まれません。でも、「お祭り」というお祝いの瞬間があるから、普段意識ができないものに目を向けて、感謝ができるわけです。

感謝、人との絆、生きている実感——。こういった日常で見過ごされがちなものを、あえて感じようとする行為が「お祝い」なんです。

そもそも生きているだけでも、すごいことなんですよ。いろいろな経験をして、壁を乗り越えて、多くの人に支えられ、私達は生きている。今私が好きな仕事ができているのも、仲間の存在のおかげです。

何かを成し遂げた時に、祝勝会や達成会と称してお祝いをしますが、極論成果がなくてもいいんです。当たり前にある素晴らしさに気づけるだけで、お祝いする価値は十分ありますから

CRAZYで仕事納めを祝ったときの写真。全社員の名前が書かれた提灯がぶら下がっている。

「お祝い」が巡り巡ってもたらすもの

ひとつ、私のお祝いのエピソードを紹介します。

娘が1歳の誕生日を迎えたその日は、妻にとっては母親としての1歳の誕生日。ふたりをお祝いするために旅行をしたんです。そして、あるサプライズを実行しました

彼女がホテルで寝ている真夜中に、彼女へ贈る文章が書かれた用紙をこっそりと窓に貼り付けました。全部で15枚くらいかな。「〇月〇日、今日はこんなことを感じた」みたいな文章がギャラリーのように並んでいて、最後に「実は、今日は自分にとっても1歳の父親記念日。父として、こういう思いを持っています」と、自分の思いも書き連ねました。

朝、彼女が起きて、カーテンを開けたらビックリ!というのを期待していたんですが、カーテンを開けずにお風呂に入っていました(笑)。結局、カーテンを開けるように私が促したんですが、このサプライズやメッセージに、彼女はとても感動してくれたんです

ここで一番大切なのは、ホテルの窓に用紙を貼るといった演出ではないんですよ。この誕生日を祝うために、“彼女と娘と自分に、思いを馳せた時間”が大切なんです。

母親として、どんな葛藤や苦しみがあったのか。これから母親としてどうありたいのか。同時に、自分自身は父親として、どうありたいのか。彼女と娘とどう向き合いたいのか。この日を迎えるにあたり、ずっと考え続け、自分の思いを正直に文章にしました。

祝うとは、相手がどんな喜びや苦しみや葛藤を抱えながら生きているかを想像することであり、そのうえで、自分がどういう関係を育んでいきたいかを深く考えることなんです。

つまり、相手の存在を通じて、自分がどうありたいかを考えること誰かのためにと行ったお祝いが、巡り巡って自分を鼓舞することに繋がるんですそんな機会が、人生で増えたら素晴らしいと思いませんか?だから内省が苦手な人は特に、大切な誰かを祝う習慣を持つと、人生に色がでると思うんですよ。

プロセスさえ守れば、どんなお祝いも特別に

ただ、センスに自信がないからと「お祝い」を躊躇してしまう人もいると思うんです。変なプレゼントを贈ってしまったらどうしよう、雰囲気が微妙なレストランを選んでしまったらどうしよう、とか。

お祝いは、もっと単純でいいんですよ相手と自分を真剣に考えるプロセスがあれば、どれも特別になるはずだから。最も簡単なお祝いの方法は、自分を支えてくれる人に手紙を書く習慣を持つことです。 

CRAZYでは、「経営陣がお互いに手紙を書く習慣」があります。45日に1度、経営会議のはじめに手紙を交換するんです。以前、経営陣の関係性がうまくいかない時期がありました。ビジネスについて厳しく求め合うなかで、距離ができてしまっていた。そこで、経営陣のひとりが「手紙を書くこと」を提案してくれたんです。

最初はピンときませんでしたが、はじめてみたら、めちゃくちゃ良い。 何が良いかって、手紙をもらうことじゃないんです。手紙を書くことに価値をものすごく感じるんです

手紙を書くためには、相手のことを真剣に考えないといけません。「あの時、あんな顔をしていたのは、辛かったからなのかも」とか、日常では見逃していたことに気づきます。すると、謝罪やお礼を伝えられるんです。また、一緒につくっていきたい未来について真剣に考えるので、未来のビジョンが明確になっていきます。

一年以上、手紙を続けていますが、その効果は絶大ですよ。今では、CRAZYの他のチームにも、手紙の習慣が広がっています。


あえて手紙を書くことで、見えてくるものがある——少し気恥ずかしいかもしれませんが、友人・同僚・家族と手紙を送りあう習慣を持ってみてください。祝ったり内省する習慣を身につける第一歩になるはずです。

人生を知り、認め、愛することの価値

繰り返しになりますが、日本人はひとりで自分のことを解決しようとする意識が高い。我慢しすぎて、行き詰まってしまう人が多いと思うんです。

もしかしたら、「人に迷惑をかけるな」と小さい頃から教わってきたことが影響しているのかもしれません。でも、人に頼って良いんですよ。生きていくには、自分を支えてくれる伴走者が必要で、その人との関係を育んでいくことが大切なんです

まずは、カレンダーにお祝いのスケジュールを書き込んでみましょう。自分と相手の予定を先に押さえる。そうすれば、自分や相手の人生を知り、認め、愛することができる。人生において感動する瞬間が増えていきますよ。だから私達は「お祝い」の価値を世の中に伝えていきたいんです。それが今の世の中に必要なことだと思うから。

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編集:井手桂司水玉綾  撮影:渡辺 健太郎

卯岡若菜

「仕事・家族・どこにも属さない自分」の3つの自分の共存を目指すフリーライター。息子ふたりの母親でもある。生き方や働き方への興味関心が強く、人の想いに触れるのが好き。趣味は映画鑑賞、音楽鑑賞、児童文学執筆、弾丸旅行、読書。本や漫画はキノコのように増えるものだと思っている。

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