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COLUMN

キッザニア東京の研修に行って気づいた 「喜んでもらいたい」という気持ち以上に大切なもの

「今度キッザニア東京CRAZY WEDDING*1のキャスト*2(以下キャスト)皆で研修に行こうと思っているんだ」ランチを食べながら*3、CRAZYの社員である広瀬*4がいつになく嬉しそうな顔をしていた。


 

キッザニアとは、KCJ GROUP 株式会社が企画・運営する日本初のエデュテインメント*5タウンだ。3歳から15歳のこどもを対象とし、約100種類の仕事やサービスを体験することができる、こどもが主役の街。リアルな体験を通して、こどもたちの「生きる力」を育んでいる。



そんなキッザニア東京にキャストが研修にいくことが決まったのだ。


「目の前の人を喜ばせたい気持ちって、その対象がおとなであれ、こどもであれ、通ずるものがあると思うんだ。私はそれを見に行きたいし、感動のサービスを提供するテコをもっと学びたい」


広瀬の熱心な想いに引き寄せられて、私も研修に同行させてもらうことにした。


 

「こども力」と「おとな力」


「ねえ! あそこがキッザニアだよね! ママ、行ってみたい!」


豊洲駅に到着すると、小さな女の子がお母さんの服の袖を掴んで話していた。女の子が指さす方へ目を向けると、アーバンドッグ ららぽーと豊洲が見える。親子の後を追いながらドキドキしながら会場へと向かう。


到着すると、スーパーバイザー*6の皆さんが笑顔で迎えてくれた。キッザニアのスーパーバイザーとキャストは、それぞれ10名が参加し合計20名が交流する形で、研修をスタート。



キッザニア東京の中に入る前に、まず会社の説明を聞かせていただいた。


 

「キッザニアで働くことができるのは、3歳から15歳までのこどもだけなんです。なので、スーパーバイザーは、キッザニアで働くことが許された唯一のおとななのです」

 

聞いた瞬間、よく理解できなかったが、和気あいあいと交流をするスーパーバイザーらの姿に、納得をした。キッザニアでは「こども力」と「おとな力」の両方を使ってこどもの気づきを引き出す。「こども力」とは想定外の状況も含めてワクワクと主体的に楽しんでいくこと。「おとな力」とは安心安全を守りながら、こどもたちを楽しませていくこと。


「ここには、おとなはいない」ということは、彼らはこども力を持ち合わせた唯一のおとなということだろう。



関わるすべての人にホスピタリティをもって接することを大事にしているという。ホスピタリティとは、相手を大切にする想いのこと。


こどもが主役の街

 

スーパーバイザーに連れられて、いよいよキッザニアの中へ。入ると、街は暗く、こどもたちがいつもは体験できない、おとなの気分を味わえる夕暮れ時から夜の雰囲気になっていた。


見るからに、少し小さいサイズの街灯や、信号機。


街並みは現実社会の約3分の2のサイズで作られているという。こどもたちがおとなになった時とだいたい同じ高さで、景色を見ることができるようにしているからだ。細かく作り込まれた世界観に、思わず驚きの声を上げるキャストたち。

 

「道をあけてください! 道をあけてください! 」


威勢のいい声が響くほうに目をやると、消防車がこちらに向けて走ってきた! 続々と降りてきたのは、キリっとした表情のこどもたち。本物と思うほどリアルさにこだわった消防士の服を着ている。急いでホースを持ち、消火活動を行う姿にこちらまで緊張してしまうほど。


こだわりが、ホントの声を引き出す


こんなにリアルで面白いからこそ、わくわくしてイタズラを仕掛けたり、雰囲気を崩しにかかったりするこどもはいないのだろうか。「もちろん、遊んでしまうこどももいます。でもいざ仕事がはじまると、真剣な表情になるんです。スーパーバイザーもおとな同士として本気で向き合うので、こどもは『お金をもらって働いているんだ』という自覚を感じられるのかもしれません」


キッザニアでは、こどもたちを呼ぶときは、「ちゃん」や「くん」ではなく、「さん」をつける。名前の呼び方ひとつとっても、相手との関係性が変わるからだ。他にも、こどもに何かしてほしいときは、命令や禁止に聞こえる言い方は使わない。例えば話を聞いて欲しい時には「ちゃんと聞いて」ではなく、「今から質問してもいいですか」と質問の形で注意を促すといったように。


また、こどもが浮かない顔をして仕事体験に来ると「どうしましたか?」と聞くという。母親の勧めで来たことが分かると「○○さんが本当にやりたい仕事はなんですか?」と問いかけ、自分の意志を母親に伝えて自分で仕事体験を選ぶように促すのだ。「1人のおとな」として敬意を払いながらも、こどものことを真に考えた提案ができる彼らは、とてもかっこよくて、その行き届いたサービスやホスピタリティに感動した。



宅配センターの仕事体験では、「荷物」を運ぶだけではなく「送り主の気持ち」も運ぶんだということを伝えているという。目の前の仕事に関して、自分が関わることで誰かに喜んでもらえることや付加価値まで伝えている徹底ぶりに、驚いた。


ランチの時間に、キッザニア東京のみなさんに、どうしてそんなに自然体でイキイキと幸せそうに働いているのか、細部の設定にまでこだわれるのか、質問をぶつけてみた。少し恥ずかしそうに照れながらも「こどもが、好きなんですよね」と、1人のスタッフが口にすると、隣で食べていたスタッフ数人も目をくしゃっとさせてうなずくように笑った。みんな同じ気持ちだということがよく伝わってきた。側にいた上司の女性は「こどもの人生に影響を与えることはとても責任が重大なこと。こどもが仕事をしてみたいと思うかどうかは、私たちスタッフの関わり方次第だから。それほど責任重大だとわかっていながらも楽しく働けるのは、こども達から学ぶことが多く、無限の可能性を持っているこどもが好きだから、それに尽きると思う」


感動のサービスに共通するもの


「一生に一度の結婚式を、新郎新婦とゲストのみなさんに喜んでもらいたい」という想いで心を尽くすキャスト。


「職業体験を通じて、こどもの将来に関わる仕事観を楽しく学べるようにしたい」という想いで心を尽くすスタッフ。


対象は「おとな」と「こども」で別々であれど、そこにある想いや行動の根本は、とてもとても純粋で、本質的な「好き」という気持ちなのかもしれない。好きだからこそ相手の立場に立って考え、誠心誠意尽くしたくなるのだろう。その結果が細部までこだわり抜くサービスにつながるのかもしれない。


世のため、人のため、目の前の人に喜んでもらいたい、そういう立派な気持ちの前に、ただ純粋にお客様のことが好きであること。目の前の仕事が好きであることの大切さを、すっと感じさせてくれたキッザニア研修であった。


今日も大勢のこどもたちに、リアルな職業体験を届けている彼らに負けじと、私たちCRAZY WEDDINGももっとたくさんの人たちに感動を届けていきたい。


 

 

CRAZY WEDDING*1

2012年創業。「人生が変わるほどの結婚式をしよう」をコンセプトに創業5年目で約400組のお客様の結婚式をプロデュースしてきた。結婚式を「個性を表現する場」と捉え、お客様からこれまでの人生についてのヒアリングを行い、1組1組にオリジナルのコンセプトを紡ぐ。それを元に世界観、当日の演出までを全てプロデュースする完全オリジナルウエディングを確立。2016年には情熱大陸にも取り上げられた。


キャスト*2

CRAZY WEDDINGの結婚式当日を一緒に創作・運営しているメンバーのこと。WEDDINGを支える縁の下の力持ちであり、接客サービス全般を担っている。


ランチを食べながら*3

CRAZYでは毎日、手作り自然食ランチを全社員で一緒に食べる。経営の優先順位の第一に「健康」を掲げているので、素材にこだわったランチを食べることは仕事をする以前に大切なこと。全員で「いただきます」をし、同じ釜の飯をつつく中で、仕事のアイディアや連携が生まれることもしばしば。


社員の広瀬*4

CRAZY WEDDINGや、CRAZY KITCHENなどの現場で活躍するキャストの採用・教育を取りまとめるチームの社員。現在キャスト数は東西合わせて150名が在籍している。


エデュテインメント*5

エデュケーション(education)とエンターテインメント(entertainment)を合わせた言葉。キッザニアでは楽しさの中に「学び」や「気づき」があるものと捉えている。


スーパーバイザー*6

こどもの職業・社会体験を直接サポートするキッザニアのスタッフのこと。

 

水田 真綾
Maya Mizuta

『CRAZY MAGAZINE』を立ち上げ、執筆・編集共に行っている。学生時代は人の世界観を形作る「メンタルモデル」に興味を持ち、「学習する組織」や「U理論」を学んで団体を創設、イベントを多数開催。趣味は、星を見て風を感じて森でお散歩をすること。愛読書はエーリッヒ・フロムの「愛するということ」。

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