INTERVIEW

「強くあることを手放そう」——酸いも甘いも噛み分けて“ごきげん”に働く

お客様の要望を先回りし、トラブルには冷静に対処して、チャットの返事には即レス、愚痴や弱音はもってのほか——。自らのスタンスに高いハードルを掲げて、仕事に臨むビジネスマンは多いと思います。しかし、自分を高みに導くはずのそのスタンスが、いつのまにか自分の心の枷(かせ)になってはいないでしょうか。

株式会社CRAZYの広報担当・五来未佑さんは、もともとプレッシャーと責任感から自分を追い込み、結果を作っていく仕事のスタイルでした。ですが、とある転機を迎えた以降は、自然体で“ごきげん”にいられるスタンスを大切にしているそう。

彼女が今のスタイルになるまでの経緯を追うと、“ごきげん”で働くことは、個人だけでなく、チームの生産性までにも良い影響を与えることが見えてきました。自分に鞭を打ってがんばり過ぎてしまう人に、届けたい1本です。

七転び八起き。絶対にへこたれない、肌身離さなかった「鉄の笑顔」

五来 未佑 / Miyu Gorai  新卒一期生としてCRAZYに入社。ウェディング事業におけるアルバイトスタッフ部門を立ち上げ、2年半をかけて採用・教育・管理を行う。所属人数は述べ600名を超えた。その他、創業時のCRAZYのウェディング現場を数多く担う。現在は、全社広報を担当。

私は、新卒で株式会社CRAZYに入社して、今年で6年目を迎えます。入社以来、様々なポジションを経験してきたのですが、特に印象的だったのは、アルバイトスタッフ部門の立ち上げです。ウェディングの当日接客を行う「キャスト」という、述べ600人を超えるメンバーの採用から育成を担当していました。

お客様にとっては一生に一度の結婚式。そんなおめでたい日に立ち会えることはしあわせですし、責任も重大で、どんなに体が疲れていても、弱音なんて吐かずに笑っていたことを覚えています。とにかく高い基準で仕事をすることが楽しくて、失敗をしてもすぐに起き上がるから、へこたれた記憶もないくらい。

当時、結婚式の現場に出ていた五来の様子

人前に立って研修をする機会も多かったので、テキパキと動いて、笑顔は絶対に絶やさない。自分の立ち振る舞いが、周囲にどんな影響を与えるのか、どう見られるのか、人一倍意識しながら、真面目に仕事と向き合ってきたと思います。

そういう意味では、私はずっと周囲からは“ごきげん”に働いているように、見えていたかもしれません。ただ今思えば、当時の私は本当の気持ちを抑えて“ごきげんであるべきだ”と振舞っていたんです…!

スマートな仕事ぶりに隠されていたのは、弱さを隠すための“ごきげん” だった

入社当時の私には、“絶対的な上司”がいました。彼は、年齢はひとまわり上で、常に高い基準で仕事をする人。だからこそ、彼の期待に応えたい、完璧を目指したい——そうしたプレッシャーが大きかったんです。

仕事中は、眉間にしわを寄せてPCとにらめっこ。着信音には瞬時に反応できるよう、携帯は常に持ち歩く。上司の1日のスケジュールはまるっと暗記していましたね。職場では涼しい顔をしているものの、家に帰って寝床についたら、緊張状態から架空の着信音で飛び起きる、なんてことも…。

そんな仕事ぶりに疑問を持ち始めたのは、久々に会った先輩と話をした時でした。「もっと頑張らなくちゃと思ってる」と近況報告をすると、先輩からは「上司のために仕事を頑張るの?」と返されたんです。

えっ…と思いました。もちろん、そんなつもりは全くなかったから。ただ、緊張状態で頑張っていたのは事実です。というか、弱い自分がいやで、強くあれるように、いざという時でも周囲を守れるように、必死だったんだと思います。

当時はそんな自分をどう受けとめたらいいのか、すぐには分からなくって…。そこから転機が訪れたのは、別のチームに異動した時のことでした。このチームとの出会いこそが、“本当の意味でのごきげん”ひいては“チームをも前に進めるごきげん”への気づきをくれたんです。

「不満・悩み・弱音」は、課題解決の源泉!?

配属されたのは、対面だけではなく、メールや電話でお客様と密にコミュニケーションをとっていく新設のチーム。何か問題があった際には、叱責をも受け止め、謝罪をする窓口でもありました。だからこそ、電話を切ったあとのメンバーはデスク前で泣いたり、悔しがったり、感情がわんさか溢れていて…。

正直、配属された当初はめちゃくちゃ戸惑いました。「ネガティブな発言は、馴れ合いに繋がるんじゃない?」「いい状況なんて生まないんじゃない?」——いろんな心の声が自分のなかだけでこだましていましたね。

これまで思い込んでいた、どんな状況においても、不満を漏らさず、笑顔で頑張るという美学。でも、初めて私は、それに疑問を持たざるをえない現実を知ったんです。

なぜなら、不満・悩み・弱音を共有することが、チームに予想外のいい影響をもたらしていたんですよ。サービスや働きかたの“細かな改善”が生まれていたんです。

実は、吐露の中には、小さな課題の芽が隠れていて。共有することで、課題発見が早くなり、その分解決もしやすくなっていました。仮にトラブルを瞬時に共有できれば、「解決するための知恵」はメンバーの数だけ集まりますよね。一見弱音や愚痴に見えるコミュニケーションが、課題解決の源泉になるとは思いもしませんでした。

そうした実体験を繰り返していくなかで、自分の気持ちがゆっくりと変わっていったんです。そもそも、責められる不安や、恐怖を感じることなく、弱さや失敗を誰かに共有できるのって、すごいことじゃないですか。自分に打ち明けてくれる仲間への尊敬と、感謝の気持ちが、日に日に増していきました。

ひとりで強がるんじゃなくて、痛みを分かち合う。そうすれば、スッと気持ちの整理ができて、前を向くことができる。こうして笑顔でいられる状態こそが、本当に自然体な“ごきげんな姿”だし、それはチームを前に引っ張るエッセンスにもなると知ったんです…!

もっともっと自然体に“ごきげん”に。広報になった私の挑戦

人の気持ちを考えすぎたり、責任感が強すぎて、自分のペースを乱してしまっている人って多いんじゃないかと思います。過去の私のように、強くあろうとして、どろっとした弱音を吐き出せなかったり、ひとりで背負いすぎてしまったり。

そういう人は、まずは自分はどう感じているのか、ノートに書き出したりしながら、本音を受けとめてみてください。自分の中に巻き起こる感情は、変えることはできないけど、どう受け止め、思考するかは、心がけ次第でコントロールできるものだから。

そして、弱音を分かち合える信頼関係は、本当に大切です。高いプレッシャーや緊張状態では、どんな超人でも走り続けることは難しいですから。それに、酸いも甘いも噛み分けて“ごきげん”でいる人って、とっても魅力的だと思いませんか?

弱さだって、人間味を感じられる素敵なことだし、そういう人には、本音を打ち明けてもいいな、って周囲も感じられるもの。結果、そういう人がいい議論の場を作り、仕事を良い方向に進めていると、社内外を見ても思います。

そんな私が今担っているのは、広報の仕事なので、“人としての魅力”がより一層試されるお仕事です。今は前と比べると、随分肩の力を抜いて働けているとは思いますが、正直なところ、まだまだ。

本当は、もっともっと自然体に、“ごきげん”に、素の自分を解放していきたいんですよ。その方が絶対におもしろいし、いい仕事に繋がると知ったから。酸いも甘いも噛み分けて、魅力的な広報になれるよう、私は走ります。

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編集:水玉綾  写真:小澤 彩聖

萩原愛梨
Airi hagiwara

ビューティーテックカンパニーSpartyでChief Customer Officerを務める。ITフリーランスの支援事業を行うgeechsでの広報・メディア運営の経験から、フリーライターとしても活動中。複業ワーカーの可能性を自ら体現すべく奮闘する日々。著書に『女子的「エモい」論 ~おじさんに伝えたい私たちの本音~』(「幻冬舎plus+」)

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