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「well-beingな組織づくり」の鍵を探る。組織拡大の葛藤をどう乗り越えるのか【TOP LIVE】

身体的・精神的・社会的に良好である状態を表す、well-being(ウェルビーイング)という概念は、組織を活性化する考え方として、注目を集めています。個が際立つ今の時代に、組織としてwell-beingを実現するには、何が必要なのでしょうか。

CRAZYのトップと他業種のトップが人生観・組織哲学を語るTOP LIVE。第10回目のゲストは、楽天株式会社の創業メンバーであり、常務執行役員 兼 CPO (Chief People Officer:チーフ・ピープル・オフィサー)の小林正忠氏です。「well-beingな組織づくり」をテーマに、理想の組織、6人から1万人への組織拡大の鍵、葛藤について。2人が打ち明けた、90分の熱いトークをお伝えします。

外部環境の変化が「個人のエゴ」を生む

乾 将豪(以下、乾):今回は『well-beingな組織づくり』がテーマです。最初に、それぞれが考える“ 理想の組織 ”を教えてください。

小林正忠氏 楽天 常務執行役員兼チーフ・ピープル・オフィサー
1994年、慶應義塾大学を卒業。1997年、三木谷浩史氏らと共に創業メンバーとして楽天に参画し、6人から1万人超への組織の拡大に伴走。2012年より米国本社社長(カリフォルニア在)、さらに2014年よりアジア本社社長(シンガポール在)を歴任し、2017年末より現職。2011年、世界経済フォーラム Young Global Leadersに選出された。

小林正忠氏(以下、小林氏):所属している全員が、目指す目的を理解している状態ではないでしょうか。でも、実際にはそれができていない状態は多いと思います。ただ所属しているだけ、と言いますか。だからこそ” 理想 ”と表すのがしっくりくるんでしょうね。

森山和彦(以下、森山):僕の意見も近しいですね。組織には、そもそも目的があるはず。それは、家族という組織であっても同じ。家族なら、幸せや子孫繁栄という目的がありますから。それぞれが持つ目的を、できるだけ速く素晴らしいクオリティで達成することが、組織の理想だと思います。

乾:では、理想の組織を運営するにあたって、障害になるのは一体なんでしょうか。

森山和彦:株式会社CRAZY 代表取締役社長
人材コンサルティング会社での6年半の勤務を経て、2012年7月に株式会社CRAZYを創業。同社をビジネスグロースさせながら、全社員で1ヶ月休んで世界一周など、独自の組織運営を実践。2018年および2019年に「働きがいのある会社」を受賞するなど、ユニークな経営手法が注目される。

森山:私が思うに、1つは、組織の目的と、個人の本能は、相反する部分があること。例えば、会社には「事業を通して社会貢献をしたい」という欲求や目的がある一方で、個人には、承認欲求や自己実現欲求、「お給料がもっと欲しい」「健康に働きたい」という欲求があります。

組織内で、この2つをちゃんと確認し合えていると、理想状態を長く続けていけるんでしょうね。

小林氏:確かにそうですね。組織に所属しているにも関わらず、組織の目的と個人の目的が変わってしまっている人がいるじゃないですか。

プロのスポーツチームで例えると、本来は「チームとして勝つ」ということが目的。でも、プロ選手になると、自分自身が来年も契約してもらうことも考えなければならない。すると、自分の活躍を重要視しだす人がいるんです。それがチーム全体の勝ちに繋がらない場合がありますね。

会社組織も一緒です。最初は、会社と目的を共にしていも、だんだん出世が目的になって、自分の部下の成果を横取りしてしまったりとかね。

森山:それって、“ 個人のエゴの結果 ”だと思うんですが、外部環境の変化が起きた時に、特にエゴは生じやすくなる気がします。

組織は、常に外部環境の影響を受けています。為替が変われば利益が変わるケースもありますし、法律が変わったら倒産してしまうケースもある。ただ、外部環境が変わったとしても、組織の持つ目的は変わらず存在しています。

そんな大変な時期こそ、エゴが生じやすいんじゃないでしょうか。「本当はこんな会社で働くはずじゃなかった」とか「こんな目標は上から与えられているだけだ」とか。

でも、変化に晒され続けることは、避けられないこと。だからこそ、大変な状況の中でも、目的に向かい続ける人が増えるほど、組織は強く・良くなっていくと思いますね。ですが、人間はエゴでできているものだから、エゴを無視し続けることも良くない(笑)。そこが組織作りの難しさであり、楽しさだと思います。

自分は「無能」と思っていたから成せた事

モデレータ:乾 将豪 株式会社CRAZY 採用責任者
新卒1期生として株式会社CRAZYへ入社。入社後、ウェディングプロデューサーとして多くの結婚式を手がける。営業部に異動後は、単月契約率93%を記録し、トップセールスに。現在は採用責任者を担当。

乾:正忠さんは、楽天が6人から1万人になる過程で、あらゆる変化の中でも高い目標を達成されてきたと思います。そうしたチームを率いたリーダーとして、これまでの話を伺いたいです。

小林氏:僕が何を担当してきたのか説明すると、最初は十数年ほど『楽天市場』というEコマースのショッピングモールの責任者を担当していました。その後は、アメリカの責任者、アジアの責任者を務めて、現在の CPO (Chief People Officer:チーフピープルオフィサー)という“ 人を幸せにすること ”を仕事にしています(笑)。

何か凄いことをしてきた自覚はないのですが、唯一挙げるとすると“ 自分が無能であること ”を私は認識していました。創業期、成長期共に、私より営業ができる人は大勢いました。アメリカの責任者に就任した時なんて、そもそも英語のレベルが異常に低かった。TOEICは300点台でしたから(笑)。

でも、“ 自分が無能であること ”を理解していたからこそ、能力のある人たちをアレンジすることに意識が向いたんです。「あなたはこれが得意だよね」「これが出来るよね」と。色んな人の力を借りることで、結果として良いチームができた感じですかね。

森山:ご自身を無能だと思いながらも、高い目標に屈せず、結果的には目標を達成した。ここにロジックの矛盾があると思うんですよ。だって、高い目標が課された時に、無能と思っているなら「できません」と逃げることも想像できうるし、現にそういう選択肢をとる人は沢山いるはず。でも、正忠さんはそうしなかったんですよね。

小林氏:負けず嫌いですからね(笑)。あとは、できない言い訳を考えるより、できる方法を探す癖をつけられてしまったんだ、と思います。やってみたらできることが世の中にいっぱいあることを知ってしまったから。そういう小さな成功体験の積み重ねが、私なんだと思います。

ボーダーを超える目標は、愛情。リーダーは潜在能力を見抜く

小林氏:楽天の創業者である三木谷は、非常に大きな目標、達成できないような大きな数字を言うんですよ。ムカつくくらい(笑)。ただ結果として、彼がとんでもなくメンバーの潜在能力を引き出しているんです。

その究極が、全社公用語の英語化。三木谷が言い出した当時、9割以上の社員が日本語しか話せませんでした。ですが、今では研修すらも英語で行なっています。潜在能力を引き出すことは、信じていないとできないことですよ。信じる力は非常に重要ですね。

会社が150人規模だったころ「三木谷が社長で、僕ら社員が150人いれば、どの企業も絶対に業績を伸ばせる」と個人的に思っていました。それは、お互いが「できる」と信じていて、その結果「できた」体験をしているからこそ。全力でやって、できないことは、ほぼないですよ。そう信じられているんです。

森山:目標を与えるのはリーダーの役割の1つですよね。ただ、目標が” あるだけ ”では意味がない。達成することで、またさらに、目標を引き上げていく。それが未来を作ることだと、話を伺う中で思いました。

リーダーとしては、メンバーに課す100%の目標を、150%レベルに引きあげることを心苦しく思うこともあるはず。ですが、150%レベルの目標を越えられる潜在能力がある人に対して、目標を用意して越えさせることは、愛情じゃないですか。事業の数字単体とは別の話ですが。

小林氏:「1%の改善を365日続けると、どのくらいの大きさになるか」という話がありますよね。結論から言うと37倍になるんですが、1%の積み重ねを愚直に継続することが大事なんです。今朝、弊社の朝会(朝の社員全員参加の朝礼)で三木谷も話をしていました。

どんなに大きな目標でも分解すれば小さくなり、小さな目標を達成するためのアクションを考えたら、あとは愚直に成し遂げていけばいい。僕らはそれしかやっていません。楽天は、それができた組織だったんです。

森山:素晴らしいですよね。ここにいる皆さんにとっても” いい話 “に聞こえるはず。ですが皆さん、実際に働く現場で起こったらどうでしょう。給料も変わらず、目標が急に1.5倍になる。腹を立てるのが普通だと思うんですよ。でも、やる前に頭で考えて不満をいうのか、もしくは、信じて動けるか。これが、分かれ道になっていくんでしょうね。

「営業目標としての単なる1件ではない」組織拡大にあった“ 葛藤 

乾:well-being(ウェルビーイング)な組織を目指す上で、組織拡大の中で葛藤した瞬間もあるかと思いますが、いかがでしょうか。

森山:CRAZYでは、ここ1年半は葛藤が多かったです。掲げているビジョンの達成を、全員が心から望んでいるのか、問い直した時期があって。ビジョン共有の大切さを改めて痛感しました。

社員に幸せになって欲しいという気持ちが強いんですよ。だから「悩んでいる」と聞けば、結構な数の相談に乗ってきました。でも、途中で気がついたんです。「これでは世界は変えられない」と。おぼろげに思っていたことではありますが、「心からビジョンを求めていない人が一緒に居ても、幸せな未来は作れない」と、明確に分かりました。

だから、迷いを抱えていそうな社員には率直に聞くことにしたんです。ビジョンに対して、本音でやりたいと思っているのか。結果的に、会社を去る人もいました。苦い話ですし、みんな仲間だと思っているからこそ、それぞれの中に葛藤があったと思います。ですが、これを乗り越えて、ビジョンに向かえるようになることで、組織はより良く変わっていくんだ、と思いましたね。

小林氏:組織が拡大する時は、意味づけ・意義づけがより一層大事になりますよね。目に見える数字や仕事そのもの以上に。

僕が楽天市場の責任者をやっていた時期、メンバーに伝えたのは、「この1件は、営業目標としての1件ではない。まだネットビジネスに挑戦していない、小さな会社の新しい扉を開ける1件」ということでした。

当時は1999年頃で、これからさらにインターネット産業が伸びていくとされた時代。ですが、地方の中小企業は、まだインターネットを活用して成長していない状態でした。彼らの新しい未来を作っていくのが、僕たちの役割。単なる数字の1件ではないんです。「俺たちが日本の地方を元気にしていくんだ!」という意識を本気で全員が持っていたので、高い目標でも達成していけたのかもしれません。

乾:やはり目的・意義を理解しあっていることが重要な鍵になるんですね。今日は貴重なお時間をありがとうございました。

 

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(編集:水玉綾  写真:小澤 彩聖

萩原愛梨
Airi hagiwara

ビューティーテックカンパニーSpartyでChief Customer Officerを務める。ITフリーランスの支援事業を行うgeechsでの広報・メディア運営の経験から、フリーライターとしても活動中。複業ワーカーの可能性を自ら体現すべく奮闘する日々。著書に『女子的「エモい」論 ~おじさんに伝えたい私たちの本音~』(「幻冬舎plus+」)

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