2017.03.01

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CRAZYが戦略的に全社員休業をする意味とは

全社員が同じ空間にいる瞬間はどれだけ存在するだろうか。

創業期であれば、それは当たり前な日常であることが多い。だが、規模が拡大していくにつれてその機会は少なくなり、いつしか顔を知らないメンバーが社内にいることが日常になっていく。そして、気づけば全社員が集まるのは年に数日となってしまう。だからもし、70人近い社員の業務を1ヶ月近くストップさせ、同じ場所に集まるのであれば、それ相応の理由があるはずだ。

CRAZYの場合、それは毎年12月にやってくる。

その名も『全社員企画シリーズ』。簡単に説明すると、全社員が一定期間中、営業活動をすべてストップし、本業とはかけ離れたことに注力する期間である。
CRAZY本社のオフィスは、『全社員リノベーション』で2015年末に完成。

一見すると、ただのお楽しみ企画に見えるかもしれない。だが、これこそがCRAZYの文化を更新し続ける上で、欠かせない行為であり、仕組みなのである。

今回の記事から数回にわたってお届けする【全社員企画特集】では、『全社員企画シリーズ』に込められたストーリーから、2016年末に行った最新の企画のレポートまでを紹介しながら、この企画がもたらす意味をしっかりとお伝えしていきたいと思う。

「そもそも1年まるまる働くって誰が決めた?」

平日は働き、土日は休むのが当たり前。学生のころの夏休みのように長期間休むことは、社会人になると難しい。そんな通説に私たちが疑問をもったのは、遡ること2014年夏、CRAZYの代表・森山のこんな一言から。

「11ヶ月まるまる働いて、1ヶ月休める組織にできないかな?」

仮に12ヶ月(=1年分)の仕事を11ヶ月で終わらせれることができれば、残りの1ヶ月をまるまる休業にあてても、全く問題はないはず。それが彼の仮説である。これを聞いたとき、おおよそ他のメンバーの見解も、彼の意見に同様だった。

だが、私たちの仮説はそこで止まらなかった。議論を重ねる中で、「余った1ヶ月をまるまる休むのではなく、『やりたい!』と思う理想に組織の全リソースをかけたなら、これまでにないイノベーションを起こせるのではないか」というアイデアが生まれた。

単なる業務停止でもない、新しい形の休業。そんな期待が私たちを包み込んだ。「毎年12月の1ヶ月は業務をすべてストップし、全社員でずっとかなえたかった理想に挑戦する期間にしよう」

こうして全社員企画が誕生したのである。

最初の企画は『全社員世界一周研修』


創業1年目の2014年、当時の社員12名で行われた『全社員世界一周研修』。

最初の全社員企画では、全社員がそれぞれ世界一周の旅に出た。企画の発端は、森山が創業するキッカケとなった地、アルゼンチン・パタゴニアにみんなで行きたい、という想いから。そこから企画は発展し、最終的には各々が自分の人生テーマをもとに訪ねる国を決め、一人旅へ行き、地球の裏側アルゼンチンで再会し、キャンプをしながら未来を語る、という内容となった。

この企画は結果的に大成功だった。企画の楽しさはもちろん、それ以上に2つの観点からこの企画は組織を大きく成長させた。

1つは、言語が通じない異国という環境に各々が置かれたこと、つまり真の孤独体験である。孤独の中で自己判断をし旅を前進させていくプロセスは、経営者が戦う孤独との葛藤の擬似体験となり、それぞれのメンバーに経営者目線から見える景色を映し出した。その辛さに涙を流すメンバーもいたが、各々が乗り越え、組織全体の経営者視点を高める効果をもたらした。

もう1つは、会社の認知度。『全社員世界一周』という企画名を掲げ、日々更新されたブログは世間で話題を呼び、会社の知名度が大きく上がるきっかけとなった。

「全社員で1ヶ月休みたい、地球の裏側でみんなで再会したい」
これらのワクワクを起点に生み出した企画は、経営者視点の向上と会社の認知度UPという、当初には全く想像できなかった大きな効果をもたらした。

以降、全社員企画はこの成功体験をもとに作られている。大切なのは論理からではなく、好奇心から生みだすこと。「その企画、ワクワクする?」というのが、『全社員企画シリーズ』の企画を考えるにあたって大切にされていることである。

「何がしたい?」という問いがイノベーションを起こす

設計を重ねて作られた完璧なものに「ワクワク」を感じる人もいるかもしれない。でも、今の世の中、それだけでは人の心は動かしきれない、と私たちは思う。

今の世の中に必要なもの。それは、「何が正しい?」という解のある問いから生まれるものではなく、「何がしたい?」という情のある問いから生まれるものだ。


同じ釜のご飯を食べお酒を飲みながら、理想や夢を語り合うのもCRAZYの日常風景。

だから私たちが目指すのは正しさも情も融合された、究極のアイデアの実現だ。そして、『全社員企画シリーズ』とは、そのアイデアを生み出すための1つの仕組みである。

オフィスからも物理的に離れ、役割からも外れ、ただの人となるこの期間。現実から離れた無の状態でゼロからアイデアを練ることができれば、そのときに生まれるアウトプットは理想への純度がより高い。つまり、情と正しさが両立したものになりやすい。これらを生み出す体験をすること自体に、全社員企画を行う価値が存在する。

「やりたいという溢れる気持ちを大切にしよう」

それが、全社員企画の本質。


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