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「きれいな水」で災害対策も、世界の貧困も解決!?

震災、台風、豪雨。日本は世界でも有数の災害大国である。日頃はインフラが整備され、災害時にも救助態勢も多くの人の知恵と力でかなり整っている。しかし、災害時にすぐに日頃の快適な日常生活に戻れるかといえば、そういうわけにはいかない。

中でも多くの人の頭を悩ませるのが「水」だ。

「トイレは想像以上に水が必要です。断水によって避難所の水洗トイレが使用できなくなってしまい、近所の井戸からバケツリレーで水を運びました」
「濾過せずに飲料水にできるレベルの湧き水が豊富だったため、それを水道水の水源にしていました。それが裏目に出て、震災後は水が濁り、長い間飲料用に使えませんでした」

そう語るのは、熊本地震の被災地の人々だ。

この水の問題も含め、災害時に大きな力を発揮する装置があるのをご存知だろうか。

フィリピンの学生チームが発明した人力装置

2016年、フィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学の応用化学専攻の6人が学生時代にBig Mike Bike(以降BMB)を発明した。これは多機能低コスト組み立て式自転車である。

日本と同様、フィリピンもまた自然災害が多い国である。7000以上の島からなるフィリピンは、台風等の自然災害の影響を受けやすく、気候変動によってその影響はさらに大きくなっている。

そんなフィリピンで生まれたBMBは1台で取水ポンプ、浄水器、発電機、蓄電器の機能を持つ。ペダリング1時間で家庭の電力5時間が賄うことができ、同時に汚水を汲み上げて浄化し、同時に150リットルの飲み水を生み出すこともできるのだ。

世界の水問題、電力問題の解決に貢献できる可能性を秘める

実はこのBMBは、災害用に特化して発明されたものではない。貧困問題の解決に貢献する一案として作られた。

日本では、水道の蛇口をひねればいつでも飲めるレベルのきれいな水が手に入れられる。しかし、2015年の時点で、世界では6億6300万人が安全な飲み水を確保できていない。そのうちの840万人がフィリピンで暮らしている。

人々は「被災時」という特別な状態でないときにも、毎日きれいな水と汲みに行ったり、買ったりしなくてはならない。それは多くの場合が女性の仕事で、時間的な負担が大きい。貧しい人々にとっては水を買う経済的な負担も大きい。

また、世界全体では未だに12億人が電気のない無電化地域に暮らしている。そのうちの1600万人はフィリピンで暮らす人々だ。

電気がないことで安全が確保しにくいため、子供を置いて出かけることもできず、暗くなってからの仕事に出られず経済的に困窮することもある。子供は暗い時間に勉強ができず、社会的に成功するチャンスを失う。
そういった貧困の問題を解決するためにBMBは生まれた。

「もし何かを思いついて、それが世界の役に立つと思ったら、まずは行動してみることが大事だと思います」と、BMB SolutionsのPR、SHAWNTEL NICOLE NIETO氏は話す。

貧困を解決するには、災害対策が必要だった

ところが、貧困を解決しようとすると、災害対策が必要だということに気づいた。

自然災害が起こった時に一番大きな影響を受けるのは、やはり貧困層だ。貧困から抜け出そうと少しずつ基盤と作っていても、ひとたび災害が起こるとそれは無に帰してしまい、多くの人を再び貧困に陥れる。

また、災害が起こった時にきれいな飲み水がないこと、電気がないことは、病気を蔓延させ、さらなる貧困の芽を生んでしまう。

BMBはコンパクトで組み立ても容易なので、被災地に導入しやすい。外部電源を必要とせず、設置すれば瞬時に取水ポンプ、浄水器、発電機として使えるのがメリットだ。現在はまだ実験段階ではあるが、すでに3箇所のフィリピンの地方自治体と取引をしており、今までに5機のBMBを設置しているのだ。

BMBは日本の被災地も救うかもしれない

そんなBMBは災害時を考えた場合、日本でも大きな助けとなる可能性があるのだ。

東日本大震災時に被害が大きかった宮城県仙台市を例にとってみると、市内全域がほぼ復旧するのに電気は約10日間、水道は約30日間かかっている。

災害後3日までは1人1日3リットル、4〜10日までは1人1日10リットルの水が必要だと言われている。しかしNHKの報道によると、東京都の中野区、渋谷区、中央区など一部の区では3日目までの水も足りない状態だという。

首都圏直下型地震や南海トラフ地震といった大規模な震災の場合、果たして他の地域の災害のように円滑な支援が行えるだろうか。自助努力が叫ばれる中で、BMBは魅力的な選択肢かもしれない。

熊本地震後5か月半ぶりに上水道が復旧し、台所の蛇口から出る水を見た女性はこう叫んだという。
「ああ! きれいな水さえあれば、もう何もいらない!」
その気持ちは想像に難くない。

実はCRAZYがこのBMB Solutionsに注目をするのは、「水」というものに並々ならぬ関心を抱いているからだ。

人の体の約60%は水分でできており、綺麗な水を摂取することは健康に大きな影響を与える。CRAZYは起業後最初に購入した高価なものは浄水器だというくらい、「水」に気を遣っている。
人々が地球上で活動していく以上、「水」を一つのキーワードとして今後も注目していきたい。

参考:
BMB SolutionsNHKシュト子の首都圏防災ナビ東京都水道局

FELIX 清香
Sayaka Felix

greenz.jp、Pouch、「ソトコト」等のWEBマガジン、雑誌での執筆や書籍構成、オウンドメディアの立ち上げ等を行なっている。国際交流やエシカル、児童文学、体感型アートに興味あり。プライベートでは、Give & Takeではなく、Give & Giveで経済が回るかどうかをさまざまな取り組みで実験する「ギフト経済ラボ」のメンバーとして、カルマキッチンというカフェイベント等の運営に参加している。

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