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「人生の夏休みはどこへ消えた?」100年時代で長寿化する人生への対応策

あなたは何歳まで生きるつもりだろうか。

日本はトップクラスの長寿国である。平均寿命は男性が77.10歳、女性が83.99歳と、世界一を誇る日本。日本が長寿国となる遍歴の中には、延命治療による寝たきり長寿と言われる時代もあった。

けれど、今は違う。医療は進化は「健康に老いる」ことを益々可能にしてきている。

西洋医学的にも、体に負担が少ない薬剤が開発されたり、AI技術サポートを受けながら、高度な外科的処置が可能になってきている。東洋医学も見直され、予防医学の認知も広まってきていて、漢方やハーブの普及はもちろん、未病のための生活習慣を改善することがステイタスな風潮もあり健康寿命は追い風だ。なんと、10年ごとに平均寿命が2〜3歳伸びているというから衝撃だ。

ただ、健康に老いるということは、仕事の前線にたつ期間も長くなる。定年と言われる年齢が65〜70歳になる未来もあるだろう。たとえ定年の年齢が上がらなかったとしても、まだ長生きできるし、健康で元気なのだから今想像している以上に経済に蓄えが必要だ。もしくは、まだ働き続けるという選択をする必要がでてくるだろう。

持久力を必要とされるライフスタイル

人生の仕事時間の割合は、必然的に増えていく傾向の中で、経験や知識というボートを抱え、ビジネスをサーフィンする。いい波を捉えたと思っても、すぐに新しい常識が新しいビジネスを生みだし、今乗っている波の勢いは弱まり、次の波を捉えなければならない。

正直、波に乗り続けることが正しいとは思えないが、実際乗り続けるのにも難しさはあるものだ。時には、海に浮かびながら波を選んで待つのもいいだろう。時には、ボードのメンテナンスに、陸へ上がるのもいいだろう。

経済学と心理学の研究によれば、個人が長寿化し、健康寿命が長くなっているこの時代を生き抜くためには、人生の設計と時間の使い方を根本的に見直す必要があるという。大学までで経験したことが、生涯役に立つというのは、もう幻想に近いのだ。

働きながらにして教育を受け続けなければ、ビジネスの大海原で古く弱ったサーフボードを抱えて遭難しかねない、そんな時代が目の前まで迫っているのだ。形を変えたり、離れたり、息を整えたりしながら、長く生きるためには持久力が必要なのだ。

しかし、難点の1つは。時々、仕事を離れて人生と向き合ったり、新しいスキルを学ぼうなどと考えても、日本企業の多くが一度就職をした後は長期休暇を取得するのが難しい。

だから、大学生は早めに就活を終わらせて、海外へ旅にでる。そんな事例も少なくない。もしくは転職時、次の仕事が始まるまでの無職期間を利用して、社会人になってできなかったことに着手する人も、また多い。

海外を旅してみるとおもしろい事がわかる。職を捨てて旅をしている日本人が多いのだ。他の国からきた人たちはどうだろう。無職という人は意外と少ないのだ。「自分はエンジニアで、今は休暇で2〜3カ国、旅してるだけさ。次の休暇はアジアのほうにも行こうかな」きっとフランクに、こう応えてくれるだろう。

成長を求める個人と企業常識の乖離

先日、大手企業に勤務する友人から、呼び出し同然の飲みの誘いがあった。メールからは、明らかに気が病んでいるような雰囲気が醸し出されていた。慌てて予定を調整し、すぐ会うことにした。

大学院を卒業して10年。彼の中ではひとつの節目を迎えた。現時点からのキャリアや、自分の人生の理想について一度振り返りをしてみたい考えもあって、あくまでも前向きな気持ちで会社に長期休暇の相談をしたらしい。しかし、有給休暇を連続で消化しても大した日数にならず、10年という区切りですら、長期休暇の念願をかなえるのは難しかった。その話は上司からまた上司へと伝わり、いろんな疑心が彼を取り巻いた。徐々に、仕事をしづらい雰囲気が漂いはじめたという。

結果、疲れがどっと押し寄せてしまい、今まで白だったオセロがすべて黒にひっくり返ってしまったというのだ。

あくまでも前向きな気持ちだった相談事が、企業人であるという縛りに苛まれて、最後は心療内科にお世話になるところまでエスカレートしてしまったというのだ。しかも、可能性として、仕事のストレスによる心身症という診断をもらえたら、産業医の合意で3ヶ月の長期休暇がとれるという。いっそのこと、それでもいいと極論にへたどり着く一歩手前まできていた。

個人事業主としてキャリアを積んできた私にとって、この大企業の常識はカルチャーショックだった。成長のための休暇には承認が降りず、病んでいればやっと休暇がとれるなんて。

満員電車通勤、サービス残業、持ち帰り業務、てっぺん超え。

世界でも真面目さや堅実さを評価されている日本人の私たち。日々仕事に熱中し、つい業務に忙殺されてしまう社会人も多いだろう。そんな大渦の日々の中で、現状の自分に向き合い直し、年々変わりゆく自分の真価を見つけたり、長寿化に備えて新しいスキルを獲得する余裕など正直ない。

実際に、仕事をしていない時間を休暇としても、個人が自由に使える余暇は思っている以上に少ない。仕事へ行くための支度や通勤は、もちろん業務時間に含まれない。睡眠時間を差し引く、そこに家事や子どもの世話をする時間を考えたら、週5のWorkDayに余暇は、ほぼ存在しないだろう。

小さな円を飛び出して、客観的にその円を眺める

就職してしまうと、長期休暇をとることは難しいと前述したが、最近のベンチャー企業では自己投資のための休暇を奨励している例も少なくない。株式会社CRAZY*1にも「Great Joueney制度(以下、GJ)」という制度がある。これは自由に長期休暇を取得できる制度だ。

「仕事をしている」時間が働く時間で、「自分のやりたいことをやる」時間がプライベート。それが一般的な社会人の概念かもしれない。けれど、CRAZYでは違う捉え方をしている。仕事も自分のやりたいことを表現する手段のひとつならば、仕事とプライベートに境界線は存在しないのだ。個人が自分の理想に向き合った結果、家庭を大事にしたり、見聞を広げるために世界に旅立ったり、何か勉強に取り組んだりすれば、自然と会社は太く強くなる。会社は、「人」でできているのだから。もちろん、これは従業員のための制度ではなく社長にも適用される。今年の2月、CRAZYの社長である森山は業務の多くを他のメンバーに任せて海外に1ヶ月間旅に出ていたのだから。

やりたいことを実現するために、仕事に思いきり取り組む。時にはやりたいことの実現のために、仕事の手を止めて長期休暇を選択する。それがGJである。必ずしも旅に出る必要はなく、自分の人生にとって適切なタイミングと期間(最長年間1ヶ月)を決めて、今求めている理想を得るために、会社の外へ飛び出すのである。

それは、昔だれもが経験した、夏休みのようなものかもしれない。日常では足を伸ばせないところへ向かい、日常では経験できないほど遊び尽くし、学び尽くす。大人になった今でも、そんな時間があったらどうだろう。

GJを活用して10日間インドを旅して帰ってきた人事責任者の吉田勇佑(参考記事はこちら)は、GJ期間をこう話してくれた。

社会人のまる5年間を迎えたこの春、現状を振り返ると共に100歳までの計画を立ててみようと、瞬間瞬間の今を生きてきた日常と仕事を離れ、単身インド旅に出た。10日のうち2日間だけ予定を立て、残りの8日間は予定をいれずに、ただ混沌としたインドという環境に身をおいて、自分の過去と未来を見つめる時間を用意したのだ。ところが、旅から帰ってきた彼はこういった。

“ おもしろいもので、旅に人生が表れた。”

人望の厚い彼は、一人旅をするつもりで日本を出発したのにも関わらず、縁に恵まれ続けて、結局いつも誰かと一緒にいる滞在期間になったという。さらには、次々に様々な体験に恵まれて、その瞬間を生きてきた旅だったそうだ。

また、当初目的としていたことを超えて、今の環境で暮らし、働けていることがどれほど幸せなのかという思いが深まり、仕事への熱も高まったという。そして、世界には自分が新しいと思っていたことを、すでに超えたことをやっている人もいて、新しいアイディアに刺激を受けてきたという。

その新しいアイディアが、今は業務に直結するものではない。温めておく必要があるものもあれば、日々の中で形を変えて取り組んでいくことができるかもしれないものもあるそうだ。仕事を離れた休暇だったのにも関わらず、彼の人望 × インドでの出逢い × 5年という仕事のキャリア、どれが欠けても実現できないような、それはとてもユニークな人事の仕組みだった。こういう閃きや出逢いこそが、いずれ次のビジネスの波を作りだす、予波なのかもしれないとさえ思うものだった。

個人の主体性しかない今。

冒頭でお伝えしたように、現代人の人生の時間は長い。

正直、今の時代を長く生きることによる困難はあげればキリがない。定年を始めとする労働システム、経済的な不安、少子化、テクノロジーの進化による人的労働力の追放。

しかし、世界で活躍するビジネス思想家*2たちはこう呈した。

最も切実なのはお金の問題だが、金額に換算できない無形の資産に目を向けると本当に重要な事が見えてきた。長寿化時代は、厄介なのではなく、恩恵に変えられるーーーと。

その無形資産というのは、知識や心の健康、さらにはそこに関連づく学習と教育であり、それが一層大事にできるライフスタイルでもあると。ただ教育機関が、時代のニーズに合わせて変化するスピードは期待できない。また会社の制度が、この取り組みに大きく門を開くのにも時間がかかることは確かだ。

けれど、時代の波は、組織の変化よりも速く大きく私たち個人を巻き込んでくるものだ。過去の学習を当てにしているだけでは、古いボードを抱えたまま波に飲み込まれてしまうのは間違いない。会社のタイミングでもなく、与えられた研修でもない、自らのタイミングで理想に向って、主体的に選んでいくことを迫られている気がしている。

こうして個人がキャリアや自分の人生について振り返る期間をとることや、見聞を広めに、知らない世界に踏み出すことは、個人どころか会社、社会全体にも利点をもたらす。そうして大多数が動いて、やっと組織は変化を余儀なくされるものなのかもしれない。

365日の勤務スケジュールと、盆暮れ正月の過ごし方を毎年考えるだけのサイクルをやめて、少し自分のキャリアや、ネクストステージへの夢に意識を向けよう。

そうすると自然と、知りたいこと、学びたいこと、見たい未知の世界が湧き出てくるものだ。大人になった今でも、もし、夏休みをとれるとしたら、あなたの人生にとっていつがベストだろうか。

参考

*1株式会社 CRAZY

2012年7月設立(当時の社名はUNITED STYLE)。「健康を第一に考える」「人間関係を大切にする」ことを経営の第一、第二優先に掲げている。来るべき未来からみた必要なサンプル「FUTURE SAMPLE」を世の中に生み出すことを存在価値とし、完全オーダーメイドの結婚式「CRAZY WEDDING」、ケータリング事業「CRAZY KITCHEN」、ミニマルな結婚式「GALLERY WEDDING」や旅の事業「WHERE」を手がけている。昨年2016年5月には、情熱大陸にも出演。

*2

ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威であるリンダ・グラットン。ロンドン・ビジネススクール教授。前副学長。2005年よりモーリシャス大統領の経済アドバイザーを務めるアンドリュー・スコットが共著で書き上げた「LIFE SHIFT」より

渡辺みさと
Misato Watanabe

経営者やタレントを中心にゴーストライターとして活動。元々興味があった幼児の能力や個性を伸ばすための親子関係、食生活の指導などの勉強のため幼児教育へ携わる。株式会社CRAZY創業と同時に、有機素材を使った自然食を提供する社員食堂事業を立ち上げ、創業5年がたった今でも年間約49,000食を社員に提供している。今後は、産休から戻った社員の子連れ出勤制度を具体化するため、社内託児事業の立ち上げに着手する予定。

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