2017.12.26

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【後編】自分という人間を絞り出す、濃い一滴からはじまる。

「変革に寄与する」をミッションとして設立された、法人向けのクリエイティブエージェンシーである、「CCA(クレイジークリエイティブエージェンシー)」。CCAのクリエイティブディレクター林が、気のおけない仲間を迎えて「新しい時代のものづくり」について本音で語り合うイベントの第2弾をレポート。後編は、「今の時代のものづくりへの、それぞれの想い」。

前編はこちらからどうぞ
価値観を大きく揺るがす体験を経て、4人のクリエイターは今ここに立っている。

イベント実施日
2017年11月20日(月)

登壇者
モデレーター
林 隆三(Ryuzo Hayashi)CRAZY CREATIVE AGENCY/クリエイティブディレクター

長谷川 彰良氏(Akira Hasegawa)モデリスト・デザイナー・ブロガー・ビンテージコレクター
中村 真広氏(Masahiro Nakamura)株式会社ツクルバ 代表取締役 CCO/エグゼクティブ・プロデューサー
伊藤 祐春 氏(Sukeharu Ito)チームラボ / デザイナー

デザイナーであり経営者であるという在り方。ものづくりの根底に流れる生き方。

林隆三(以下、林):ではいよいよ、新しい時代のものづくりについて触れていきたいと思います。年齢とともに自分自身も少しずつ変化していく中で、自分の身の回りやさらにその周り含めて、もう、それは時代そのものなんじゃないかと思うんです。時代が変化していく中で、ものづくりをどう捉えていくのかを、話せたらと思います。

中村真広氏(以下、中村氏):今日ここに集まっている皆さんも、これまでとは違うものに可能性を感じたり実践したりしていると思いますし、我々もまさに実験しているメンバーの一員ですよね。

:そうだよね。ちなみに、参加者の方から事前にいただいた質問に、「これまでの時代ってなんだろう」というものもありました。これまでの時代が悪かったと否定するものではなくて、建設的に、どういう風にしていきたいのかを話せたらいいなと思います。

中村氏:とは言え、時代を更新していくのはアンチテーゼだったりするじゃないですか。自分たちのひとつ上の世代に対して、「俺ら世代はこうだぜ!」って言いたい。それは愛情を持って。嫌いなわけじゃないからね。

:愛情っていいね。

中村氏:しかも、自分がそうだからということもありますけど、デザイナーが会社経営するって面白いことなんじゃないかなと思っています。海外に目を向けると、デザイナー・アーティスト出身でスタートアップを経営している人って案外多いんですよ。WeWorkやAirbnb、Pinterestもそうですしね。でも、日本ではまだまだ少ないですよね。デザインをやっている人が、経済サイドよりも文化サイドに身を置いてるなと。僕は建築デザイン出身だけど、起業してもいいんじゃないかって思うし、そういうロールモデルになれたらいいなとも思うんですよね。

:クリエイターの社会的立ち位置をなんとかしたいというエネルギーではなくて、一人ひとりが幸せに生きることが大事だと思う。デザイナーが会社を経営してもいいし、エンジニアが会社員やってもいい。承認し合える中で、ものづくりができることが、重要だと思います。

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例えば僕の場合、食事も忘れて・寝る間も惜しんで仕事に集中することも、好きだったりするんです。昼間には降りてこないけど、夜にアイデアが降りてくることがある。自分が好んでアイデアの神様待ちをしてるのに、「遅くまでやってて大丈夫?」とか、誰にも心配されたくない。でも、遅くまで仕事をすることが社会的に許されない時代になりつつあるから。

もちろん、働く仕組みを整えることは大事だと思うけど、そこに自分の意思があるかが重要。自分が選んで、仕事に没頭してるんだからいいじゃんって思う気持ちもある。働き方は生き方。何より、ものづくりのベースには、生き方があるはずだと思うんだよね。

曖昧な境界線。自分という人間を絞り出す、一滴の濃さ。

伊藤祐春氏(以下、伊藤氏):今やどこの業界でも、エンジニアやデザイナーを募集している。例えば、車メーカーだけが車をつくるわけではないし、デザイン事務所でデザイン以上のアウトプットを求められることも多い。業界や仕事の境界線が、曖昧になっているんじゃないかなと思う。

長谷川彰良氏(以下、長谷川氏):僕は、自分の想いをより深く掘り下げて、純度の高い一滴 を絞りだすことに集中しようと思っています。 そう思い始めたのはつい最近で、それまでは自分の活動をより多くの人に広めたいと思っていました。

個展後からメディアへの露出が増え、自分の専門的な活動を一般の人にも解りやすく説明しなければいけないと思い行動しました。
しかし、一般的に広める(=薄める)ことをする必要かはないじゃないか。それよりも個展の完成度を高める事、想いをより凝縮させることが自分にしか出来ないことじゃないかと考えを改め、今はそうすることに力を注いでいます。

中村氏:はせくんは、サムライだね。ラストサムライ。

:今話を聞きながら思い出したんですけど、僕のクライアントにチョコレートブランドがあるんですね。ブランディングをお手伝いする中で、時代ってなんだろうって考えたんですよ。チョコレートになぞらえて、「時代は、壊してつくるものではなく、溶かしてつくるものだ」と自分の中でしっくりきたんです。溶かすということはつまり、先人の知恵を生かしながら、ただ形を変えるだけかもしれないということ。あえてわざわざ壊す必要なんてなくて、少し形を変えるだけで、時代は変わるのかもしれない。

伊藤氏:デジタルの世界では前提として、みんなで共有できてこそ価値があるという考え方がある。その上で、ちょっとキャリア寄りの話かもしれないけれど、超職人として自分が突き詰めていくのか、コーチとして人を育てていくのか。自分がどうしたいのかを考え選んでいく感じなんだと思います。

:このイベントの決起会と称して集まった飲み会でも、テーマに上がったよね、「肩書き」。BE=在り方と、DO=やることの肩書きは違うんじゃないかっていう。
※決起会で話題になった、greenz.jpの記事「DOとしての肩書き、BEとしての肩書き」はこちら

伊藤氏:禅問答になっちゃうけどね。

中村氏:はせくんはBEもDOも一緒だよね。ピュアに追求している人。一方で、BEとDOは違う人は、いい意味でねじれがあって、ねじれがクリエイションのパワーになってたりする

:それはあると思う。意図してやっている人もいるし、そこに葛藤している人もいるし。ただ、肩書きに縛られるのは、過去の時代。これからの時代は、自分のアイデンティティを明確にしていくことなんじゃないかと思う。話は尽きないけれど、もう残りわずかの時間しかないということで、最後に質疑応答に行きましょうか。

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多様化する働き方。一人で・チームで働くベースは、自立した個人であること。

参加者:フリーランスで働くということについて、皆さんどうお考えでしょうか。

長谷川氏:フリーランスになって番幸せに感じることは、会社員時代に比べ、子どもとの時間が格段に増えたことです。独立直後は、大して貯金も無く子供も生後半年と幼く大変な時期でしたが、その時期にリスクを背負って個展に挑戦したことが、結果的に良かったと思います

私の本業である服づくりは「モデリスト」という肩書きです。洋服のデザインから生産まで一貫して携わる専門職です。個展をしたことにより、モデリストとしての仕事も格段に増えました。その経験からフリーランスである強みを活かして、服づくり以外の仕事に挑戦してみたり、子供との時間に充てたりしています。

中村氏co-baに入っていただくことをオススメします(笑)。きっとフリーランスの仲間ができるので、様々な悩みも共有できるはずです。僕は、1社目は大きい会社で、そこから小さいデザイン事務所に移って、今は自分で会社をやっています。僕がフリーランスだったのは8年前なので、もう随分環境は変わってますが、振り返ってみて、色んなことを相談できる横のつながりが欲しかったなぁと思うんです。

伊藤氏:その通りで、雇用の形態は変わってきています。チームラボでも、フリーランスの方とご一緒することは多いです。クリエイティブの業界は特に多いんじゃないかな。会社の一員でありながら、副業でフリーの立場で動くことも許される時代になってますから。フリーランスになって仕事あるのかなと心配される人も多いかもしれないですけど、もしダメだったら次に進めばいい。それくらいのマインドで挑戦できる時代になってるんじゃないかなとも思います。

:組織に所属せずフリーランスで仕事をするということは、プライベートじゃないけど、自分のスタイルを表現することも大事になりますよね。SNSなんかの表現を通じて、オファーがあったりしますしね。フリーランスで仕事をするのかチームで仕事をするのかは、あくまでも結果。それはあまり重要ではなくて、自分の在り方ですね。その人が一番幸せなやり方で活動できればいい。

僕は今も自分の名前で仕事をすることに興味がないわけじゃない。これは僕だけじゃなくて、CRAZYのみんなは、自分の名前で仕事をすることへはこだわりを持ってるんじゃないかな。でも、それよりもみんなでやれることに価値を見出してるから、今ここにいるんだと思う。

中村氏:それは、最高だね。一人でやれることには限界があるから。何より、個人で自立して仕事ができる人が、チームを組むっていうのが、一番いいよね。それこそが幸せなんじゃないかな。とは言え、自分のピュアな作家性をアウトプットしたいという欲求としては、どうですか。

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長谷川氏:フリーになって初めて、チームを意識するようになりましたね。僕は一人ですべてを感じてながら物事を進めることを大事にしてるんですけど、チームでないと完成しえないものもあるから。今は、チームっていいなと思います。

中村氏:今の時代、社内のチームだけがチームじゃない。フリーランス同士でチームを組んでプロジェクトをやって、終わったら解散してもいい。社内の別の部署の人とプロジェクトチームを組んだっていい。会社はひとつの境界線としてあるだけですよね。

:そうだね、きちんと一人で立てる個人が、自分の望む在り方に応じて、一人やチームでの仕事の仕方を選択できることが、新しい時代なのかもしれないよね。

(END)

◉取材を終えて
私は現在フリーランスという立場で、組織に所属せず仕事をしていますが、2年前までは、大学を卒業してからずっと会社員でした。国策として副業が認められるなど、まさに働き方改革の真っ只中ですが、私自身が「働く」について思うことも、まさに皆さんと同じ。状況に応じて、組織に加わることがあってもいいし一人で仕事をしてもいいと思うのです。でも常に求められることは、自分は何のバリューが発揮できるどういう人間であるのかということ。この観点は、以前に組織に所属してたときよりも、フリーランスになったからこそ明確に意識するようになったことだと思います。

伊勢真穂 MAHO ISE

リンクアンドモチベーションにおける約8年間の組織人事コンサルティング経験を経て、フリーランスとして活動中。組織変革の知識と現場経験を豊富に持つため、HR領域における取材依頼が多い。「Forbes JAPAN」や「HR2048」といったビジネス系メディアでの執筆を行う。


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