COLUMN

「ゴミ」の概念を変えた! 株式会社ナカダイの前橋工場をのぞく

「うちならなんでもありますよ、お風呂場の壁とかね!」

誰よりも産業廃棄物のことをワクワク話す人がランチに来た。株式会社ナカダイ常務取締役、モノ:ファクトリー代表の中台澄之さんだ。

ランチ中にゴミの話だなんて! ということにならないのは、中台さんが産業廃棄物を「ゴミ」としてではなく「素材」として見ているから。

その視点に惹かれた私たちCRAZYメンバーは、群馬県前橋市にある株式会社ナカダイの廃棄物処理工場へ見学に向かった。終始丁寧にご案内してくれたのは株式会社ナカダイの宮田美加さん。

現場が好きなんです、と元気ハツラツに話す彼女。分かりやすい説明に感銘をうけたが、まだ勤務して3年足らずだと聞いて驚いた。株式会社ナカダイの社員さんは皆、自分たちの仕事に愛着をもっているのが伝わってくる。

「ナカダイでは、産業廃棄物*1を集めて分別・解体を行い、加工を施してリサイクルしています。しかし、ただリサイクルするだけではなく、400種類にも及ぶ産業廃棄物から生まれた素材を展示し、工場見学やワークショップも行います。このように、廃棄物の多様な使い方を提示することで、モノの新しい価値と流れを作る事を、リマーケティングと呼んでいます。みなさんが今いるこの場所は、モノ:ファクトリーといいます。モノ:ファクトリーとは、アートやデザインなど、自由な感覚でモノの使い方を創造する拠点であり、株式会社ナカダイがリマーケティングビジネスを推し進めるために設立した場所なんですよ」

モノ:ファクトリーに置いてあるのは、かつて企業から排出された「産業廃棄物」だという。でもそんなことを忘れさせるくらい、一目見ただけで人をワクワクさせるようなモノたちばかり。希望があれば買うこともできると聞いて、メンバーは思わず前のめりに。

ここからはどんなワクワクするような産業廃棄物が展示してあったのか、ご紹介しよう。

元の素材が価値をもつ

「なにこれ!!!」

大きすぎる信号機を前にして、驚きの声が響き渡る。

(普段は遠くから見ているから実物より小さく感じているにすぎないのだが……)

これはLEDに切り替わる前に使われていた古いタイプの信号機。実は赤色のレンズだけがちょっと大きいんだとか。一番見えなくてはならない「止まれ」を知らせる赤色を、目立つようにしたという理由があるという。諸説あり。

他にも

これはもしや……!?

 

ピアノ??

弦に触れるとまだ音が鳴る!

地球環境科メンバーの一人である太田さん(通称えいみーさん)は、「これバラ売りいけますか?」とまんざらでもなさそう。

火事を知らせる「強く押すボタン」を発見!

宮田さんから「一般的に置いてあるものを押すと怒られますが、これなら怒られないんで」という耳打ちをいただき、確かに……と思いおそるおそる押してみる。

もちろん何も起こらなくて、安心。

これは……

誰もがお世話になった、トイレの表記!

鬼ごっこがスタートすると同時に、トイレの個室に入って隠れていたことや、夜の学校に友達と忍び込んでトイレの花子さんを探していたことなど、ちょっと変わった懐かしい思い出話に花が咲く。

そうしていると、

綺麗な石を発見!

「これは発泡スチロールを溶かして固めたモノです。ご存知の通り、発泡スチロールはすごく軽くて、中に空気が入っているため、トラックにパンパンにつめることができず運搬効率が悪いんです。なので、中の空気を抜くために一度ドロドロに溶かして固めるんですよ」

写真では分かりづらいのですが、光があり、綺麗な石かと間違えてしまうほど。まさか発砲スチロールが元になっているとは思いもしない輝き。

ちなみに私は最近引越しをしたので、これを機にベッドをDIYしようと考えていて、ちゃっかり宮田さんに素材を相談。木材のパレットを紹介してもらいました。費用をお伺いすると、モノ:ファクトリーでは基本的に重量売りらしく、「この木材は重たいから、もしかするとホームセンターで買ったほうがやすいかもね!」と言われてしまい、とても残念。

折角ならモノ:ファクトリーで何か買ってみたい!  という思いばかりが募る、なかなかレアな工場見学です。

使い方を創造し、捨て方をデザインする

そもそもなぜこのようなことを始めたのでしょうか。

「最初は、廃棄物を回収してリサイクルするだけだったんです。でもそれだけだと、産業廃棄物の量が増えれば収益が上がるので、産業廃棄物の量が増えると喜ぶことになってしまいます。それは違うと思った代表の中台が産業廃棄物を「ゴミ」でははなく「素材」として生かせないかと考えて、モノ:ファクトリーがはじまったんです」

産業廃棄物の使い方を新たに創造するという観点は、きっと廃棄物業界では大きなイノベーションだっただろう。

今まで「もったいないから」という理由で再利用をしてリサイクルをしてきた業界。でもモノ自体に素材としての価値を創造することで、アーティストや建築家が「面白いから、素敵だから使ってみよう」と購入していく。たとえば信号機など、お店に装飾として飾る人もいると言う。

見学中、目の前にあるモノが産業廃棄物であることはすっかり忘れていた。そこにあるのは、人の息づかいが聞こえるような生きている「商品たち」だったから。

物事の概念を変えるのは、ワクワク

株式会社ナカダイが、産業廃棄物をゴミとしてではなく、価値ある素材とみなし、展示・販売していくことで「産業廃棄物」の概念は変わりつつある。

モノ:ファクトリーに置いてある、そのモノたちに、もうゴミの面影はなかった。「見るものをワクワクさせる商品」として、輝くことが出来るということを知ったから。

株式会社ナカダイの取り組みに対して、心から素敵だなあという気持ちが湧き上がってくるのは、こうすべきだ!という正解の押し付けじゃなくてワクワクするようなアートで、モノを再創造するからだと思う。

何かを変えたい、良くしたいと思ったとき、人が自然と動きたくなるのは、こころが踊り、楽しくて、素敵だと思うような遊び心やワクワクが芽生える時。

そんなワクワクこそが、物事の概念を変えるほどの力を持つのだろう。

今回のご縁をくださった株式会社ナカダイ常務取締役、モノ:ファクトリー代表の中台澄之さん、ご案内をしてくださった宮田さん、工場見学をさせてくださり本当にありがとうございました!

(一般の方も随時参加可能だそうなのでよければこちら

群馬県にある前橋工場までの車を運転したのは、地球環境科メンバーである遠藤さん(通称えんさん)。そしてその子どもである1歳のけいと(参照:ぼくのいるところ)も、もちろん一緒に工場見学。帰りは疲れて眠っちゃったところを、パシャりと撮影。

*1 産業廃棄物
企業の事業活動から出てきた、いらなくなった廃棄物のこと。

参考文献
・中台澄之(2016)『「想い」と「アイデア」で世界を変える』SBクリエイティブ株式会社

 


※CRAZYは一緒に働く仲間を探しています

編集:高橋 陽子

水玉綾(@maya_mip)
Aya Mizutama

CRAZY MAGAZINE編集長。フリーランスのライター・編集者。働き方・組織論などのビジネスシーンから、個展やポエミーな文章まで幅広く担当。世の中が美しくなる編集を大切にしている。吉本ばななさんのTUGUMI、ミヒャエル・エンデさんのモモが好き。

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