INTERVIEW

「不器用な生き方」にあったブランドの源泉。【TOP LIVE】

CRAZYの代表・森山和彦が、他業種の代表と組織論や人生哲学を語るTOP LIVE。第8回目のゲストは、メイドインジャパンの工場直結ファッションブランド「Factelier(ファクトリエ)」代表の山田敏夫氏。ブランド発祥の原点や、成長フェーズで直面した課題。等身大に語られた、熱い2時間をお届けする。

吉田勇佑(以下、吉田):今日は「世界を変えるジャパンブランドのつくりかた」をテーマに、ブランドが生まれる背景にある人生観を聞かせてください。

新しい購買の判断軸を作りたい。

山田敏夫(以下、山田)氏:実は僕と森山さんは、同じ大学の同じ学部学科出身で、同じく創業7年目です。創業のきっかけの1つは、幼少期にあります。僕の熊本の実家は、100年続いている婦人服店なんです。小さい頃から夜お店が終わる19時50分になったらシャッターを閉めて、幕をかけて、掃除をして、ゴミを捨てて。店舗では日本製のものを取り扱っていたので、当たり前に良いもに囲まれて育ったことが僕の原点でした。

その後フランスへ留学した際にGUCCIのパリ店で働いたんですが、その時同僚に「日本には本物のブランドがない」と言われたんです。それで工場から日本ブランドを作りたいと思ったことが、メイドインジャパンの工場直結ファッションブランド『ファクトリエ』の一番の大きなきっかけですね。

ライフスタイルアクセント CEO&Founder 山田敏夫氏(Toshio Yamada)
1982年、熊本県生まれ。創業100年の老舗婦人服店の息子として、上質で豊かな色合いのメイドインジャパン製品に囲まれて育つ。大学在学中、フランスへ留学しグッチ・パリ店で勤務し、一流のものづくり、商品へのこだわり・プロ意識を学ぶ。2012年1月、工場直結ジャパンブランド「ファクトリエ」を展開するライフスタイルアクセントを設立。2016年に、カンブリア宮殿に出演。

今、洋服は3つの購買の判断軸から選ばれているんですよ。デザインと値段とロゴです。僕たちはこの4番目の判断軸を作ることをミッションにしています。要は、作り手の思い、クラフトマンシップ(職人の技能)を感じることで、人が商品を買うという新しい購買の判断軸を作りたい。それが僕らのコアですね。

最初は行商*1で、友達にたくさん連絡していました。そのうち「山田の電話に出るとシャツを売られる」という噂が立ちましたが(笑)、合計100枚くらい売りました。また、無償で着こなしセミナーを開催し、ジャストサイズでシャツを着る大切さを伝え、みなさんのサイズを測ってお渡しして、最初はなんとか売りきりましたね。

森山和彦(以下、森山):一人ZOZOスーツじゃないですか!

吉田:前澤さんが開発する前でよかったです(笑)。森山さんはいかがですか。

株式会社CRAZY 代表取締役社長 森山和彦(Kazuhiko Moriyama) 前職の人材コンサルティング会社では、法人向けコンサルティング部門の事業責任者として、中小企業から大企業までの組織改革コンサルタントとしてトップセールスを記録する。6年半の勤務を経て2012年7月に株式会社CRAZYを創業。独自の経営哲学から組織運営のシステムを確立している。

梅干し生活を続けてでも、叶えたかった夢。

森山:CRAZY WEDDINGの原点は、私自身が結婚式をあげようとしたときに不満を感じたことなんです。驚いたんですよ! 結婚式場に行ったときに「どういう結婚式がしたいんですか」とかは全く聞かれないんですよ。いきなり定型的な会話が始まるわけです。「和か洋どっちがいいですか」「ここにウェルカムボードを置いてもらいますね」って。どの会場も同じ形式でした。

当時は若気の至りで、ディズニーシーの火と水の妖精が一体化する、水上ショーみたいな演出をやりたかったんです。 だからプールに火をまけるかどうかが大事でした。でもそれをウェディングプランナーさんに伝えると、ポカーンですよ。後から考えてみれば、マクドナルドに行って、オーダーメイドのお寿司を注文しているようなものなんですけどね(笑)。

それでも諦めることができず、コネで理想に近い結婚式を作ってくれそうなところにお願いをしました。プールに火をまくのはできませんでしたが、電源車とかを入れて一大イベントの式を挙げました。かなり奮発したので、その後は毎日梅干し生活でしたね(笑)。でも結果的に、日本で一番最多の完全オーダーメイドのウェディングを作る会社を作るに至ったわけです。

吉田:自分がクライアントで始まり、これだと思うものを信じてやってきた結果がいまに繋がっているんですね。今日はブランドというテーマですが、お二人は「ブランド」とはなんだとお考えですか。

クレイジーな信念。不器用なまでの生き方。

森山:自分が本当に強く信じているものがブランドと呼ばれるのだと思いますね。強く信じていなければ、常識を逸脱できない。newspicksでとある記事1ヵ月の休暇も子連れ勤務もOK!「自由すぎる会社」が成長する理由が話題になったのですが「CRAZYは現実離れしている」というコメントを頂いたんですよ。まさに、そうなんです! 強く信じているものは、他から見るとクレイジーと言われるんです。

時にバカにされたり、「そんなの無理じゃないの」って言われるんですよ。でも、それを栄養にしていく。反対の声を乗り越えるほど、信じる気持ちが一層強くなっていき、閾値を超えるとその生き方がブランドになるんです。そこに至るまで、苦しんでいない人って存在しないんじゃないですか。葛藤の香りがする人は、きっと本物です。

吉田:山田さんはいかがでしょうか。

山田氏:1930年代に活躍したシャネルって、女性の社会進出に一番貢献したブランドじゃないですか。その時代に向き合った結果として、定番になっているんですよね。マーケティングで定番を狙って、売れるものを作ったわけじゃないんです。

クックパッドとかもそうですが、誰かに思いっきり刺さるものは背景に自分がある。自分に刺さらないものは誰にも刺さらない。結局ブランドと言われるものは、不器用なまでに時代と向き合って、自分が「これだ」と思うものを正解にしたんだと僕は思いますね。

何かをバズらせようと始めたビジネスモデルって商品を残していかないんですよ。つまりどんどん作って、余ったら捨てて、変えてく。ファストファッションと同じですね。

僕はそこをアンチテーゼとして、大量生産・大量消費とは真逆の位置にいきたい。消耗ではなく愛着を大切にしたい。僕らのお客さんは、この革命を起こす同士として仲間になってくれています。困難は承知の上です。誰かが作ってくれた道もないし、急に予想外の障壁が発生したりもする、まあ不器用な生き方ですよね(笑)。

僕ら二人ともそうだと思うんですよ。森山さんだって、前職で高い給料をもらって活躍していたけど、いてもたってもいられなくなって、起業した。僕らはそういう不器用さがあったから今があると思うんです。

一方で、全員がこの不器用な生き方をして、最初の一歩を踏み出さなきゃいけないとかじゃない。誰かが作ろうとしている未来に共感して、集うだけでも十分に一歩踏み出しているって僕は思いますね。

吉田:なるほど。ブランド作りをする中で、感じている課題感はありますか。

「100人の壁」を前に、矛盾を咀嚼できるか問われている。

森山:CRAZYはもう少しで社員数が100人になるんです。リーダーシップが課題になる「100人の壁」*2にぶち当たります。みなさん、突然ですがリーダーという職業がメインで食べるものは何かわかりますか?

「矛盾」という食べ物です。世の中全てのことは矛盾しているじゃないですか。例えば、仕事に熱中しすぎるとプライベートはおろそかになりやすい。仕事のスピードを上げようとすると、丁寧にするのは難しくなりやすい。でも、スピードを上げることも丁寧にすることも、どっちも正しいんですよ。

「仕事が大変過ぎて辛い!」というメンバーがいるとします。感情面だけ受け取って「頑張ろうね」ではなく、矛盾を受け止めて楽しみながら進めるように、対話ができるかどうか。

一見納得しにくい目標があったら、「俺は決めていないのになんでだろう」って思うことがあると思うんです。でも「これは俺の食べ物じゃない!会社のせいだよ」と伝えてしまうのは、その問題を食べていない状態です。

自分なりに咀嚼して、解を見つけること。そうやって、自分の言葉で話せるリーダーがいる組織はやはり強いですね。私たちが今直面し、取り組んでいる課題はこの強いリーダーづくりです。

次の階段を登りたいのに、階段がない。

山田氏:業務的に整理してもわだかまりが残ってしまうし、感情だけ整理しても何も忙しさは変わらない。言い方も、否定ではなく肯定にしなくちゃいけないですし、リーダーは大変ですよね。メンバーそれぞれにとって理想の上司になろうとすれば、八方美人になっちゃうし、フォロワーシップを高めると、リーダーシップがないと言われますし(笑)。

僕はまだ契約社員やアルバイトの方を入れても30人ちょっとなので、CRAZYとは規模は違います。ただこの1年は、僕個人の成長が求められた年でした。シンプルに、めちゃくちゃ失敗したんですよ。例えば、ファクトリエにとっては莫大な施工費をかけた横浜のお店を去年11月に閉めましたし、ECサイト上での詐欺もありました。

マレーシアのある個人のお客様が、商品を大量に買ってくれてると思っていたら、結局300万くらい詐欺だったんですよ! 半年過ぎて発覚したものの、商品はすでに送ってしまっている。カード会社は、送った商品に関しては保証してくれませんから。

そんな状況になるとは知らず採用は続けていたので、人の配置にも問題が発生するわけです。急に「エンジニアになってください」とかは言えないですし、かといって、その人たちありきでポジションを作っても組織はおかしくなってしまう。

まさに次の階段に登ろうとした時に階段がない状態でした。今まで自分がリーダーシップをとってきたから、弱い自分を見せるとみんな離れていっちゃうんじゃないかと思うんですよ。でも腹を割って、向き合って……。まだまだチャレンジ中なんですけど、苦しい1年でした。

そんな中でも嬉しかったのは、自主的に「会社を良くする」ためのチームが立ち上がったことですね。ファクトリエが大好きだから、一歩踏み出そうよ、変えていこうよって。毎週月曜日の朝8時から会議が行われ、それを元に施策を実施しています。

吉田:リアルな話を聞かせていただき、ありがとうございます。最後お二人から一言いただいて締めていきましょうか。

山田氏:僕もまだ何も成していないですし、チャレンジャーで、フェイルファーストです。人間が唯一コントロールできるのは結果ではなく行動。同士として一緒にいい社会を作っていきたいなと思います。

森山:成功したとか売上が上がったとか認められたとか、「それって何から? 何と比較してるの? 」と私は思うんです。そういう世界って面白くない。自分の中心にある純粋なものを磨く方が楽しい。私はとにかく自分に正直でいたい。みなさんの心にある何か本質的なものに火がつけばいいなと思い、今日もイベントをしています! お越しいただきありがとうございました。

 

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【イベント開催決定!】

CRAZY WEDDING創業者によるスペシャルトークライブ「UNSTANDARD PEOPLE」。第3回目は、2018年10月6日(土)17:00-21:00に建築家の谷尻誠氏をお呼びして開催することが決定しました。詳細はこちらからご覧ください。

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【TOP LIVE vol.1】30歳からの成長論「志×成長=ソーシャルインパクト」を成立させるロジックとは?

【TOP LIVE vol.2】30歳からの組織論〜「志を持つ強い組織」を成立させるロジックとは? 〜

【TOP LIVE vol.3】100人が熱狂! 漫画『キングダム』の名シーンから読み解くリーダーシップ〜Yahoo!アカデミア学長✖︎CRAZY社長

【TOP LIVE vol.4】キングダムに学ぶ「時代を作る究極のリーダーシップ」

【TOP LIVE vol.5】親との葛藤、拡大期における失敗。世界を変えるための覚悟とは。

【TOP LIVE vol.6】これからの時代のニュースタンダード。「理想の組織のつくり方」

【TOP LIVE vol.7】キングダムに学ぶ「愛や幸せや勇気を語る組織カルチャー」

 

*1 行商

商品を持って一軒一軒をたずね、小売りすること

 

*2 100人の壁

事業の成長に伴い、マネジメント力の乏しい人材が課長職に就く(就かざるを得ない)状態が生まれるなど、組織階層が複雑になることで、新たな体制整備が必要になると言われている。

 

写真:浦口 宏俊

水玉綾(@maya_mip)
Aya Mizutama

CRAZY MAGAZINE編集長。フリーランスのライター・編集者。働き方・組織論などのビジネスシーンから、個展やポエミーな文章まで幅広く担当。世の中が美しくなる編集を大切にしている。吉本ばななさんのTUGUMI、ミヒャエル・エンデさんのモモが好き。

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