INTERVIEW

「知られていないなら存在していないも同然」CRAZYのブランドチェンジを牽引した広報責任者が、初めて語る【前編】

企業活動に欠かせない「広報」。会社を知ってもらい、利益や採用に繋げていくためには、重要な活動の1つです。ですが、ベンチャー企業の場合、専任の担当者を置かない場合が多く、サービスだけでなく採用を目的にしたコーポレートの広報まで手広く行うのは、至難の技。

株式会社CRAZYは、これまで広報活動に力を入れてきました。特に、創業3年目以降、専任の広報担当を置き、大きく戦略を変えて、今に至ります。その根幹を担ってきたのは、広報担当・市川千尋です。

前編は「サービスのための広報活動」について、後編は、採用などの「コーポレートのための広報活動」について。これまでの広報活動を振り返りながら、ベンチャー広報に必要な考えを探ります。

「知られていないなら存在していないも同然」。認知拡大のその先 は「本質」を伝えること

ー広報を始められた経緯を聞かせてください。

私はもともと、ローソンの広報から転職し、創業3年目の株式会社CRAZYに入りました。実は私自身、CRAZY WEDDINGで結婚式を挙げているんです。最初はお客様として、CARZYの真髄を体験したからこそ、このサービスをもっと多くの人に届けたいと思い転職しました。

良いものが購買されないのが嫌だったんですよ。品質が良くて、感動するほどの想いがあっても、全然売れてないものは世の中に沢山ある。逆に、品質を落とした同じような商品の方が、知名度が高くてよく売れていたりする。

良いものでも、知られていないなら、存在していないも同然…。悔しいですよね。だからこそ、広報活動に価値があると思っています。本当に良いものに光をあてる仕事がしたいんです。

市川 千尋(CHIHIRO ICHIKAWA)株式会社CRAZYの広報責任者 新卒で大手不動産会社に入社。社長室で、秘書業務及びHPの立ち上げに携わる。入社3年目にウエディング事業の立ち上げを行い、広報・営業・商品企画のチームリーダーを担当し、立ち上げから1年で黒字化に成功。その後ベンチャー企業3社にて営業・広報・マーケティング業務に携わる。31歳で株式会社ローソンの広報室に入社。結婚を機にタイに2年居住。居住中に、CRAZYの広報を手伝いながらCRAZY WEDDINGで結婚式をあげる。帰国と同時に、CRAZYに転職。現在は他社の広報も兼務している。

ー入社後は、何から始められたのでしょうか。

まずは、認知を広げるためのビジュアル的インパクトではなく「本質を伝えること」をテーマに掲げました。

私は2015年に入社したのですが、当時はサービスの認知拡大のために、あえて派手なウェディングをメディアに出していた時期だったんです。「おしゃれで、面白い、イマドキ、個性的」が売りでしたね。今思えば、社名に負けずアウトロー感満載でした(笑)。

ーなぜ「本質を伝える」というテーマに?

創業4年が経ち、ある程度認知拡大のフェーズは過ぎたと思ったんです。あと、私自身お客様として、サービスの本質的価値は、派手さではないんじゃないか、と思っていましたから。

CRAZY WEDDINGは、オーダーメイドなので、毎回が全く違う結婚式。だからこそ、ビジュアル的なインパクトは大きいですし、“ 人とは違うやりたいことができること ”に惹かれて来てくださるお客様も多かった。

ですが、そうした結婚式ができるのは、「新郎新婦の人生を深くヒアリングをし、価値観や求めるものを徹底的に考えているから」なんですよ。この本質的価値を伝えていくことこそが、重要だと思ったんです。

あるものを見つけ、ちゃんと届ける。「変える」ではないブランドチェンジ

当時、結婚式の担当プロデューサーは、お客様の結婚式のコンセプト制作に、結構な時間をかけていました。約10人で毎週2時間。お客様の人柄・価値観・人生背景について話しながらコンセプトを練っていたんです。「もっと良いものがあるんじゃないか」「“ らしさ ”が本当に表現されているのか」。文言の1つや、字体にまでこだわるほど。

自分の結婚式の裏でも、こんなにも考えてくれていた時間があったんだと思うと、思わず泣けましたね。イマドキ感や奇抜さだけではないものがあると、確信した瞬間でした。

ブランドチェンジと表現すると、見せ方を変えるように捉えられますが、変えるではなくて、あるものを見つけ、ちゃんと届けること。ここが重要ですね。

市川自身がCRAZYで結婚式を挙げたときの写真

ー本質的な価値を伝えるために、工夫されたことはなんですか。

自分の結婚式の事例をもとに、各社メディアの方々に話して回りました。結婚式は、写真を見たらどんな式でも「素敵ですね」ってなるものなんですよ(笑)。だからこそ、結婚式ができるまでのプロセスのストーリーを知ってもらわないと意味がないんです。

そこで、情報番組だけでなく、プロセスに密着してくれる番組のディレクターさんや記者さんに話しにいきました。社員がどんな思いで、1つ1つ泥臭く作っているか。取材の方々に知ってもらうだけでも、記事の厚みは変わっていきましたね。

視聴者の「共感ポイント」を外さない。オープンだからこそ得られる信頼がある

ー掲載されるメディアの種類も変わったと聞いています。

そうですね。もともとは、結婚式の専門誌にはほとんど掲載されていなかったんです。業界未経験者だけで創業して、「結婚式業界に風穴をあけたい」くらいの想いだったので…。

でも、そのスタンスが邪魔をして、届けたい人たちに届けられなかったら本末転倒。まずは結婚式を発信してる雑誌・専門誌に営業しにいきましたね。今では度々特集や連載を組んでもらっています。

ブレイクスルーポイントは、やっぱり情熱大陸への出演でした。2016年5月に、創業者(現ブランドマネージャー)の山川咲が出演したんです。30枚くらいの企画書を情熱大陸のディレクターさん宛にお送りしていたので、正式にオファーをいただいた時は、嬉しくて嬉しくて…。私の広報キャリアの中でも、特に印象的なお仕事でした。

ーどういった部分が印象に?

最初にディレクターさんにお会いした時、私が同行するのをあまり良く思われなかったんです。情熱大陸は、生身の人を撮りたい番組。ですが、広報担当がいると、良いところを見せたいからと、制約が生まれてしまう。「ここは撮らないでください」とか「ここはこうしてください」とか。

でも「絶対にそうはしません!」とお伝えして、同行させてもらったんですよ。自分たちが発信したいものだけを発信してもらうのであれば「広告」を使えばできるかもしれません。ですが「広報」は違う。お金は発生していないですし、取材陣が伝えたいことと、私たちが伝えたいことを話し合って決めていくことが大切。あくまで、win-winの関係であるべきなんですよね。

だから、現場でも一方的に「ここは撮らないでください」とかは一切お伝えしていません。むしろ、咲ちゃん(山川咲)が泣いてる姿も前のめりに撮影してもらいました。「こんなとこまで撮るとか鬼だわ」って咲ちゃんからは言われましたけど(笑)。

実は、生身の山川咲は喜怒哀楽が豊かなんです。そこに視聴者が共感するんじゃないかな、と思っていて。当日はカットされたものの、私と咲ちゃんが大げんかした様子も撮影頂きましたね(笑)。

弱い部分や至らない部分って、普通なら隠したいものだと思うのですが、それがCRAZYにある生もの。だからこそ、オープンにお伝えすることは意識をしました。

ーそうしたスタイルは以前からですか?

新卒時代からかな。「anan」編集部でファッションなどを担当され、「Hanako」の創刊準備・研究に携わった島田始さんという方がいるのですが、彼にこう言われたんです。

「普通の広報担当は良いことばかりを話す。でも樫山ちゃん(旧姓)は、『会社はこうなんですけど、私はこうしたほうがいいんじゃないかと思っています』って自分の意見を述べられる。良いところも悪いところも伝えてくれる広報は稀有だから、そのままのスタイルを貫いてやっていくのがいいよ」って。

この助言を頂いて以来かな…意識しています。もちろん、ケースバイケースな部分はあるとは思いますが、オープンなスタイルだからこそ信頼を頂けることが私は今まで多かったんです。

「客観」と「主観」の眼が広報の価値

ーもし、社長や社員が「発信してほしい」という情報と、広報立場で「発信すべき」と思う情報がズレた場合はどうしていますか。

経営者と、広報が思う情報の出し方がズレることは、よくあります。ただ、広報は、客観と主観の両軸を持っているからこそ、言えることがある。ただ合わせるんではなくて、視点が擦り合うまで、よく話すことは大事にしています。また、経営者が意図してることを読み間違えている可能性もあるので、しっかり話を聞きます。

すれ違いは、コミュニケーション不足だと思うんですよ。伝えていないし、聞いていない。勝手な感覚でやろうとするから、ズレが生じる。とにかく情報共有を怠らず、話し合うことです。

それはメディアの方々相手でも同じだと思います。以前、とあるメディアの方に代表・森山(森山和彦)の取材をしていただいたのですが、抽象度の高く、解釈が難しい内容で…。事前に私がすり合わせをしなかったので、あがってきた原稿の中身もチグハグで、申し訳なかったですね…。

それ以降、事前に入念なすり合わせを行うようにしています。取材前には、鍵となる情報をお送りし、打ち合わせは毎回行う。私はライターや編集の人が書いてくれた原稿に、できる限り赤字を入れたくないんですよ。だって、みなさんプロでやっているので、赤字を入れるのは基本的には失礼です。気持ちよくお仕事したいですから。

後編に続きます。

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画像:伊藤圭    グラフィック:東和香

水玉綾(@maya_mip)
Aya Mizutama

CRAZY MAGAZINE編集長。フリーの編集者・ライター。HR領域の取材記事を中心に、媒体は「未来を変えるプロジェクト」「新R25」「PR Table Community」「BizHint」「FastGrow」等。三度の飯より愛犬が好き🐩🐾

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