2017.02.21

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未来の組織論 vol.5  会社での対人関係を諦めている人へ 後編

“ すべての悩みは「対人関係の悩み」である ”

前編では、自分の感情と必要としていること・欲求に意識を向けていくことで対人関係の鍵となるコミュニケーションが変わることをNVCという手法を通して学びました。目から鱗のメソッドでした。

ですが、自分の感情や必要としていることを認知することは難しいよ、何か良いトレーニングはあるの?! という疑問が生まれたのも事実。

この疑問は、今回が2回目の登場(前回はこちら:イノベーティブな会社の源泉は「矛盾」のマネジメントだ)である、上司の杉山先輩にぶつけてみることにしました。杉山先輩は、新卒で入社後はじめて経営メンバーに選ばれた凄腕イケメン。ただのイケメンじゃないあざとさが、悔しいけどいいんです。

最近婚約されて幸せ真っ只中の杉山先輩。

水田「自分が本当に感じている感情や欲求には、どうしたら自覚的になれるんですかね」

杉山先輩「それは、イントラパーソナルつまり内省的知能を高めるということだから、最近流行りのマインドフルネスとかが良いんじゃない?」

心の知能指数を育むことが、必要なのだ

確かに最近巷で騒がれているマインドフルネス。 可能性があるかもしれない、と早速書店に向かいました。Googleが発売した『Search Inside Yourself 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法』という本を入手。

マインドフルネスとは、「今この瞬間」の自分の体験に注意を向けて現実をあるがままに受け入れることを指すのだとか。つまり、マインドフルネスをすると自分が本当に感じている感情や欲求に、自覚的になれるわけです。

この本では、マインドフルネスを実践すると、大きく分けて3つの能力を向上させてくれると書いてありました。

1つ目:優れた職務遂行能力

優秀さの要因は、優れた知性や専門知識よりも、情動面つまりEQを生かした能力の方が2倍影響しているのだそう。例えば、「今日はなんとなく調子が良くない」あるいは「家族と喧嘩したから元気がない」という日は誰しもあるでしょう。ですが、マインドフルネスを実践する事でそうした気分や感情に左右されることなく、決めた計画通り仕事を進めることができるため、職務遂行能力が高い人が多いのでしょう。

2つ目:抜群のリーダーシップ

卓越したリーダーを際立たせる能力の80~100パーセントは、情動面の能力が占めるとのこと。確かにヒステリックになる事なく指導してくださる上司には安心感を覚え、また次も頑張ろうと前向きに仕事に打込むことができます。そうした上司は、危機に直面した時の咄嗟の判断も的確です。

3つ目:幸せのお膳立てをする能力

シンプルにいうと幸せを感じられる能力。これがマインドフルネスを実践することで人生が豊かさになるといわれる所以なのだという。どうせ一緒に働くなら、幸せそうな人と働きたいですよね。

マインドフルネスを実践する事で、職務遂行能力が向上し、リーダーとして周囲を導く力も育まれ、さらには幸福度が増すとは、予想だにしない多くの恩恵です。

CRAZYの朝礼は、大自然の移ろいを撮影した映像を見ることからはじまる。自分のこころや身体の状態によって、毎朝見ている映像が違って見えることも多く、これを自覚することは、マインドフルネスと同じ効果をもたらしてくれる。

では、この3つの恩恵をもたらしてくれるマインドフルネスの実践法を見ていきたいと思います。

自分に「陰口」をつぶやかない

①意図をもつ

まずはマインドフルネスの状態でいたいと望む理由を明確にします。例えば他人に対して穏やかでありたい、仕事のパフォーマンスをあげたいなど。

②呼吸をたどる

呼吸にそっと意識を向けます。これを分かりやすく言うと「命がかかっているかのように、呼吸をする」んだとか。この時点で気がつくと、だんだん心が穏やかになっていきます。またすぐに気が散ってしまったりもするのですが、その度に呼吸に意識を集中させるのです。ポイントは、呼吸に集中しているときは①に抱いたような意図は忘れて何も期待をしないこと。執着のこころを捨てることが大事。

③気が散った時に起こる自分自身に対する態度を自覚する

呼吸から気が散った時に「またやっちゃったよ」「集中力ないな〜」と思わず心の中でつぶやくTweetを、自分で認知すること。気が散ったときこそ、自分が普段から自分をどう扱っているか自覚することができるのです。

そしてその自分に対しての扱いを、優しさと好奇心に変えていくのです。「これから集中力はついていくよ」「きっと続けられるよ」という風に。

①〜③のプロセスを、たった1分からでいいので毎日続けてみること。そうすると、少しずつですが情動面の安定感が変わっていきます。私は昔に比べて、ご機嫌でいられる時間が増えたのを感じていますよ。

前編と後編まで調べてみて、対人関係を良くするには二つの方法があることが分かりましたね。NVCを用いて感情と欲求に意識を向けたコミュニケーションをすること、そしてそうした情動面へ注意を育むために、マインドフルネスを実践することでした。

また、心理学で有名なアルフレッド・アドラーはこんな言葉も残しています。

“ 人間は自分の人生を描く画家である。

あなたを作ったのはあなた

これからの人生を決めるのもあなた ”

多い人では人生の8割の時間を過ごすといわれている会社。これまでの力関係や、付き合い辛さはあるかもしれないけれど、NVCやマインドフルネスの実践で関係性を少しでもよく変えられるとしたら。そしてそれが、個人の幸せと生産性の両方に大きな影響を及ぼすとしたら。

こうした対人関係をよくすることに、組織的に時間とエネルギーをかけることが当たり前になる日もそう遠くはないかもしれません。

参考文献

・岸見一郎 古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイアモンド社.
・中野明(2014)『勇気の心理学 アルフレッド・アドラーが1時間でわかる本』学研プラス
・チャディー・メン・タン(2016)『Search Inside Yourself 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法』英治出版

水玉綾(@maya_mip)AYA MIZUTAMA

CRAZY MAGAZINE編集長。フリーの編集者・ライター。HR領域の取材記事を中心に、媒体は「未来を変えるプロジェクト」「新R25」「PR Table Community」「BizHint」「FastGrow」等。三度の飯より愛犬が好き


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