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INTERVIEW

「起業家の妻」と「起業家の夫」。それぞれの夫婦の在り方、働き方とは。

(左から、森山、山川、黒沢氏、水谷氏)

夫婦でともに働く、株式会社CRAZY代表取締役の森山と妻・山川が対談したのは、業界の第一線で活躍する起業家ご夫婦。今回は「起業家」である妻のエピソードを聞きながら、女性の働き方の多様性や、夫婦の関係性について語り合った。

プロフィール
水谷健彦(Takehiko Mizutani)

株式会社JAM代表取締役社長
早稲田大学卒業後、株式会社山野楽器、株式会社リクルート人材センター(現リクルートキャリア)、株式会社リンクアンドモチベーションを経て、2013年に株式会社JAMを設立。「日本人の就労観を変革する」を事業ミッションとし、組織コンサルティングを行う。著書に『急成長企業を襲う7つの罠』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。2014年に黒沢祐子氏と結婚。

黒沢祐子氏(Yuko Kurosawa)
株式会社YUKOWEDDING代表取締役社長

自動車メーカーの勤務を経て株式会社Plan・Do・Seeへ入社。社長秘書、プランナー業務を5年間勤めた後、それまでの日本にはなかった欧米スタイルのプランニングをしようと決意。フリーとして独立し、現在までに900組以上の結婚式を担当。2017年に株式会社YUKOWEDDINGを設立。ウェディングやパーティーの空間デザイン、プロデュースを手がける。2014年に水谷健彦氏と結婚。

森山和彦(Kazuhiko Moriyama)
株式会社CRAZY 代表取締役社長

中央大学卒業後、人材教育コンサルティング会社に入社。トップセールスを記録し、大手からベンチャーまで幅広い企業の経営コンサルタントとして活躍後、2012年に株式会社CRAZYを創業。経営の第一優先を健康とし、毎日3食手作りの自然食を提供するなどユニークな経営を行う。2008年に山川咲と結婚。

山川咲(Saki Yamakawa)
株式会社CRAZY / CRAZY WEDDING 創設者

人材教育コンサルティング会社で新卒採用などを経験した後、オリジナルウエディングのブランド「CRAZY WEDDING」 を立ち上げて人気ブランドに成長させ、2016年に事業を退く。毎日放送「情熱大陸」の出演や、著書『幸せをつくるシゴト』(講談社)、個展「うまれる。」の開催など、さまざまなフィールドで挑戦を続けている。2008年に森山和彦と結婚。

 

ー自己紹介とパートナーの好きなところを教えてください。

水谷健彦氏(以下、水谷氏):組織コンサルティングの株式会社JAMを経営しています。会社を設立して1年ほど経ってから、黒沢さんと結婚しました。最近彼女の作る朝食は、飛躍的に美味しくなりまして。お店が出すような、色とりどりの蒸し野菜サラダが出てくるんですよ。

黒沢祐子氏(以下、黒沢氏):彼のためでなく、自分のために作ってるんですけどね(笑)。私はフリーのウエディングデザイナーをした後に、昨年4月に会社を立ち上げました。夫の好きなところは、自由にさせてくれるところ。たとえば、今年自分の誕生日に、急遽一人旅に出てもいいか尋ねたところ、彼は「いってらっしゃい」と言ってくれました。1年の振り返りや将来を見つめるために、どうしても一人になりたかったんです。信頼されていると感じましたね。

水谷氏:信頼しているからというより、「あなたにとって大事な時間だからこそ、いってらっしゃい」という感じでした。やりたいことは、やったらいい。朝食に関しても、僕が作ってほしいと言ったことは一度も無いんです。相手に要望をするのは仕事を渡すことになってしまうので。本人が望まないことは極力させたくない。作ってくれたらもちろん「ありがとう」と言いますけどね。僕らはこの関係を「放牧婚」と呼んでいます。柵の中でお互いに好きなことをするイメージですね。柵をわりと遠くに置いているところが僕ら流です(笑)。

森山和彦(以下、森山):放牧婚いいですね! 私は2012年に株式会社CRAZYを立ち上げて、代表をしています。彼女(山川咲)の好きなところは、素直さですね。怒った時にはすぐに怒りを伝え、悪いことをしたらちゃんとごめんと言ってくれるんです。

山川咲(以下、山川):私はCRAZY WEDDINGというブランドを立ち上げました。夫の森山は社長として、一緒に働いています。昨年子どもが生まれたので、今は子育てをしながら休み休み働いています。彼の好きなところは、変化できるところ。本を読むなど新しいことを吸収し、成長し続けようとする勉強家の姿勢が好きですね。あと私が言ったことは、ちゃんと努力して直そうとしてくれるところ。

森山:私たち夫婦は「リクエストし合う関係」なんですよね。お互いを容認するだけではなく、要望はしっかりと伝えます。たとえば今夜一緒にご飯を食べようとか、旅行に行こうとか。リクエストが叶わなくても別に気にしたりはしません。ただ、要望は伝える。私たちは基本的にずっと一緒にいて、プロセスも共有したい。だから夫婦で起業したとも言えますね(笑)。

水谷氏:我が家とは真逆ですね。僕たちは「なるべく別々にしましょう、たまに一緒にいましょう」という感じです。この前友人に言われてその通りだと思ったのが、『キャプテン翼』の翼くんと岬くんの関係性。ゴールデンコンビですよね。お互いが向き合っているのではなく、同じ方向を見ているんです。コンビを組んだらどんな敵でも倒せそうだ、どこまででも行けるんじゃないか、というパートナーです。

黒沢氏:ほとんど相談もせず、決定事項を伝える感じだよね。本当に真逆で、面白い。

森山:タイプが違うから、人生の喜びも夫婦の形も違ってくる。いろんなタイプがありますよね。

ハードに働いた前職時代。女性だからこそ、突きつけられた転機。

ー続いて起業にいたるまでの会社員時代のストーリーをお聞かせください。

黒沢氏:新卒で3年間、自動車メーカーに勤めました。その後、ウエディング業界で最大手のPlan・Do・Seeに転職しています。実は私は、24歳の時に結婚式を挙げたんです。ウエディングプランナーさんと打ち合わせを重ねる中で、「私だったらこういう風にするのに」と感じることが多く、その体験が転職のきっかけになりました。

森山:Plan・Do・Seeは働きやすい企業のランキング上位ですよね。

黒沢氏:今ではそうですが、私が働いていた頃はベンチャー企業の先駆けみたいな時期で、なかなか刺激がありました(笑)。膨大な量の仕事があって、とてもハードな毎日で。夜中まで働いて、朝まで飲んで。これは一般的ではないのかもしれませんね。私は社長の近くでお仕事をさせてもらっていたので、大変だったけれどすごくいい経験でした。また、組織に向いていないことにも気づきました。一つのことを他の人と分配して動くのは苦手。私一人で好きなことを突き詰めたい。だから今の仕事のスタイルを選んでいます。

ー山川さんの会社員時代は、いかがでしたか。

山川:私は、20代のうちに自分の経験値を積み上げることが、これから先の自由度や人生の基準を決めると思っていました。昔から子どもを産む前に、山川咲というバイネームで仕事をもらえるようにならねば!と思っていて。とにかく20代は最も過酷な環境にいようと、一番チャレンジングなベンチャー企業を選びましたね。当時は、出産よりもまずはキャリアが重要だと思っていたんです。ただ、結婚した後に予想外にすぐ妊娠しました。一瞬迷いましたが「産もう」と決意して、時短勤務で働き出したそばから流産してしまって……。精神的にも相当落ち込んだ後、フル勤務に戻すのがうまくいかず「今までのキャリアが白紙になってしまう」状況になったんです。今でも大好きな会社ですが、ここで働き続けるのは難しいと思い、泣く泣く退職を決めました。

ー世の中の女性にとっても他人事ではない辛い経験ですね。

山川:今となっては妊娠や出産や流産も、突然訪れるチャンスのようなものだと捉えています。30代はそれなりのポジションを得るし、20代に比べて成長が頭打ちになっていると感じる時期ではないでしょうか。私自身、停滞感があったんです。ですが出産をしたことで、大きな変化が生まれました。夜は1~2時間おきに起きて授乳するなんて、普通にできるか聞かれたら「できません、無理です」と言ってしまうようなこと。でも子どもは命をかけて求めてくるので、やらざるを得ないし、自分が変わらざるを得なくて。まだまだ自分は変化していく余白があるのだと痛感する毎日です。女性としていろいろな変化を突きつけられることは、ネガティブに感じる節もあります。けれど、100年ライフと言われる今において、変われることは特権のような機会だと思うようになりました。

「女性らしく」はレトリック。意志をもつこと、寛容でいること。

ー女性だからこそ良かったと思うエピソードはありますか。

山川:結婚していたらの話ですけど、起業に失敗しても大丈夫という安心感はありました。収入がゼロになっても、夫の稼ぎがあることは1つの安心かもしれません。また私は会社のルールの中で、子どもを育てながらフルタイムで働くことは、想像ができなかったんです。だからこそCRAZYでは、それぞれのスタイルで子育てができるような組織を作りたいと思いますね。

水谷氏:最近は、男性も育児休暇を取得する人が増えていますね。僕も将来子どもが生まれたら1年くらい育休を取りたくなるかも。でもそもそも育休を取れる環境がないと、難しいですよね。起業は子育てと仕事を両立する環境を作る1つの手段かもしれません。ただし、収入がゼロ円になるなどのリスクに打ち勝つくらい、やりたいと思う意志が必要ですよね。

森山:私は「女性らしく」や「女性にやさしい環境」は巧妙なレトリック(実質を伴わない表現上だけの言葉)になりがちだと思うんです。具体的に考えてみれば、誰にとっても普遍的でやさしい環境は、とても難しい。社会には男女問わずバリバリ働く人も、そうでない人も、育児する人も、しない人も存在しますから。でも、どれが正しい正しくないという話ではなく、みんなそれぞれの生き方なんです。黒沢さんのような人もいるし、山川のような人もいる。ただ確かな時代の流れとして、一人ひとりが「こういう風にしたい」と発信しやすくなってきています。「自分はこうありたい」という意志や「これをやりたい」という要望を表現すること。そして社会全体としては、寛容性を持つことが大切だと思いますね。

ーまずは意志を持つことが大事、ということですね。やりたいことは、どうやって見つければ良いのでしょうか。

水谷氏:僕の会社では、JAMで働くのとは別にメインの仕事を持つことを推奨しています。すると多くの人が「やりたいことが見つからない」と言うんですよね。そのときに僕は、無理やり探さなくていいと返しています。探さなくても、いつか降りてくるから。僕はもともと楽器屋でサラリーマンをしていて、28歳のときに組織コンサルティングの仕事をやりたいと思い立ったんです。自分のやりたい仕事はこれだったんだ、と意志が降りてきた瞬間でした。そこからその仕事に飛び込んで、ひたすら修行をして、今があります。黒沢がウェディングの仕事に出会ったのも瞬間的でしたよね。

黒沢氏:私は自分の結婚式を挙げたことで、ウエディングプランナーになりたいと思いましたね。そしてPlan・Do・Seeに入って働く中で、自分がやりたい結婚式は一つの場所だけでは作れないと思ったんです。海外・欧米のウエディングプランナーのように、新郎新婦二人に合った会場探しからスタートしたいと思いました。ですが当時の日本では、そういうウエディングプランナーの職業は全然認知されていません。ホテルの婚礼部門や結婚式会場にいるプランナーがほとんどだったんです。でもやりたいと思ったんですよね。

水谷氏:好きなことを突き詰めていくと見えてきますよね。

男女関係なく、自分たちらしく、それでいい。

ー仕事も踏まえて、どのような夫婦の関係を築いていますか。

水谷氏:彼女は、「社長」と「妻」の2つの立場があります。僕は夫として、妻の立場で本人が望まないことをどれだけ減らせるかが大切だと思うんです。たとえば、本当はもっと働きたいのに、夫の帰宅に合わせてご飯を作らなきゃいけない状態を極力減らす。そうすると彼女は社長としての仕事に時間を使えますよね。今、僕が彼女にしてもらっているのは、洗濯や、ハンカチのアイロンがけや、クリーニング出しかな。極力少なくしているとは思います(笑)。二人で協力し合って、やりたくないことを減らしていくのは大切ですね。そうやって生み出した時間を一緒にいろんな形で過ごすから、いつも新しい感覚を得られるし、刺激的で面白い人生を送れています。

山川:普通夫婦が課すような家事を、ノルマ化してないのがいいですね。たとえば夜ごはんは一緒に食べた方がいいとか、夫婦としてこれは必要という固定概念に囚われてない。

黒沢氏:私はいつも「こんな夫婦像もありなんだ」と思いながら一緒にいます。他の人から見たら、妻としておかしいと感じることもあるかもしれない。私は彼がいつ何時に帰ってくるかも知らないんですよ。でもいろいろな夫婦の在り方があっていいと思う。それは他の人が決めるものではないから。

水谷氏:おそらく型にはめると辛くなるんですよね。自分たちが良ければそれでいい。僕が帰ってきた時に妻がまだ帰ってきてないこともありますしね。僕は「放牧婚です!」と、周囲に誇らしげに語っていますよ(笑)。

山川:私はこの話を聞いて、自分は囚われていると感じましたね(笑)。夕飯を作らなきゃとプレッシャーを感じますし、娘の英ちゃんが泣き出すと、パニックになって一緒に泣いちゃうこともある。その度にいつも「別にご飯を作らなくていいよ。世の中にやらなきゃいけないことは、一つも無いんだよ」と言われるんですけどね。

水谷氏:自分の中で「こうあるべきだ」ということを引き受けているんですね。

森山:また子どもが生まれたり、親の介護が始まったり、年齢を重ねることで関係性は変わりますよね。だから何かの枠に当てはめなくていい。結局人間はみんな違うからこそ、いろんなタイプがあっていい。男女関係なく、自分たちらしく、それでいいんです。

取材を終えて
水谷ご夫妻と森山ご夫妻、同じ起業家カップルでも、それぞれの夫婦の在り方は全く異なるものでした。生き方に「これが正しい」という絶対の正解はありません。だからこそやりたいことに意志をもち、自分なりの道を作っていかなければならないのだと、4名のお話を聞いて感じました。

 

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※CRAZYは一緒に働く仲間を求めています

編集:水田 真綾(@maya_mip
写真:鈴木 秀康(@hidegraph

 

小村トリコ
(TORIKO KOMURA)

ワシントン大学のビジネスクラスを履修したのち、シアトルの日本語新聞『Soy Source』の編集長を務める。現在は日本で編集・ライターとして活動。ライフワークは「人の話を聞く」こと。コトリ2羽とニンゲンのさんにん暮らし。

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