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CULTURE

人生を投影する、オフィスとの付き合い方

あなたにとって、オフィスはどんな空間ですか?


 

毎日通い、8時間を過ごす会社のオフィス。1日の3分の1という、人生の多くの時間をオフィスで過ごしている。だからこそ、あたたにとってオフィスがどんな場所であるかは、あなたの人生に大きな影響を与えているかもしれない。


CRAZY創業4周年イベント「BEYOND」では、ビル一棟を貸し切って、CRAZYの日常を紹介する部屋を作成した。左側が一般的なオフィス。右側がCRAZYのオフィスだ。対照的になるように、あえてひとつの空間にまとめた。


 

人は空間に影響を受けている


人は、色によって心理的・生理的影響を与えられているということは有名な話。例えば黄色だと希望や明るい気持ちが芽生えたり、紫だと不安や嫉妬の気持ちが芽生えたり。これらの作用は、部屋の空間から広告やファッションまで、あらゆる分野で用いられている。また、人は色に限らず、様々な物や空間そのものに誘導される一面があると言われている。


 

私たちが空間に影響を受けているのならば、それを逆手にとって自分の意志で空間の影響力を生かすことはできないだろうか。空間の作用を借りて、理想的な働く環境を作り出せるのではないだろうか。


 

境界線の曖昧なオフィス


 

例えばCRAZYのオフィスは、もともと繊維工場であった建物を自分たちの手でフルリノベーションをした。2015年12月に、通常業務を10日間ストップ(関連記事:CRAZYが戦略的に全社員休業をする意味とは)して、外部の業者に依頼をするのではなく、DIYをしたのだ。コンセプトは「境界線の曖昧なオフィス」。


 

通常業務をストップしてまで、どうして自分たちで作ったのか。それは、自分の手で作るという行為が、自分事感を高めてくれるから。そうして自分とオフィス、自分と会社の境界線をなくし、「自分事」の範囲を拡張していくことが、主体的で生産的な組織につながるからだ。


 

 

 

少し噛み砕いて見ていこう。


 

オフィスは会社の所有物、経費で賄われている場所であると捉えるのは簡単だ。所詮会社から与えられた場所。消しゴムのカスが落ちていたり、飲み物をこぼした跡がついていたり、自分の家なら汚くて嫌だと感じることも、オフィスなら目をつぶれてしまう。そんな「他人事」の雰囲気ってきっとどこにでもある。


 

とはいえ、1日の3分の1の時間をオフィスで使っていることは変わらない。ならば、どんな空間だったら心地よいだろう? どんな空間だったら楽しく働けるだろう? 自分たちにとってオフィスってなんだろう? と何度も問い続けながら、オフイスとの付き合い方を考えていく方がよっぽどいい。そして、心からすてきだ! と思える場所にしたい。


 

“ 白い蛍光灯はおしゃれな照明に ”


“ 無機質な机はぬくもりを感じられる木の素材に ”


“ 集中が途切れたら仮眠をとる部屋へ ”


 

このように、自分が生きる場所なのだと自分事化して捉えると、もっとこうしたい、もっと良くしたいという気持ちが生まれる。こうした自分事の範囲を人や空間、会社全体に対して拡張していくことで、一人一人が仕事にも会社にも人生にも、主体的で生産的になっていく。


だからこそ通常業務をストップしてまで、自分たちの手で空間の意味を問いながらリノベーションをする価値があるのだ。


 

例えばこの部屋。


 

 

部屋という紹介をしてしまうくらい、家のリビングのような空間。扉の前で靴を脱いで入るのがルールだ。これは居心地の良い家に帰ることと同じ感覚でオフィスにも来られるように、プライベートのときと同じくらいオープンなこころで仕事に向き合えるように、そんな想いのもと作っている。


 

でも、オフィスを作っているわけではない


 


 

床を作ったのも、天井を作ったのも、壁の色を塗り替えたのも社員だ。YouTubeでやり方を検索しながら、ほとんどプロの手を借りることなく完成させた。


 

でも「自分たちは何を作っているのか」という問いに対して「オフィスを作っていると」答える者は1人もいなかった。社員にとってリノベーションは、自分の生きる場所、自分の人生そのものを作っているという自分事として認識していたからに他ならない。


 


 

ひとりで集中して仕事をしたいとき、社員はこの部屋にこもる。まるで図書館に来たような雰囲気だ。「気づいたら時間がこんなにたっていた……! 」と思えるほど集中ができる。今では本棚にたくさんの本が並べてあり、人生に悩んだときや、もっと仕事を効率化したい と思ったときなどに、小説やHOW TO本など幅広い種類の本を自由に借りることができる。


 


 

窓から明るい光しが差し込む、心地よいカフェのような空間。ここでは、アートメンバーが、結婚式やイベントの装飾品をよく創作している。でもこれは、理想的な状態ではないという。なぜなら、このオフィスはどこからが仕事場で、どこからが作業場で、どこからがアートのアトリエで……といった境界線を曖昧にすることで、どこでも仕事をし、どこでも創作をできるようにしたいという意図でつくったから。でも現状は、この部屋でアートメンバーが創作をすることが多くあり、変えていきたいと声を上げる社員もいる。


 

 

この部屋の名前は「パタゴニア」。代表の森山はアルゼンチンのパタゴニアで「本質的で、美しく、ユニーク」*1という経営理念を思いついた。それにちなんでこの部屋の名前をパタゴニアとし、いつでもパタゴニアの映像を見れるようにプロジェクターが壁に設置されている。


 

4階の奥にあるのは、デジタルデトックス空間である、畳の部屋。この部屋に入るときは、携帯やパソコンを全て、写真に写っている茶色の棚の中にしまう。CRAZYでは仕事の不安や不満や悩みが溜まった際は、一度パソコンをおいて本音で話し合うことを大切にしている。そうすることでスッキリとした状態になり、もう一度頭を切り替えて仕事に集中する事ができるのだ。


 

もともと繊維工場であったなごりで、右にはベルトコンベアが残っているが、それも外観のひとつとしておしゃれに装飾をした。


 

緑が豊かなこの部屋は、毎日社員全員でランチを食べる場所。この部屋の奥にはキッチンが常備されていて、ここで毎日手作りの自然食を作っている。


 

「境界線の曖昧なオフィス」とは、「自分とオフィス」だけではなく大きな概念で捉えると「自分と地球という境界線を分けない」ということになる。私たちが働いている、生きているこの場所は、オフィスであるけれど、より視野を広げると一つの地球だ。「オフィスに緑がある」のではなく「緑がある地球の中にオフィスがある」と捉え、この地球をも自分が生きている場所として自分事化できるようにしている。


 

自分事化することが、生産性や幸福度につながる


 


 

リノベーションを通して、個人とオフィスの関係や仕事観、人生について全社員で改めて考えた。いつかの未来の理想を作るために今を犠牲にするのではなくて、今理想の1日を生きたい。仕事も大事だけれど、まずは私たちが人として豊かに生きたい。どれもこれも、自分事化して捉えたからこそ生まれてくる心の声だった。


 

ハーバード・ビジネススクール教授のフランチェスカ・ジーノ氏によれば、仕事を自分事化することで、会社に対する満足度や幸福度が増し、仕事の成果も向上するという相関関係が見られるとのこと。


 

 

結局のところ、自分の身の回りのものをどれだけ自分事として捉えているかが、仕事の成果にも幸福度に関係するというわけだ。


 

だから、問うてみたい。


あなたにとって、オフィスはどんな空間なのか。


 

空間が変われば1日が変わり、しいてや人生が変わるとしたら。「どこで生きるかは、どんな人生を歩みたいか」そのものなのかもしれない。それはつまり、オフィスだけではなくて、身の回りにあるものは、あなたの人生の投影ということ。


 

今、
生きている場所を、仕事を、人生を、愛していますか。


そこにはどんな意志がありますか。


      

水田 真綾
Maya Mizuta

『CRAZY MAGAZINE』を立ち上げ、執筆・編集共に行っている。学生時代は人の世界観を形作る「メンタルモデル」に興味を持ち、「学習する組織」や「U理論」を学んで団体を創設、イベントを多数開催。趣味は、星を見て風を感じて森でお散歩をすること。愛読書はエーリッヒ・フロムの「愛するということ」。

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