INTERVIEW

「“同性愛だから”苦しいこと」はない。挙式の一部を体験した女性ふたりに芽生えた思い

渋谷区から広がった、同性カップルを「結婚に相当する関係」とする条例は、今では9市区に広がっています。ですが、日本の法律では未だ「同性婚」は認められていない状況で、結婚式を挙げる同性カップルは多くはありません。

「#結婚式に自由を」をテーマに掲げるCRAZY WEDDINGは、2019年6月17日に、同性カップルである、カナさんとミキさんの挙式の一部である「誓いの場」をプロデュースしました。デザイナーの学校に通っていたミキさんと、臨床心理士として働いていたカナさん。アプリで出会ったふたりは、お付き合いを始め、現在はYouTubeで「わがしchannel」を運営しています。

ふたりは、自分たちの誓いの場を通して、共感や考えるきっかけを生み、同性婚を法制化する一端を担えたら、との思いで今回の企画を受けたとのこと。女性の同性カップルが抱える悩みや、誓いの場をすると決めた背景、同性婚への思いについて、CRAZY WEDDING創業者の山川咲が話をうかがいました。

思考停止は生みたくない。法制化に向けて「世論」を変えるために

山川咲(Saki Yamakawa)株式会社CRAZY / CRAZY WEDDINGブランドマネージャー
完全オーダーメイドウェディングのブランド「CRAZY WEDDING」 を立ち上げ、2016年に毎日放送「情熱大陸」に出演。表参道にて新ブランド「IWAI」をリリース。著書に『幸せをつくるシゴト』(講談社)。

山川咲さん:実は、私の友人に当事者のかたがいて。「自分たちの結婚式なんてイメージはもてないし、その場に立つことが人生で最も勇気がいることだ」って言っていたんです。既存の結婚式は、男女というイメージがあるから。

今回は形式にとらわれないで、愛を祝える場をつくりたいなと思って、おふたりに相談をさせていただきました。あらためて、誓いの場をしようと決めた背景を教えていただけますか?

カナさん:同性婚を法制化するためには、世の中の理解を深める必要があると思っていて。世論が変わっていかない限りは、その「いつか」はもっと先になるかもしれない。動いていくことで、1年でも2年でも早められると思うから、そのために挙式をしたいな、と思ったんです。自分たちを通して、世の中が少しでも変わっていくならって。

あと私は、すでに存在している「結婚式」という言葉ではなく、愛を誓い合う、セレモニーみたいに捉えてもらう形がいいかな、と思っています。だって、今回のことで「同性同士で結婚式あげられるんだ!」「よかったね」みたいに思ってほしくはないんです。思考停止になって、アクションが生まれづらくなってしまうから。

Kana(カナ)さん:2019年1月にYouTubeチャンネル「わがしChannel」を立ち上げ、約5ヶ月で登録者が3万人に。ミキさんと付き合って3年目で渡米をし、現在はハワイのホノルルに在住。

山川咲さん:確かに、そうかもしれません。私自身、知人やレインボープライド*1を通して、知ったことがたくさんあって。「お互いにとって負担になるから、未来を考えることはできない」という声とか、「自分のパートナーに子供を産めない選択肢を渡してしまうことになるから、結婚のことだけはどうしても言えない」とか。

そういう話を聞くなかで、同性婚が法制化されて、セクシャリティに関係なく、誰もが人生を祝える世の中にしたいと思うようになって。それが実現されるまでは、毎年同性カップルのかたを対象に、無料で挙式をプロデュースしようと決めたんですよ。

カナさん:そうだったんですね…!最初の1組目を担えてうれしいです。私たちは「いつか結婚しようね」「式を挙げようね」と以前から話はしていたんですよ。ただ、「同性婚が認められたら」という法的な部分もそうですが、実は「十分な収入を稼げるようになったら」叶えたいな、と当初は考えていて。

山川咲さん:収入っていうのは、現実的な生活を考えて?

カナさん:そう。女性同士のカップルは、経済的に不安定な人たちが多いと言われています。収入の男女格差があるんですよ。私も親への体裁を考えて、「このくらいお互いに稼げるようになったら結婚しよう」って思っていました。

私の親は、女の子と付き合っていることより、結婚という制度を利用できないことを寂しがっていて。もし法律が認められて『結婚は異性同士だけのものじゃない』となったら、少し変わってくれるのかな、という希望を持っています。

「受け入れてもらえるか」不安を超えて、踏み出した先にあったもの

山川咲さん:実際に挙式の一部の、誓いの言葉を伝え合ってみて、いかがでしたか?私は、世の中に同性婚が認められていないことを疑ってしまうくらい、美しい時間だったと思っていて。それに、一生懸命生きてきた人の人生って、誰も否定できないんじゃないかって。

 カナさん:うーん、思い返すと、泣きそうになっちゃう。これまでの人生で、誰かに受け入れてもらえることはあったんですが、あの時間はそれを超えていましたよ。

ミキさん:私は人前で話すことが苦手なので、緊張しちゃうんだろうなと思っていたんですが。スタッフさん含め、みんなのあたかかい視線と、やさしい気持ちが伝わってきて…。

 

(以下、挙式の言葉の一部を抜粋)

ミキと初めて出会った時の鮮明な記憶は、今も色あせていない。急に襲ってくる寂しさから私を引き上げてくれた。救われたかった自分に気付かせてくれて、寄り添って手を差し伸べてくれた。ミキがいていれたら、どんな姿にだってなれる。それは、もう「本当の自分」が何となくわかったから。無理をしなくて良くなったから。

ここで約束させてほしい。健康に生きて長生きをして、貴女を先に送り出すこと。貴女と2人だって楽しいし、家族を増やしたっていい。貴女に似た子供でもいいし、私に似た子供でもいい、2人にまるきり似てなくったって良い。大切なのは、美樹がそばにいてくれることだから」(カナさんの誓いの言葉、一部抜粋)

「付き合いたての当時の自分を思い返すと、今とは全くの別人でした。どこかで人生を諦めていて、誰のことも信用出来ず、何よりも自分のことが大嫌いでした。繊細でネガティブな私にカナちゃんはいつも寄り添って一緒に悩んでくれた。

自分のことが大嫌いな時も、「私の大好きなミキのことを悪く言わないで」と怒られたこともあったね。「これからは私がいるよ。もう一人ぼっちじゃないよ。これからは二人ぼっちだね」って側で笑ってくれてどれだけ救われたか。カナちゃんが私に伝えてくれた言葉と行動の全てが私の宝物で、カナちゃんが私のことを好きでいてくれたから、今では自分のことが大好きです」(ミキさんの誓いの言葉、一部抜粋)

カナさん:あれだけ想いをむき出しにして、みんなの前で伝えられたのは、本当にすごいことなんです。私もミキもヘビーな人生を歩んできているので、話す相手は基本的に選ぶし、そんなオープンではないんですよ。でも、咲さんたちが、不安を解消してくれた。だから本当の思いを話せたんじゃないかなって思っています。

自分の範疇を超えた話を聞くときって、取り繕おうとして、浅い感嘆の言葉が出ちゃうことがあると思うんです。でも、誓いの言葉をつくる過程のなかで、関わってくださった人からはまったくそれを感じなかった。驚きすぎることも、私情を挟むこともなかった。ハートが大きいんだろうな、って。

Miki(ミキ)さん:2019年1月にYouTubeチャンネル「わがしChannel」を立ち上げ、約5ヶ月で登録者が3万人に。カナさんと付き合って3年目で渡米をし、現在はハワイのホノルルに在住。

ミキさん:私は以前、友達に「同性が好きなのは病気だ」とか、「早く男と結婚しなよ」と言われたことがあって。カナちゃんと付き合う前には、母に一度縁を切られています。母は中国人で、中国は日本よりも偏見が強い国。分かってもらうまでに、7年という長い時間がかかりました。

だからお互いのことのみならず、家族のことって、最初は伝えたくないとすら思っていたんです。でも、驚かれるようなことをさんざん話しても、山川咲さんやスタッフさんたちは、やさしい目で聞いてくださって。むしろ伝えることで、安心ができたし、楽になれた。

当日の、やさしさが漂っている挙式の空気は、二度と忘れられないですね。今となっては、「もうちょっと言ってもらってもよかったかな」という後悔が芽生えたくらいです(笑)。

山川咲さん:そう言ってもらえてうれしいな。私は結婚式をつくるときに、生まれてから今日までの人生を聞いて、受け止めることを大切にしていて。今日につながっているすべての1日がこれだよかったんだ、って思えることが大事だと思うから。ちなみに、挙式を通して、ふたりのなかに、どんな変化が生まれましたか?

カナさん:誓いの言葉でも話したのですが、このまま一生ふたりだけでもいいし、家族を増やしてもいいと思えるようになったかな。子どもは生物学的には無理だけど、私の卵子でミキが産むのでもいいし、血のつながりのない子どもを育ててもいい。そう前向きに考えられるようになったんです。

あと、ミキからの「誓いの言葉」を聞いて、ミキの目を通して伝えられる私が素敵だから、自分のことをもっと好きになれたかな。

ミキさん:私はカナちゃん以外の人を信じられるようになった。 物事に対して、自分ができる範囲でポジティブに動いていけるように変わった気がする。たぶん、これまで話してこなかった自分の思いを、オープンに打ち明けられたから。

「同性愛だから」つらいことはない。それは先人たちのおかげ

山川咲さん:あらためて、今後のおふたりや社会について思うところをお聞かせください。私は今回、ふたりの挙式を通して、“ 時代が変わる軋み ”みたいなものを感じたんです。これからどんどん、同性愛は認められるようになるし、なるべき。ふたりだけじゃなく、全カップルに、式を挙げる選択肢ができるよう、私たちも頑張りたいなって。

カナさん:私たちって今、変化の真っ只中にいると思っていて。昔の時代を歩んできた人たちが、「LGBTQ」という言葉の認知を広げてくれたから、良い方向に進んでいると思っています。

もちろん「悲しい理解の仕方だな」と感じたり、「セクシャリティについてもう少し知ってほしいな」と思うことはあります。日頃から、インターネットをみますし、否定的なコメントや荒れている様子もよく見かけています。

でも、ありがたい事に、日常生活を過ごすなかで“同性愛だから”つらいと感じることは減ってきていて。差別や偏見は未だにあるものの、一昔前よりは生きやすい世の中に少しずつ変化しているんじゃないかと思っています。

私たちはそれを、次に繋げていきたい。あくまで向き合っているのは、LGBTの問題ではなくて、人権問題だと思っています。そこにいる全ての人が、性別関係なく認められるべき愛について。そのなかで、結婚式を挙げた方が絶対いいとゴリ押しするというよりは、「挙げる選択肢は許されているんだよ」と伝えたいですね。

ミキさん:そうだね。振り向いたときに、世の中がちょっとでもよくなるように動けたらうれしいね。

左:山川咲さん、真ん中:カナさん、右:ミキさん

“ 世論が法律を変えることがある ”

2019年に公開された映画『ビリーブ』*1に出てきた言葉です。私たち一人ひとりの力で法律を今すぐに変えることはできないけれど、「法律を変えようよ」という雰囲気を醸成することはできる。ミキさんとカナさんが結婚式にかけた想いに触れ、そう感じました。

 大切にしたい人と、当たり前のように「結婚」という選択肢を選べる社会へ。同性婚が特別視されることなく、当然の権利として保障される未来が早く訪れるために、今できることは何だろう。この記事が、考えるきっかけになればと願っています。

 

*1『ビリーブ』

男女平等を勝ち得たアメリカの女性弁護士を描いた実話ベースの映画

※カナさん・ミキさんが運営するYouTubeチャンネル「わがしChannel」はこちら
※CELEBRATION WEEK for allに関してはこちら
(戸籍上同性同士の方の婚姻がみとめられるまで、CRAZY WEDDINGは本取り組みを続けていきます)

※二人の誓いをプロデュースしたプロデューサー 渡部恵理
ご相談などは本リンクにダイレクトメッセージをいただけますと幸いです。

※CRAZY MAGAZINE記事の最新情報はLINE@で都度配信中

編集:水玉綾 撮影:kuppography_weddding

卯岡若菜

「仕事・家族・どこにも属さない自分」の3つの自分の共存を目指すフリーライター。息子ふたりの母親でもある。生き方や働き方への興味関心が強く、人の想いに触れるのが好き。趣味は映画鑑賞、音楽鑑賞、児童文学執筆、弾丸旅行、読書。本や漫画はキノコのように増えるものだと思っている。

Writer's Articles