CULTURE

リモートワークが進む時代のオフィスの価値とは?【ICCサミット】

孫泰蔵さんが設立した株式会社Mistletoe(ミスルトウ)は、オフィスを完全に閉鎖し、話題になった。あらゆる企業は、会議のオンライン化を進め、インターネット環境さえ整えばリモートワークが可能な仕事も増えている。そんな時代に、オフィスの価値とはなんだろうか。

今年9月、「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場Industry Co-Creation ™ (ICC) サミットに、CRAZYのカルチャーオフィサー小守由希子が登壇。

日本マイクロソフト株式会社デジタルトランスフォーメーション事業本部長の伊藤かつら氏、株式会社リンクアンドモチベーション取締役の麻野耕司氏、株式会社ビズリーチ取締役の竹内真氏と語り合った。

テーマは、それぞれのオフィス論から考える『なぜ今の時代にオフィスが必要なのか?』。ユニークなオフィスをもつ4社のセッションの様子を紹介する。

心地よい空間作りを意識したビズリーチ

セッションでは、まず各社のオフィスが紹介された。ビズリーチは、即戦力人材採用のサービスビズリーチや日本最大級の事業承継 M&Aプラットフォームビズリーチ・サクシードなどで注目を集める企業だ。オフィスのエントランスには、人工芝でできた丘があり、VRで投影される海にさざなみがたつ。

これは、主にエンジニアに企業の魅力を感じてもらえるようにと考えた結果だという。同社は事業の特性上、情報を守るために社内で詰めて仕事をしなくてはならない場合がある。そこで、「集中する」「社員同士がコミュニケーションをとる」「リラックスしながら仕事をする」の3つの時間があることを意識して、オフィスを作り込んだという。(ICC編集チームによるレポートはこちら

 

リモートワークを促進するマイクロソフト

グローバル企業であるマイクロソフトのオフィスは、クラウドとAIの企業として生まれ変わった同社らしく、リモートワークを促進している。フリーアドレスのオフィスのデスクは、1.6人に一つという割合。全パソコンにSkype for BusinessTeamsを入れている。会議では必ずSkypeをつなぐので、事前に誰がオンラインで参加するかを確認することもない。

リモートワークを促進しているからこそ、オフィスは、そこでなければできないことを重視した作りになっている。一人でこもって集中するConcentration Boothや、ヘッドレストとパーテーションつきの椅子がならぶ、個室的なスペースもある。

その一方で、ちょっとした会議に使えるオープンスペースやカフェテリアなど、コミュニケーションが活発になる仕掛けもあるという。(ICC編集チームによるレポートはこちら

 

ワンフロアのリンクアンドモチベーション

一方、リンクアンドモチベーションは、広大なワンフロアのオフィスが特徴的だ。その広さは1860坪。都内のオフィスビルでは一番広いという。こういったオフィスにしているのは、M&Aが主要な成長戦略だということが理由だ。

リンクアンドモチベーションは、本体企業よりも、グループ会社の社員数の方が多い。これまでは、都内にグループ会社が点在するような形だった。しかし、シナジーを効かせるためには、コミュニケーションを円滑にすることが必要だと考えて、オフィス移転のときにワンフロアにこだわったという。

また、空間をできる限り自由に使えることも重視している。エンゲージメントが低い部門を、良い部門の隣に配置できるようにしたり、意思疎通が必要な相手を近くに配置できるようにしたいと考えてのことだ。自由な発想で使えるスペースもある。

なぜなら、麻野氏はオフィス戦略は経営戦略の一つだと考えているのだ。働く人の企業へのエンゲージメントは、コミュニケーションで決まり、そのコミュニケーションはオフィスに影響をうけるのだと語った。(ICC編集チームによるレポートはこちら

 

全社員でリノベーションしたCRAZY

CRAZYのオフィスも、空間を明確に定義することはしていない。オフィスには託児スペース食堂も備えているが、そのスペースは柔軟に使用目的を変えられる。仕事場にもなり、暮らしの場にもなる。それは「生きる」と「働く」の境界線を曖昧にする発想から生まれているのだ。

オフィスは、もともとは繊維工場だった4階建ての建物を、全社員が仕事の手をとめて、10日間でリノベーションした。創業時には、自分ごと化を大切にしようと思いをひとつにしていたCRAZY。けれど、会社が成長していくとともに「会社を自分達で作っていく」という感覚が薄れてきた。事業部間のセクショナリズムも進んでいた。

それが手作りでオフィスをつくることで、会社に不満がある場合に「じゃあ、どう変える?」というマインドに変わっていったという。(ICC編集チームによるレポートはこちら

オフィスは本当に不要なのか

株式会社ビズリーチ取締役の竹内真氏

ビズリーチの竹内氏は、他の3社がフリーアドレスにし、マイクロソフトに関しては出社の義務もないことに触れ、「自由度をあげると事業の生産性があがったという話は聞きますが、実際にはどうでしたか? 新たにうまれた課題はありませんでしたか? 」と水を向けた。

CRAZYでは、年次によって週に2回在宅勤務を選ぶことができ、オフィスはフリーアドレスにしている。小守は別のフロアで仕事をしているメンバーと、連携がしにくかったときはあったとしながらも、「どの場所で仕事をすれば生産性があがるのか、自ら研究させる意図があるオフィスなのです」と話す。

マイクロソフトの伊藤氏も、CRAZYの考えに同意する。日本人には、仕事は会社でやるものだという発想が染み付いているが、通勤だけで疲弊するようでは、パフォーマンスベースで考えた場合にはメリットが少ない。

日本マイクロソフト株式会社デジタルトランスフォーメーション事業本部長の伊藤かつら氏

また伊藤氏自身は、オフィス派だとも話す。とはいえ、これから会社が生き抜くためには、介護や育児でオフィス通勤がむずかしい人たちと、ためらいもなく働けるようにすることは必要だと考えている。

一方、リンクアンドモチベーションの麻野氏は、オフィスは各法人のエリアを設定したうえで、自由に席を選べるデザインアドレスを選択しているという。在宅勤務は現状はしていない。それは、顔と顔を付き合わせるからこそ、部下の顔色がよくないことがわかったり、ちょっとした会話の中からアイデアが生まれたりすると考えるからだ。

株式会社リンクアンドモチベーション取締役の麻野耕司氏

「デジタルの進化は素晴らしいし、便利になっている実感もあります。しかし、リモートワークや副業、オフィス廃止などの、働き方の自由度をあげる流れに安易に乗ってしまったら、組織は崩壊すると思います。理念がしっかりと浸透し、ミッションでみんなが結束していなければ、組織の一体感がなくなって生産性がさがるでしょう。その点を考えることは大事だと思います」

オフィスにかけるコストとパフォーマンス

セッションの最後は、コストの話に。ビズリーチが一人当たり1.8坪くらいの床面積に対して、他の3社は3坪程度。竹内氏はCRAZYの小守に、「100人規模の会社だった時代は、コストをシビアに考えていた」と伝えたうえで、託児所食堂等のゆとりあるオフィス設計にかかるコストへの考え方を質問した。

CRAZYのカルチャーオフィサー小守由希子

小守は、ランチ時間以外はランチをとる場所をワークスペースとして使っていると説明する。また、託児スペースは、ママパパ以外のメンバーの出入りの方が多いと明かす。集中が切れたり、煮詰まったりすると、社員が子供に癒されにいくのだ。

そして遊びながら子供の創造性に触れて、また仕事に戻っていく。ある種、リフレッシュの場所として機能していることを考えると、託児スペースもワークプレイスだと話す。

「一見非効率だけれど結果的にパフォーマンスに結びつくものを、経営者がどれだけ信じられるかで、コストとパフォーマンスの考え方は変わると思います。そして、パフォーマンスに結びつくと考えたら、きちんとそれが周りに伝わるように発信していくことが大切です」

様々な発想でオフィスを考えている4社。オフィスのあり方、価値は多様にあるが、事業とビジョンをオフィスに反映しようとしている点は各社共通している。形から真似るのではなく、事業とビジョンに矛盾のない形でオフィスを考えていくことが必要だ。そう感じさせられるセッションだった。

CRAZY代表・森山が登壇したICCはこちら

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FELIX 清香
Sayaka Felix

greenz.jp、Pouch、「ソトコト」等のWEBマガジン、雑誌での執筆や書籍構成、オウンドメディアの立ち上げ等を行なっている。国際交流やエシカル、児童文学、体感型アートに興味あり。プライベートでは、Give & Takeではなく、Give & Giveで経済が回るかどうかをさまざまな取り組みで実験する「ギフト経済ラボ」のメンバーとして、カルマキッチンというカフェイベント等の運営に参加している。

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